うそつきな友情(改訂版)

あきる

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第61話

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 人生。なにがどーなるかわかんねぇーです。


 俺だってね、まさか自分が男を好きになるなんて思わなかった。

 同性を好きになったとしても、まず思い返される可能性が低い。
 仮に両思いになったとしても、家族にカミングアウトする勇気が必要。
 そして家族に受け入れてもらったとしても、世間の偏見や差別や好奇の視線に堪え続けなければならない。などなど、この恋は叶うまでも、叶ってからも、障害ありまくりなわけだ。

 それがですね。どーゆーわけですかね。カミングアウト前に家族その1に受け入れられちゃってるコノ状況。

「それから、こっちが七五三の時の輝ちゃん。こっちは初めての海水浴」

「へぇ、カワイイお子さまだったんだね、尾上は」

「そうなの!ちっちゃい頃はカワイーカワイーだったの」

「あはは。小さい頃はお姉さんに似てたんだな。勿論、お姉さんは今でも可愛いですよ」

 すみませんね、今は可愛くなくて!
 何がどうしてそうなったのか、ヒトサマのベッドに腰掛けて大量に積み上げられたアルバムを片っ端から開いて和気あいあい。

 片方は実の姉で、もう片方は片思い中の同級生。
 二人は初対面だ。
 知り合って20分もたっていない。
 それがどーしてどーやれば、昔話に花を咲かせてきゃっきゃ、きゃっきゃ出来るわけだ。

「あら、輝ちゃんたら。いまでもお姉ちゃんにとったら可愛い弟よー。拗ねないのー」

「ん。ネェちゃんとられて拗ねてんの、尾上?」

 心を読むな姉!!モノローグにツッコミ入れるギャグ漫画とかじゃないってのー!

 そして、何をへらへら笑っていやがる久賀龍二!睡眠がたったら(いや二時間ちょいじゃ足りないだろーけど)イジワルうそつき久賀さん復活とか、マジ空気読めし。コレがガチガチ恋愛小説のワンシーンだったら、シリアスモード返せーって空き缶投げるレベルだかんな!
 俺が投げます。

 そして胡散臭い営業スマイルでヒトの姉を誘惑するんじゃねぇ。
 ついでに、ピカピカとオトモダチな話しはドコいった。結論だーせーよーなー!

 地団駄を踏んでみても、ちょっと天然はいってる姉と、外面ひょうひょう男には全く通用しない。
 無駄な運動で、腹の虫が鳴って、恥ずかしい思いをしただけだ。

「あらあら大変。輝ちゃんが飢え死にしちゃう前に晩ご飯にしなきゃ。今日はママがいないから、お姉ちゃんの手料理よー」

 久賀君も食べていってね。と、上機嫌で部屋を出ていく姉。
 まったくいい歳した大人のくせに、全然落ち着きがない。
 呆れて姉が出て行ったドアを数秒見つめ、はぁと深いため息を吐き出し。
 疲れた、この数秒で俺のライフはゼロです。
 肩を落としながら久賀へと視線を向けると、パラリとアルバムのページをめくる音がした。

 騒がしい姉に、お得意のうそつき外面で対応してるだけかと思いきや、写真に向けられた久賀の眼差しは、何故だか優しいままだった。

 なんだか調子が狂うっていうか……恥ずかしい。

「別に無理して姉ちゃんに付き合わなくて良いからさ!ひとんちのアルバムなんて、見てもつまんねぇーだろ」

 ベッドに近寄り久賀の隣に腰を下ろした。
 わざとスプリングが跳ねるように、雑な座り方をしてみたり。
 久賀は気にした様子でもなく、アルバムに視線を落としたままだ。

「いや……楽しいよ。お前、妹もいるの?」

 写真を指さし久賀が笑う。

(機嫌いいな……)

 ちなみに弟はいるけど妹はいない俺は、うん?どの写真?と横からアルバムを覗き込み、黒歴史に言葉を失った。
 フリフリレースのワンピースを着せられて、精一杯可愛らしく笑っている幼女……に見えなくもない男の子は、妹が欲しかったらしい姉の着せかえ人形にされていた頃の、純真無垢な俺でした。

 素直にそのフリフリ少女もどきは俺ですとは言えず「はははっ。そーかもですねー」と乾いた笑いを浮かべた。

「ふぅん。名前は輝子ちゃんかな。あ、輝美ちゃんかも」

「てめー、分かってて訊きやがったな」

 ケラケラと笑われてプイっと視線を逸らした。
 誰しも長い人生で一回くらいならば女装することもあるだろう。
 文化祭とかで。
 思春期に無理矢理女装させられるより、性別なんてあってないようなガキの頃にさせられる方がマシだろう。

「ちぇっ、笑ってろ。お前は兄姉きょうだいにおもちゃにされたことねぇのかよ。あ、ひとりっこだっけ?」


 別に探りを入れようとしたわけじゃないけど、そう訊いてしまった後『家族の事を話すつもりはないよ』と以前に言われたことを思い出した。
 あー……家族の話はタブーでしたね。せっかく機嫌良かったのに失敗したな。なんて思いながら横を見ると、アルバムに向けられた目は綺麗なままで、ちょっとだけ遠い色をしている気がした。

「いや。兄が二人いるよ」

 返された言葉にちょっと目を見開いてしまった。
 答えが返ってくるなんて思ってもいなかった。

「へぇ……意外かも」

「なにが?」

「えっと、お前って末っ子って感じしないからさ」

「そうか?兄二人には結構甘やかされて……あー、でも、そうだな。上の兄さんには昔、恐怖を植え付けられたな。『夜にちゃんと寝ない子どもはオバケに連れていかれてバリバリ食われるぞ、生きたままで踊り食いだ』ってさ。年端もいかねぇガキをマジで脅すようなヒトだったからな」

 穏やかとも言える声音で、久賀はそう言った。
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