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第一章

出発

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いよいよ出発の日

「トーマお兄ちゃん!エリィお姉ちゃん……また来てくれるよね……」
 サラは笑いながら泣いている

「サラちゃん……カリヨン村はもうオレの地元だよ!帰って来るよ」
「サラちゃん……絶対また来るから」
「師匠!サラちゃん!みんな行ってきます」
 ガランド達の家の前には村の皆が見送りに集まっている

 一応いちおう馬車で街まで送ってくれるので荷物をせてドイルの大剣もそのまま受け継いでいる
 ドイルの形見でもあるがサラもそのほうがいいと言ってくれたのだ

――この馬車って馬じゃないんだ…怖っ!…足の筋肉すごっ…なんかラクダみたいなコブあるけど顔が怖い――
 ラビスの馬は「ラーダー」と呼ばれている

 馬車に乗り込む時だった
 強烈なプレッシャーが背中を襲う、トーマとガランドは殺気を感じ振り向く

「「――!」」

 その場に急に現れたのは、全身を黒い鎧に身を包んみ黒い兜で顔を覆っている男
 マントも付けており、くらいの高い雰囲気を出している

「一年ぶりかな、戦鬼ガランド」

 村の皆がおび後退あとずさりする
道が開けたところを男は歩いて近付いて来る

「お前は……っ」
 ガランドは怒りには震えて体から闘気がみなぎ

「誰ですか……師匠」
 トーマもガランド同様に臨戦体制を整えながら馬車から素早く大剣を取り出し構える
 エリィはサラをかばうように立っている

「奴は……ガーリア帝国の魔将校ましょうこうレイジンだ!」

 ガランドはあえてドイルのかたきである事を告げずに村のみんなに離れるように指示を出す
 
「帝国!?」

 ――帝国って王国と戦争してたっていうあの……たしかドイルさんは帝国との戦争で命を落としたって……そこで師匠はドイルさんの意思を継いで……この師匠の様子だと、この男がドイルさんを?――

 トーマはエリィから王国と帝国の関係をある程度聞いている

 ――今はたしか停戦中、ということは目的はエリィの持つ「アーティファクト」か?これはエリィが「務め」だと言っていたことから王国の重要なモノなのだと検討がつく、聞いてはないがたぶんエリィは貴族階級だろう、村の皆と比べても身なりが違うし「アース」に行っていたこともうなずける……じゃあ優先順位はエリィだ!エリィを守らないと!……すぐに動けるようにイメージしろ!――

「まあ待て、今は停戦中だ、戦いに来たわけじゃない」
 レイジンは村の皆が離れようとするのを怖がらなくていいと止める

「どういうことだ!」
 では何をしに来たとガランドは怒号どごうを上げる

 ――やはりエリィの「アーティファクト」を――

 トーマはゆっくりとエリィの前に庇うよに立つ
「よくアレで生きて帰って来れたな、「エレノア・アッシュハート」!」

 レイジンはエリィを見てそう言った

「――っ」
 エリィは息を呑んで答えない

「アッシュハート家の?」
 ガランドとジェラや村の皆もざわつく

 ――アレで生きて帰って来れた?……アレでって……もしかしてアースでエリィを脅してた黒服かオレ達に指示を出してた連中のどっちかの黒幕?………「アース」と「ラビス」はつながっている、「ラビスの帝国」が「アース」に指示を出してエリィがアーティファクトを持ち帰るのを阻止しようとした……そんな感じか?……いや阻止じゃない!阻止ならエリィはとっくに殺されているはず……じゃあいったい……――

