うそつきな友情(改訂版)

あきる

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side久賀1-7

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 振り返った視線の先にいた、強面イケメンの名前は椎名優雅しいなゆうが。人の頭を叩いてくれた、腐れ縁の悪友だ。
 名前に反して粗野感丸出しなんだけどね。

 ひゅっと顔面に向けて放った拳は、呆気なくカバンで防がれた。半分くらいはマジが入っていた一発なのに、無愛想男は眉一つ動かさない
 全く動じず平然としてやがる優雅に、ちょっとだけカチンとする。
 こっちのイライラなんかにはお構いなしで口を開くあたり、流石は俺の悪友さまだ。

「お前ら、まだ遊んでるのか。五限が終わったぞ」

 学生鞄を受け取りながら片方の目だけを細めてみせる。  
 優たんってば、わざわざ俺のカバンを持ってきてくれたの?
 変なとこ律儀ってゆーか何とゆーか、身内には甘いよな、お前。まぁそんな事はどーでも良いけど、ナイスなタイミングだね。いまだけ褒め称えて崇めるよ。

 さて、頭痛の所為で授業どころじゃない龍二さんは、ウルサい犬を置いて逃げますよ。

「あらら。そんな時間かよ、有り得ねぇ」

 別に遊んでるつもりはねぇですけどね、俺は。うるせぇワンコにしつこくされて、げんなりしてただけですよ。

「んー?六限フケルのかよ、不良め」

「今日一日、一度たりとも教室の椅子に腰掛けてすらいないお前にだけは、言われたくない台詞だな。不良はお前だ」

「はぃはぃ。お迎えご苦労さん【坊ちゃん】……いてっ!ガチで蹴るな。鬼畜サドはお前の兄ちゃんだけで十分なんだよ。さて、と。そんなワケで帰るから離してくれない、尾上」

 左手首は、しつこいワンコの手の中だ。
 お人好しでお節介で理解できない同級生を「さっさと離せよ、金とるよ?」と視線だけで脅してやったが、ビクビクしながらも頑固なワンコはひかなかった。

「い、いやだ。断る」

 あー……俺も嫌だ。
 勘弁して。
 俺はね自由を愛する野良猫なんだよ。
 ヒトにすり寄るのは餌が欲しい時だけだから。
 そして俺は今から、金という餌を求めて夜の街へと彷徨い出たいのです。
 実際には、お客さんゲット済みだから彷徨ったりしないけど。
 背後に立つ男から、珍しくも陽気な雰囲気を感じ取った。ヒトの不幸を楽しんでいやがるな。

「珍しくガキにモテてるじゃないか。良かったな、龍二」

「黙れば、優たん。後で泣かすからね。はぁ、まったくどうしてくれようか。あのさぁ、尾上くん。俺が笑ってる内に言うこと聞いといた方が賢いよ。今日の龍二さんはちょっぴり沸点が低いみたい」

 誰が優たんだと、抗議してくる悪友の声はシカトして、目の前のワンコを見下ろし、口角をあげてみる。
 暴力に訴えるのは些か乱暴だと思いますが、これ以上俺の邪魔をするなら容赦しねぇよ?
 見下ろす瞳に、ほんの少し殺気を籠めた。
 マジになるのは俺のスタイルじゃねぇけど、仕方ない。俺は寝不足なんだってば。
 正直、腹が減っている時よりも余裕はない。

 人間さ何だかんだで睡眠欲が一番強いんだっけ?
 なにせ拷問の手段の一つだ。
 気が狂う前に、安眠希望。
 出来ればお姉さま方の豊満な胸の中に沈みたい。まぁ、他人の側で安眠なんざ出来ないんですがね。
 意外にでりけぇとな神経なのよん、うふっ…………ダメだ、口調がヲカマ化してきた。いくらシリアスが苦手だからって、ツッコミが入らない脳内でボケてどうする。

 こんな時に弘さん(トモの兄ちゃんだよ)が居てくれたら『そこのヒョロ男!空気壊す口調止めろ!うわわっ寄るな触んな、しなだれかかるなぁぁ!!キモイから離れろぉぉ!』なんてゆー、思わず惚れちゃうくらい素敵なツッコミで場が和むだろうに。
 優たんは普通にスルーしそうだし、尾上は…………脅してる相手を和ませてどうするよ、俺。
 やっぱダメだ。脳みそがかなりヤられてる。ナイスでクールでせくしぃー系なキャラ設定が崩壊する前に、尾上から逃げよう。そうしよう。

 普通にしているだけで、小さい子を泣かせてしまう目つきの悪さを、意識して"悪い"方へ持って行けば、それだけで脅しには十分だ。
 びくつく子犬を哀れんでやる余裕はない。
 根性があるのは認めてやるよ。

「手、はなして?」

「い、嫌だって!」

「……あのなぁ、いい加減マジでキレるぞ」

「っ……て、だってお前、この傷つけたヤツの所に行く気なんだろ!絶対だめだ、離さないし行かせないからな!」

 傷って……手首のかっ。こいつまだソレに拘ってるのか。
 信じらんねえ。どこまでお節介なんだよ。

 真っ赤になりながらヤケ気味に尾上は喚き続け、背後の男が小さく吹いた。
 俺はこの日、開いた口が塞がらないという意味を実地で味わった。

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