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第2章 出会いの街 編
078 忍び寄る奴の影?? <04/05(金)PM 07:24>
しおりを挟む出会いの街[ヘアルツ]の西(←)の岩山にある[夢の洞窟]を探索した俺達3人は、出会いの街[ヘアルツ]『南口2前の広場』へと戻ってきた。
そこでいつもの様にそそくさと解散(退散)しようとした俺だったが、ヒイラギに捕まり[ヘアルツ]『中央西』の区画の丁度”中心部”から東(→)にある『銭湯』へと連れられて行き、[夢の洞窟]での疲れ(主に精神的な)を癒してからヒイラギとケイと別れたのだった。
その後、時間が中途半端だった事もあり、そのまま『中央西』区画を散策したのだったが…
◆◆◆ 出会いの街[ヘアルツ]『区画(ブロック)』イメージ図 ◆◆◆
□□ ←北
■□ ←中央
□田 ←南
↑↑
西東
(『中央、西』は、”■”のあたりです。”田”(南東)の中心にクリスタル)
「……ご主人さまぁ~」
「フフフ………… どうした?」
「にやにやして きもい~」
「…キモイ言うな」
ヒイラギとケイと別れてから『中央西』区画の何軒かのプレイヤーショップを見て回った俺は、その中の一店『リトル・ベア』で、『大商人』レオと出会い、ちょっとしたアドバイスと引き替えに今回の探索で得たアイテムや武器をタダで、鑑定してもらった。≪タダ≫である。
「………」武器防具等は(不確定名)であっても『初回鑑定の経験値ボーナス』が無い。そして灰色アイテム(-9~-1)であれば儲けが少なかったり、鑑定にかかる費用より安くて赤字になったりで散々な目に会うのである。
しかし≪タダで鑑定≫となると話は違う。当然経験値にはならないが『鑑定料』がかからなければ、仮に-9~-7で無料引き取り(売却額0G)となったとしても、赤字にだけはならないのだ。ありがとうレオ。
そして… フフフ、赤字どころか今回の探索は大成功だった。
今回の[夢の洞窟]探索での成果は、『ミミック』戦のドロップである『44,100G』、それから宝箱のアイテムが、『弓(不確定名)』、『棒(不確定名)』、『銃(不確定名)』、『瓶(小)(不確定名)』の4つ。それと大量『G竈』LV16をケイが無双した時に、3つドロップした内の1つ、『鉄のブーツ』だ。
その内、鑑定するのは4品だったのだが、鑑定料はやはり1点3,000Gほどだったようだ。つまり本来は鑑定料だけで 約12,000Gも必要だったのだ…ありがとうレオ。
そして、その鑑定結果だが、
…『鋼の弓-2』、『白銀の槍-1』、『リボルバー(44)-2』、『蟻酸』…であった。
まず元々期待していなかった『弓』と『銃』に関しては全く問題が無い。『-2』程度であれば「無料引き取りでは無い」のでラッキーなぐらいだ。『換金アイテム』と考えていいだろう。
罠LVが37だった、期待の『棒』が、『槍』という可も無く不可も無い武器種で、『-1』とそんなに悪く無い物であったので、これは「かなりラッキー」と言える。
運が良ければプレイヤーとの売買が出来るかもしれない。
そしてケイと交換した『瓶(小)』であるが、ヒイラギと予想していた通りの『蟻酸』であったので、悪く無い「初回鑑定の経験値ボーナスが得られた」はずであり、鑑定したレオも…
「蟻酸は人気あるから、いつでも28,000Gで買い取るよ」
…と言ってくれた。いくら人気がある品でも、「売りたい」と思った時に欲しい人を探して売買するのは面倒であるのと、『蟻酸』のNPC販売価格は30,000G。つまり個人売買だと1割引で27,000Gが相場なので「1,000Gも高く買ってくれる」という事だ。ありがとうレオ。無論『道具屋』でNPCに売れば20%、つまり6,000Gにしかならない。おっさんめっ。
(※実の所『蟻酸』はあまり出回っていないため、自力入手も難しい生産職では渋々NPCから定価で購入しているプレイヤーも多く、現在はNPC価格より安ければ飛ぶように売れる状況です)
「も~、ご主人さま~」
またニヤニヤしていたのだろう、ミケネコさんが切なそうな顔で俺を見上げていた。こころなしか耳も尻尾も”ショボン”と、うな垂れているように見える。
「すまんすまん」
腰を落としてアゴの下をコショコショする。確かにこんな道端でニヤニヤしているのも怪しすぎる。視界の右下の方へ意識を向けると<04/05(金)PM 07:29>と表示されていた。ふむ…そろそろ『宝箱チェック』に行くか。
「………」[ヘアルツ]に来てから『フィールドPOP宝箱』も『目ぼしい素材』も見つかって無いので、今後は はじまりの村[スパデズ]より≪朝は早め≫、≪夜は少し遅め≫に開始する事にしてみようと思う。出会いの街[ヘアルツ]はプレイヤーが多く、こういった活動の時間も少し調整が必要だろう。
「それじゃクリスタルで『LVUPチェック』してから宝箱を探しに行く。その後で晩飯だ」
「”たからばこ”と、”くろいの”と、”ふくろ”と、”くびわ”みつけて、しあわせになる~」
ミケネコさんが気合いを入れ直し、うな垂れていた耳もピンと立ち、尻尾もゆらゆらさせている。う~む、良い事ではあるのだが、少々人聞きが悪い。これでは『墓荒らし一味』の会話だ。腰を落としたままワシャワシャと撫でる振りをしながら小声でささやく。
「ミケネコ、これからは”くろいの”と”袋”と”首輪”も全部まとめて”宝箱”にしよう」
「は~い?」
例によってミケネコはよくわかってないようだが…… 返事だけは良い。
「よし、それじゃもう1回やり直しだ。…クリスタルで『LVUPチェック』してから宝箱を探しに行く。その後で晩飯だ」
「”たからばこ”みつけて、しあわせになる~」
「いいぞ、その意気だ」
「えへへ~」
ちょっと不安になったが一応≪意図≫は理解してくれた様だ。一通りワシャワシャしてから立ち上がり、LVUPのチェックをするべく『南東』区画の中心にあるクリスタルに向かって歩き始めた。
・
・
・
「人が多いな…」
午後8時前という時間なのもあって、クリスタル付近に戻ってくるとプレイヤーで一杯だった。とりあえず踏まれないようミケネコを肩に乗せて、人波にあわせてクリスタルへとゆっくり進む。なんという牛歩デー… もう牛歩はいいよ、ウンザリだよ。
「………」とは言え、LVUPの期待薄…な時であれば、チェックなんか後回しにしたいところであるが、今回はLVUPは確実だろう。
「開票率0%で 無所属新人の? マサヨシさん当確です」…というぐらい確実だ。(アレいつも思ってたんだが、それもう開票しないで良くね? なんなの? 0%って?)
