サウザンド・ジョブ・オンライン ~あるみならい僧侶の話~

アヤマチ☆ユキ

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第2章 出会いの街 編

061 ”夢”の実現は不可能では無い <04/05(金)PM 02:14>

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 ※※※ 注意 ※※※

 ただいま [夢の洞窟] 中です。


 大量だったり、黒かったり、テカってたり…そういうのが苦手な方は、しばらく読み飛ばしていただいた方が良いかと思います。ご注意下さい。

 [夢の洞窟]終了まで『目印』として、『無理矢理サブタイトルに”夢”の文字を付けていこう』と思います。よろしければ参考にして下さい。

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 出会いの街[ヘアルツ]の西(←)の岩山にある[夢の洞窟]を探索中の俺達3人は、『最初の小部屋』で宝箱を2つ、『次の小部屋』で更に2つの宝箱を発見し、『G百足』LV18の急襲を受けるも撃退し、合計4つのアイテムを入手した。
 小部屋を出て北(↑)へと進んだ先のT字路を東(→)に進んだ俺達は、その『中部屋』の中に、さらに3つもの宝箱を発見し、今回の探索の成功を予感する。
 そして宝箱の回収前に『中部屋』の中に居た、大量の『オイシイ』モンスター『Gカマド』LV16を、『条件』を満たした『狂戦士』…ケイ1人の『無双』により一掃したのだった。


「それにしても… やっぱり『条件』が整った時の、『狂戦士』は凄まじいですねぇ」
「だなぁw ま、≪滅多に無い≫んだけどな」
 そう言ってヒイラギは苦笑している。まぁ2人がずっとコンビで冒険しているのであれば、普通なら”あのなかよし3人組”でのシノブさんの様に、『みならい斥候』系である…≪ヒイラギのLVの方が低いはず≫なのだ。
 しかし、実際にはそのヒイラギがLV17で、ケイはLV15である。どんな苦労があったかがうかがい知れる。先ほどの様な、『痛快大暴れ』な状況など、ヒイラギの言う通り『滅多にあるものでは無い』のだろう。


「ま~とにかく回収、回収っと♪」
 ヒイラギはウキウキと『Gカマド』LV16のドロップを回収している。『中部屋』内の床の上は、ドロップのGとアイテムであふれていた。
 ケイは『鉄の大剣』をブンブンと幾度か振った後で、じっと見つめている。『耐久値』をチェックしているのだろう。

 「………」TJOの武器には『耐久値』が設定されている。基本的には”高価”で、”高品質”な物ほど耐久値が高い。また同じグレード(青銅、鉄、鋼等)の物でも、『武器種』によって大きく異なる。ケイの『鉄の大剣』なんかは『耐久値が高い』のだが、『細剣レイピア』の『鉄の細剣』などは『耐久値が低い』。

 TJOでは、『有効打』で無い場合、≪耐久値の減少も大きく≫なる。
 以前の例の様に、硬い堅固な…お堂の鐘を、『鉄の大剣』と『鉄の細剣レイピア』で攻撃する… そんな様子を思い浮かべてもらえれば、イメージしやすいのでは無いかと思う。
 『鉄の細剣』では下手をすると1回で曲がったり折れたりしかねないだろう。(それではゲームにならないので、さすがに『そこまで脆くは無い』が)

 というわけ? で、ここで『鉄の大剣』について解説しておきたい。この『大剣』という武器種は、『切断、衝撃属性』を持ち、『高耐久』で、『重く』、そして『高い』…という特徴がある。
 以前に「『長剣』と『ナイフ』では、必要な原料の量が違い、長くて製造が難しくなるから、価格の逆転現象が起こる」 …といった話をしたのだが、同じ『鉄』製品の値段をいくつか挙げてみよう。

 『鉄のナイフ』が12,000G、『鉄の細剣』と『鉄のメイス』が14,000G、『鉄の剣』が16,000G、『鉄の刀』が18,000G、『鉄の長剣』が20,000Gである。
 そして『鉄の大剣』は 58,000Gもするのだ。『逆転現象』…どころでは無い。
 だがこれでも必要な原料の量から考えれば、かなりお安くなっている。理由としては製造がそう難しくないからだ。要は大雑把な造りをしていて、切れ味もイマイチなのである。

 実際に『攻撃力』として見た場合、値段が3倍ほどするのに『鉄の長剣』とそれほど変わらない。しかも重い(後述)と多くのプレイヤーには不評なのだが、『耐久値』で比べると…

鉄の細剣  40/40
鉄のナイフ 60/60
鉄の刀   60/60
鉄の剣   70/70
鉄の長剣  80/80
鉄のメイス 140/140
鉄の大剣  240/240

