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第一章
差別と暗黙の国②
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到着したのは診療所、もう診療時間は過ぎているがエリィは扉を叩き呼ぶ
「レイさん!レイさん!お願いします!」
――えっレイさん?――
「どうされたのですか?エレノア、そんなに慌てて」
扉から出て来たのはレイ
ギルドでトーマ達を助けた治癒士だった
「レイさん!彼女を……コーラルを助けて下さい!
男達に襲われてボロボロに……レイさんなら助けられるって……」
トーマはなりふり構わずレイにお願いする
「落ちついて下さい、コーラルさんは血だらけですが、もうほとんど完治してますよ」
レイは優しくトーマを宥める
「――っ」
――えっコーラルの顔……きれいに……なんで?――
「どっどうして……」
「とりあえず中に入りましょうか」
レイの指示でまだ意識のないコーラルをベッドに寝かせ、レイとエリィで体を綺麗に拭いてあげる
トーマは部屋を出て待合で座って項垂れている
少し経って部屋からエリィとレイが出てきた
「もう大丈夫ですよ、というかここに着く頃には治癒は完了していたので……君のおかげですね」
「おっオレ治癒なんて……出来ないです……」
「エレノアが言ってましたよ、君が物凄い魔力を纏っていたと、君の彼女を想う気持ちがすべてを癒したのでしょう」
トーマは気持ちも落ち着きコーラルの側に座って意識が戻るのを待つ
服はエリィが今補整してくれている、レイも血や汚れが付いたタオルなどを片付けている
コーラルが助かったと思うと今度は怒りが込み上げてくる、拳を握りしめて怒りを抑え込む
――許せない……少しでも遅かったらコーラルは死んでいた……目星は付いている……アイツらだ――
トーマはこの街でこの国でいろんな感情と戦っている
蔑まされ暴行されても耐えるのか、反撃して反撃されて憎しみの連鎖に入るのか
戦争も同じ、殺して恨み殺されて恨み、どれが解決なのかわからない
レイジンは言った、「戦争だからな」と
こういう事なのか、殺されるから殺すしかない
コーラルは言った、「相手をどうにかしたいんじゃない、自分たちのような思いをしてほしくないだけ」
と、仕返しをしたいわけじゃない
エリィは言った、「大丈夫です」と
トーマを信じトーマなら乗り越えられると
――あぁ……コーラル……冒険者バッチ盗られちゃったんだ……このブローチよりバッチ守れよ……オレは……――
トーマはブローチを強く握りしめて立ち上がった
「トーマっち……」
立ち去る腕を掴まれた、コーラルが目を覚ましトーマの腕を離さない
「コーラル!大丈夫か?どこか痛むか?……良かった目を覚まして……怖かったろう……もう大丈夫だぞ……傷も綺麗になった……安心していいぞ」
トーマは優しく手を握る
「……トーマっち……ありがとう……意識なかったけどわかったソ……トーマっちに抱かれて温かかったソ……優しくて……」
コーラルはしっかりトーマを見つめ
「だからね……ウチのためなんかで問題起こしちゃダメっちゃ……明日、冒険者になるソ……ウチらの目標を見失っちゃダメなソ……」
――オレがあの男達を殺す……コーラルに悟られたか……だが許すことは出来ない…………だからか……だからゼロは居なくなったんだ!……このどうしようもない連鎖から抜け出すために……だったら!――
「大丈夫だぞコーラル!ゆっくり休め……寝たほうがいい、傷は無いが体力が回復してないからな」
トーマは優しくおでこに手を置き、もう片方の手はコーラルの手を握ったまま側に座った
――この世界で秩序や良心を持った人は沢山いる、国のトップにもいるだろう……だがそうでない者達が戦争をして、とてつもない規模の憎悪が生まれる……だったら……何にも縛られない「いち個人」が秩序を正せば?……帝国にも獣王国にも王国にも属さない「ヒーロー」がいれば……すべての悪に対する共通の敵……オレにしか出来ないんじゃないか?……アース人のオレしか……創るしかない――
