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六章
ルシファー
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「着いた……か」
上を見れば、まだ先はありそうだが、停止した為に、二人は扉を押して闇を抜けた。
「やはり、これは塔と言うよりも大樹だな」
振り返り、眺めると七色に染まった葉が幾重にも生い茂っていた。辰巳は、隙間から射す木漏れ日に目を細め数秒、思考が停止。後、我に帰り驚愕する。
「おい、どーなってやがるんだ? 何故、空が青い」
雲海の表面は、風で波打ち幻想的だ。酸素の薄さも気にならないし、不穏な空気が立ち込めてるわけでもない。
眼前に広がる天界は、荘厳たるモノを感じざるを得ない程に神々しい。加えて、陽の光を輝り返す雲海は、さながら蛋白石の様に煌びやかで美しかった。幻想的な風景を目の当たりにして、辰巳が感じたのは、それ以上の違和感。
「どうやら、あの昇降装置で登っている間に日を跨いだみたい」
シシリの発言を疑いもせずに、辰巳は納得をする。
「そーなるだろーな。アルトリア達は大丈夫なんだろーか?」
雲海には、一直線上の道があり、先には薄らと建物らしきモノが見える。ただそれだけで、かなりの距離はありそうだ。辰巳は、気が遠くなりつつも一歩を踏み出す。
「大丈夫。アルトリアは、強い」
「だよ、な」と、辰巳が、奮起し頑張っている皆を思ってから早、四時間程が過ぎていた。
初めは、心躍る美しさがあったが慣れとは残酷なもので、それらの感想は一時間余で言葉から消え失せていた。今はただただ、ひたすらに建物を目指すのみ。
これと言って、今に至るまで変わった事もなく来れているのは運がいいからなのか、はたまた、相手側の思惑なのか。
怪しむ考えを心の隅で飼いながら、辰巳は深呼吸をした。
「なあ、これいつになったら着くんだ?? まるで、幻覚に惑わされてるみたいだな」
辰巳が、目を瞑り深呼吸をしたのは、気持ちを切り替えるとか、では無かった。一向に着く気配が無いのは、幻の類なのではないかと思ったからだ。
当然、深呼吸をした所で現状が打破される訳もなく、目的地は遥か遠方。結局は気を紛らわしたに過ぎない。
辰巳が再び歩き出そうとした時、シシリが辰巳の鎧を指先で叩いた。
「どうした?」
振り返ると、シシリは口を開く。
「マスター、正しい。どうやら、私達は敵の術中にハマっているみたい」
「珍しいな」
「珍しい?」
「ああ」
頷いて、辰巳は話す。
「今まで、いち早く気がついていたお前が、気が付かないなんてよ」
「──デスペル」
シシリは、自分の胸と辰巳の胸に手を添えてデバフを払う呪文を唱えた。
青白い光が全身を包むと、妙な脱力感が体を巡る。しかし同時に、体が軽くなる感覚を辰巳は覚えた。
「嘘……だろ?」
目を疑った。寧ろ、視界に広がる惨状は幻覚で、あってほしいと願う程に無残。
後ろに感じた気配に振り返ると、四時間程前に置き去りにした筈の大樹がすぐ側にあった。だが、明らかに前回見たモノとは訳が違う。
葉は枯れ果て、逞しかった幹は窶れていた。これを見て辰巳が感じたものは、病気にかかり枯れてゆく木。
そして、真っ白い雲は黒く淀み、さながら、汚染された川の様に汚い。
「マスター。感想は後ででもできる。それよりも、前を見て」
目の前には、幽霊屋敷の如くヒッソリと佇む古びた宮廷があった。
───────────────────────
二人は、宮廷へ足を運び、敵に出くわすことも無く内部へと侵入をした。
