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「松本君だ」
「久しぶりに見れた」
「やっぱりかっこいい」
見目麗しい王子様の登場に、クラスメイト達は色めき立つ。山田だけが目をそらしていた。勇斗もざわめきに釣られたのか2人に視線を向けた。勇斗は2人、というよりも藤野佳奈多を見ているようだ。
勇斗はいつも、松本大翔にあまり興味を示さない。そんな勇斗が少し驚いた顔をしてた。
ジュンは勇斗の視線の先、藤野佳奈多に目をやる。藤野佳奈多は席に座り、後ろの席の松本大翔を振り返って話しかけている。藤野佳奈多は松本大翔の手を両手で握っていた。
「か、鞄、ごめんね。重かった、でしょ?赤く、なってる」
「大丈夫だよ。かなちゃんが労ってくれるから、平気。痛くないよ」
「う…あ、ありがとう。ひろくん」
どうやら登校中、藤野佳奈多の荷物を松本大翔が持っていたようだ。藤野佳奈多は確か電車通学で、松本大翔も同じだ。
あの松本家の人間がなぜ電車で通学しているのだろうか。
二人が手を繋いでいる姿は珍しくない。ただ、藤野佳奈多はいつも松本大翔に手を引かれていた。藤野佳奈多から松本大翔に触れている姿は珍しい気がする。
「いいなぁ」
勇斗がぽつりと呟いた。
その日から松本大翔と藤野佳奈多は注目の的となった。今までとは二人の空気が変わったと、ジュンも気づいた。寄り添い合う二人に羨望の眼差しを向ける者と憶測で僻む者と。しばらく教室中が浮足立っていた。
当の二人は素知らぬ顔で過ごしている。
「な、勇斗。今日、どこでする?」
「え?あ、あの…えっと…」
放課後、ジュンは勇斗に声をかけた。ジュンの家か、ホテルに行くか。
勇斗との蜜月はまだ続いている。松本大翔と藤野佳奈多と同じように、ジュンと勇斗が恋人同士であると、少しずつ教室内に浸透していると思う。勇斗もジュンの誘いを断らなくなった。
どちらがいいか迷っている勇斗の答えをジュンは待つ。最近は叱りつけることもせず、ジュンは勇斗を待てるようになってきた。これも愛のなせる技だと思う。
「二人でどこかに行くの?」
声の主は昴だった。昴は制服をきちんと着用している。上着は新しく買ったようだ。
ジュンは鼻の頭に皺を寄せた。
「あ?関係ねぇだろ」
「最近二人共仲がいいね。何かあった?」
昴はジュンの威嚇を気にせず話し続ける。嫌な予感がして勇斗を見ると、勇斗は真っ赤になって口をパクパクと開閉させていた。
こんな顔、ジュンに対して向けたことがない。目を輝かせて昴を見つめている。ベッドの中ではジュンだけを見てくれるのに。
ジュンは舌打ちをしてから昴に向き直った。
「仲がいいのは、勇斗が俺の姫だからだって言ってんだろ。ボケたんか?」
「でも、勇斗は違うって言ってたよね?」
昴が勇斗に問う。勇斗は何度も首を縦に振っていた。
「おいっ!」
ジュンは思わず勇斗の制服の首元を掴んで止めた。あれだけしておいてなぜジュンの姫であることを否定するのか。
夏休み中、勇斗はジュンだけのものだった。学校が始まって昴の姿が視界に入った途端にこれだ。勇斗が昴に引き寄せられていく。
昴の存在は邪魔でしかない。
「ジュン、離してあげて。勇斗が苦しいでしょ」
ジュンは昴に腕を掴まれた。掴まれたジュンの腕がギリギリと音を立てる。普段と変わらない顔をして、昴の握力はまるでゴリラのようだ。
ジュンは痛みを顔に出さないように注意しながら、勇斗を手放す。勇斗はへらっと笑った。
「っ、あ、へ、へぇ、平気っ、れす、だ、だいじょ、ぶ、で」
「そうなの?庇わなくていいのに。本当に仲がいいんだね。羨ましいなぁ…」
昴は勇斗とジュンから顔を背けた。視線の先にいたのは松本大翔と藤野佳奈多だ。二人は手をつないで教室を出ていく。
どうしてあの二人を見たのだろうか。表情を変えない昴の意図はわからない。
「す、すばっ、い、五十嵐、君っ!」
「ん?」
突然勇斗が大声を出した。勇斗はまっすぐ昴を見つめている。
「いっ、五十嵐、君、は、姫を、つっ、作ら、ないの?」
あれだけの大声を出しておいて、最後は小さな声で勇斗は昴に尋ねた。
昴は少し驚いてから笑う。勇斗は至って真剣だ。どうしていつも、ジュンに見せたことのない顔を昴には見せるのだろう。
