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続々.雪豹くんと新しい家族
3-25.宿るもの
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お腹がぽかぽか温かい。するりと撫でると、ぽっこりとした感触がある。
(まだ、アークに注いでもらったものが、たくさんあるのかな……)
それが嬉しくて幸せで、スノウは頬を緩めた。
優しく撫でて、大切に抱きしめる。アークに与えてもらった温もりを、ひとつも取り零さないように。
『みー、みー』
どこかで子猫のような声がした気がする。
それを疑問に感じたけれど、その声に愛しさが湧き上がり、すぐに忘れてしまった。
『クルル』
声が増えた。これはなんだろう。よく分からないけれど、すごく可愛い。
ふふ、と微笑むと、二つの声に喜びが滲んだ。
『みー!』
『クルルッ!』
「可愛い、ね……」
ふっくらとしたお腹を撫でる。
不思議と、そこを愛すれば声の主たちがさらに喜んでくれるのだと理解していた。
「……何が可愛いって?」
「んぅ……?」
不意に聞こえた声に、重い瞼を上げる。
カーテンの隙間から差し込む光で、アークの髪がキラキラと輝いていた。夕陽色の瞳がスノウを映して優しく瞬く。
それをもっと近くで見たくて、ぷるぷると震える手を伸ばした。
近づいてきた頬を撫でる。心地よさそうに目を細める様は、まるで猫のようだった。
(猫科なのは、僕の方なんだけど……)
ふふっ、と微笑む。
アークは軽く片眉を上げてスノウをじろりと見下ろした後、ちゅぅ、唇に吸い付いてきた。
「んぅ……アーク、もう、だめ……」
散々愛された身体は、そんな小さな接触でも容易に熱を高ぶらせる。でも、体力は底をついていて、アークを受け入れられるとは思えなかった。
「もう少しだけ……」
「ん、ぁ……アーク、止まらなく、なるでしょ……っ」
欲へと駆り立てきた甘やかな香りは、今はひっそりと静かな気配を漂わせる。もう発情期が終わったのだ。
愛されている間の記憶がほとんどない。それは少し寂しいけれど、身体に残る愛の残滓が幸福感をもたらした。
「――お仕事は?」
軽く頬を押し、離れたアークの瞳を覗き込む。
不貞腐れているのが分かって、こみ上げる笑いを必死にこらえた。
(僕の番は、なんて可愛いんだろう)
言葉にしたらさらに機嫌を悪くさせると、スノウは朧な記憶で理解して、きゅっと口を噤む。
でも、アークには伝わってしまったみたいで、拗ねた顔で頬に甘噛みされた。
「んっ」
「……今日から、執務再開だ」
「何日お休みしたのかな」
「んー……七日くらいか」
スノウはパチパチと目を瞬かせた。
七日。それは随分とたくさん愛してもらったようだ。溜まっている執務はどれほどだろう。代わりにこなしてくれているはずのロウエンが、疲労困憊でないといいのだけれど。
「明日には、僕もお仕事できるかなぁ」
「無理はするな。ゆっくり身体を休めたらいい」
労るようにお腹を撫でられて、その気持ちよさにうっとりと目を細める。
どこかから『にーにー』『クルル』と喜びに満ちた声が聞こえてくる気がした。
「……うん、そうする」
アークの手に手を重ねる。大事に、大事にお腹を抱えて、スノウはふわりと微笑んだ。
すぐに、じぃっと探るような眼差しを感じて、アークの顔を見上げる。
「どうしたの?」
「……スノウは、もう、分かっているようだな」
「うん。二人」
「二人?」
意外なことに、アークの声に驚きが滲んでいた。
スノウはその理由が分からなくて、小さく首を傾げる。
「雪豹と竜の子が生まれるよ」
「……そうか」
アークはスノウのお腹をちらりと見下ろして、小さく微笑む。否定の言葉は一切なく、お腹を撫でる手は優しいいたわりに満ちていた。
「――やはり、母親側と子の繋がりは強いのだろうな」
「どういうこと?」
悔しそうに、拗ねたように呟かれても、スノウはその意味がよく分からない。
でも、アークが子どもに嫉妬している気配は察知できた。いくらなんでも早すぎる。まだ卵の形さえないかもしれないのに。
「……やはり、俺だけのスノウでいてほしい」
ため息混じりにそう囁くも、アークはスノウのお腹にちゅ、と口づけて愛しそうに微笑んだ。
「ふふっ……僕は、アークの唯一の番だよ」
独占欲の強い、スノウの愛しい番。
