うそつきな友情(改訂版)

あきる

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side久賀2-3

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 ちょっぴり、黒曜こくよーさまに似ていなくもないが、鋭い光は、雇い主を上回る淀みっぷり。
 多分、本能はヤベェと警告を発したと思う。

「いいいま、ヒイロって言った?」

「いや、言ったのは俺じゃないけど……」

「久賀君が緋色なんだね!!あ、ああ、夢みたい!夢みたいだよ。黒曜くろあきさんにお願いしても、ずっと緋色には会わせて貰えなかったから。死んだとか海外に移住したとか薬中で病院に送られたとか人を殺して刑務所にいるとかいろんな噂はきいたけど、ああ、やっぱり僕の緋色は無敵で不死身なんだ」

 ……どうしよう。あぶないこの子。
 目がイってる。
 薬チュウなのはお前じゃないの、なんて失礼なセリフを飲み込んで、痛いくらいに強い力で掴まれている腕を解放して貰おうと、さり気なく身体を引いたが無駄だった。
 ちらりと視線を動かし助けを求めた雇い主は、氷のように冷ややかな眼差しを向けてくる。

「ふん、男と見ればすぐに咥えるあばずれが。ちょうど良い、謹慎中はソレと遊んでいろ」

 ガンとドアは閉じられて、あまりの言い分にちょっぴり……いやマジで腹が立った。
 よくも人をヤれたらOKなビッチ呼ばわりしてくれやがったな、この野郎。
 こっちは生活かかってんだよ。
 つーか咥える相手ぐらい選ぶっての!最低指五本は出していただかなければ、股なんざホイホイ開けるかっ。

 ドアを蹴り上げて誰がアバズレだドエスが、クタバレ。と叫んでやった。

 天下のコクヨーさまにそんな口の効き方が出来るのは、余程空気の読めない救い用のない馬鹿か、自殺願望があるキチガイくらいだなんて言われていたり。
 ドエス帝の冷酷さを知ってるヤツは、命知らずなガキに関わってとばっちり喰うのが恐ろしいらしく、大抵は向こうから距離を置いてくれるわけですがね。

「すごい……黒曜くろあきさんにそんな態度とれるなんて……やっぱり緋色は凄いよ」

 今回ばかりは逆効果。
 どこでどう道を誤っちゃったのかは知らないが、命知らずで守銭奴なガキに注がれるのは、理想と妄想と偶像を塗り固めたようなイかれた眼差し。

 昔の俺なら、気に入らなければ誰だろうが蹴り飛ばしてとんずらしただろうけど、生活かかってる今は違う。

 バイト先で、明らかに関係者っぽいヤツが相手だとつい利害の事を考えちゃうんだよね。さて、黒曜こくようの言葉に逆らって逃げるべきか、コレを相手に金を稼ぐべきか。

 嫌だなだの、面倒くさいなだの思ったのは、何故でしょうね。

 詳しく話を聞いてみたら、どうやらコイツは黒曜こくようさまの従兄弟で、現若頭の弟という立場&金銭面では十分な相手じゃないですか。


 余談ですが、黒曜こくようさまは所謂、地元一帯でしのぎを削る一家の頭で、いろいろ手広く事業をおこなっていまして(表も裏もだ)俺はその端っこの方でちょろっと稼がせて貰っているわけですよ。
 因みに俺はあくまでもカタギなので門弟だの舎弟だのに名を連ねた記憶はないので悪しからず。


 閑話休題っと。

 
 バイトを謹慎させられてる現在、収入源は押さえとくに限るのに、どうも気乗りしない。
 最近、ぬるま湯のような日常に浸りすぎだった所為だろうか。
 キラキラな光を放っていても、歪みを抱いた眼差しには少しも心引かれなかった。

 寧ろ、どっかのワンコとは全然違うななんて考えて、自分の腑抜け加減に吐き気がした。
 おかしいな、歪んでいるくらいが俺にはちょうど良いはずなのに。

「ちゃんと家帰って寝ろよ」とついさっき別れたわんこの言葉が蘇って、その通りにしときゃぁ良かったと思わないでもなかったが……。
 そもそもいま職を失いかけてるのはお前の所為だぞワンコ、と理不尽に八つ当たりをしてみたり。

 結局、脳内でキラキラの笑顔を放つバカ犬の記憶は、無理矢理頭の隅に追いやって、歪んだキラキラを相手にすることにした。

「えーと、安田くん、だっけ?取りあえず緋色って呼ぶのは止めてね」

 にっこり営業スマイルと、精一杯の色気を含んだ声音でお客様のお相手をする。
 一円でも多く稼ぐためならば、コネだろうが色だろうが利用しつくしてあげましょう。

 愛はいりません。
 優しさも不必要です。
 カラダと偽物の愛情ならいくらでも差し上げますから、ねぇお客様。
 俺にお金を下さいな。

 さぁ、紛い物の天国へイってみようか。



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