神と従者

彩茸

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第一部

神通力

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―――目が覚めると、そこは俺の部屋だった。起き上がろうとして感じた痛みに、
顔を顰める。
筋肉痛だこれ・・・と思っていると、部屋の扉が開いた。

「蒼汰、大丈夫か・・・?」

 御鈴が心配そうな顔で部屋に入ってくる。御鈴の肩には令が乗っており、令も
 心配そうな声で言った。

「声掛けても揺すっても起きなかったんだぞ?にゃにがあったんだ?」

「何か、急に目の前真っ暗になって・・・」

 俺がそう言うと、御鈴が俺に抱き着く。
 起き上がり御鈴の頭を撫でると、彼女は目に涙を浮かべながら言った。

「妾が、妾が無理させた所為じゃ・・・」

「結果的には守れたんだし、別に良いよ」

 そう言って、御鈴を優しく抱きしめる。御鈴は涙声で、本当か・・・?と呟く
 ように言う。
 頷くと、御鈴は俺を抱きしめる腕にいつもより優しく力を込めた。

「蒼汰、今日は授業休んで家でゆっくりしてろよ」

 令がそう言って俺の足の上に座る。・・・ん?今日??

「・・・今何時だ?」

 俺が聞くと、御鈴が答えた。

「8時じゃ」

「なっ?!!」

 今から家を出ても確実に遅刻だ。いや、むしろ遅刻を通り越して欠席扱いになる
 時間だ。頭を抱えた俺を、御鈴と令が心配そうに見る。
 せめてサボりではなく病欠という扱いにならないだろうか。そう考えながら、俺は
 言った。

「携帯取るからどいてくれ・・・」



―――学校に連絡し、熱があるから休みますと伝える。気を付けてねと言われたが、
果たして病欠になったかどうか。
筋肉痛の体を動かして、朝食を作る。動きにくいな・・・と思っていると、御鈴が
言った。

「蒼汰、動きがぎこちないぞ?」

「ああ・・・ちょっと、筋肉痛がな」

「きんにくつう?」

 俺の言葉に御鈴は首を傾げる。・・・まさか、知らないというのか。
 スクランブルエッグを皿に盛りつけながら、筋肉痛について説明する。
 すると御鈴は、なるほどと頷いて言った。

「これは妾のの使い時じゃな!!」

「力?」

 首を傾げると、御鈴はうんうんと頷く。そして俺の左足に手を当てると、小さな
 声で呟いた。

『消えよ』

 その瞬間、左足の痛みが消える。突然のことに驚くが、直感的に思った。
 ・・・これが、御鈴の神としての力か。
 御鈴は俺の右足にも手を当て、同じように消えよと呟く。足の痛みが消えると、
 御鈴は俺を見て自慢げに言った。

「妾は、じゃからの!痛みを消すのは得意じゃ!」

「え、何それすっげえ」

 俺の言葉に、そうじゃろう!と御鈴は胸を張る。だがすぐに表情を曇らせ、呟く
 ようにボソリと言った。

「・・・妾はまだ力が強くないから、全身の痛みを一度に消してやることはできない
 がの」

「痛みを消せるってだけで凄えよ。消えろって言うだけで痛みがなくなるなんて、
 流石神様って感じだ」

 俺はそう言って御鈴の頭を撫でる。すると、令が言った。

「御鈴様そんなこと言ってたのか?」

「え?」

 明らかに消えよって言ってただろと首を傾げる。御鈴はハッとした顔をすると、
 頭を撫でる俺の手を両手で掴みながら言った。

「そうじゃ、言っておらんかった」

 御鈴は俺にしゃがめと言う。言われた通りしゃがむと、御鈴は俺の耳元に口を
 近付けて小声で言った。

「・・・神の力は、神通力と呼ばれておっての。神通力を使う際には、神の力を
 持つ者以外には聞こえない声を使うんじゃ」

 お主の基準で言うと、神通力は魔法というより奇跡じゃからな。そう付け加えた
 御鈴は、分かったかの?と首を傾げる。

「俺は御鈴から力を貰ってるから、その声も聞こえる・・・ってことで良いのか?」

 一応小声で聞くと、御鈴はコクリと頷いた。

「少しとはいえ神の力を持っておるんじゃし、蒼汰も神通力が使えるかもな」

 御鈴はそう言うと、もう良いぞと俺から離れる。立ち上がると、令が言った。

「蒼汰、腹減った」

「ああごめん。昨日茹でたささみが残ってるから、それで良いか?」

 そう言いつつ、皿をテーブルに運ぶ。
 令の言う通り今日は家でゆっくりしようかと思いつつ、俺は席に着いた。
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