貧乏子爵令息のオメガは王弟殿下に溺愛されているようです

asagi

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Ⅱ−ⅳ.あなたと過ごす故郷

2−39.屋敷の変化

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 改装されたという僕の部屋は、以前の雰囲気を残しつつ、随分と広くなっていた。隣りにあった部屋との壁を壊したらしい。

 それでも、セレネー領の城よりも狭い部屋なのだから、ジル様は過ごしにくいのではないかな、と少し心配になった。

「ここがフランの部屋か。温かみのある雰囲気だな」
「ありがとうございます。この隣が寝室になっていますので」

 父様の言葉にきょとんとする。

 僕の部屋はひとつで、寝室というものはなかったはずだ。でも、ジル様も過ごす部屋ということで、増やしたらしい。

 よく見れば、部屋の奥の方に扉があった。
 その位置には、もともと小兄様の私室だったはずなんだけど。

「小兄様の部屋はどうしたの?」
「フレデリックの部屋はラシオスの隣に移したよ」
「大兄様の?」

 ボワージア子爵家の長男がラシオス、次男がフレデリックだ。僕は大兄様と小兄様と呼んでいる。

 次期子爵として育てられた大兄様は、父様の私室近くに部屋を持っていた。
 一方で、爵位を継がない小兄様は、いずれ大兄様の側近となる立場として、離れた位置に私室があったのだ。僕も小兄様と同じくである。

 こうして兄弟間でも明確に立場を分けるのは、継承権で混乱を生まないための大切なしきたりだ。
 それなのに、父様はそれをなくしたと言っている。僕が驚くのも当然だろう。

「あー、フランの部屋を整えるにあたって、こちら側を上位にし直したからね。フレデリックの部屋を移動させないわけにはいかなかったんだ」

 父様が苦笑して答える。
 つまり、子爵である父様より、僕やジル様の方が立場が上だから、僕の部屋がある一帯を領主より上の者が使う場所に改装したということだ。
 確かに、小兄様がこちら側にいては問題になる。

「――お付きの方々への部屋も、用意してありますので」
「ありがとうございます」

 父様とマイルスさんが微笑みを交わす。
 ほんの数ヶ月で、随分とたくさんの用意をしてくれていたんだなぁ、と感心した。こうした手配が上手いのは、小兄様かな。

 早速ソファで寛ぐジル様に寄り添って、僕もゆったりと部屋を眺める。

 イリスたちが優雅さを保ちながら忙しなく動き回っているけど、もう旅の間で慣れた光景だから気にしない。

 父様はどうしても手を出したくなってしまうようで、落ち着かなそうだ。
 僕やジル様に付いてくれている人たちの方が、もともとの爵位が高いもんね。

 イリスが用意してくれたお茶がテーブルに並べられたところで、ふと父様に視線を向ける。

「そういえば、大兄様や小兄様はどこにいるの?」

 ジル様への挨拶にも来ないなんて、と僕は少し眉を顰めた。すると、父様が申し訳なさそうな顔でジル様に視線を向けた。

「……先ほど、街の方で騒ぎがありまして、それを静めるために出払っているのです。遠いところまでご足労いただいておりますのに、大変申し訳なく――」
「構わない。お義父君たちが忙しいことは承知の上で来たんだ」

 頷いたジル様と目が合い、苦笑する。
 馬車の中で話していた問題に、父様たちはてんてこ舞いになっているらしいと察した。

 これまで起きなかったような問題が多出しているのだろうから、そうなるのもしかたない。

 僕の方からも家族の不手際をジル様に謝罪しようと思ったけど、それを察した様子で首を横に振られた。

「ジル様」
「フランも、気にするな。俺たちはお義父君たちへの挨拶と避暑に来ただけだからな。――むしろ、忙しいところ騒がせてしまってすまない」

 父様への謝罪を付け足したジル様に、僕はホッとしながら微笑みかけた。
 父様は「滅相もない……!」と慌てている。ジル様に慣れるまでには時間がかかりそうだ。

「では、兄たちを紹介できるのは、晩餐の頃になりますね?」
「楽しみだな」
「晩餐と言いますと、たくさんの食料などもお運びいただきまして、誠にありがとうございます……!」

 ジル様――おそらく実際はマイルスさん――はそんな手配までしていたのだと、驚いてしまった。
 貧しい食事をジル様にさせるわけにはいかないから当然かもしれないけど。

「連れてきた料理人が上手くやってくれるといいが」
「既に調理場に行き、腕をふるっているようですよ」

 ジル様の言葉に、マイルスさんが答える。
 晩餐はセレネー領の城並みのクオリティで用意されるのが決まったようなものだ。

 貴族的な食事に慣れていない父様や兄様たちがどんな反応をするか、少しだけ楽しみだ。
 僕はジル様と一緒にいて随分と驚かされたから、父様たちにも同じ気分を味わってほしいな。
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