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第二章 スローライフ希望のはずなのに、毎日それなりに忙しいのだが?
18.墓所
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どこだ?
どこから声が聞こえる??
それぞれがキョロキョロと周囲を見回した時だった。
また風に乗って子どものすすり泣きが聞こえてきた。
声を頼りに足を進める。
するとすぐに石造りの崩れかけた小さな礼拝堂に辿り着いた。
ギイィィィィィィ-
軋む音を立てる重い木戸を慎重に開く。
しかし、その中に人の姿はない。
外は汗ばむくらいの陽気だというのに、高窓から薄暗い光が僅かに射しこむばかりの礼拝堂の中は肌寒いくらいにヒンヤリしていた。
声のした先は、ここではなかったのかと首を捻ったときだった。
今度は直ぐ近くから、また子どもがすすり泣くような声が聞こえた。
「地下から聞こえてくるようだね」
トレーユの姿を模したカルルが、左側廊の陰になった部分を指した。
そちらに目を凝らせば小さな石階段が見える。
恐らく地下の墓所に続いているのだろう。
魔物の気配に注意を払いつつ暗闇をのぞき込めば、やはりその先から子どものすすり泣く声がした。
「誰かいるのか?」
トレーユが階段の下に向かって声をかけるが、声が小さく反響するばかりで返事は無い。
吹き込んでいく隙間風の音に紛れて時折すすり泣きが聞こえるばかりだ。
皆で顔を見合わせ思案した後、仕方がないとトレーユが傍にあった燭台のちびた蝋燭に灯りを灯し、それを手に取り階段の奥を照らした。
すると階段の少し先、小さな部屋の中にボロを纏った子どもの姿が見えた。
「かあさま……かあさま……」
この街の生き残りなのだろうか。
子どもは長い髪の女性と思われる躯に縋って泣いていた。
「嫌だ……おいていかないで……かあさま……かあさま……」
かつての自分の姿を、その震える小さな肩に重ねてしまい思わず胸が詰まった。
階段を降り、その小さな肩に触れようと手を伸ばした時だった。
「ハクタカ、危ない!!」
俺を止めようと、俺とその子どもの間にアリアが体を滑り込ませてきた。
そんなアリアの声に驚いた子どもが振り返り、そのはずみでその子の手がアリアの腕に触れた時だ。
パキパキパキ-
堅い音を立てて、アリアの腕を瞬時に氷が覆った。
慌ててトレーユが駆け寄り回復の魔法を唱えるが、凍っていくスピードが速くあっという間に指先までが固まり、次いで足が、そして回復魔法の甲斐なく、すぐさまアリアの全身が氷に覆われた。
「かあさま?」
子どもがそう言いながらぼんやりと凍り付いたアリアを見た。
そしてホッとしたように微笑むと、氷像と化したアリアにそっと頬を寄せ縋る。
「かあさま……よかった……」
先程まで子どもが縋っていた躯を見てゾッとした。
息絶えた女性の面立ちはその子が母と呼ぶにはあまりに年若く、ましてその子どもとは全く似ていなかった。
どこから声が聞こえる??
それぞれがキョロキョロと周囲を見回した時だった。
また風に乗って子どものすすり泣きが聞こえてきた。
声を頼りに足を進める。
するとすぐに石造りの崩れかけた小さな礼拝堂に辿り着いた。
ギイィィィィィィ-
軋む音を立てる重い木戸を慎重に開く。
しかし、その中に人の姿はない。
外は汗ばむくらいの陽気だというのに、高窓から薄暗い光が僅かに射しこむばかりの礼拝堂の中は肌寒いくらいにヒンヤリしていた。
声のした先は、ここではなかったのかと首を捻ったときだった。
今度は直ぐ近くから、また子どもがすすり泣くような声が聞こえた。
「地下から聞こえてくるようだね」
トレーユの姿を模したカルルが、左側廊の陰になった部分を指した。
そちらに目を凝らせば小さな石階段が見える。
恐らく地下の墓所に続いているのだろう。
魔物の気配に注意を払いつつ暗闇をのぞき込めば、やはりその先から子どものすすり泣く声がした。
「誰かいるのか?」
トレーユが階段の下に向かって声をかけるが、声が小さく反響するばかりで返事は無い。
吹き込んでいく隙間風の音に紛れて時折すすり泣きが聞こえるばかりだ。
皆で顔を見合わせ思案した後、仕方がないとトレーユが傍にあった燭台のちびた蝋燭に灯りを灯し、それを手に取り階段の奥を照らした。
すると階段の少し先、小さな部屋の中にボロを纏った子どもの姿が見えた。
「かあさま……かあさま……」
この街の生き残りなのだろうか。
子どもは長い髪の女性と思われる躯に縋って泣いていた。
「嫌だ……おいていかないで……かあさま……かあさま……」
かつての自分の姿を、その震える小さな肩に重ねてしまい思わず胸が詰まった。
階段を降り、その小さな肩に触れようと手を伸ばした時だった。
「ハクタカ、危ない!!」
俺を止めようと、俺とその子どもの間にアリアが体を滑り込ませてきた。
そんなアリアの声に驚いた子どもが振り返り、そのはずみでその子の手がアリアの腕に触れた時だ。
パキパキパキ-
堅い音を立てて、アリアの腕を瞬時に氷が覆った。
慌ててトレーユが駆け寄り回復の魔法を唱えるが、凍っていくスピードが速くあっという間に指先までが固まり、次いで足が、そして回復魔法の甲斐なく、すぐさまアリアの全身が氷に覆われた。
「かあさま?」
子どもがそう言いながらぼんやりと凍り付いたアリアを見た。
そしてホッとしたように微笑むと、氷像と化したアリアにそっと頬を寄せ縋る。
「かあさま……よかった……」
先程まで子どもが縋っていた躯を見てゾッとした。
息絶えた女性の面立ちはその子が母と呼ぶにはあまりに年若く、ましてその子どもとは全く似ていなかった。
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