少しするとコーラルは寝た、安心したのだろう穏やかな寝顔だ、そっと繋いだ手を離し部屋から出た
「レイさん、今日はありがとうございました、何から何まで、コーラル意識戻ったんですがまた寝ちゃったんでここに寝かせたままで大丈夫ですか?」
部屋の外にはレイとエリィがいた、エリィは気を使ってか部屋の中に入らずレイと待っていた
「いいですが、お出かけですか?」
「トーマくん……もしかして……」
エリィは何かを感じ訝しんででトーマを見る
「いや実は慌ててたからコーラルの冒険者バッチ落としちゃったみたいで……アレないと気付いたらコーラルのやつ落ち込むでしょう?ちょっと探しに行こうと思って……見つけたらまた戻って来てもいいでか?」
エリィの表情が明るくなり
「だったらわたしも一緒に……」
「あっいやコーラルが起きた時にエリィが側にいて欲しいから……ありがとう」
エリィは少し俯きそうですよねと納得してくれた
「分かりました、では私もこの後、急な仕事が入りましたのでエレノアに任せますね、ここは自由に使って構いませんので」
「ありがとうございます」
トーマとエリィは頭を下げてレイを見送る
「じゃあエリィ、オレも探してくるね!すぐ戻るから」
「はい!気をつけて……」
エリィは少し寂しそうにトーマを見送った
トーマは酒場街にいる、路地裏で身を隠し黒いローブを羽織り、顔にはローブとセット売りの仮面を着けている
――まさか……これを使う時が来るとは……――
トーマは集中する、気配を感じる感覚を特定の魔力を感じるように意識する、ギルドで会ったダンゴの気配だけに絞る
――いた……一つ中の通りだ……三人か……――
トーマは先回りし路地裏で待ち伏せる、幸いこの中通りには人気がない、話し声が聞こえる
「しっかし、あの獣人まったく反撃しねぇからやりがいなかったぜ~」
「ですね~いい女だったから犯っちまいたかったっすけど、あんな暴れられちゃ~無理でしたね」
「だからってあんなボコすなんてダンゴさんまじ悪っすよ~怖ぇ~たぶん死んでますよ」
「ありゃ獣だからいいんだよ、まっ死んじまってたらこのバッチ盗っても意味なかったけどなぁ~」
「しかしあとはあのクソガキをぶっ殺さねぇと」
ダンゴはバッチを道端に捨てた、三人は笑いながら近付いてくる
路地裏からトーマは姿を現した
「あん?なんだお前?今の俺達の話聞いてなかったよな~仮面なんかつけやがって」
ダンゴが吠える
「とりあえずぶっ殺しましょ~ちょうど誰もいないし」
「だな~」
取り巻きの二人が剣を抜き飛び掛かってきた!
――遅い……なんだコイツら、こんなに弱いの?――
トーマは大剣を抜かない、ギルドで見られてる可能性を考えローブで隠している
一人の剣の軌道をずらす!
その軌道はもう一人の腕の腱を切り!
腕にチカラが入らない男は剣を落とす!
気が動転している隙に落ちた剣を拝借しもう一人の片足の腱を切る!
絶叫が木霊する!絶叫する二人の顔面を殴りつけ砕く!
ダンゴが怯えながら「なっ何なんだ!」何者なんだと問う
「執行者セブン」冷淡に答える
一瞬で間合いを詰め三閃!
右腕の腱と左手の指四本と片足の腱を切り、顔面一発砕いた!セブンは三人全員再起不能にした
――コーラルの痛みはこんなもんじゃないぞ…――
捨てられたバッチを拾い、ローブと仮面を外し近くの酒場に報告した
「執行者セブンと名乗る男が冒険者達をあっという間に倒した」制裁だと言っていたと告げた
ついでにトーマは自分達三人分の食事のお待ち帰りして帰った
――いつかオレは罪悪感も恐怖も……感じなくなるのかな――
「レイさん!レイさん!お願いします!」
――えっレイさん?――
「どうされたのですか?エレノア、そんなに慌てて」
扉から出て来たのはレイ
ギルドでトーマ達を助けた治癒士だった
「レイさん!彼女を……コーラルを助けて下さい!
