うそつきな友情(改訂版)

あきる

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side久賀2-4

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 ミシミシと骨が軋む音が聞こえる。

 喘ぎは白い壁に跳ね返って、開けっ放しの窓から外に漏れては居るけれど、そんな事を気にする余裕は与えなかった。
 もっとも高級ホテルの上階に位置する部屋だから、よっぽどの叫び声でもない限り階下や階上の人間に声をきかれる事はないだろう。

 万一、テラスでワインでも傾けながら、風景を堪能していたらゴメンナサイ。
 まぁ、若い子の喘ぎをおかずに励めばいいよ。
 もっとも濡れた男の悲鳴で、興奮するかどーかは知りませんけどね。

 ただでさえ明るい部屋の中。
 せめて光を遮ろうと海とビーチはカーテンの向こうに隠し、部屋の電気はすべて消してはみたが、あまり意味はない。
 明るすぎて目眩がする。
 それは寝不足と、激しい肉体労働の所為でもある。
 だが、さっさと相手を満足させて眠らせてしまえば後の時間は俺の自由だ。
 
 濡れすぼった穴に自らを穿つ感覚は、やはり男より女が良い。そもそも肉体的構造が、セックスに適しているのは異性同士だ。
 男を柔らかく包み込む肉を持つのはやはり女で、ヤローの骨っぽい体を抱いた所で心地よさはあまり感じない。
 ま、俺の心が冷めてるからだろうなんて言われたら、ソレまでなんですがね。
 愛が無くてもナニはつし、心は死んでてもセックスはできるから、金を稼ぐには問題ねぇ。

 ずんっと肉を突き上げれば「あぁん!」と快楽に酔った悲鳴があがる。
 掠れる喘ぎの合間に、歪みに色めいた相手が切なげにないた。

「ひ、いろ。すき」

 まるで、呪いみたいだな。
 君はどんだけ緋色に傾倒している訳ですか。

 あんなモン、どっかのヤのヒトが気まぐれに生み出した空想上のイキモノみたいなモノだ。
 絶対無敵な孤高のノラネコだっけ?
 意味が分からない、正直、頭を疑うレベルだ。
 まぁ、そのお陰で大金を稼げるならば、コイツが望む緋色を演じてあげましょう。

 にっと、不敵な笑みを貼りつけて、事務的に行為をこなす。

 風でカーテンが揺れて、青色が視界の端っこに映った。

 子どもの頃の大事な記憶が再びちょろっとだけ顔を覗かせたけど、汚さないように大切に胸の奧の箱に仕舞い込んだ。
 ゴメンナサイは飽きるほど繰り返した。
 愛しているは目眩がするほど心で唱えた。
 涙はとっくに涸れてしまって、あのひとを越える大好きは一つもなくて、俺の心は死んだままだ。

 愛が無くても繋がれるし、心が凍ったままでも笑えるんですよ。

 いっそあのひとを道連れに、死んでしまおうかと思ったりもする。間違いだと解っていても、そんなことを思ってしまうことがある。

 世界は、二人で居たときより鮮やかではないし、日常は後悔と苦しみに塗りつぶされて、身体を酷使しても、しなくても悪夢は襲ってくる。


 ドエスな雇い主にはイジメられるし、ちょっと頭がイかれた緋色信仰者にはつかまるし、うるさぃ犬につきまとわれて……。
 兎に角、息をし続けるのは、相変わらず苦痛ですよ。あなたがいない現実は、こんなにも息苦しい。
 でもさ、それでも、まだしぶとく、生きていやがるんですよ。
 笑えるだろう。

 事務的な行為の合間に、明日までの辛抱だと自分に言い聞かせた。

 明日になれば日本に帰れる。
 そうしたらもう、一週間くらいは学校をサボってしまおう。
 その間は、臨時のバイトも一切お休みして、ひたすら眠りたい。
 この間のこくよー様の報酬と、今回の臨時出張の報酬で、いつもよりは多く稼ぐことが出来た。
 目標額には届いたし、バイト自体は一週間といわずに今月末まで休業にしよう。

 ぼんやりと、息だけを繰り返して、思い出なんかに浸って、何となく一日を過ごしてみようか。





「なにを、見てるの?」

 窓際でぼんやりしていたら、目が覚めたらしい相手にぴっとりとくっつかれた。

 世界は夜の色に染まって、やっと居心地の悪い明るさから抜け出せた。
 陰湿な執着からは、夜が終わるまで逃げられないみたいだけど。

「なにを考えてるの?」

 たくさんのお客さんに、似たような質問をされた気がする。
 前回、俺はなんと答えただろう。

「誰を、想ってるの?」

 誰を。さぁ誰だろう。
 曖昧に笑ってごまかした。
 結局、本当に帰りたい場所は、何処だったろう。

 幸せな過去はどこにも残っていないし、あの人の側にも帰れない。

 史ちゃんの事もそろそろ解放してやらなきゃ。
 何時までも手の掛かる弟の世話をさせているわけにはいかないし……ヒロさん(トモの兄さんね)とは最近どーなんでしょー。
 相変わらずケンカばっかりみたいだけどさ。
 ま、卒業まで後二年もあるし、ソレまでに嫁にいくなり、婿になるなりしてくれたらさ、俺的にはこの世の未練が一個消化されるんですけどね。

「…………うまくいかないのが恋だよねぇ」

 あれ、俺ってばなんか達観しちゃってない?
 16年で悟っちゃうとか無理でしょう。イロイロ経験が少なすぎる。
 喜怒哀楽でいうと特にハジメとオワリが足りません。

「好きな人……いるの?」

 肩にしがみつく腕がカタカタと小さく震えていた。

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