突然、母が死にました。

山王 由二

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40日目

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 その日は北海道へと旅立つ3日前。北海道へ行く前にいくつかの用を片づけておこうと思い、仕事終わりに出かけていた時だった。

 用事を済ませ、疲れた体を電車内に放り込み、吊革にぶら下がっていること約10分。唐突にスマホが着信を知らせた。
 相手先の表示を見れば知らない番号で、かかってきた場所は北海道は旭川から。
 この表示を見た瞬間に、嫌な予感がした。
 旭川と自分を結ぶものと言ったら母方の伯父しかいないのだが、この伯父さん、いろいろと問題を抱えている人だったのだ。
 周りに気を遣いつつ電話に出てみれば――

 「あ、旭川警察の者なんですが――」

 と、悪い予感的中の報せ。
 警察!? また・・補導されたの、あのおじさん!?
 伯父は肉体的に病を抱えているが、精神的にも病を抱えている人で、感情をコントロールできずに暴れて補導されるというのが過去に何度かあり、今回もそれだった。
 こらあかんわ。と、途中の駅で電車を降り、改めて警察の方とお話しすることに。
 警察からまた伯父さんを入院させた方が良いのではないか? と言う提案を受け、承諾。が、入院させるには保証人が必要で、以前入院した時は母が保証人を務めていた。
 今回も母で~といくわけにはいかず、と言ってわたしや兄も具合が悪い。
 実は母が亡くなったまさにその日に伯父が入院することになり、その保証人を母が引き受けていたのだ。
 しかし、その手続きをおこなう前に母は亡くなってしまったため、私が代理で手続きを進めようとしたのだが、甥では血が遠い(ついでに住んでる場所物理的にも遠い)せいか、手続きがちょっと難航したことがあったのだ。
 なので、北海道に戻っている伯母に連絡し、入院の手続きをしてもらうことに。
 それで、とりあえずこの件はひと段落したのだが、ここでふと思ってしまったのだ。
 伯母も病を抱えていて、年齢的にも何かあってもおかしくない。そして、伯父は独り身で妻も子供もいない。つまり、もし伯母に何かあったら私たち兄弟以外に身寄りがなくなってしまうのだ。
 北海道と東京。物理的にもかなり距離がある。何か事が起きてもどんなに急いで駆けつけても軽く4時間はかかる。

 …………どうなんのよさ、この先。

 と、一抹以上の不安を身裡に抱え込みながら、やってきた電車に乗り込んだのだった。
 
 
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