貧乏子爵令息のオメガは王弟殿下に溺愛されているようです

asagi

文字の大きさ
93 / 113
Ⅱ-ⅲ.あなたに満たされる

2−32.熱に溺れる

しおりを挟む
 思考力が溶けてなくなったような感じだ。

 ふと目覚めて、体内に番の熱がないことを感じると、ひどい悲しみに襲われた。

「ジルさまっ……ジルさま、っ」
「フラン、俺はここにいる」

 重い目蓋を開ける労力を惜しんで、必死に声を上げる。掠れた声は決して聞き心地が良くないだろうと分かっているのに、それを恥じる余裕さえなかった。

 すぐさま返ってきた声に手を伸ばす。
 しっかりと握り返されたことで、少しだけ安心した。でも、まだ足りない。もっと熱で満たして。

 ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
 それを拭うように触れる唇に、『そこじゃない』と思いながら顔を動かした。笑いを含んだ吐息が唇に触れ、しっとりと口付けられる。気持ちいい。

「ん、ぅ」
「……また熱くなってきているな」

 間近で低く囁くような声がした。
 自分の身体がどんどん熱を増していくのはわかってる。それをどうしたらいいのかも。

「ジルさまっ」

 離れようとする熱を追って、手を伸ばした。ジル様の首に腕を巻き付け、抱き寄せる。
 もっとキスをして。たくさんの愛をちょうだい。

「フラン、まずは食事をしよう」
「やっ……ジルさま、ね。おねがいっ」

 膝上に抱き上げられたけど、今はそんな穏やかな触れ合いよりも、もっと激しいものがほしい。
 ジル様の熱く硬いものに、はしたなくも身体を擦り寄せ、再び中に埋めてもらえるよう願った。早く満たしてほしいのだ。

「っ……くそっ」

 ジル様らしくない口調で罵る先は、おそらくジル様自身。
 理性の箍をなんとか保とうとしている抵抗に気づきながらも、僕はそれを壊すために耳元で囁く。

「ジルさま、だいすき。もっと、ちょうだい。たくさん、そそいで。ね、ここ、いっぱいに――」

 ジル様の手を取り下腹部に押し当てる。
 なんだか前にもした気がする。これでジル様が動いてくれるんだって、もうわかってるんだ。

「……フラン、あのな。発情期ヒートに入って、もう一日以上経ってる」

 呻くような声は滾る欲望を必死に抑えつけているようだ。
 そんな僅かに残った冷静さが憎らしい。僕はジル様に溺れていたいんだ。現実なんて思い出させないで。

「ジルさま、おねがいっ」
「ぐっ……こんなのは、卑怯だ……」

 既にジル様の形にあわせて緩んだ中を、熱く硬い塊が埋めた。
 その充溢感に身体が震える。あぁ、と感じ入った声が、意識から遠く離れたところで聞こえた。

「――一度だけ、したら、食事をとる。フラン、約束しよう」
「ん、ぅん、うごいて」

 熱に浮かされるあまり、何を言われているかあまり理解できなかったけど、早くジル様の欲をたっぷり味わわせてもらいたくて、ひとまず頷いた。

「はぁ……俺は、アルファ失格だ……」

 ジル様は反省するように呟きながらも、僕が求めるままに身体を揺さぶってくれる。
 最奥を突かれる度に、頭の中が真っ白になるような心地がした。

 幸せだ。このまま死んでもいい。
 そんな思考が喘ぎ声に紛れてこぼれ落ちてしまったらしく、ジル様がピタリと止まった。

「やぁ、あ、もっと、っ」
「死なせるつもりはないぞ」
「うんっ、わかってる、だから、はやく、ちょうだい」
「本当に分かってるのか?」

 咎めるように鼻先を噛まれて、薄く目を開けた。
 熱の滲んだ薄青の瞳を見つめて、なんとか微笑む。

「ん……ずっと、いっしょ……」
「……ああ。ずっと一緒だ。俺の運命、愛しい番。俺を置いていかないでくれ」
「ぁ、っ!」

 身体ごと押し上げるようにして、熱が最奥に叩きつけられた。
 声さえ出せないまま、背をのけぞらせて身体を震わせる。ガツガツと突かれ、揺さぶられ、身体はつらいのに、心は幸せでいっぱいだった。