 この様な感じである。高価なだけあって『高耐久』で、ちょっとやそっとでは『品質』が下がったりしない。『メンテナンスフリー』とは言わないまでも、戦闘中に、有効打か? 無効打か? などと考えずガンガン攻撃出来るのだ。
(もちろん『有効打』を狙う方が良いのだが、ここでは取り扱いに あまり『神経質』にならなくて良い …つまり『雑に扱っても良い武器』だ…という話である)

 また『切断』属性と『衝撃』属性を備えているため、ある程度は≪相手を選ばず≫に戦う事が出来る。(『スライム』の様に魔法以外あまり効かない対象もいるが)
 もっともそれは『中途半端』という事でもあり、『切断』に特化した武器ほど『クリティカル』が出ず、『打撃、衝撃』に特化した武器ほど、『防御力貫通効果』が無い。
 しかし『中途半端』であるがゆえに、『切断』により部位によって変動するダメージと、『衝撃』による安定したダメージを、≪同時に与えられる≫武器といえる。

 そしてその中途半端な両方の属性を、『狂戦士』の≪凶悪な攻撃補正≫によって増幅して、同時に叩きつけているのが、ケイの戦闘スタイルというわけだ。
 他に『斧』などの同じ『切断、衝撃』系の武器、『メイス』や『ハンマー』などの『打撃、衝撃』系武器、『槍』や『ハルバード』などの『長柄武器ポールウェポン』 …なども『狂戦士』プレイヤーに好まれる。

 もっともTJOには、『同士討ち、FF味方攻撃』による『PKプレイヤーキル』がある。
 考え無しに『広範囲攻撃』の武器を選択して、味方に当ててしまう(誤爆)と、『狂戦士』の≪凶悪な攻撃力≫によって、大抵の場合≪味方プレイヤーは耐え切れず≫『即死』してしまい、即座に『賞金首』に強制転職ジョブチェンジするハメになる。

 確かに『狂戦士』の力で、『ハルバード』などを振り回せば≪周囲の敵を一掃≫出来たりするのだが、不慮の事故などで味方に誤爆する危険性も上がる。
 ケイが『鉄の大剣』を、横に大きく薙いだり、振り回したりせず、上から下、下から上へと、『範囲の狭い』攻撃だけ行っているのは、その辺りを考慮しての事だろう。


「おぉ~ レアドロップも出てんな~♪」
 上機嫌でヒイラギはアイテムとGを回収している。ケイは『鉄の大剣』を背中に背負って、その様子を眺めている。とっくに戦闘BGMは止まっていた。


 「………」ついでに、武器の『装備条件』と『扱い易さ』についても軽く解説しておこう。
 武器には必要STR、必要DEX等の『装備条件』が設定されている。
各ステータスの意味は以前に話した様に以下の様になる。

『STR』(筋力、腕力) =Strength
 攻撃力を上げる、力任せの武器を取り回しやすくなる。鍛冶師等の力仕事全般に影響など

『DEX』(器用、敏捷) =Dexterity
 罠、奇襲の発見、罠解除、回避、精密な動きを要する武器の扱いが旨くなる。生産職全般に影響、クリティカルに影響など

(※以上のデータは、公式サイトの大まかな説明と、攻略サイト有志による検証結果からの推測によるものです)

 例えば… 『必要STR20』の武器が存在し、その武器を『STR20』丁度のプレイヤーが扱った場合の『取り回し易さ』を『基準、基本、普通』とすると、

『STR10』のプレイヤーが扱うと、攻撃速度が遅く、緩慢になる。
『STR30』のプレイヤーが扱うと、攻撃速度が上がり、STR20のプレイヤーより上手に扱う事が出来る。

 『装備条件』の『必要』とは≪”必須”では無く≫、「『普通』に扱うのに『必要』なステータスの目安」に過ぎない …という事だ。
 だから『STR0、DEX0』の俺でも、特殊な装備条件(『聖騎士』専用等)の武器で無ければ、どんな武器種でも≪一応は≫扱える。恐ろしく攻撃速度が遅く、緩慢になるが…

 またSTR、DEXの両方が設定されているような場合、『効果が低い方が適用』される。
 例えば『必要STR30&DEX20』の武器だった場合…
『STR40、DEX10』のプレイヤーだと、『STRは↑10』、『DEXは↓10』となり、『DEX↓10』が参照され『攻撃速度が遅く』なってしまう。
 つまり『低い方に足を引っ張られる』形となる。「『↑10』と『↓10』で、≪差し引き0(ゼロ)≫だから、”普通”に扱える」 …とは『ならない』ので要注意である。
(※そうしてしまうと、STRに強力な補正がかかる『狂戦士』の様な職は、STR+50(MAX)にしておけば、STR、DEX両方の条件があっても、「無理矢理STRだけで扱える」様になってしまうからである)