LVUPすれば微強化されるし、ボーナスパラメータを振ってHPを増やせば、より安全性が増し、さらに今後の行動の選択肢も増える。それにまぁ単純に楽しみでもある。
この時ばかりは、ひっきり無しに携帯、スマホの『新着メールの問い合わせ』をしていた人の気持ちも、まぁわからないでも無い…いややっぱりわからん、ちょっと落ち着け。
そんな どうでもいい事を考えていると俺の番? がやって来た。
他の人に合わせてクリスタルにペターっと触れる。そして「あれ~?」という風に首を傾げながら『南口1』の方へと歩いていく。
落胆しながら歩く俺の目の前にシステムメッセージが表示され、ファンファーレが頭に響き渡る。
《おめでとうございます!LVが上昇しました! LV12 →LV13》
《おめでとうございます!LVが上昇しました! LV13 →LV14》
《おめでとうございます!LVが上昇しました! LV14 →LV15》
《おめでとうございます!LVが上昇しました! LV15 →LV16》
………………は?
ミケネコを肩に乗せたまま『南口1前の広場』に到着した俺は、思わず広場の隅のベンチに座り、念の為ステータスを確認する。
LV:16(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
「……は?」
思わず口に出た。いやいやいやいや、おかしい。おかしいですよ、糧品さん!
(言うまでも無いかと思うが、「あれ~?」も落胆も演技だ。俺の半分は嘘(フェイク)で出来ています)
「………」TJOはLV10以降はどんどんLVが上がり辛くなる。LV50近くともなると普通のRPGしか知らない人だと「これバグってんじゃないの? 本当に経験値入ってんの?」ってキレ出すレベルでマゾくなるのだ。当然すでにその兆候は現れているはずで、こんなにホイホイとLVが上がるわけが無い。
「女神様? が、俺にだけ(大した理由も無く)、【天賦の才】:必要経験値が少なくなる。…みたいなスキルをくれたに違いない、ラッキー」……とか、そういうのはヤマコウ〔※1〕に限ってはありえない、ナッシングだ。
(仮にあったとしたら、「※その代償として最大LVが80(通常は100)になる」…とか、そんな強烈なデメリットが付いてくる。奴はそういう男だ)
怖い… 理由のはっきりしない良い事、幸運…みたいなのは危ない。
『奴』はメリットだけを与えてくれる存在じゃない。裏がある。理由がある。デメリットがある。何かがある、見落としている”何か”が……
つらくてキツイ[夢の洞窟]探索を終え、[ヘアルツ]に帰還してからルンルン気分(死語)で、本日のつらかった冒険の対価(銭湯での休養、獲得したアイテム、上昇したLV)を確認していた俺だったが、突如降って湧いた『ヤマコウの精神攻撃』により、俺は南口1のベンチに座り、ミケネコを肩に乗せたまま、うんうんと頭を悩ませるハメになったのだった。
-------------------------------------------------------------------------
LV:16(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:49,061G
武器:なし
防具:布の服
所持品:16/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×21、バリ好きー(お得用)90%、樽(中)90%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ、賞金首の首輪[†カムイ†]懸賞金:94,000G、鬼王丸×2、鉄のブーツ、鋼の弓-2、白銀の槍-1、リボルバー(44)-2、蟻酸
〔※1〕TJO総合統括プロデューサー 山岡 光一 ヤマコウ(通称)(CV:小山力也)
長所短所、メリットデメリット、リスクリターンといった事を重要視する。
挑戦者魂、開拓精神を評価し、停滞、安定、マンネリを嫌う。TJOの理念に大きく影響を与える人物。
彼の理念により、ただ得する、ただ損する、何のリスクも無いのに強力、苦労したのに儲けが無い…などといった『理不尽さ』が、ほぼ存在しないゲーム性となっている。強力な攻撃、効果には必ずなんらかのリスク、代償を伴う。
またゲーム内、ゲーム外を問わず、悪事、犯罪行為には厳しい。過去作でも迷惑行為、RMTチートbotなど、容赦なくBANしてきた実績を持つ。
「ご主人さま~、れべるあっぷ うれしくないの~?」
「いや嬉しい。嬉しいが、上がりすぎ…なのが不気味だ」
「LVあがりすぎ~」
「そうだ」
「やっぱり、らいげつには100になる~?」
「いや、そんなはずは無い! 俺は… 俺達は、ヤマコウを信頼している。絶対に何か”理由”か”罠”がある、無いはずが無い! なんだ… 何が???」
「ご主人さまが、いってんして”ぶるー”だよー」
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