アルザカリア

pizzeman

文字の大きさ
22 / 24

22.無情

しおりを挟む
 ……ちょっと怒りすぎたかな。
 足を止め自らの愚かな行いを後悔する。人の前では怒ってしまうがふと一人になって何かをしていると冷静になっていく。そうして心は行動に対して思い始める。それにとても残酷なことをしてしまったと思う。いくらあの人が本当の人間ではないとはいえ、その人自身がどうしても変えることをできない生まれついてのものを責めるのは理不尽だ。

 貴方が私に理不尽に怒っていい理由にはならないわ。
 そう言われてから少しの時間が経ち、ようやく心に響いてくる。自分とは異なる知らない他人、その存在はこれまでかかわりがなかった。つまり知らなかったからこうなってしまった。幼い心ながらに思わずにはいられない。

「あの母はまだあそこにいるのかしら」

 振り返ると壁だった。

「……あれ? 私確か真っすぐに歩いてきたはずだよね」

 そうだ、どこにも曲がり角なんてなかった。なのにいつの間にか部屋にきている。部屋、ここは見覚えがあった。かなり重大な部屋だったはず。それが何か思い出せない。大きな机と椅子。何かで使うであろう器具。それと本棚には分厚い医療関係の本。火がともっていると思われるロウソク。

「誰か、いませんか?」

 いつかのように誰かが扉を開けてやってくるかもしれない。けどそんなことは何度も起こるはずがなく、火が揺れただけだった。
 どうして火が付いたままなんだろう。ここは地下だ。不可思議なことが何度もあったがどこにも火なんてなかった。というよりも火が必要ないくらい明るいことを今でも覚えている。そういえばここは思ったよりも暗くなっていることに気づく。本当に地下にいるような感覚になる。だとしたらなんでだろう。情報が手に入ればより深く謎が深まる。

「お母さん、いるの?」

 こうしてまた声をかけてやれば何か変化が起きるかもしれない。そんなことはなかったが。
 本棚を確認し、何か呼び寄せの本のようなまた、不思議な本があるかもしれないと浅はかな考えを持ち、探し始める。ふと上を見上げ一冊だけ無いことに気づく。そこだけほこりだらけだ、なのに一冊だけ……。ずっと一冊だけ無いのではと思ったが空いた場所にだけほこりが存在しない。誰かが本を持って行ったのかもしれない。こんなところに本物の人間がいるとは考えにくいがとにかくいるのだ。

 本棚に注意を向けすぎて扉が開ききるまで気が付かなかった。そこにいるものと目が合ってしまった。今、私の姿は完全に見られてしまった。
 そこには青年がいる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

処理中です...