 トーマは「アッシュハート」というエリィの家名よりも何故なぜレイジンがエリィの所に来たのかを考えていた

「迎えに来たのだよ」

「「「――っ」」」

「エリィをさらいに来たということか!」
 ガランドはいよいよ怒りが頂点に達しそうだ

「いや、宗谷斗真そうやとうまを迎えに来た、ついでにアッシュハートの荷物の様子をうかがいにな」

「「「――――っ」」」

 ――は?……オレ?――

 トーマはいろいろな可能性を考え最善を探してたがあまりに意外な一言に集中していた魔力が霧散むさんした

「なんでオレがアンタに付いて行かなきゃならないんだ!?」
 トーマがそう言うと皆も「帝国にトーマは渡さねぇぞ」とざわついた

「トーマはオレの弟子だ渡さぬ!」

 ――師匠~!――

「宗谷斗真はこちらに来たほうがいいからだ、お前たちも知っているんだろう?こいつが……」
 レイジンが何かを言いかける

「やめて下さい!」

エリィがレイジンの言葉をさえぎ
「あなたが今ここで言うべきことではありません!」
エリィは珍しく声を荒らげた

「宗谷斗真のためにも言っておいたほうがいいと思うが……エレノア・アッシュハートお前、宗谷斗真がそんなに惜しいか?」

 ――エリィそうなの?そうだと言って!そしたらもっと頑張れる――

「大事な友人です!」

 ――友人か~っ――

「お前にとってはそうでも、ここの者たちにとってはどうかな?事実を知ればきっともとのようには戻れない、これからのことを考えると私と来たほうがいい、「グリディア」では宗谷斗真が可哀想だぞ」

「…………それでも……トーマくんなら……」

 ――どういうこと?――

「オレは行かないよ、アンタが何言っても……ここが好きだし、みんなが好きだ!」
トーマは断言する
 
「「「そうだ!そうだ!オレ達も好きだぞ」」」
 皆がそう言う

 ――みんなぁ~………エリィは?――

「宗谷斗真が「アース人」でもか?」

「「「――!」」」

 時間が止まったように静まり返った、エリィも両手で口を押さえて息を呑む

「それがどうした!珍しくないだろう?最近じゃあ「ラビストリップ」なんて当たり前にあるらしいし!みんなも知ってるんだろう?まあオレはからだ丸ごと来ちゃっけど……なぁみんな!」

 ――…………えっ……………………――

 村のみんなの顔が青ざめて顔がひきつっている
先程までの空気が一変した

「なっなあサラ……」
 エリィの後ろにいるサラに触れようとすると、サラは一瞬カラダを引いた

「あ……ごめんトーマお兄ちゃん……そうだよ変わらないよ……」
 サラはあきらかに無理をしている

「ですよね師匠!……」
「……そうだな」
ガランドの笑顔が堅い

「こういう事だ、グリディア王国ではアース人はみ嫌われる存在であり「悪魔」だ!これから先グリディアでどれだけ善行ぜんこうを重ねようが「アース人」というだけでこうなるのだ!グリディア王国には「アース人」は一人もいない、だがガーリア帝国は「アース人」を受け入れる、そもそも「ラビストリップ」した人間は帝国にしか来れない、宗谷斗真、お前は例外だ」

レイジンは手を差し出した

「………………」

トーマはうつむき、首を横に振った

「それでも……それでもオレは……みんながオレのこと怖がっても……嫌われても……オレはみんなのことが好きだから……やっと出来た居場所だと…家族だと……」
 
エリィが後ろから抱きしめた

「――っ」
 泣いてるトーマの背中に頬をつけて「大丈夫……大丈夫です」わたしがいますと言葉が続くように抱きしめた

「ごめん……トーマお兄ちゃん」
サラも腰に抱きつく

 ジェラもみんなもトーマの周りに集まって来る

「そういう事だ」
ガランドはレイジンに語りかける
 
「……そうか……面白い男だ、宗谷斗真……「オーパーツ」もまだその時ではないようだしな……では行くとするか、もうまもなく開戦するぞ、次に会う時は覚悟しておけ」

 もう一つとレイジンは話しを続ける
「アッシュハートの持っているモノはまだそのまま預けておく、宗谷斗真がこちらに来ないみたいだしな」

「?……どういう意味だ?」

 トーマが言葉を返すが
レイジンは背を向けて立ち去ろうとする

 ――教えてはくれないか……ただレイジン、コイツはサラちゃんのかたきかもしれないが……話が通じないわけじゃない気がする……――
 
「レイジン!やっぱり帝国と王国って殺し合わないといけないのか?」
 トーマが叫ぶ

「……戦争だからな」
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