男達に襲われてボロボロに……レイさんなら助けられるって……」
トーマはなりふり構わずレイにお願いする
「落ちついて下さい、コーラルさんは血だらけですが、もうほとんど完治してますよ」
レイは優しくトーマを宥める
「――っ」
――えっコーラルの顔……きれいに……なんで?――
「どっどうして……」
「とりあえず中に入りましょうか」
レイの指示でまだ意識のないコーラルをベッドに寝かせ、レイとエリィで体を綺麗に拭いてあげる
トーマは部屋を出て待合で座って項垂れている
少し経って部屋からエリィとレイが出てきた
「もう大丈夫ですよ、というかここに着く頃には治癒は完了していたので……君のおかげですね」
「おっオレ治癒なんて……出来ないです……」
「エレノアが言ってましたよ、君が物凄い魔力を纏っていたと、君の彼女を想う気持ちがすべてを癒したのでしょう」
トーマは気持ちも落ち着きコーラルの側に座って意識が戻るのを待つ
服はエリィが今補整してくれている、レイも血や汚れが付いたタオルなどを片付けている
コーラルが助かったと思うと今度は怒りが込み上げてくる、拳を握りしめて怒りを抑え込む
――許せない……少しでも遅かったらコーラルは死んでいた……目星は付いている……アイツらだ――
トーマはこの街でこの国でいろんな感情と戦っている
蔑まされ暴行されても耐えるのか、反撃して反撃されて憎しみの連鎖に入るのか
戦争も同じ、殺して恨み殺されて恨み、どれが解決なのかわからない
レイジンは言った、「戦争だからな」と
こういう事なのか、殺されるから殺すしかない
コーラルは言った、「相手をどうにかしたいんじゃない、自分たちのような思いをしてほしくないだけ」
と、仕返しをしたいわけじゃない
エリィは言った、「大丈夫です」と
トーマを信じトーマなら乗り越えられると
――あぁ……コーラル……冒険者バッチ盗られちゃったんだ……このブローチよりバッチ守れよ……オレは……――
トーマはブローチを強く握りしめて立ち上がった
「トーマっち……」
立ち去る腕を掴まれた、コーラルが目を覚ましトーマの腕を離さない
「コーラル!大丈夫か?どこか痛むか?……良かった目を覚まして……怖かったろう……もう大丈夫だぞ……傷も綺麗になった……安心していいぞ」
トーマは優しく手を握る
「……トーマっち……ありがとう……意識なかったけどわかったソ……トーマっちに抱かれて温かかったソ……優しくて……」
コーラルはしっかりトーマを見つめ
「だからね……ウチのためなんかで問題起こしちゃダメっちゃ……明日、冒険者になるソ……ウチらの目標を見失っちゃダメなソ……」
――オレがあの男達を殺す……コーラルに悟られたか……だが許すことは出来ない…………だからか……だからゼロは居なくなったんだ!……このどうしようもない連鎖から抜け出すために……だったら!――
「大丈夫だぞコーラル!ゆっくり休め……寝たほうがいい、傷は無いが体力が回復してないからな」
トーマは優しくおでこに手を置き、もう片方の手はコーラルの手を握ったまま側に座った
――この世界で秩序や良心を持った人は沢山いる、国のトップにもいるだろう……だがそうでない者達が戦争をして、とてつもない規模の憎悪が生まれる……だったら……何にも縛られない「いち個人」が秩序を正せば?……帝国にも獣王国にも王国にも属さない「ヒーロー」がいれば……すべての悪に対する共通の敵……オレにしか出来ないんじゃないか?……アース人のオレしか……創るしかない――
少しするとコーラルは寝た、安心したのだろう穏やかな寝顔だ、そっと繋いだ手を離し部屋から出た
