異世界漂流記【創造】で手にした幸せを…。

黒猫

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29話 【驚 愕】

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 静まり返ったギルドロビーに、マリーシアの甲高い叫び声が響き渡った。
 
「ど、ドラギネス!?本物……しかも、一体丸ごと!?」
 
 その声に、それまでタクトを嘲笑っていた冒険者たちも一斉に口をあんぐりと開けた。中には腰を抜かしてへたり込む者、青ざめて後ずさりする者もいる。タクトの隣でしてやったりという顔をしているシエラは、胸を張って満足げな表情を浮かべていた。
 
「どうだ、マリーシアさん!これで冗談じゃないって分かったでしょ?」
 
 シエラの言葉に、マリーシアは何度も頷く。そして、慌てた様子で奥の部屋へと駆け込んで行った。しばらくすると、ギルドマスターらしき厳つい男と、数人の職員が飛び出してくる。彼らもまた、ドラギネスの巨体に目を丸くしていた。
 
「これは……まさか、あのドラギネスを討伐したというのか!?」
 
 ギルドマスターの問いに、タクトは涼しい顔で答える。
 
「ええ、まあ。骨が折れましたけど、なんとか二人で。」
 
 その言葉に、ギルドマスターは信じられないといった表情でタクトとシエラを交互に見る。やがて、その表情は驚嘆に変わり、深く息を吐き出した。
 
「素晴らしい!まさか、こんな若き冒険者がドラギネスを討伐するとは……これはギルド設立以来の快挙だ!」
 
 ギルドマスターの声がロビーに響き渡ると、冒険者たちの中から拍手が沸き起こった。最初はまばらだった拍手は、徐々に大きくなり、やがて万雷の拍手へと変わっていく。タクトとシエラは、その拍手と称賛の嵐の中で、ようやく自分たちがとんでもないことをやってのけたのだと実感した。
 
「まさか、こんな大騒ぎになるなんてねぇ……」
 
 ギルドからの帰り道、シエラがぽつりと言った。ドラギネスの換金手続きは想像以上に時間がかかり、二人がギルドを出た頃にはすっかり夜も更けていた。しかし、その手にはずっしりと重い金貨袋が握られている。
 
「全くだ。でも、これで明日からは英雄扱いだろうな。」
 
 タクトの言葉に、シエラはにへらと笑う。
 
「英雄かぁ……なんか、くすぐったいね!」
 
 宿屋に戻ると、マスターが満面の笑みで二人を出迎えた。ギルドからの連絡で、二人の偉業は既に宿屋にも伝わっていたようだ。
 
「よくぞご無事で!そして、よくぞやってくださいました!今夜の夕食は、特別に腕を振るわせていただきます!」
 
 食卓には、豪華な料理がずらりと並んだ。香ばしい肉料理に新鮮な魚介、色とりどりの野菜。そして、シエラが目を輝かせたのは、山盛りのフルーツが乗った特大のケーキだった。
 
「わぁ!ごちそう~!!」
 
 シエラは満面の笑みで料理に手を伸ばし、一心不乱に食べ始めた。その姿を見ていると、タクトも自然と笑みがこぼれる。
 
「今日の功労者はシエラだ。たくさん食え。」
 
 タクトの言葉に、シエラはもぐもぐと口を動かしながら大きく頷いた。ドラギネス討伐という偉業を成し遂げた二人の冒険者は、今夜ばかりは何もかも忘れて、ただ目の前の豪華な食事を心ゆくまで堪能するのだった。
翌朝、二人が目を覚ますと、宿屋の前に人だかりができていた。タクトとシエラを一目見ようと、町中の人々が集まっているのだ。彼らの顔には、驚きと尊敬の念が入り混じっていた。
 
「おい、あれがドラギネスを倒した冒険者か!?」
「すげぇ……あんな若いのに……」
 
 町の人々の囁き声を聞きながら、タクトは少し照れくさそうに頭を掻いた。シエラは得意げな顔で胸を張っている。
 
「なんか、すごいことになっちゃったね!」
 
 シエラの言葉に、タクトは小さく頷いた。昨日までの日常とは打って変わって、二人の冒険生活はこれから大きく変わっていくことだろう。

 
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