突然、母が死にました。

山王 由二

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43日目(中)

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 49日法要では、住職の(なに言ってるのかちんぷんかんぷんな)読経が2~30分ほどあり(その最中に一度焼香をする)、それから最後に49日の意味についてお話をして頂いた。

 亡くなられた人の魂が自らの死を受け入れ、それからゆかりのある人や土地を49日かけて巡り、この世の未練を無くして天へと昇るための法要であり、同時に私たちこの世に残る側も故人に対する悲しみを癒やし、死を受け入れ、天へと昇る魂を見送る。それが49日法要なのだと、住職は仰った。
 それを聞かされた私は、これで、本当に全部終わっちゃったんだなぁ……。と、一抹の悲しみを覚えると同時に、身体からすぅ……と、色々なモノが抜け落ちていったような気がした。

 住職が本堂を立ち去った後、私たちは母の遺骨を持って下の階にある納骨堂へと向かった。
 母の仏壇は祖父母の仏壇の斜め向かいにあった。
 真新しい仏壇に母の遺骨を納め、一人ずつ線香を上げていく。
 それから、やや手間取りながら仏壇の中に色々な仏具をしまい、掃除をすませ、祖父母の仏壇にも手を合わせてお寺を後にした時、時刻は会食の予約時間5分前になっていた。

 …………おもっくそ遅刻しとるやん!

 
 とりあえず、急ぎ予約したお店に電話を入れて10~20分程遅れることを伝え、お寺にタクシーを呼んでもらった(兄の借りたレンタカーでは全員は乗れないので)
 
 遅れること14,5分、お店が入っている札幌駅隣にある大丸に到着。八階にあるレストランエリアに向かった。喪服のままで。

 …………しゃ、しゃーないやん? 法要すませたばっかなんやし。

 と、胸中で居合わせた客に言い訳しながらお店に入り、個室に案内されるなりとりあえずネクタイをとった。
 年配の方ばかりだからと選んだこの日本料理店ーーなだ万茶寮さん。コースの品数がけっこう多く、その頃はもうだいぶ食欲が戻ってきた自分でも、けっこう量があって、きつかった。おいしかったですけどね?
 ーーで、このお店でも、変わらず父は一人ぱかぱかとビールを呑んでいた。脳いっ血で倒れたと言うことを全く理解していないようだった。

 会食も終わり(ドリンク別料金と言うことと、ウチのおっさんがぱかぱかとビール呑みやがってくれたおかげで、6人で約三万円くらいになった。予算、抑え目にしてたのに……)、お店を出たところで親戚二人とは別れ、私たちは伯母とと共に仏壇に飾る花を買いに行った。
 法要に使用した仏花もあったのだけど、それではずっと飾っておくことは出来ないし、そもそもそれ以前に、それでは仏壇の扉を閉じることも出来なくなっていたからだ。

 エスカレーター使って一階ずつ降りながらデパート内を物色。
 地下一階の隅にある花屋に、ちょっと小ぶりな丁度良さげなドライフラワーが並んでいたので、それを購入することに。
 幾つかあるドライフラワーの内の一つに目が止まり、
 あ、これ良いなぁ。と伸びた手はーー

 ¥19800

 の文字を見た瞬間、ピタリっ! と停止。キュルル……と巻き戻されて元の位置まで戻された。
 …………いやぁ、花って高いよねぇ。
 と言うことで、次次点のドライフラワーを選択(それでも八千円したけども)。
 因みに、後で聞けば、兄と伯母もやはり最初にあの¥19800の花に目がいったそうだが、値段を見て候補から除外したらしい。
 まぁともかく、何とか花を購入した私たちは再び、お寺へと戻ったのだが……


 たどり着いた寺の駐車場は、すでに門が閉まっていたのだった。

 

 
 
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