異世界転移したら、スマホが超優秀美少女に~ギルド本部にも追放されたので孤高の英雄を目指します~

流転

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六章

想い

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 シシリの言い方は、捉え方によって意味がまるっきり違ってくる。私達の・・・戦争。
 即ち、二人だけの戦争。アルトリア、いや世界とは関係なく二人だけの。

 辰巳が、自問自答で審議を行なっている中で、シシリは悠然と顔を仰ぎ、上を見ていた。
 無言で流れる時間を、息苦しく感じた辰巳は喉を鳴らしたのをキッカケに口を開く。

「そーや、この景色を俺は前に見た気がするんだ」

「──前?」

「ああ。ベルフェゴールと対峙した時も、似たような景色だった。宇宙のような、それでいて、どこか暖かいような……。そうだな、暖かいに関しちゃコッチに来た時に感じたソレとも似ている」

「そう。マスターは、前の世界……嫌いだった?」

 小さい声で問いかけた少女。闇で淡く輝く光に灯され、儚げに揺らぐ髪を手櫛で分ける姿は、何かを憂いているのか寂しく感じた。辰巳は、少し見蕩れて反応を数秒遅らせ、相槌を打つ。

「ああ。好きか嫌い。かと言われたら嫌いだった」

 ふと、日本に居た頃を思い出した。

「なんだろうな。別に、そう、別に……虐待を受けていた、とか。虐めにあっていた。とか、ボッチだった、とかじゃないんだ。それこそ、異世界転移のラノベ主人公と比べたら逸脱しているぐらい、友達だっていた」

「そう」

「だけど、そこに本当の居場所があるかと、問われたら答えを出せはしないんだ。空席が一つ空いていたとして、たまたま其処に俺が座っただけ」

「──つまり、俺が座らなければ、他の誰かが座っていた。いても居なくても、あの世界じゃ変わらない。ちっぽけな存在。だから、なんだろーな……」

 辰巳は、顎に手を添えて、締め付ける胸の苦しみを感じながら、息を大きく吸い込んだ。

「世界が嫌い……と言うよりも、俺自身が嫌いだった。無色透明の、色を、個性を持たない、クソみたいな俺自身が」

 辰巳は、歪んだ口で自らを嘲笑う。

「だから、この世界に来ても何一つ明確に定まったものがない。シシリは、意志がないと言ったな?」

「はい」

「正に言われた通りだったよ。日本にいた時と、何も変わっちゃいない。誰かに言われたから行動し、誰かに誘われたから応える。そこに、自分は居なかった。自分の色は無かった。
 此処に来た理由だって、本気で世界を救いたかったからじゃない。もっと、浅はかで下らない。愚の骨頂だと言われて然るべきものだ」

 近づいてきたシシリから逃げるように、辰巳は後退りをする。が、伸ばした手は、辰巳の両頬をしっかりと掴む。
 背伸びをして、見上げるシシリの表情は相変わらず無表情。

「マスターは、どうなりたいの。この世界も、自分の色が無いから、ダメ?」

「ダメ……とかは、無いが……。俺が選ばれた理由だって、単に明晰夢が見れるゆえのこと」

「マスター、これだけは言わせて。この世界が必要とする者は、誰一人としていない」

 目を背けた辰巳の視線を手繰り寄せるように、頬に添えた手にシシリは力を込めた。
 頬肉は中央に寄り、見るも残念な表情と化した辰巳を尚もシシリは、瞳に写す。
 辰巳は、シシリの瞳に映る、辛気臭い目をしている自分と目が合い、再び目を逸らした。

「世界にとって、人間は害悪でしかない。だから、世界にとって個人は必要とされていない。とか、マスターの席は誰でもいいとか。どうでもいい」

 無機質な声音が、心に突き刺さる。

「どうでもいいって、そんな」

「だけれど、自ら求めなきゃ座席につく事すら世界は許さない」

「──ねえ、マスター。マスターは、求めた」

「求めた、って何をだよ」

 嫌々と、さながら駄々をこねる子供の様に右から左にシシリの言葉を聞き流す。

「一人になるのを恐れて、その席を」

「でも、それは自分の意志じゃないだろ。大人数にまとわりつく有象無象と何ら変わらない」

「そう。だから、逆の事をすればいい」

「逆?」

 辰巳の問いかけに、シシリは短く頷いた。

「一人になる事を気にせず、我儘に、自分の事だけを考えて」

 一度、手を離したシシリは、勢い良く辰巳の不安な様子を浮かべる顔を勢い良く叩いた。
 甲高い音が短く鳴り、静かなこの場で反響し木霊する。

「誰かに認めて貰う為じゃなく、自分が自分を認められる自分になればいい。結果、マスターが一人になったとしても、私はマスターの傍に居る」

 辰巳は、ヒリヒリと痛む頬を擦り、それでも反発しないのは、痛みに愛を感じたからだ。
 いつも傍に居てくれた、シシリがくれた痛みだからこそ辰巳は感謝をする。

「なら、一層の事、俺が神にでもなるってーのはどーだ?世界を救った英雄が、神になる。誰かに居場所をもらうのではなく、誰かの居場所を俺がつくるってーのはよ」

 少し巫山戯て、辰巳が言う。別に本気ではなかった。人間が神になれるとは、思ってもいない。ただ、気持ちが楽になったのも事実。だからこそ、シシリのいつもの様なボケを突っ込みたくもあった。素直に、感謝するのがこの時だけは恥ずかしかったのだ。

「いいと思う。でも、アルトリアは悲しむ。ゼクスもレルガルドも」

「え、おおう。冗談だよ。神になるとは、思ってない。神になるとは、な?」

 辰巳は、月明かりの如く照らし始めた天辺を見上げる。この先に待ち構えてる困難があるからこそ、シシリは辰巳に問いかけたのだ。と、照らし合わせ至る故に気合を入れた。

「英雄に、なるのは悪くねぇかもな。誰に頼まれた訳でもない、誰も知る事の無い孤高の英雄に」
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