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第40話
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ひとを小バカにした相手の態度に、やっぱり、もう2、3発、殴ればよかったと、後悔で一杯になる。
「肉欲バンザイな夢でしたよ。目眩く官能の世界へよーこそってね。そんなワケで相手が子犬じゃ力不足も良いとこだ。乳歯が生え変わってから出直して下さい」
しらっとそんな事を言って、たらたら歩きを再開した。
おのれっ。なんて可愛くない男だろう。
やっぱり見捨てて帰ってしまおうと、のろまな久賀の横をずしずしと怒りを持って早足で通り過ぎたら、いつの間にか正門がすぐそこだった。
「あー!!!」
間に合わなかった。すでに門は堅く閉じられていた。
うわぁぁ。反省文は書きたくなかったのにっ。と、頭を抱えて崩れ落ちたい気分に襲われる。
錠前破りの腕があるなら、レトロなタイプの南京錠なんて、容易くあけられそうだけど俺は普通の高校生です。
因みに校舎内は守衛さんの見回りと、防犯システムがあるので侵入するのは難しい。
無駄に広い学校内に閉じこめられた場合、敷地内にある守衛宿舎に行けば門を開けてくれるが、正当な理由(クラブ練習が長引いたとか)がないと、反省文がオマケでついてくるという面倒な制度があるんですよー。が、うだうだしてても帰れない。仕方ない反省文を書こう。
がっくりと肩を落として落ち込む俺の横に、久賀はたらたら歩きのままやってきて、無言で門を見上げた。
数秒後、くるりと方向転換。
再びたらたらと歩いていく。
その後を、ガックリしながら俺は追った。
「久賀が寝ぼけた所為だ」
「尾上が寝過ごした所為だ」
お互いに言い合いしながら進んでいく……っと、あれ?守衛宿舎はそっちじゃないよ?
久賀の背中を目で追って、ハテナ、ハテナと首を傾げる。
久賀は塀の方に歩いていって、背の高い木の下でぴたりと止まった。
壁と木を交互に見て、くるりと向きを変えて歩く。
なにやってんの?
頭上に浮かぶ、見えないハテナは増えてゆく。
久賀は数メートル離れた場所で立ち止まって、また向きを変えた。
あ、コイツ体調悪かったんだ。まさか、ついに頭がおかしくなった?と失礼な心配を抱き、声をかけようと口を開きかけたその時だ。
久賀はたっと壁に向かって駆け出した。トンと地面を蹴って、だんっと壁を蹴って、ざざざっと木の葉を揺らしながら木を蹴って、もう一度壁、最後に太い枝を足場に飛べば、あっとゆー間に高い塀の上だ。
驚いて瞬きをする間もなかった。一瞬だ。
ちらりと振り返った横顔が格好良すぎてムカついた。
なんつー運動神経の良さでしょうか?
背も高くて顔もよくて、成績もそこそこで運動神経バツグンとか、詐欺だろう。
あ、性格の良さと優しさが反比例してるから丁度良いのか。
性格がもう少し真っ直ぐで、優しと労りの心がもう少し……いや、もうだいぶ、かなり、たくさんあったら、コイツは完全完璧絶対無敵の百点満点おめでとー、だったのにね。残念だ。
(……実は、優しかったりするけど。たまたま、ときどき、気まぐれで……)
心が殺されるほど冷たいくせに、ビックリするくらい優しかったりする。……キスとか、指とか、ね。
ちょっと腐れ脳みそ、回想はいいから戻ってこい。
「オガミン、なにやってんの」
「へっ?」
「早く来ないと、置いて帰るよ」
待ちやがって下さい。
俺に、今と同じワザを繰り出せと?そうおっしゃるんですかね、このヤろう。
背の高さが違うとか足の長さが違うとか、悲しくて残酷な現実に気づいてくれ。
そして、オガミンいうな。
「いや……無理だし」
二回言います、無理だし。
俺の言葉に、久賀が眉を歪めて眉間にシワをつくる。
どんな顔も、好……いや、そんな事はどうでも良いって、脳みそを冷やせ、俺。
「あ?なんで無理なの?お前、運動神経だけはそこそこイイでしょ」
そこそこの部分だけ強調するのはかなりムカついたが、取り敢えずほめ言葉と受け取っていいのか?
もっとストレートに褒められたかった。
ヒネクレモノ。と心で悪口を言ってみる。若干、嬉しかったとか、そんなことは断じてない。
「尾上」
名前を呼ばれた。
見上げる先に、差し出された掌。
なんで。と、疑問が浮かぶ。
だって、久賀ならきっと、俺なんか見捨てて帰っちゃうだろ?まさか、また夢とかいうオチじゃないよな。
「来いよ」
うん、行くよ。夢だっていいや。
好きなヤツが差し出す手を、拒む方法なんて俺は知らない。
思考は止まったまま、駆け出してジャンプする。
壁を蹴って、木を蹴って……滑って、ケツから落下した。物凄く痛いっ。
「っから無理だっていったじゃん!!」
俺は叫びました。八つ当たり以外の何だと言うのだろう。
いや、言いません、八つ当たりですよ、完璧八つ当たりですよ、チクショウ。
靴が滑ったんだよ!
