ダイヤモンド・リリー

zzz

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片腕に重みを感じる。

少しの甘さを含む香りが鼻腔をくすぐり、ほとんど無意識のうちに、香りを発するそれに鼻を埋める。

「…んあ?」

まさか自分が人と寝ていたとは思わず、四悠は一瞬で覚醒した。

「…あー、そうだ、夢じゃないのか」

腕の中ですやすやと寝息を立てる紫桜を見つめながら独り言ちる。

順応している様に見せたが、内心では少しばかり夢ではないかと期待していた部分もあった。

目が覚めたら病院のベッドの上だったとか、そもそも事故にもあっていなくて、とか色々考えてはいたが、どうやらこの不可思議な世界が現実で良いらしい。

色々思うところもあるが、取り敢えずダイヤモンドリリーを探さなくては。 

そうすれば、夢の様なこの現実が、本当の夢に変わるのだから。

「紫桜、起きろ、ギルドに行こう」

紫桜の体を揺すりながら声をかける。

「ん、しゆう…?今何時だ」

案外寝起きは良い様で、目を擦りなが紫桜は起き上がった。

時刻は8時。役所が開くのは9時かららしく、朝食や支度を済ませて行けば丁度良いくらいだった。

「飯はどこで食う?」

「屋台か何か出ているだろう」

宿はご飯付きでは無かったので、身支度を済ませて外に出る事になった。

紫桜があの薄汚れたマントをつけるのを若干残念な気持ちで眺めながら、俺はネクタイを締める。

「そのマント、どうにかならないのか?幾ら何でも汚すぎだろ」 

嫌な匂いがするわけでもないから見た目程汚いわけではないんだろうが、隣を歩くのは少し気がひけるので直ちに脱いで頂きたい。

「色々弄っているうちにボロボロになってしまったんだ。恐らく他のマントでやってもボロボロになる。」

マント弄ってボロボロにするって幼稚園生かよ。
何故弄る。

「このマントは幻惑魔法が組み込まれている。布が魔法に耐えれなかったんだ。因みに幻惑魔法というのはだな、」

長くなりそうなので割愛。

簡単に纏めると、紫桜は王子様のクセに城を抜け出す悪い子なので、城の人や、王子様って肩書きを狙った人たちから身を隠すためにこのマントを発明したらしい。

幻惑魔法というもののお陰で、マントを着た人は知り合いに会っても本人だと認知されないらしい。

認知される様になるには自分で名乗れば良いんだと。

偽名を名乗った場合は偽名の人物として認識されるとか。

「僕が発明したんだ」

褒めて欲しそうに言ってくるので、敢えて無視してやる。

「それより腹減ったな。お、肉の様なもの発見」

「…聞いていなかったのか」

「聞いてました。紫桜は凄いなー。おじさん肉2つ」

街には出店が沢山並んでいた。朝だというのに活気づいていて大変よろしい。


この時俺は肉を買っていて紫桜に背を向けていたせいで気づかなかった。

紫桜が俺からの適当な褒め言葉をとても嬉しそうに口の中で繰り返した事に────




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