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第38話
しおりを挟むパチリと目を開くと、まわりの景色はすっかり闇に染まっていて、少し離れた花壇では、虫たちが演奏会を開いていたりする。
やべ、ガチで寝ちまった!と慌てるのは、覚醒からたっぷり10秒は経った後だった。
ごそごそと制服のズボンを漁り、スマホを取り出して時間を確認する。
20:05
うわぁ。やってしまった。
画面に示されている数字の羅列に、一瞬目の前が真っ白になった。
授業はとっくに終わっているし、鬼的補修も終わった頃だ。
まだ正門は閉じられていないだろうが、急ぐに越したことはない。
慌てて顔を横に向けて
「ごめん、久賀!!寝過ごし、た………」
美形と称するに値するキレーな顔が、直ぐ近くにあって思考は停止する。
確かに隣に座りましたが、どうして肩がくっつくくらいの至近距離にいるのでしょーか。
一瞬で、全身の血液が沸騰した。
気分的にはそんなカンジ。
顔が熱い、背中も熱い。まるで燃えてるみたいだ。うわっ!なんで俺は久賀さんと手ぇ繋いでるの!
ぼぼぼっと、よりいっそう顔が火照る。
鼓動が伝わりそうなくらい、近くにいる相手にドキドキと心音は速度を増すばかりだ。
一体、どういう事だ。
何が起きたのか誰か説明してっ。
これは現実か?なんて疑問が浮かび、夢の方が納得できると頭を縦に振った。
「夢だ、夢だコレ。なんだ、夢か、はははっ」
そうでなければ新手のドッキリ?
隣の男の性格上、自分が宣言した一時間ピッタリで起きて、うっかり寝ちゃった間抜けなんか置き去りにして、一人でさっさと帰っちゃうと思います。
思うというか、確信ですかね。
兎に角、二人で肩を並べて仲良くお昼寝(昼寝かこれ?)なんて有り得ない。
夢か、リアルな夢だな。
というか、こんなに何度も夢に見るくらい、アイツのことを考えているんですかね、俺は。
「夢だ夢だ……えいっ……いっいででで」
ぐいっと自分の頬を思いっきりつねって、あまりの痛みにちょっぴり涙目。
加減を知らないバカの子です。
頬のひりひりに、夢じゃないじゃんと“夢心地”で呟いた。
頬がすごく痛いのに、それでも信じらんない。
繋いだ手は冷たくて、ちっとも現実を示してはくれない。とゆーか冷たすぎないですか?……えっと、実は、心臓動いてないとか、そんな怖い展開じゃないよな?
「くくく久賀さんぁぁん!ちょっと生きてんの!」
わたわたしながら、隣の男の肩を掴んで揺すった。
「ちょっ!起きろよ」
どうやら眠っていただけらしく、ふるふると瞼が震えて。
「……さむっ」
ぼそりと呟いた。
ほっと息を吐き出して、久賀の頬をパチパチと軽く叩いた。
安心したら、現在時刻を思い出して、今度は別の意味で慌てる。
正門が閉じる前に帰らなきゃヤバい。
「起きろ!閉じこめられるぞ!」
「うー……や。ねむい」
いやいや、と顔を逸らして逃げていく。
盛大に寝ぼけていらっしゃるー!!!
なんだよ「や」って!!無防備で子どもっぽい態度とか止めろ!
俺をドギマギさせて楽しいかっ?うっかり可愛いとか思った自分に引くからね。
俺が萌え死ぬ前に戻ってきて下さい久賀さん。お願いします。
「どうしよう。どんどんハマっていく自分が怖いっ。男相手に可愛いとか思っちゃうなんて、俺の脳はもう終わって……いや、それどころじゃなかった!」
このままじゃあほんとに正門が閉まる!と、肩を揺すって久賀に呼び掛ける。
「起きろ久賀!久賀くん久賀さん久賀サマ久賀たん久賀ちゃぁぁぁんんっ!これでも足りないなら名前もつけるぞ!ごらぁぁ」
照れ隠しか何なのかは自分でも分からないが、暴走するキモチを紛らわすために叫んだのは、紛れもない事実の一つ。
「……さむい」
「え。うわっ!!」
どさりと、前向きに体が倒れ込んだ。
繋いでいた手が引っ張られたからだ。
二人そろって地面に寝転がった。
ぎゅぎゅっと強く抱き締められて、心臓は爆発寸前だ。
冷たい掌に、服の中を侵略される。
生の背中を、冷たい手で撫でられて「ひゃぁ!」と短い悲鳴が漏れた。
「ちょっ!まっ……たんま!タイム!!フリーズ!!!ポーズ!!!うひゃぁぁ、つめたっ」
思いつく限りの制止の言葉を叫んでみるが無駄だった。
氷の手を持つ男は、無意識のうちにあたたかい体温を求めているらしい。
より一層強く抱きしめられて、呼吸が止まるかと思った。色んな意味でっ。
羞恥で体温があがる体を、ゆたんぽ代わりにされて、嬉しいのか悲しいのか……いや、認めよう。例え暖をとるのが目的でも、好きなヤツに求められて悲しいわけがない。ちょー嬉しい。激嬉しい。バリ嬉しい。あとは、何を嬉しいの前につけたらいいですかね?
メガとかギガとかテラとか?もーよく分からない。素直に“すごく嬉しい”で良いじゃないか。
早く起こさなきゃ。と思う反面、もう少しこの幸せに浸っていたいとも思う。
だめだ、俺の脳みそが終わっているお知らせが発信されそうです。
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