うそつきな友情(改訂版)

あきる

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side久賀2-6

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 よく見慣れた顔の同級生は、物凄く慌てて、わたわたと騒いだ。
 地に膝をついて、視線の高さを合わせる。

「お前っ、大丈夫か?立てないのか……ってバカっ!なんでまた死にそうな顔をしてるわけだよ!どんだけ無茶してんだよバカっ!!ええっと、警察じゃなくて救急車だっ。強制連行だ覚悟しろ。番号何番だっけ117じゃなくてっ」

 ヒトを散々バカ呼ばわりして、本気で心配して、本気で怒って、ちょっとだけ泣きそうになっている相手をじっと見つめる。

 キラキラの光は、少しも揺るがない。
 人をバカ呼ばわりするときも、本気で怒っていても、ちっとも歪まない。
 コイツは一度も、その光を失ったことはないのだろうか?

 何故だろう。

 お前の前にいるのは、誰かに助けを請えるような資格なんてなくて、最低で最悪で……ウソいつわりで作り上げた人格は、まるで薄汚れたヒトの社会そのモノだろう。

 綺麗な魂を陰らせるコトなく生きていけるほど、他人ひとも世界も美しくはない。

 それなのに、どうしてそんなに真っ直ぐで、歪まずにいられるのだろう。

 一度も淀んだことがないのだろうか。
 誰かを殺したいほど、憎んだことがないのだろうか。
 命の鼓動を止めたいくらい、打ちのめされたことがないのだろうか。
 努力しても手には入らない幸福を、羨んだことがないのだろうか。
 隣で笑う、うそつきな友人を、疑ったことがないのだろうか。
 明日の訪れを恐れて、立ち尽くしたことがないのだろうか。

 不公平なくらい光り輝く清潔な魂に、憤りやねたみといった感情は浮かばなかった。
 呆然と見上げる先で、ポケットから苦労して引っ張り出したスマホが、ガシャッと音をたてて地面に落ちた。
 それを拾うために伸ばした指が小さく震えていて、どうにかしてやらなきゃとバグった頭で思った気がする。

 おかしなハナシだ。

 気づいたらぎゅっと相手の手を握り締めていた。
 俺の脳は、マジで限界値を突破しました。
 ある意味、マジで狂ったといえる。

「え、ええええっとぉぉぉ、く久賀さんっ?」

 一体、何の真似でしょう?と耳まで赤くなった相手を見て、唇の端が持ち上がるのを止めることが出来なかった。

 息は、もう苦しくない。
 どうしてだろう。
 何一つ、俺の世界の事情は変わってはいないのに。
 ああ、マイナスイオン発生置とか、そんなイキモノなのかもしれねぇなんて、バカなコトを結構まじめに思ってみたりする。

 ガチで癒やしのエネルギーとかたれ流してんの?不思議だ。

 息苦しさはすっかりどこかにいってしまった。
 カラダの不調が消えたわけではないのに、息をすることが少しも苦痛ではなかった。

 なぜだろう。
 こいつの存在も俺には不必要で、煩わしいモノであるはずなのに、なぜだろう。

「……病院、キライ」

 繋いだ手があたたかくて、安心してしまった理由は何故だろうか。

「子どもか!!!」

 容赦ない突っ込みにクツクツと笑った。
 頭は割れそうなほど痛むし、胃の中は混ぜっ返されたみたいに気持ち悪くて、たぶん死んでもいいお許しがでたら喜んで終わりを選択するくらい、心も身体もズタボロだったけれど、おかしいな……偽物じゃなくて、ホントのキモチで笑ってしまいましたよ。

 ああ、いつか、カミサマに裁かれる。

 ゴメンナサイ、もうしませんと、心の中で懺悔しても、目の前のキラキラは眩しすぎた。
 弱っているからとくに、だ。

「あーヤダヤダ……マジで死ねよ俺」

「ちょっ!!冗談でも死ねとか言うなシバくぞ」

 ドスっとヒトの頭に手刀を落としながら言われてもね……もうシバいてるじゃんなんて突っ込んだら、きっとこれは手刀による突っ込みでしばいたわけじゃないと返されるだろう。
 行動が読めちゃう単純なわんこに、いっそ軽快な気分になって開き直った。

 どうせ俺の頭はイかれているんだからさ。
 通常運転にもどるまで、イレギュラーな事態を楽しんでみよう。
 寝て起きたら、また悪夢のような現実が待っている。

 心の一番と、償いの方法と、犯した罪の重ささえ忘れなければ、今日を生きるための小さな息継ぎくらい。

(許されるか……)

 いや、ダメだろう。
 だけど、今日の俺はカンペキ狂っている。
 狂人に理屈を説いても無駄でしょう。

「大丈夫。人間そう簡単に死ねたら苦労しないんだって、いててっ……ギブギブ!あー暴力的だなぁ。で、お前こそ何やってるのさ、デートの帰りですか?」

 気まぐれに繋いだ手は、ほんの数分後か、下手したら数秒後には離れてしまう運命だけど、頭がイかれている今晩くらい、過去の思い出に照らし合わせて、ぬくもりを堪能してみようか。


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