密かに葛藤しながらも、アークはスノウの全てを包み込み愛してくれる。その温もりを感じて、スノウは幸せでいっぱいだった。
(まだ、アークに注いでもらったものが、たくさんあるのかな……)
それが嬉しくて幸せで、スノウは頬を緩めた。
優しく撫でて、大切に抱きしめる。アークに与えてもらった温もりを、ひとつも取り零さないように。
『みー、みー』
どこかで子猫のような声がした気がする。
それを疑問に感じたけれど、その声に愛しさが湧き上がり、すぐに忘れてしまった。
『クルル』
声が増えた。これはなんだろう。よく分からないけれど、すごく可愛い。
ふふ、と微笑むと、二つの声に喜びが滲んだ。
『みー!』
『クルルッ!』
「可愛い、ね……」
ふっくらとしたお腹を撫でる。
不思議と、そこを愛すれば声の主たちがさらに喜んでくれるのだと理解していた。
「……何が可愛いって?」
「んぅ……?」
不意に聞こえた声に、重い瞼を上げる。
カーテンの隙間から差し込む光で、アークの髪がキラキラと輝いていた。夕陽色の瞳がスノウを映して優しく瞬く。
それをもっと近くで見たくて、ぷるぷると震える手を伸ばした。
近づいてきた頬を撫でる。心地よさそうに目を細める様は、まるで猫のようだった。
(猫科なのは、僕の方なんだけど……)
ふふっ、と微笑む。
アークは軽く片眉を上げてスノウをじろりと見下ろした後、ちゅぅ、唇に吸い付いてきた。
「んぅ……アーク、もう、だめ……」
散々愛された身体は、そんな小さな接触でも容易に熱を高ぶらせる。でも、体力は底をついていて、アークを受け入れられるとは思えなかった。
「もう少しだけ……」
「ん、ぁ……アーク、止まらなく、なるでしょ……っ」
欲へと駆り立てきた甘やかな香りは、今はひっそりと静かな気配を漂わせる。もう発情期が終わったのだ。
愛されている間の記憶がほとんどない。それは少し寂しいけれど、身体に残る愛の残滓が幸福感をもたらした。
「――お仕事は?」
軽く頬を押し、離れたアークの瞳を覗き込む。
不貞腐れているのが分かって、こみ上げる笑いを必死にこらえた。
(僕の番は、なんて可愛いんだろう)
言葉にしたらさらに機嫌を悪くさせると、スノウは朧な記憶で理解して、きゅっと口を噤む。
でも、アークには伝わってしまったみたいで、拗ねた顔で頬に甘噛みされた。
「んっ」
「……今日から、執務再開だ」
「何日お休みしたのかな」
「んー……七日くらいか」
スノウはパチパチと目を瞬かせた。
七日。それは随分とたくさん愛してもらったようだ。溜まっている執務はどれほどだろう。代わりにこなしてくれているはずのロウエンが、疲労困憊でないといいのだけれど。
「明日には、僕もお仕事できるかなぁ」
「無理はするな。ゆっくり身体を休めたらいい」
労るようにお腹を撫でられて、その気持ちよさにうっとりと目を細める。
どこかから『にーにー』『クルル』と喜びに満ちた声が聞こえてくる気がした。
「……うん、そうする」
アークの手に手を重ねる。大事に、大事にお腹を抱えて、スノウはふわりと微笑んだ。
すぐに、じぃっと探るような眼差しを感じて、アークの顔を見上げる。
「どうしたの?」
「……スノウは、もう、分かっているようだな」
「うん。二人」
「二人?」
意外なことに、アークの声に驚きが滲んでいた。
スノウはその理由が分からなくて、小さく首を傾げる。
「雪豹と竜の子が生まれるよ」
「……そうか」
アークはスノウのお腹をちらりと見下ろして、小さく微笑む。否定の言葉は一切なく、お腹を撫でる手は優しいいたわりに満ちていた。
「――やはり、母親側と子の繋がりは強いのだろうな」
「どういうこと?」
悔しそうに、拗ねたように呟かれても、スノウはその意味がよく分からない。
でも、アークが子どもに嫉妬している気配は察知できた。いくらなんでも早すぎる。まだ卵の形さえないかもしれないのに。
「……やはり、俺だけのスノウでいてほしい」
ため息混じりにそう囁くも、アークはスノウのお腹にちゅ、と口づけて愛しそうに微笑んだ。
「ふふっ……僕は、アークの唯一の番だよ」
独占欲の強い、スノウの愛しい番。
密かに葛藤しながらも、アークはスノウの全てを包み込み愛してくれる。その温もりを感じて、スノウは幸せでいっぱいだった。
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