「……運動神経良いって言ったの、撤回してもいーですかね?」
「うっさい!ちょっと背が高いからっていい気になんなよ、ばぁか!」
子どもっぽいとか、いちいちいわなくて良いよ。自覚はしている。
「肉欲バンザイな夢でしたよ。目眩く官能の世界へよーこそってね。そんなワケで相手が子犬じゃ力不足も良いとこだ。乳歯が生え変わってから出直して下さい」
しらっとそんな事を言って、たらたら歩きを再開した。
おのれっ。なんて可愛くない男だろう。
やっぱり見捨てて帰ってしまおうと、のろまな久賀の横をずしずしと怒りを持って早足で通り過ぎたら、いつの間にか正門がすぐそこだった。
「あー!!!」
間に合わなかった。すでに門は堅く閉じられていた。
うわぁぁ。反省文は書きたくなかったのにっ。と、頭を抱えて崩れ落ちたい気分に襲われる。
錠前破りの腕があるなら、レトロなタイプの南京錠なんて、容易くあけられそうだけど俺は普通の高校生です。
因みに校舎内は守衛さんの見回りと、防犯システムがあるので侵入するのは難しい。
無駄に広い学校内に閉じこめられた場合、敷地内にある守衛宿舎に行けば門を開けてくれるが、正当な理由(クラブ練習が長引いたとか)がないと、反省文がオマケでついてくるという面倒な制度があるんですよー。が、うだうだしてても帰れない。仕方ない反省文を書こう。
がっくりと肩を落として落ち込む俺の横に、久賀はたらたら歩きのままやってきて、無言で門を見上げた。
数秒後、くるりと方向転換。
再びたらたらと歩いていく。
その後を、ガックリしながら俺は追った。
「久賀が寝ぼけた所為だ」
「尾上が寝過ごした所為だ」
お互いに言い合いしながら進んでいく……っと、あれ?守衛宿舎はそっちじゃないよ?
久賀の背中を目で追って、ハテナ、ハテナと首を傾げる。
久賀は塀の方に歩いていって、背の高い木の下でぴたりと止まった。
壁と木を交互に見て、くるりと向きを変えて歩く。
なにやってんの?
頭上に浮かぶ、見えないハテナは増えてゆく。
久賀は数メートル離れた場所で立ち止まって、また向きを変えた。
あ、コイツ体調悪かったんだ。まさか、ついに頭がおかしくなった?と失礼な心配を抱き、声をかけようと口を開きかけたその時だ。
久賀はたっと壁に向かって駆け出した。トンと地面を蹴って、だんっと壁を蹴って、ざざざっと木の葉を揺らしながら木を蹴って、もう一度壁、最後に太い枝を足場に飛べば、あっとゆー間に高い塀の上だ。
驚いて瞬きをする間もなかった。一瞬だ。
ちらりと振り返った横顔が格好良すぎてムカついた。
なんつー運動神経の良さでしょうか?
背も高くて顔もよくて、成績もそこそこで運動神経バツグンとか、詐欺だろう。
あ、性格の良さと優しさが反比例してるから丁度良いのか。
性格がもう少し真っ直ぐで、優しと労りの心がもう少し……いや、もうだいぶ、かなり、たくさんあったら、コイツは完全完璧絶対無敵の百点満点おめでとー、だったのにね。残念だ。
(……実は、優しかったりするけど。たまたま、ときどき、気まぐれで……)
心が殺されるほど冷たいくせに、ビックリするくらい優しかったりする。……キスとか、指とか、ね。
ちょっと腐れ脳みそ、回想はいいから戻ってこい。
「オガミン、なにやってんの」
「へっ?」
「早く来ないと、置いて帰るよ」
待ちやがって下さい。
俺に、今と同じワザを繰り出せと?そうおっしゃるんですかね、このヤろう。
背の高さが違うとか足の長さが違うとか、悲しくて残酷な現実に気づいてくれ。
そして、オガミンいうな。
「いや……無理だし」
二回言います、無理だし。
俺の言葉に、久賀が眉を歪めて眉間にシワをつくる。
どんな顔も、好……いや、そんな事はどうでも良いって、脳みそを冷やせ、俺。
「あ?なんで無理なの?お前、運動神経だけはそこそこイイでしょ」
そこそこの部分だけ強調するのはかなりムカついたが、取り敢えずほめ言葉と受け取っていいのか?
もっとストレートに褒められたかった。
ヒネクレモノ。と心で悪口を言ってみる。若干、嬉しかったとか、そんなことは断じてない。
「尾上」
名前を呼ばれた。
見上げる先に、差し出された掌。
なんで。と、疑問が浮かぶ。
だって、久賀ならきっと、俺なんか見捨てて帰っちゃうだろ?まさか、また夢とかいうオチじゃないよな。
「来いよ」
うん、行くよ。夢だっていいや。
好きなヤツが差し出す手を、拒む方法なんて俺は知らない。
思考は止まったまま、駆け出してジャンプする。
壁を蹴って、木を蹴って……滑って、ケツから落下した。物凄く痛いっ。
「っから無理だっていったじゃん!!」
俺は叫びました。八つ当たり以外の何だと言うのだろう。
いや、言いません、八つ当たりですよ、完璧八つ当たりですよ、チクショウ。
靴が滑ったんだよ!
「……運動神経良いって言ったの、撤回してもいーですかね?」
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