サウザンド・ジョブ・オンライン ~あるみならい僧侶の話~

アヤマチ☆ユキ

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第2章 出会いの街 編

056 ”夢”があったり無かったり <04/05(金)PM 01:03>

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 ※※※ 注意 ※※※

 ただいま [夢の洞窟] 中です。


 大量だったり、黒かったり、テカってたり…そういうのが苦手な方は、しばらく読み飛ばしていただいた方が良いかと思います。ご注意下さい。

 [夢の洞窟]終了まで『目印』として、『無理矢理サブタイトルに”夢”の文字を付けていこう』と思います。よろしければ参考にして下さい。

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 出会いの街[ヘアルツ]の西(←)の岩山にある[夢の洞窟]の探索を開始した俺達は、『最初の小部屋』で『虫地獄』の中から宝箱を2つも発見し、『斥候せっこう』LV17のヒイラギによって、両方の宝箱の罠を分析、解除して無事にアイテムを入手する。
 その後、もう一方の『まっすぐな通路』を進みはじめたところで、ヒイラギが壁の向こうの『罠LV32のスライム』を『探知』するが、とりあえず無視して通路を進む。
 そして次の分岐を右へと進んだ先の小部屋で、またも2つの宝箱を発見し、まずは右の宝箱の分析をしたのだった。


「罠は『クラッカー』で、罠LVは33だな」
 分析を終えたヒイラギは、なんでも無い事の様にそう言った。

 「………」『クラッカー』とは、2つのボールがヒモで繋がっていて、生命のエネルギーを流し込まれていて、カチカチとアメリカンな音を鳴らしながら飛んで来て、種族が『吸血鬼』の者にクリティカルヒットする……というトラップでは無い。一般に最初にイメージするであろう、≪食べ物で無い方≫のクラッカーである。「お誕生日おめでとう~」「パンッ」。

 宝箱の開閉に合わせてヒモが引かれ、『パーティ(宴や会合の方)』会場を最初に盛り上げる小道具の如く、「パンッ」という爆発音とともに、約700発の『極小の石、鉄製の小さな破片』を撒き散らし、『パーティ(小隊、仲間)』を阿鼻叫喚あびきょうかんの地獄絵図へおとしいれる…… という、トラップの中でもかなり危険な部類である。

 ここまでの解説で、「それって……」と、気付かれた方も居るかも知れない。
 『APM(anti-personnel mine)』、『指向性対人地雷』、『クレイモア』、『只』、……などと呼ばれる兵器に近い罠なのだ。
 無差別殺傷っぽいので条約違反? な気がするかも知れないが、「宝箱を開けようとしてヒモ(ワイヤー)を引き、自ら作動させている」…ので、無差別殺傷には当たらない(はずな)のでセーフ? なトラップだ。

 この宝箱を不用意に開けたり、トラップの解除に失敗したりすると、ヒモの動きに反応して着火した『爆薬の爆発力』で、前述の極小の石、鉄製の小さな破片を、宝箱の『前方180°、半径16m圏内』に向けてバラ撒かれる。幸い? な事に『C4爆薬』では無いので100m先まで被害にあったりはしない。

 当然、罠LVによって威力が変動するのだが、TJOでは『分析した本人』は『罠LVを半減』…しているため、『爆心地に居るにも関わらず生き残れる』事が多い。
 …しかし巻き添えを食らったパーティメンバーは『半減扱いでは無い』ので、大抵の場合、≪解除に失敗した本人以外≫が『全員死亡』する。
 無論、その後のパーティの雰囲気、関係はと言うと……。
 まぁそういう感じで、『パーティ(小隊、仲間)(の関係)』を≪盛り下げて≫くれる、陰湿なクラッカーなのだ。「パーティ解散日おめでとう~」「パンッ」。


 『罠LV33』という事は、『半減してLV16』だ。例によってヒイラギが『どういうボーナスptポイントの振り方』をしているのか? は他人にはわからないので、こういう場合は『本人の判断』に任せる事になる。しかし結構≪微妙な所≫な気がする上、『LV33の広範囲攻撃』などを食らえば、俺(LV12)もケイ(LV15)も即死だ。

「どうですか?」
「大丈夫か?」
「おぅ、任せろ」
 ヒイラギは自信がある様だ。するとDEX10(補正で16相当)は振っている…のか? こんなところで≪蜂の巣≫の様に穴だらけにされたくは無いのだが… まぁ『リーダー』で『斥候』の、ヒイラギがそう言うなら… ぐむ~、頼れそうで、頼れ無さそう…なんだよなぁ。