「久しぶりに見れた」
「やっぱりかっこいい」
見目麗しい王子様の登場に、クラスメイト達は色めき立つ。山田だけが目をそらしていた。勇斗もざわめきに釣られたのか2人に視線を向けた。勇斗は2人、というよりも藤野佳奈多を見ているようだ。
勇斗はいつも、松本大翔にあまり興味を示さない。そんな勇斗が少し驚いた顔をしてた。
ジュンは勇斗の視線の先、藤野佳奈多に目をやる。藤野佳奈多は席に座り、後ろの席の松本大翔を振り返って話しかけている。藤野佳奈多は松本大翔の手を両手で握っていた。
「か、鞄、ごめんね。重かった、でしょ?赤く、なってる」
「大丈夫だよ。かなちゃんが労ってくれるから、平気。痛くないよ」
「う…あ、ありがとう。ひろくん」
どうやら登校中、藤野佳奈多の荷物を松本大翔が持っていたようだ。藤野佳奈多は確か電車通学で、松本大翔も同じだ。
あの松本家の人間がなぜ電車で通学しているのだろうか。
二人が手を繋いでいる姿は珍しくない。ただ、藤野佳奈多はいつも松本大翔に手を引かれていた。藤野佳奈多から松本大翔に触れている姿は珍しい気がする。
「いいなぁ」
勇斗がぽつりと呟いた。
その日から松本大翔と藤野佳奈多は注目の的となった。今までとは二人の空気が変わったと、ジュンも気づいた。寄り添い合う二人に羨望の眼差しを向ける者と憶測で僻む者と。しばらく教室中が浮足立っていた。
当の二人は素知らぬ顔で過ごしている。
「な、勇斗。今日、どこでする?」
「え?あ、あの…えっと…」
放課後、ジュンは勇斗に声をかけた。ジュンの家か、ホテルに行くか。
勇斗との蜜月はまだ続いている。松本大翔と藤野佳奈多と同じように、ジュンと勇斗が恋人同士であると、少しずつ教室内に浸透していると思う。勇斗もジュンの誘いを断らなくなった。
どちらがいいか迷っている勇斗の答えをジュンは待つ。最近は叱りつけることもせず、ジュンは勇斗を待てるようになってきた。これも愛のなせる技だと思う。
「二人でどこかに行くの?」
声の主は昴だった。昴は制服をきちんと着用している。上着は新しく買ったようだ。
ジュンは鼻の頭に皺を寄せた。
「あ?関係ねぇだろ」
「最近二人共仲がいいね。何かあった?」
昴はジュンの威嚇を気にせず話し続ける。嫌な予感がして勇斗を見ると、勇斗は真っ赤になって口をパクパクと開閉させていた。
こんな顔、ジュンに対して向けたことがない。目を輝かせて昴を見つめている。ベッドの中ではジュンだけを見てくれるのに。
ジュンは舌打ちをしてから昴に向き直った。
「仲がいいのは、勇斗が俺の姫だからだって言ってんだろ。ボケたんか?」
「でも、勇斗は違うって言ってたよね?」
昴が勇斗に問う。勇斗は何度も首を縦に振っていた。
「おいっ!」
ジュンは思わず勇斗の制服の首元を掴んで止めた。あれだけしておいてなぜジュンの姫であることを否定するのか。
夏休み中、勇斗はジュンだけのものだった。学校が始まって昴の姿が視界に入った途端にこれだ。勇斗が昴に引き寄せられていく。
昴の存在は邪魔でしかない。
「ジュン、離してあげて。勇斗が苦しいでしょ」
ジュンは昴に腕を掴まれた。掴まれたジュンの腕がギリギリと音を立てる。普段と変わらない顔をして、昴の握力はまるでゴリラのようだ。
ジュンは痛みを顔に出さないように注意しながら、勇斗を手放す。勇斗はへらっと笑った。
「っ、あ、へ、へぇ、平気っ、れす、だ、だいじょ、ぶ、で」
「そうなの?庇わなくていいのに。本当に仲がいいんだね。羨ましいなぁ…」
昴は勇斗とジュンから顔を背けた。視線の先にいたのは松本大翔と藤野佳奈多だ。二人は手をつないで教室を出ていく。
どうしてあの二人を見たのだろうか。表情を変えない昴の意図はわからない。
「す、すばっ、い、五十嵐、君っ!」
「ん?」
突然勇斗が大声を出した。勇斗はまっすぐ昴を見つめている。
「いっ、五十嵐、君、は、姫を、つっ、作ら、ないの?」
あれだけの大声を出しておいて、最後は小さな声で勇斗は昴に尋ねた。
昴は少し驚いてから笑う。勇斗は至って真剣だ。どうしていつも、ジュンに見せたことのない顔を昴には見せるのだろう。
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