異世界転移したら、スマホが超優秀美少女に~ギルド本部にも追放されたので孤高の英雄を目指します~

流転

文字の大きさ
39 / 41
六章

ルシファー

しおりを挟む
「着いた……か」

 上を見れば、まだ先はありそうだが、停止した為に、二人は扉を押して闇を抜けた。

「やはり、これは塔と言うよりも大樹だな」

 振り返り、眺めると七色に染まった葉が幾重にも生い茂っていた。辰巳は、隙間から射す木漏れ日に目を細め数秒、思考が停止。のち、我に帰り驚愕する。

「おい、どーなってやがるんだ? 何故、空が青い」

 雲海の表面は、風で波打ち幻想的だ。酸素の薄さも気にならないし、不穏な空気が立ち込めてるわけでもない。
 眼前に広がる天界は、荘厳たるモノを感じざるを得ない程に神々しい。加えて、陽の光をり返す雲海は、さながら蛋白石オパールの様に煌びやかで美しかった。幻想的な風景を目の当たりにして、辰巳が感じたのは、それ以上の違和感。

「どうやら、あの昇降装置で登っている間に日を跨いだみたい」

 シシリの発言を疑いもせずに、辰巳は納得をする。

「そーなるだろーな。アルトリア達は大丈夫なんだろーか?」

 雲海には、一直線上の道があり、先には薄らと建物らしきモノが見える。ただそれだけで、かなりの距離はありそうだ。辰巳は、気が遠くなりつつも一歩を踏み出す。

「大丈夫。アルトリアは、強い」

「だよ、な」と、辰巳が、奮起し頑張っている皆を思ってから早、四時間程が過ぎていた。
 初めは、心躍る美しさがあったが慣れとは残酷なもので、それらの感想は一時間余で言葉から消え失せていた。今はただただ、ひたすらに建物を目指すのみ。
 これと言って、今に至るまで変わった事もなく来れているのは運がいいからなのか、はたまた、相手側の思惑なのか。
 怪しむ考えを心の隅で飼いながら、辰巳は深呼吸をした。

「なあ、これいつになったら着くんだ?? まるで、幻覚に惑わされてるみたいだな」

 辰巳が、目を瞑り深呼吸をしたのは、気持ちを切り替えるとか、では無かった。一向に着く気配が無いのは、幻の類なのではないかと思ったからだ。
 当然、深呼吸をした所で現状が打破される訳もなく、目的地は遥か遠方。結局は気を紛らわしたに過ぎない。
 辰巳が再び歩き出そうとした時、シシリが辰巳の鎧を指先で叩いた。

「どうした?」

 振り返ると、シシリは口を開く。

「マスター、正しい。どうやら、私達は敵の術中にハマっているみたい」

「珍しいな」

「珍しい?」

「ああ」

 頷いて、辰巳は話す。

「今まで、いち早く気がついていたお前が、気が付かないなんてよ」

「──デスペル」

 シシリは、自分の胸と辰巳の胸に手を添えてデバフを払う呪文を唱えた。
 青白い光が全身を包むと、妙な脱力感が体を巡る。しかし同時に、体が軽くなる感覚を辰巳は覚えた。

「嘘……だろ?」

 目を疑った。寧ろ、視界に広がる惨状は幻覚で、あってほしいと願う程に無残。
 後ろに感じた気配に振り返ると、四時間程前に置き去りにした筈の大樹がすぐ側にあった。だが、明らかに前回見たモノとは訳が違う。
 葉は枯れ果て、逞しかった幹は窶れていた。これを見て辰巳が感じたものは、病気にかかり枯れてゆく木。
 そして、真っ白い雲は黒く淀み、さながら、汚染された川の様に汚い。

「マスター。感想は後ででもできる。それよりも、前を見て」

 目の前には、幽霊屋敷の如くヒッソリと佇む古びた宮廷があった。

 ───────────────────────

 二人は、宮廷へ足を運び、敵に出くわすことも無く内部へと侵入をした。

「あまりにもスムーズに事が運びすぎて、逆に不気味だな。殺風景な宮廷内も相まって」

 物凄い広い大広間には、シャングリラが吊るされている他、何も無い。物がなければ、者の気配もない。

「取り敢えず、進んでみるか」

 柄を握り、背負っていた槍を振り抜いて辰巳は言った。物音一つしない空間で、辰巳の声は怪しく木霊する。

「はい、マスター」

 二人は、目の前にある階段を上る。足音だけが、この場を埋め尽くし、不気味さを醸し出す。

「後もうちょいで、扉に辿り着くようだ」

 かれこれ、段数にすれば百五十は登ったか。いよいよ、突き当たりに直面する辰巳は、掴んだ柄を力いっぱい握る。

「さあ、入るぞ」

 シシリが反応したのを確認し、眼前で構える、重厚な鉄扉を肩と腕を使い押し開く。

「うるぁあっっ」

 微動だとしない鉄扉を、顔を真っ赤にして踏ん張り力一杯に押し続け、ようやく人一人が隙間が完成した。
 二人が中に入ると、玉座のような席に座る男性が、静かに見ている。敵意をむき出しにする事も、嘲笑うこともなく。
 敵らしからぬ態度が逆に、嫌な予感を辰巳に縫い付け、ここに来て初めて額から汗を浮かばせた。

「堕天使か」

 近寄る事はせずに切っ先を堕天使に向ける。

「安心してくれたまえ。手は出さない。ボクは、今、ただ君達と話がしたいんだ」

 脳に直接語り掛けてくる。情報拡散魔法フォナゾに似た能力をもった類。辰巳は、脳で思った事を強く念じる。相手に届け、と。

「お前は、誰だ?」

「ボクかい? ボクは、帝都・アルヴァアロンの皇帝ルシファーさ。まあ、離れていないでコチラに来るといいよ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

落ちこぼれと追放された俺、実は神々の直系だった件~気づいたら最上位種族を次々救ってハーレムができてた~

えりぽん
ファンタジー
冒険者パーティを追放された青年カイは、力を封じたまま生きていた。 だが、助けた少女の一言をきっかけに、封印されていた「神の血」が覚醒する。 無自覚に最強を通り越した力で魔王国を滅ぼし、竜や精霊、女神たちまでも惹きつけていく――。 「ざまぁ? 俺はただ助けたかっただけなんだけど……」 気づけば、世界中のヒロインたちが彼に跪いていた。

処理中です...