「そうか、まかせた」
 ケイは信頼しているのか特に迷っている素振りが無い。
……う~ん、あまり相手を疑っているのも感じが悪い。

「それじゃお任せします。気をつけて下さい」
 「失敗すれば逃げきれないだろうな」…と思いつつ、一応『逃げる準備』と『回復する用意』をして、そう答える。

「あぁ、まぁ一応2人とも少し離れててくれ」
 いつもの様にヒイラギは笑っているが、あまり離れると『虫地獄』と、『アクティブモンスター』がいる関係上、別の危険が出てきてしまう。
 ……でも少しだけ、いつもより離れておこうかな? …とは言え 治癒魔法[ヒーリング]の届く『10m範囲』から離れるわけにも行かないので、解除に失敗すれば少々離れていようが 五十歩百歩だろう。


「いくぞ、…………解除」
キンッ!
 少し緊張した感じのヒイラギだったが、しっかり解除に成功し、ふぅ~っと安堵の息を吐く。謎の金属音(罠解除成功音)がして、錠前がポトリと地面に落ち、霞んで消滅していく。

「グッジョブです」
「お~、まぁざっと こんなもんだ」
 そう言ってヒイラギは笑っている。ともかく一安心だ。

「ほれ、マサヨシの番だろ?」
 そう言いながらヒイラギが宝箱の前を譲ってくれる。そう言えば随分と久しぶりの宝箱だな。…というか、大陸に来てから初めてか? そっと宝箱を開けると……

「ん? 『弓』?」
 宝箱から取り出したモノを、じっと見てみつめてみると…、

《名:弓(不確定名) 所有者:マサヨシ 》

「弓かぁ……」
「弓か……」
「弓でした……」
 3人とも微妙な雰囲気である。 ご愁傷様―― …な感じだ。

 「………」TJOでは『飛び道具』の『弾』(この場合は『矢』であるが)は、『別装備』という扱いである。ゲームでよくある様に、『無限にどこかから補充』されて『永遠に連射出来る』…という、『ゆとり仕様では無い』のだ。……まぁヤマコウだしな。つまり、『弓』という武器と、『矢』という武器? …の2つが揃っていなければ使用出来ない。

 そしてご存知? の通り、TJOには『品質、クオリティ』というモノが存在する。
 例えば、『木の弓-9』と『鋼の矢+9』という組み合わせだと、『微妙な結果になる』し、逆に、『鋼の弓+9』と『木の矢-9』などでも同様に『微妙な結果』になってしまう。
 ようするに、『どちらも≪それなりの品質≫のモノを用意』しなければならないのだ。

 そして厄介な事に、ほとんどの弾(矢)などには『消失率』的なモノが設定されている。
 TJOには -9 ~ 0 ~ +9までの品質があり、この『矢』の消失する確率は、
『+9弓』&『+9矢』の、TJO攻略サイトで俗にいう『+18弓矢』の状態を頂点として、
『-9弓』&『-9矢』の『-18弓矢』…状態まで『37段階』が存在する。
 その中でどうにか≪まとも≫に戦えるのは、「合計『+9弓矢』状態以上である」…と言われている。ちなみにご想像の通り? 『+18弓矢』状態では消失せず、『-18弓矢』状態では使用した『矢』は、100%消失する。

 『+9』とは、『最高級品、完全なる品、神話級の品、虹アイテム』である。『弓+9』&『矢+9』…であれば、『完全なる品』&『完全なる品』…であるので当然であろう。

 参考までに、『(0)、ノーマルアイテム、普通品、白アイテム』同士… つまり『弓(0)』と『矢(0)』を使用する…通称『00弓矢』(れーれーゆみや、ゼロゼロゆみや)状態で、『弓職の有志』による検証の結果、回収約75%、消失率約25%だったらしい。つまり『木の弓(0)』&『木の矢(0)』で攻撃すると、『1/4の確率で木の矢(0)は消失』して回収出来ない。

 しかも消失しなかった場合でも、「戦闘終了後のドロップ扱いでの回収」となるため、逃走したり死亡すれば当然回収など出来ない = 品質に関わらず100%消失する。
 さらに…『物理的に外してしまった』場合は、残念ながら『100%消失』扱いとなる。
 こればかりは『+18弓矢』でも例外では無い。≪装備は≫『完全なる品』だったのだ。『完全で無かった』本人が悪い。(+9矢を外して、血の涙を流した弓職も…)


 『弾』や『矢』には、1発、1本毎に、品質がある。
 そしてNPCが販売しているのは、『0、白、基本』と呼ばれる、『ノーマルアイテムのみ』だ。つまり「強力なボスに備えて、『オリハルコンの矢+9』を大量に用意したい」…などと考えても、どれだけの財産と手間(オークション等)とコネが必要となるか? 見当もつかない。しかも、その高価で貴重な『矢』も、使い方によっては≪呆気なく消失する≫のである。

 そんな理由で通常時はNPCから買える『ノーマルアイテム、木の矢(0)』…などを持ち歩くわけだが、当然『威力』も『命中率』も低く、『消失率』も高い。
 しかも『インベントリは×99まで』である上に、『装備出来る矢』は『2本まで』である。2本撃っては取り出して『装備』して撃つ必要がある。