「レイさん、今日はありがとうございました、何から何まで、コーラル意識戻ったんですがまた寝ちゃったんでここに寝かせたままで大丈夫ですか?」
部屋の外にはレイとエリィがいた、エリィは気を使ってか部屋の中に入らずレイと待っていた
「いいですが、お出かけですか?」
「トーマくん……もしかして……」
エリィは何かを感じ訝しんででトーマを見る
「いや実は慌ててたからコーラルの冒険者バッチ落としちゃったみたいで……アレないと気付いたらコーラルのやつ落ち込むでしょう?ちょっと探しに行こうと思って……見つけたらまた戻って来てもいいでか?」
エリィの表情が明るくなり
「だったらわたしも一緒に……」
「あっいやコーラルが起きた時にエリィが側にいて欲しいから……ありがとう」
エリィは少し俯きそうですよねと納得してくれた
「分かりました、では私もこの後、急な仕事が入りましたのでエレノアに任せますね、ここは自由に使って構いませんので」
「ありがとうございます」
トーマとエリィは頭を下げてレイを見送る
「じゃあエリィ、オレも探してくるね!すぐ戻るから」
「はい!気をつけて……」
エリィは少し寂しそうにトーマを見送った
トーマは酒場街にいる、路地裏で身を隠し黒いローブを羽織り、顔にはローブとセット売りの仮面を着けている
――まさか……これを使う時が来るとは……――
トーマは集中する、気配を感じる感覚を特定の魔力を感じるように意識する、ギルドで会ったダンゴの気配だけに絞る
――いた……一つ中の通りだ……三人か……――
トーマは先回りし路地裏で待ち伏せる、幸いこの中通りには人気がない、話し声が聞こえる
「しっかし、あの獣人まったく反撃しねぇからやりがいなかったぜ~」
「ですね~いい女だったから犯っちまいたかったっすけど、あんな暴れられちゃ~無理でしたね」
「だからってあんなボコすなんてダンゴさんまじ悪っすよ~怖ぇ~たぶん死んでますよ」
「ありゃ獣だからいいんだよ、まっ死んじまってたらこのバッチ盗っても意味なかったけどなぁ~」
「しかしあとはあのクソガキをぶっ殺さねぇと」
ダンゴはバッチを道端に捨てた、三人は笑いながら近付いてくる
路地裏からトーマは姿を現した
「あん?なんだお前?今の俺達の話聞いてなかったよな~仮面なんかつけやがって」
ダンゴが吠える
「とりあえずぶっ殺しましょ~ちょうど誰もいないし」
「だな~」
取り巻きの二人が剣を抜き飛び掛かってきた!
――遅い……なんだコイツら、こんなに弱いの?――
トーマは大剣を抜かない、ギルドで見られてる可能性を考えローブで隠している
一人の剣の軌道をずらす!
その軌道はもう一人の腕の腱を切り!
腕にチカラが入らない男は剣を落とす!
気が動転している隙に落ちた剣を拝借しもう一人の片足の腱を切る!
絶叫が木霊する!絶叫する二人の顔面を殴りつけ砕く!
ダンゴが怯えながら「なっ何なんだ!」何者なんだと問う
「執行者セブン」冷淡に答える
一瞬で間合いを詰め三閃!
右腕の腱と左手の指四本と片足の腱を切り、顔面一発砕いた!セブンは三人全員再起不能にした
――コーラルの痛みはこんなもんじゃないぞ…――
捨てられたバッチを拾い、ローブと仮面を外し近くの酒場に報告した
「執行者セブンと名乗る男が冒険者達をあっという間に倒した」制裁だと言っていたと告げた
ついでにトーマは自分達三人分の食事のお待ち帰りして帰った
――いつかオレは罪悪感も恐怖も……感じなくなるのかな――
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