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Ⅱ-ⅲ.あなたに満たされる
2−33.熱冷めやらぬ
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ジル様の熱で揺さぶられて、愛で満たされて。
いつの間にか気絶して。
意識が浮上したかと思えば、再び愛を求めて。
ひたすらそれを繰り返してどれほどの時間が経ったのだろう。
ふと目を覚ますと、久しぶりにまともに思考ができる気がした。
ぱちり、と瞬いた視界に、ジル様の微笑みが映る。
「っ……?」
名を呼ぼうと開いた口は、空気を漏らすだけだった。
咄嗟に喉を手で押さえ、首を傾げる。なんだか痛いというか、変な感じがした。
「水を飲もうか」
フランの状況を察したのか、ジル様がすぐさま動いてくれた。
水差しからコップに注がれる水の、なんと美味しそうなことか。久しぶりに『喉が渇いた』という感覚を味わっている気がした。
コップに手を伸ばそうとしても、まるで自分の身体ではないかのように、ぎこちない動きにしかならない。
それがどうしてなのか考えて、答えに辿り着く前に、ジル様に抱き上げられた。
体勢が変わって、思わず「ぁぅ……」と呻く。
腰から下の感覚がない。ピクリとも動かせる気がしなかった。
その状態に驚き呆然としていると、ジル様の手に頬を支えられる。
逆らうなんて少しも考えられないまま顔を上げると、穏やかな愛情深い目と視線が合った。そのまま近づいてくる瞳を見つめ続ける。
「んぅ……」
しっとりと重ね合わされた唇の合間から、ぬるい水がゆっくりと注ぎ込まれる。
舌を絡め、噎せないように飲み込ませる仕草に、なんだか慣れを感じた。
何度も繰り返し水を飲ませてもらって、ようやく喉の渇きが治まる。
コンッ、と咳払いをして調子を整え、「あー」と声を出してみる。掠れた声に思わず眉が寄った。
「大丈夫か?」
「んん……たぶん、問題はありません……」
気遣わしげなジル様の眼差しに微笑み返しながら、小さく頷く。
違和感はあるけど、そうひどいものではない。おそらく、安静にして過ごせば回復できるだろう。
それにしても、今の状態はどういうことだろうか。
首を傾げながら記憶を辿る。
僕は、起きた途端の熱に気づき、ジル様を呼んだはずだ。沸々と湧き上がる熱は、発情期の証だと思ったから。それを鎮めてくれるのは、番であるジル様しかいない。
――そう、僕たちは、初めて、発情期を共に過ごしたんだ。
「っ……あ」
「どうした?」
かぁ、と熱くなる頬を押さえる。
ジル様が心配した様子で声を掛けてきたけど、それに返事をする余裕がなかった。次々に思い出される記憶の断片に、すっかり翻弄されてしまっていたから。
初めて本格的に味わった発情期は強烈だった。
普段の思考力なんて消え去り、ひたすらに番の愛を求めて喘ぐ時間は、目眩がするほど激しい欲で満たされていた。
たくさん求め、溢れるほどに与えられた。
そのことに幸福感があるのは事実だけど、同時にひどく恥ずかしい。
だって、僕ははしたない仕草で、ジル様の熱を望んだ。
何度突かれて、お腹の中に愛を注がれただろう。それでも欲は尽きず、求め続けた。
気絶から目覚めた時、ジル様に「食事を」と言われたことをうっすらと覚えている。それを嫌がり、行為を求めたことも、なんとなく記憶していた。
最低限の生きるための営みすら拒み、ジル様の愛だけをねだった。それは、あまりにも淫らな獣のよう。
「ジル様……」
「なんだ、フラン」
愛しそうに髪を梳いてくれるジル様を、おそるおそる見上げる。
そのジル様の仕草から、軽蔑されているわけではないし、鬱陶しがられてもいないのだろうと感じて、少しばかりホッとした。
むしろ、これまで以上の愛情を向けられている気がして、不思議になってしまったけど、今はそれよりきちんと話をすることが優先だ。
「……ご迷惑を、おかけしました」
自然と眉尻が下がる。
たくさんの迷惑をかけた自覚がある。それが申し訳なくてたまらなかった。
ジル様は一瞬きょとんとした表情になったけど、すぐに「ああ……」と頷く。
「迷惑なことなんて、まったくなかったが」
「でも、たくさんわがままを言いました」
「確かに可愛いおねだりはされたが――」
何かを思い出した様子で、ジル様がニヤリと笑う。
ちょっぴり嫌な予感がして、身を引いた。すると、そのまま敷布に身体が横たえられる。
「ジル様……?」
上から顔を覗き込むように見つめられて、ぱちぱちと瞬きをしながら見つめ返した。
ジル様の瞳が楽しそうに歪む。
「乱れるフランの姿が可愛らしすぎて、止まれなかった。謝るのは俺の方だ。散々、貪り食ってしまったからな」
「あっ!?」
柔らかに身体を撫でられて、それだけでビクッと身体が震えた。じわりと身体の奥が潤み疼く気がする。
「こんな敏感になって……愛らしいな」
いやらしく笑うジル様を見上げ、火が出そうなほどに熱い顔を隠す余裕がないままに睨みつける。
「……えっち!」
「男なんて、みんなそんなものだ」