 『ペット(×9999個スタック可能)』に持たせておけば、戦闘後に『インベントリ』に、また99個補充しておけば良いが、戦闘中に『弾切れ』してしまう可能性を考えれば、『木の矢』、『鉄の矢』、『鋼の矢』…など、ある程度は用意しておかなければならないだろう。

 また当然であるが、使用する度に、『弓』も『矢』も『耐久度』が下がる。
 『矢』の場合は『特に耐久度が低く』、消失しなかったとしても、攻撃時の耐久度の低下によって、品質が下がってしまう …という事がある。

 これらの事からゲーム時代に『弓職』の道を選んだ者は、『+7弓』に『+3~+6矢』を使用する…というスタイルが研究の結果≪おすすめ≫されていた。
 しかし『+7弓』とて非常に貴重で高価であり、長期遠征で『弾(矢)不足』にならない様に、大量の『+3~+6矢』を用意するのは困難を極めた。
 安物の矢を使用すれば威力も命中率も低く、消失も速い。『威力が無い』という事は戦闘が長引き、余計に矢を消耗する。

 この様にTJO世界には『遠距離武器』も存在して対処等も研究されているが、遠距離武器に対する反応は冷ややかであった。ただし「財産に糸目をつけず『+18弓矢』を惜しみなく使用するのであれば活躍は思うがままだろう」…とも言われており、密かに”夢”見ている者も少なからず存在していた。
 それはつまり『狂戦士』同様、「MPをあまり気にせず、戦闘が継続出来る職だから」…という事であるが、「職的な『条件』、『制約』が緩い代わりに、『財布に大きな負担が掛かる』…という『職』、『武器』であった」 …という事になる。

 まぁ現実世界であっても、『爆弾』一発で 数百~千万、『ミサイル』などは一発1億の世界である。当然それら全て、『当たろうがハズそうが 100%消失する』わけだ。(『不発弾』として残っても、自分達がすぐさま回収出来るわけでは無いだろう)
 飛び道具が高くつくのは『当たり前』なのだ。ヤマコウ〔※1〕が容赦するハズが無い。


 ……まぁそういう訳で、TJOの『遠距離職』は あまり人気が無い。
 『遠距離攻撃』とは、言ってみれば常に『金をばら撒いている』様なモノなので、貧乏人がやっていくには無理があり、豊富な財力を持つなら危険な冒険者より、安全な『商売人』などをしたりするからだ。金を稼ぐために金がかかり、金があれば遠距離職にならなくて良い …という、割と矛盾した職である。
 しかし『遠距離職』は一番、『財力』が『強さ』に影響する職であるため、TJOの中では比較的、『俺TUEEEE…しやすい』、とは言える。だが『不人気職』の装備品は、≪やはり不人気≫なので、まともに 「この『弓』が売れるか?」 …というと厳しいだろう。


 2人が≪微妙な表情≫で俺を見ている中、俺は はじまりの街[スパデズ]の『青銅のブーツ』以降、”久しぶり”の、”大陸初”の、”宝箱アイテム”である… 『弓(不確定名)』を そっと『インベントリ』に収納した。

 ……  ( ´・ω)   (´・ω・`)   (ω・` ) ……


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LV:12(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:4,961G
武器:なし
防具:布の服
所持品:12/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×21、バリ好きー(お得用)90%、樽(中)90%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ、賞金首の首輪[†カムイ†]懸賞金:94,000G、鬼王丸×2、弓(不確定名)


〔※1〕TJO総合統括プロデューサー 山岡 光一 ヤマコウ(通称)(CV:小山力也)
 長所短所、メリットデメリット、リスクリターンといった事を重要視する。
 挑戦者魂チャレンジスピリット開拓精神フロンティアスピリットを評価し、停滞、安定、マンネリを嫌う。TJOの理念に大きく影響を与える人物。

 彼の理念により、ただ得する、ただ損する、何のリスクも無いのに強力、苦労したのに儲けが無い…などといった『理不尽さ』が、ほぼ存在しないゲーム性となっている。強力な攻撃、効果には必ずなんらかのリスク、代償を伴う。
 またゲーム内、ゲーム外を問わず、悪事、犯罪行為には厳しい。過去作でも迷惑行為、RMTチートbotなど、容赦なくBANしてきた実績を持つ。


「ご主人さま~、ゆみはあたり~?」
「そうだなぁ… まぁ『弓』がどうこうもあるが、(不確定名)のアイテムは、『灰色アイテム』(-9~-1)…かも知れないわけだ」
「はいいろ~?」
「壊れたりした粗悪品、まぁゴミだな。しかも -9~-4だと『鑑定』して売ると赤字、つまり損をしてしまう」
「ん~?」

「(不確定名)の付いた装備品は、鑑定してみるまでは、『当たり』か? 『ハズレ』か? 『まだ分からない』って事だ。 ……そう、俺の戦いはこれからだっ」
「ふ~ん?」
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