 ここまでの話でおわかりだろう。『狂戦士』は並外れた『STR補正』を持つ …つまり『装備条件』が『STRだけ』とか、『STR以外は必要値が小さい』ような武器種を選ぶと、武器の性能以上の活躍が出来る。
 『大剣』は『STRだけ』のタイプで、≪必要STRが高い≫ …つまり「筋力、腕力を要求される『重い武器』」であり、『狂戦士』に向いている。
 逆に『細剣』などの『DEXだけ』のタイプで『必要DEXが高い』ような、「器用、敏捷性を要求される『繊細な武器』」を選ぶと、上手く扱えない。

 これらの『装備条件』、仕様などにより、TJOでは『その職≪らしい≫装備』を、プレイヤーが自然と選択する様になっている。(まぁ≪させられている≫…とも言える)

 しかし『DEXに極降り』して『細剣レイピア』で華麗に戦う『狂戦士』というプレイも可能であるし、『STRに極降り』して『鉄の大剣』で大暴れする『大司祭』というプレイも出来る。『ハルバート』をブンブン振り回す『吟遊詩人』にもなれるだろう。

 この辺りはRPGにありがちな「『僧侶』なので『剣』が装備出来ない」、「『魔法使い』なので『斧』は装備出来ない」…という様に、最初から『装備すらさせてもらえない』という風にはなっていない。「なるべく『不可能』や、『出来ない』様にはしたくない」…というヤマコウの考えが出ている。
 とは言え、『セオリー』を外れる『茨の道』である事は、覚悟しなければならない…のであるが…… どうか、夢を追い続けてほしい。ヤマコウも、(俺達の)その姿を心から”応援”してくれている(はずだ …多分?)


「お~い、ちょっといいか?」
 ヒイラギが俺達に向かって「来い来い」と手招きしている。

「どうした?」
「なんですか?」
 呼ばれるままにヒイラギのところに向かうと、足元には『鉄のブーツ』が2つ落ちていた。

「さっき≪1つ落ちてたのを拾った≫から、これで『3つ』なんだ。キリがいいから、お前らも≪1つずつ≫拾っとけ」
 とヒイラギが提案してきた。

 「………」『G竈』の『通常』ドロップは、ご存知? 『竈汁かまどじる』である。
 そして≪立派な足≫が自慢だからなのか… 『レア』が『鉄のブーツ』、『激レア』が『鋼のブーツ』なのだ。つまりこの『中部屋』で「レアドロップが3つも出た」…という事である。まぁ結構な数の『G竈』を倒してたからなぁ。

「そうだな… そうするか」
 とケイが『鉄のブーツ』を1つ拾って『インベントリ』に放り込んだ。俺が迷っていると…

「まぁいいじゃ無ぇか。拾っとけ、拾っとけ」
 とヒイラギが笑いながら俺の肩をバンバンと叩いてきた。
ケイも「拾っとけ」とばかりに、残った『鉄のブーツ』の方をアゴでシャクっている。

「それじゃ有難く頂いておきます」
 あまり遠慮するのもアレなので、いただいておく事にした。
最後に残っていた『鉄のブーツ』を拾って『インベントリ』に収納する。


「よっしゃ。そんじゃ、お楽しみの宝箱だな」
「楽しみですね」
「さっさと開けろ」
 ヒイラギがやはり右隅の方の宝箱に向かって歩いていく。
視界の右下の方へ意識を向けると<04/05(金)PM 02:27>と表示されていた。


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LV:12(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:4,961G
武器:なし
防具:布の服
所持品:13/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×21、バリ好きー(お得用)90%、樽(中)90%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ、賞金首の首輪[†カムイ†]懸賞金:94,000G、鬼王丸×2、弓(不確定名)、鉄のブーツ


「ご主人さま~、しのぶさんのは てつのかたな~?」
「そうだ、タイプで言うと『DEX以外は必要値が小さい』武器。DEXと、少しSTRが必要な武器になる」
「りょうほう~」

「しかし序盤は どのプレイヤーも『みならい』であるし、ステータスも低いから『どんな武器もあまり上手く扱えない』」
「ふ~ん」
「それでも、わざわざ高価な『鉄の刀』を選んでいた = 『転職のため』だろう …『忍者』狙いかな? …という推測だったわけだ」
「にんじゃ~」

「まぁ『鉄の刀』は、はじまりの街[スパデズ]の武器屋で売っているから、『フィールドPOP宝箱』からも出てくる。たまたま『拾った』から使ってただけ… かもしれない」
「えこ~」
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