うそつきな友情(改訂版)

あきる

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第68話

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 久賀が今までにどんな辛い目にあってきたかなんて、俺には想像すら出来ない。
 斜めにスレまくってる性格から察するに、訪れる日々が幸せな日常ばかりでは無かったのだろう。

 ウリをやってるくらいだし、それだけでも俺だったら堪えきれないくらい辛くて苦しい。

 苦しみの中を歩くコイツに、俺はお粥ひとつ、満足に与えてやることが出来ないけれど、ならばせめて、お前の代わりに怒鳴ってやろう。
 理不尽に、怒ってみよう。
 身勝手に、泣いてみよう。
 しつこく側に歩み寄ろう。

 俺が出来る精一杯で、コイツに関わっていこう。


「お前って……ホント意味不明ってゆーか、お人好し」

「別にお人好しとかじゃねぇし」

「無自覚天然はタチ悪ぃよ」

「天然ちげぇし」

「ぢゃあ無自覚ピカピカ」

「なんだそれ。ってゆーか!」

 ガバッと起き上がって、久賀に詰め寄る。「いやん」としなをつくるバカの肩を「ふざけんなし」と、ツッコミ感覚で軽く叩く。

「ピカピカとオトモダチ計画はどうなったよ!俺はまだ答え聞いてないぞ」

 がしっと肩口に手を置いて、動けないようベッドに押さえつけた。
 端から見たらちょっとアヤシイ体勢だけど、なりふり構っていられるか。
 
 どうなんだよ?と、相手を問いつめる。

「んー……断ったらお前泣いちゃいそうだしねぇ」

「泣かないよ!つか、それってイエスってこと?」

「いや、泣くでしょ。ま、友人のノウハウを教えてくれるなら……努力しないでもない」

「教える、教えますっ!!ってゆーか別に決まったルールとか、規則なんてないんだぞ」

「そうなの。あ、そういえば一つ気になってることがあるんだけどね?」

「何だよ?」

 胡散臭い笑顔の久賀が、指先をドアに向けて「誰かさんがちゃんとドアを閉めてないから、ギャラリーに見られちゃってるよ、イロイロ」と晴れやかに言い放った。

 
 久賀の言葉を理解するのかな数秒を要する。脳みそがソレを理解した後、ぎぎぎっと、嫌な効果音がしそうなくらい、カチカチに固まった首を動かしてドアを見た。

 開いたドアの向こうには、頬を両手で包み赤面する姉と、対照的に青くなって口をあんぐり開いている弟の姿があった。で、俺はとゆーと、久賀を組み敷いちゃってる状態で……。


「うわぁぁあん!兄ちゃんのばかぁぁドスケベー!!!」

 バタバタと足音を立てながら、弟逃亡。

「ああああきらぁぁ!違う誤解だ!兄ちゃんは無実ですぅぅぅ!」

 腕を伸ばすも届くはずがない。
 愛する弟にドが付く助平呼ばわりされて悲しくない兄がいるだろうか。いや、いない。

 捨て台詞と共に、力任せに閉められたらドアが、まるで弟の拒絶を心を形に表したみたいで、かなり凹む。

 ぷるぷる震える久賀さんは掌で口を押さえて、吹き出すのを堪えていた。

「てめぇ!気づいてて言わなかったな」

 ぶはっと吹き出して、久賀がケタケタ笑う。なんて性格の悪いヤツでしょうか!

「あははは、オガミンなきそー?」

「泣くか!」

「……っはははは!」

 ほらほら、早く追いかけろ。ついでに土鍋も忘れずに、とベッドから放り出された。

 ぷんぷん怒りながら、弟をどうやって納得させようかと悩み、ドアへ向かう。

「尾上」

 背に声をかけられて、振り返った。
 なんとなく、遠い目をした久賀がこっちを見ている。

「お前は、こっち側じゃないから心配するな」

 微笑む。
 マリアではないけれど、すべてを許すと言ってるような、何故だかそんな風に感じる微笑。

「そっち……?」

「ヘテロだって言ってんだよ。あ、分かんないか……ノーマルって言えばわかる?まぁ、親兄弟に恋愛趣向が同性に向いてる所為で責められる心配はねぇよってこと」

 こっち側じゃないから心配するな、って事は久賀はそっち側で……えーと。そういえば、ちゃんと考えたこと無かった。

「お前は、そっち側、なの?」

 金のために割り切ってるとかじゃなくて?
 最初から男を好きになるヒト?あ、でも女の子とも付き合ってるよな。
 つか、彼女とは別れたんだっけ。いや、新しく付き合いはじめたんだっけ?

「俺は真ん中なの。バイセクシャルってヤツなんだけど、まぁ細かいところはいいや。お前が、同性を好きになるような人種とはオトモダチになれないってゆーなら、さっきのトモダチ宣言的なモノは撤回し」

「ません。受理されました。手遅れです」

 考えるより先に、キッパリ言い切った。
 些細なことだ。いや、ホントは些細なことじゃないかもしれないけど、久賀がホモだろうが、そうじゃ無かろうが、俺が久賀を好きだって気持ちにはちっとも関係ない。

 好きだというキモチが、胸の真ん中に確かに存在している。
 仕草ひとつで心が浮かれて、言葉ひとつで世界が地獄に変わるような、どうしようも出来ない想いが、胸の真ん中を占領している。

「はは。じゃあ、あっつい友情でも育んでみようか」

「ちゃんと、ノウハウを叩き込んでやるよ」

Oui monsieurウィ ムッシュ。あ、飯ありがとな」

 ひらひらと手を振る相手に目だけで返事をすると、トレーを持って部屋を出た。
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