突然、母が死にました。

山王 由二

文字の大きさ
22 / 24

43日目(前)

しおりを挟む
 いよいよ49日法要当日となった。
 本来の49日は約一週間ほど先なのだが、その日は平日のため、休みが取れる休日に法要を前倒ししたのだ。こういう法要というのは、遅らせるのはよろしくないが前倒しにする分には問題ないのである。(祖母が亡くなった時は、告別式と火葬、それからこの49日を同じ日に行っていた)

 北海道へ日帰りで向かうため(兄は一泊二日で前日入りしていたが)早朝、8時半の飛行機で羽田を飛び立つことに。
 父はリムジンバスで行くと言うことで、持っていた予備のスイカに資金を入れて父に渡し、私自身は朝6時過ぎの電車に乗って羽田へと向かう。私は長距離バスというのを信用していないのだ。高速で渋滞にはまると一切身動き修整とれないあたりが嫌なのである。時間とか気にしない余裕ある旅ならバスは良いんだけどね? 乗り継ぎとか気にしなくてすむし。

 羽田で父と合流し、何十年か振りで飛行機に乗る父に現代の搭乗事情(タッチアンドゴーとかチケットカウンターいかずに直接保安検査場に行くとか、そう言うの)を軽く説明し、探知機にひっかからないよう貴金属類は外しておけと言って、保安検査場のゲートをくぐった――ら、ウチの親父様、お約束通りに探知機に引っかかりやがりましたよ。
 のっけからやらかす父に軽くため息吐きながら搭乗ゲートへ。
 早朝便にもかかわらず北海道行きの便は満席で、早めに着いたのにゲート前の待合席は7割方埋まっていた。(中には早くも酒をかっくらっている一団とか居た)

 八時半。飛行機は問題なく定刻通りに空へと旅立ち、こちらも遅れることなく定刻通り――十時に北海道は新千歳空港に到着した。
 ちなみに、飛行機内では、父と私は若干離れた席に座っていた。
 理由は二つ。一つは私が父を毛嫌いしているという身も蓋もない理由から。
 もう一つは、年齢のせいか、それとも膀胱とか肝臓とかその辺の機能が劣化、あるいは悪くなっているのか、うちの父はやたらとトイレが近く、ひどい時には三十分に一回のペースでトイレに行ったりするので、席を立ち易い前にゆとりある席を父に選んだためだ。
 私は最後尾近く。出来れば後ろに誰もいない席がベストである。ゴルゴ的な理由ではなく後ろ居なければ気兼ねなくシート倒せたりするからという単純且つしょーもない理由である。

 飛行機から降りる段になり、席の順番からして当然父が先に降り、遅れて私が降りることになるわけで。
 空港の到着ゲートを父が先、私が若干遅れて歩いていた。が、手荷物など預けていないので荷物待ちなどせずそのまま到着ゲートを出て行けば、そこに父の姿はなく。
 何故か私よりも十分くらい遅れてゲートを出てきた。ちなみに、父を抜いた記憶は一切無い。と言うか、人を抜くと言う行為自体していなかった。
 男がトイレに十分もこもってた? 大っきい方? とか思ったりしたが触れても良いことなど一切無いのでそのままスルー。勝手のわからぬ父を連れてJR線へと向かった。
 ちょうど良いタイミング(ってか、割とギリ)でやってきた空港快速に乗って札幌へ。
 電車内で(マナー違反申し訳ない)兄に連絡を入れ、十一時に札幌に迎えに来てもらうよう伝え、立ったまま・・・・・約一時間、電車に揺られ揺らされながら札幌へと向かった。

 季節はもう春と言っていい時期だったのだが、さすがは北海道きたぐに。車窓から見える景色にはきっちりがっつりと雪が残っていた。しかも、その当時は東京は二十度近く気温があったのに、北海道は一桁。と言うか、四捨五入したら零度になるような気温。しかも外は雨まで降っていて。東京ではえらく奇異な目で見られていた手にしていたコートが実に役に立ったものである。
 
 札幌に降り立った私は兄と再び連絡を取ると、渋滞にはまっていて駅近く行くのがしんどいと言うことで、現在地を訊いてそこまで行くことにした。雨の中を。
 常時持ち歩いている鞄の中に折りたたみの傘を忍ばせているので、雨とか私には問題ない(土砂降りとかは問題大ありになりますが)のだが、父は雨具の用意とかしていなかった。と言うか、防寒着すら持ってきていなかった。北国に行くって言うのに。
 外気温四度でしかも雨。そんな中を礼服しか着てない老人引き連れて歩き回れば風邪を引かれるのは火を見るより明らか。なので、父に傘を渡し(コートはいらないと断られたので、私がそのまま着用した)、私はコートのフードを被って兄と待ち合わせた高架下へと向かった。
 幸い、すぐに兄が借りてきたレンタカーを見つけることが出来たので、そんなに長いこと外で寒い目に会わずにすんだ。
 兄と合流し、流れの悪い休日の札幌の道路(東京に比べれば道はやっぱり広いのだけどね? 三車線の一方通行とか初めて見たし)を走ること十数分、何とか法要が始まる十分前にお世話になるお寺にたどり着いた。
 寺にはすでに、伯母と祖父の妹、それから母の従姉妹が見えられていた。初めて会う(と思ったら、祖父の妹御は私たち姉弟のことを知っていた。と言うか、幼い頃に一度、会っていたらしい)二人と挨拶を交わし、住職を待つ。
 程なくして住職が見えられ、49日法要が執り行われたのだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

処理中です...