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10 兄頑張る(夢の中)
しおりを挟む一人で昼食をとるようになってから、お弁当の中にたまに短い手紙が入るようになった。
「あ、今日はお兄様からの連絡だったのね」
何とかします、と言ってくれたサラは、本当にフリッツに連絡を取ってくれたらしい。
手紙では目立つので、短いメモのような形でたまに入っているようになった。
それだけでもシャーロットの気持ちは安らいだ。
入学式から1週間後、第2王子とその側近たちは隣国に留学していた。
シャーロットを置いていくのがたまらなく不安に思ったフリッツは、旅立ちの前にサラ達、信用できる使用人たちにお願いをしていたのだ。
新しく雇われた使用人たちはおそらくメルダの支配下にあるだろうこと、
フリッツ達からの手紙はどこかで握りつぶされている可能性が高いこと、
今後、シャーロットが何かつらい目にあった時に、隣国では状況が分からないので、それぞれに連絡手段を持っていてほしいことを頼んだのだ。
それぞれが、実家や懇意にしている商会等にお願いをして、それぞれが見聞きしたことをグリーあてに送るように手配してくれた。
「お坊ちゃま、お嬢様の贈り物はしばらくはされませんように」
「え?」
「婚約者様からの贈り物も同様にされませんようにお願いしておいてください」
「それは?」
「現在、信用できるものはお嬢様の側には簡単に近寄れません。
あのオン・・こほん、ベッティはそれをいいことにお嬢様の持ち物を強奪しているようなのです」
「な!」
「招待状なども勝手に開封して、代わりに自分が行くなどと言ってます」
「さすがにシャーロットに来た招待状では無理だろう?」
「当然です、ジャンによると、門から先にも入れてもらえず、【お姉さまの代わりにあたしが来てあげたのに】などとほざいて、招待者や主催者から軽蔑されているようです」
「じゃあ、シャーロットは最近社交に出ていないのか・・・」
「それから、お嬢様の食事も使用人と同じにするように言われました」
「何だと?」
「もちろん、公爵家の待遇は素晴らしいので、お嬢様にお出ししても大丈夫なのですが、
あのめぎつ・・・ごほん、メルダは【ベッティが公爵令嬢になれば、シャーロットは必要ないでしょう?使用人と同じで十分よ】などと・・・」
「わたしが成人していれば、家督を継いですぐにでもあいつらを追い出してやるのに」
「旦那様が早くこちらに戻ってきてくだされば、現状をお知らせできるのですが・・・」
「バロウズめ、何度も頼んでいるのだが、面会の許可を出さないんだ」
フリッツは悔しそうに下唇をかんだ。
「私は隣国へ行かなければならないが、できるだけの対策はしていくつもりだ。
領地にいるセバスにも連絡を取っているところだ。
もう少しだけ辛抱してくれ、つらい思いをさせて申し訳ない」
「「ぼっちゃま!!」」
「坊ちゃま、私たちは大丈夫です。
できる限り、お嬢様をお守りしますから」
「よろしく頼む」
フリッツの対策が、功を奏し、シャーロットの事はかろうじて守られていた。
「バロウズは何と言ってワシとあわせなかったんだ?」
「気鬱の病で誰とも会えないと・・・」
「本当だったんだろうか?」
「旦那様、おそらく、旦那様を別邸に閉じ込めて、自分は優雅な生活を送っていたのではないでしょうか?旦那様がご一緒ならかなり贅沢できますからね」
「だとしたら、薬でも盛られていたかもな」
「何ということだ、バロウズめ、許さん」
「父上、まだそうなるかも、というだけですからね」
「それよりも、フリッツ、あなた留学なんてやめればよかったのに」
「そんなわけにはいきませんよ」
「何故?」
「第2王子の側近ですし、留学することでアレクサンドル様の立場が盤石になり、そうしておくことで、シャーロットが嫁いだ後も困らないためですよ」
「そんなことまで考えてるだなんて、フリッツじゃないみたい」
「だから、夢の中の私、ですよ」
「本当にそうやって成長してほしいわ」
「そうだな、それでこそ公爵家の後継ぎにふさわしい」
「坊ちゃま、ご立派になられますな」
「だから、夢の話だって・・・」
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