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第一章
商業都市オーシャン
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カリヨン村で皆に別れを告げ馬車での道中
荷台にトーマとエリィは乗り、次の目的地まで怒涛の日々を振り返る
トーマにとっては特に非日常的な経験の連続で、隣に座る美少女の事は愛しくてたまらない、がそんな事は口が裂けても言えない
なぜなら振られる事が確定しているからだ、エリィには想い人がいる
それは出会ったその日に言われたからだ
しかし今、その愛しい彼女の顔がトーマの肩に触れているのだ
――あぁ……エリィ・マイ・ラブ・ソウ・スウィート……――
トーマの心にいとしのエリーが流れる
すっかり気が抜けてしまったのだろう、カリヨン村でのお別れは涙々 で疲れて、トーマの肩を借りるほどの無防備さだ
「大丈夫です……トーマく……ん」
エリィがとんでもない寝言を言った
――ああ……エリィ君はなんて罪深いんだ――
大きな街が見えて来る城塞都市のように壁に覆われて、その壁には所々灯台のような物も建っている
「もうすぐですね、次は「商業都市オーシャン」です」
エリィが仮眠から目覚め残念そうにするトーマを気にする事もなく、眩しい笑顔で言う
「オーシャン……オーシャン……あれっ?」
トーマはどこかで聞いたなと思っていると
「気付きましたか?ガランドさんが仰ってた「シュンカ・オーシャン」さんが生まれ育った街です」
エリィの言葉にトーマは納得し、ここがまだ最終目的地でない事を知る
「凄い大きな街だけど王都ってもっと凄いの?」
「ここはグリディアでもっともお金が動く場所と言われています、酒場はもちろん武器防具、ギャンブルに花街、なんと言っても冒険者ギルドです」
――花街!……いっいや――
「冒険者ギルド?じゃあオレみたいな無職でも仕事をする事が出来るってこと?騎士を目標にしてたけど先立つものをどうしようか考えてたんだ、いちおう師匠にお金貰ったけど、これからの事考えたらね~」
トーマは「これからの事」の部分でちらっとエリィにアピールしてみた
「それならギルド登録が一番近道ですね、冒険者として名を挙げると騎士団から声が掛かります、トーマくんならそうするのが一番早いと思います」
エリィにアピールはスルーされたが期待はされてるようだ
「この街にはどれくらい滞在するの?」
「ニ、三日ですかね……準備?とかお買い物?……あっそうですトーマくんお洋服を買われたほうが、目立ちますし……」
――んっ?なんかエリィがしどろもどろに……なんかあるな……オレはエリィの挙動に敏感なのだ――
街に到着しここまで送ってくれたルーさんにお礼を言った
ルーさんはジェラさんの旦那さんでわざわざ馬車を出してくれたのだ
街の入り口では何やら行列が出来ている
「街に入るのもけっこう大変なんだね、セキュリティーとか厳しいのかな?」
トーマには身分証のような物は無い、髪は長いしラビスでは珍しい服を着ているのでちょっと怪しい、そう不安に思っているとエリィがその不安を取り除く
「わたしがコレを持っているので、心配しなくて大丈夫ですよ」
エリィはバッグから銀製のブローチを出した
そのブローチで同行すれば問題なく通過出来るそうだ
「そっか……ありがとう」
――エリィにいつもおんぶに抱っこで悪いなぁ……おんぶや抱っこはしたいけど――
順番待ちをしていると何やら前のほうで揉めているようだ
「なんでまた後ろに並び直さんといけんソ、ウチの順番っちゃ!」
揉めているのは薄いオレンジ色のクセ毛で獣耳のある獣人の女の子だ
肩が露出し胸が強調されるように服の上から防具のようなコルセットを着けて、ショートパンツを履いた活発な服装だ
「うるさい!獣人は最後だ!後ろに並べ!」
門兵が厳しい声で怒鳴る
「さっきもそう言ったソ!いつになったら入れてくれるんっちゃ!」
――凄い訛りだな……獣人初めて見た、けっこう可愛い……いやかなり可愛いぞ………いやいやオレにはエリィというものが――
「獣人ってもしかして差別されてるの?」
「残念ながら……グリディアでは十五年前まで奴隷として迫害を受けてました、今はもう奴隷は撤廃されたのですが……名残りはまだあるのです」
トーマの問いにエリィは暗い顔になる
――奴隷か……レイジンが言ってたのはこういう事も含めての事なのかなぁ――
「なんとかしてあげたいね」
トーマは優しくエリィに言うと「そう言うと思ってました」とエリィは微笑み返してくれる
獣人の子が渋々後ろに引き返す所を呼び止める
「良かったら一緒に入りますか?」
トーマが声を掛けると獣人の子はキョロキョロして「ウチ?」と声を掛けられた事に驚いている
「オレ達と一緒なら問題なく入れると思うよ」
獣人の子は「いいソ?」と不思議そうに「なんでっちゃ!」と胸を隠すように疑う
――いやいやいや、そんな目では見てな……い……いやいや見てない事もないけど……期待はしてないよ――
「トーマくんはそんなやましい事を考えたりしません」
エリィが獣人の子に頬を膨らませて可愛いく言う
――……うん――
「ゴメンゴメン冗談なソ!ありがとっちゃ!じゃあ……オネガイ!」
とりあえず先頭まで来た
「おい!お前また……」門兵は言いかけたが
「この方も連れです、一緒にお願いします」
エリィはブローチを門兵に見せる
「いっいやしかし……」
「お願いします!」エリィの口調が少し強い
「失礼しました……どうぞ」
門兵の横を通る時、獣人の子はベロベロバーみたいな感じで通る