 この時間が永遠に続けばいいのに。
 蕩ける思考の端でそんなことを願いながら、目を伏せてひたすらに快感を追った。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

冷酷なアルファ(氷の将軍)に嫁いだオメガ、実はめちゃくちゃ愛されていた。

水凪しおん
BL
これは、愛を知らなかった二人が、本当の愛を見つけるまでの物語。 国のための「生贄」として、敵国の将軍に嫁いだオメガの王子、ユアン。 彼を待っていたのは、「氷の将軍」と恐れられるアルファ、クロヴィスとの心ない日々だった。 世継ぎを産むための「道具」として扱われ、絶望に暮れるユアン。 しかし、冷たい仮面の下に隠された、不器用な優しさと孤独な瞳。 孤独な夜にかけられた一枚の外套が、凍てついた心を少しずつ溶かし始める。 これは、政略結婚という偽りから始まった、運命の恋。 帝国に渦巻く陰謀に立ち向かう中で、二人は互いを守り、支え合う「共犯者」となる。 偽りの夫婦が、唯一無二の「番」になるまでの軌跡を、どうぞ見届けてください。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【完結】星に焦がれて

白(しろ)
BL
気付いたら八年間囲われてた話、する? わんこ執着攻め×鈍感受け 「お、前、いつから…?」 「最初からだよ。初めて見た時から俺はお前のことが好きだった」  僕、アルデバラン・スタクにはどうしても敵わない男がいた。  家柄も、センスも、才能も、全てを持って生まれてきた天才、シリウス・ルーヴだ。  僕たちは十歳の頃王立の魔法学園で出会った。  シリウスは天才だ。だけど性格は無鉄砲で無計画で大雑把でとにかく甘えた、それに加えて我儘と来た。それに比べて僕は冷静で落ち着いていて、体よりも先に頭が働くタイプだったから気が付けば周りの大人たちの策略にはめられてシリウスの世話係を任されることになっていた。  二人組を作る時も、食事の時も、部屋だって同じのまま十八で学園を卒業する年まで僕たちは常に一緒に居て──そしてそれは就職先でも同じだった。  配属された辺境の地でも僕はシリウスの世話を任され、日々を慌ただしく過ごしていたそんなある日、国境の森に魔物が発生した。それを掃討すべく現場に向かうと何やら魔物の様子がおかしいことに気が付く。  その原因を突き止めたシリウスが掃討に当たったのだが、魔物の攻撃を受けてしまい重傷を負ってしまう。  初めて見るシリウスの姿に僕は動揺し、どうしようもなく不安だった。目を覚ますまでの間何をしていていも気になっていた男が三日振りに目を覚ました時、異変が起きた。 「…シリウス?」 「アルはさ、優しいから」  背中はベッドに押し付けられて、目の前には見たことが無い顔をしたシリウスがいた。  いつだって一等星のように煌めいていた瞳が、仄暗い熱で潤んでいた。とても友人に向ける目では、声では無かった。 「──俺のこと拒めないでしょ?」  おりてきた熱を拒む術を、僕は持っていなかった。  その日を境に、僕たちの関係は変わった。でも、僕にはどうしてシリウスがそんなことをしたのかがわからなかった。    これは気付かないうちに八年間囲われて、向けられている愛の大きさに気付かないまますったもんだする二人のお話。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした

水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」 公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。 婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。 しかし、それは新たな人生の始まりだった。 前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。 そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。 共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。 だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。 彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。 一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。 これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。 痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!

処理中です...