覆いかぶさってくるジル様からどうやって逃れるか、頭を悩ませたところでどうしようもないのだと気づくのは、そう先のことではなかった。
いつの間にか気絶して。
意識が浮上したかと思えば、再び愛を求めて。
ひたすらそれを繰り返してどれほどの時間が経ったのだろう。
ふと目を覚ますと、久しぶりにまともに思考ができる気がした。
ぱちり、と瞬いた視界に、ジル様の微笑みが映る。
「っ……?」
名を呼ぼうと開いた口は、空気を漏らすだけだった。
咄嗟に喉を手で押さえ、首を傾げる。なんだか痛いというか、変な感じがした。
「水を飲もうか」
フランの状況を察したのか、ジル様がすぐさま動いてくれた。
水差しからコップに注がれる水の、なんと美味しそうなことか。久しぶりに『喉が渇いた』という感覚を味わっている気がした。
コップに手を伸ばそうとしても、まるで自分の身体ではないかのように、ぎこちない動きにしかならない。
それがどうしてなのか考えて、答えに辿り着く前に、ジル様に抱き上げられた。
体勢が変わって、思わず「ぁぅ……」と呻く。
腰から下の感覚がない。ピクリとも動かせる気がしなかった。
その状態に驚き呆然としていると、ジル様の手に頬を支えられる。
逆らうなんて少しも考えられないまま顔を上げると、穏やかな愛情深い目と視線が合った。そのまま近づいてくる瞳を見つめ続ける。
「んぅ……」
しっとりと重ね合わされた唇の合間から、ぬるい水がゆっくりと注ぎ込まれる。
舌を絡め、噎せないように飲み込ませる仕草に、なんだか慣れを感じた。
何度も繰り返し水を飲ませてもらって、ようやく喉の渇きが治まる。
コンッ、と咳払いをして調子を整え、「あー」と声を出してみる。掠れた声に思わず眉が寄った。
「大丈夫か?」
「んん……たぶん、問題はありません……」
気遣わしげなジル様の眼差しに微笑み返しながら、小さく頷く。
違和感はあるけど、そうひどいものではない。おそらく、安静にして過ごせば回復できるだろう。
それにしても、今の状態はどういうことだろうか。
首を傾げながら記憶を辿る。
僕は、起きた途端の熱に気づき、ジル様を呼んだはずだ。沸々と湧き上がる熱は、発情期の証だと思ったから。それを鎮めてくれるのは、番であるジル様しかいない。
――そう、僕たちは、初めて、発情期を共に過ごしたんだ。
「っ……あ」
「どうした?」
かぁ、と熱くなる頬を押さえる。
ジル様が心配した様子で声を掛けてきたけど、それに返事をする余裕がなかった。次々に思い出される記憶の断片に、すっかり翻弄されてしまっていたから。
初めて本格的に味わった発情期は強烈だった。
普段の思考力なんて消え去り、ひたすらに番の愛を求めて喘ぐ時間は、目眩がするほど激しい欲で満たされていた。
たくさん求め、溢れるほどに与えられた。
そのことに幸福感があるのは事実だけど、同時にひどく恥ずかしい。
だって、僕ははしたない仕草で、ジル様の熱を望んだ。
何度突かれて、お腹の中に愛を注がれただろう。それでも欲は尽きず、求め続けた。
気絶から目覚めた時、ジル様に「食事を」と言われたことをうっすらと覚えている。それを嫌がり、行為を求めたことも、なんとなく記憶していた。
最低限の生きるための営みすら拒み、ジル様の愛だけをねだった。それは、あまりにも淫らな獣のよう。
「ジル様……」
「なんだ、フラン」
愛しそうに髪を梳いてくれるジル様を、おそるおそる見上げる。
そのジル様の仕草から、軽蔑されているわけではないし、鬱陶しがられてもいないのだろうと感じて、少しばかりホッとした。
むしろ、これまで以上の愛情を向けられている気がして、不思議になってしまったけど、今はそれよりきちんと話をすることが優先だ。
「……ご迷惑を、おかけしました」
自然と眉尻が下がる。
たくさんの迷惑をかけた自覚がある。それが申し訳なくてたまらなかった。
ジル様は一瞬きょとんとした表情になったけど、すぐに「ああ……」と頷く。
「迷惑なことなんて、まったくなかったが」
「でも、たくさんわがままを言いました」
「確かに可愛いおねだりはされたが――」
何かを思い出した様子で、ジル様がニヤリと笑う。
ちょっぴり嫌な予感がして、身を引いた。すると、そのまま敷布に身体が横たえられる。
「ジル様……?」
上から顔を覗き込むように見つめられて、ぱちぱちと瞬きをしながら見つめ返した。
ジル様の瞳が楽しそうに歪む。
「乱れるフランの姿が可愛らしすぎて、止まれなかった。謝るのは俺の方だ。散々、貪り食ってしまったからな」
「あっ!?」
柔らかに身体を撫でられて、それだけでビクッと身体が震えた。じわりと身体の奥が潤み疼く気がする。
「こんな敏感になって……愛らしいな」
いやらしく笑うジル様を見上げ、火が出そうなほどに熱い顔を隠す余裕がないままに睨みつける。
「……えっち!」
「男なんて、みんなそんなものだ」
覆いかぶさってくるジル様からどうやって逃れるか、頭を悩ませたところでどうしようもないのだと気づくのは、そう先のことではなかった。
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