それをトーマは「何やってんだ、バカ」と注意する、初対面でかなり絡みやすそうだ
荷台にトーマとエリィは乗り、次の目的地まで怒涛の日々を振り返る
トーマにとっては特に非日常的な経験の連続で、隣に座る美少女の事は愛しくてたまらない、がそんな事は口が裂けても言えない
なぜなら振られる事が確定しているからだ、エリィには想い人がいる
それは出会ったその日に言われたからだ
しかし今、その愛しい彼女の顔がトーマの肩に触れているのだ
――あぁ……エリィ・マイ・ラブ・ソウ・スウィート……――
トーマの心にいとしのエリーが流れる
すっかり気が抜けてしまったのだろう、カリヨン村でのお別れは涙々 で疲れて、トーマの肩を借りるほどの無防備さだ
「大丈夫です……トーマく……ん」
エリィがとんでもない寝言を言った
――ああ……エリィ君はなんて罪深いんだ――
大きな街が見えて来る城塞都市のように壁に覆われて、その壁には所々灯台のような物も建っている
「もうすぐですね、次は「商業都市オーシャン」です」
エリィが仮眠から目覚め残念そうにするトーマを気にする事もなく、眩しい笑顔で言う
「オーシャン……オーシャン……あれっ?」
トーマはどこかで聞いたなと思っていると
「気付きましたか?ガランドさんが仰ってた「シュンカ・オーシャン」さんが生まれ育った街です」
エリィの言葉にトーマは納得し、ここがまだ最終目的地でない事を知る
「凄い大きな街だけど王都ってもっと凄いの?」
「ここはグリディアでもっともお金が動く場所と言われています、酒場はもちろん武器防具、ギャンブルに花街、なんと言っても冒険者ギルドです」
――花街!……いっいや――
「冒険者ギルド?じゃあオレみたいな無職でも仕事をする事が出来るってこと?騎士を目標にしてたけど先立つものをどうしようか考えてたんだ、いちおう師匠にお金貰ったけど、これからの事考えたらね~」
トーマは「これからの事」の部分でちらっとエリィにアピールしてみた
「それならギルド登録が一番近道ですね、冒険者として名を挙げると騎士団から声が掛かります、トーマくんならそうするのが一番早いと思います」
エリィにアピールはスルーされたが期待はされてるようだ
「この街にはどれくらい滞在するの?」
「ニ、三日ですかね……準備?とかお買い物?……あっそうですトーマくんお洋服を買われたほうが、目立ちますし……」
――んっ?なんかエリィがしどろもどろに……なんかあるな……オレはエリィの挙動に敏感なのだ――
街に到着しここまで送ってくれたルーさんにお礼を言った
ルーさんはジェラさんの旦那さんでわざわざ馬車を出してくれたのだ
街の入り口では何やら行列が出来ている
「街に入るのもけっこう大変なんだね、セキュリティーとか厳しいのかな?」
トーマには身分証のような物は無い、髪は長いしラビスでは珍しい服を着ているのでちょっと怪しい、そう不安に思っているとエリィがその不安を取り除く
「わたしがコレを持っているので、心配しなくて大丈夫ですよ」
エリィはバッグから銀製のブローチを出した
そのブローチで同行すれば問題なく通過出来るそうだ
「そっか……ありがとう」
――エリィにいつもおんぶに抱っこで悪いなぁ……おんぶや抱っこはしたいけど――
順番待ちをしていると何やら前のほうで揉めているようだ
「なんでまた後ろに並び直さんといけんソ、ウチの順番っちゃ!」
揉めているのは薄いオレンジ色のクセ毛で獣耳のある獣人の女の子だ
肩が露出し胸が強調されるように服の上から防具のようなコルセットを着けて、ショートパンツを履いた活発な服装だ
「うるさい!獣人は最後だ!後ろに並べ!」
門兵が厳しい声で怒鳴る
「さっきもそう言ったソ!いつになったら入れてくれるんっちゃ!」
――凄い訛りだな……獣人初めて見た、けっこう可愛い……いやかなり可愛いぞ………いやいやオレにはエリィというものが――
「獣人ってもしかして差別されてるの?」
「残念ながら……グリディアでは十五年前まで奴隷として迫害を受けてました、今はもう奴隷は撤廃されたのですが……名残りはまだあるのです」
トーマの問いにエリィは暗い顔になる
――奴隷か……レイジンが言ってたのはこういう事も含めての事なのかなぁ――
「なんとかしてあげたいね」
トーマは優しくエリィに言うと「そう言うと思ってました」とエリィは微笑み返してくれる
獣人の子が渋々後ろに引き返す所を呼び止める
「良かったら一緒に入りますか?」
トーマが声を掛けると獣人の子はキョロキョロして「ウチ?」と声を掛けられた事に驚いている
「オレ達と一緒なら問題なく入れると思うよ」
獣人の子は「いいソ?」と不思議そうに「なんでっちゃ!」と胸を隠すように疑う
――いやいやいや、そんな目では見てな……い……いやいや見てない事もないけど……期待はしてないよ――
「トーマくんはそんなやましい事を考えたりしません」
エリィが獣人の子に頬を膨らませて可愛いく言う
――……うん――
「ゴメンゴメン冗談なソ!ありがとっちゃ!じゃあ……オネガイ!」
とりあえず先頭まで来た
「おい!お前また……」門兵は言いかけたが
「この方も連れです、一緒にお願いします」
エリィはブローチを門兵に見せる
「いっいやしかし……」
「お願いします!」エリィの口調が少し強い
「失礼しました……どうぞ」
門兵の横を通る時、獣人の子はベロベロバーみたいな感じで通る
それをトーマは「何やってんだ、バカ」と注意する、初対面でかなり絡みやすそうだ
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