「あまりにもスムーズに事が運びすぎて、逆に不気味だな。殺風景な宮廷内も相まって」
物凄い広い大広間には、シャングリラが吊るされている他、何も無い。物がなければ、者の気配もない。
「取り敢えず、進んでみるか」
柄を握り、背負っていた槍を振り抜いて辰巳は言った。物音一つしない空間で、辰巳の声は怪しく木霊する。
「はい、マスター」
二人は、目の前にある階段を上る。足音だけが、この場を埋め尽くし、不気味さを醸し出す。
「後もうちょいで、扉に辿り着くようだ」
かれこれ、段数にすれば百五十は登ったか。いよいよ、突き当たりに直面する辰巳は、掴んだ柄を力いっぱい握る。
「さあ、入るぞ」
シシリが反応したのを確認し、眼前で構える、重厚な鉄扉を肩と腕を使い押し開く。
「うるぁあっっ」
微動だとしない鉄扉を、顔を真っ赤にして踏ん張り力一杯に押し続け、ようやく人一人が隙間が完成した。
二人が中に入ると、玉座のような席に座る男性が、静かに見ている。敵意をむき出しにする事も、嘲笑うこともなく。
敵らしからぬ態度が逆に、嫌な予感を辰巳に縫い付け、ここに来て初めて額から汗を浮かばせた。
「堕天使か」
近寄る事はせずに切っ先を堕天使に向ける。
「安心してくれたまえ。手は出さない。ボクは、今、ただ君達と話がしたいんだ」
脳に直接語り掛けてくる。情報拡散魔法に似た能力をもった類。辰巳は、脳で思った事を強く念じる。相手に届け、と。
「お前は、誰だ?」
「ボクかい? ボクは、帝都・アルヴァアロンの皇帝ルシファーさ。まあ、離れていないでコチラに来るといいよ」
上を見れば、まだ先はありそうだが、停止した為に、二人は扉を押して闇を抜けた。
「やはり、これは塔と言うよりも大樹だな」
振り返り、眺めると七色に染まった葉が幾重にも生い茂っていた。辰巳は、隙間から射す木漏れ日に目を細め数秒、思考が停止。後、我に帰り驚愕する。
「おい、どーなってやがるんだ? 何故、空が青い」
雲海の表面は、風で波打ち幻想的だ。酸素の薄さも気にならないし、不穏な空気が立ち込めてるわけでもない。
眼前に広がる天界は、荘厳たるモノを感じざるを得ない程に神々しい。加えて、陽の光を輝り返す雲海は、さながら蛋白石の様に煌びやかで美しかった。幻想的な風景を目の当たりにして、辰巳が感じたのは、それ以上の違和感。
「どうやら、あの昇降装置で登っている間に日を跨いだみたい」
シシリの発言を疑いもせずに、辰巳は納得をする。
「そーなるだろーな。アルトリア達は大丈夫なんだろーか?」
雲海には、一直線上の道があり、先には薄らと建物らしきモノが見える。ただそれだけで、かなりの距離はありそうだ。辰巳は、気が遠くなりつつも一歩を踏み出す。
「大丈夫。アルトリアは、強い」
「だよ、な」と、辰巳が、奮起し頑張っている皆を思ってから早、四時間程が過ぎていた。
初めは、心躍る美しさがあったが慣れとは残酷なもので、それらの感想は一時間余で言葉から消え失せていた。今はただただ、ひたすらに建物を目指すのみ。
これと言って、今に至るまで変わった事もなく来れているのは運がいいからなのか、はたまた、相手側の思惑なのか。
怪しむ考えを心の隅で飼いながら、辰巳は深呼吸をした。
「なあ、これいつになったら着くんだ?? まるで、幻覚に惑わされてるみたいだな」
辰巳が、目を瞑り深呼吸をしたのは、気持ちを切り替えるとか、では無かった。一向に着く気配が無いのは、幻の類なのではないかと思ったからだ。
当然、深呼吸をした所で現状が打破される訳もなく、目的地は遥か遠方。結局は気を紛らわしたに過ぎない。
辰巳が再び歩き出そうとした時、シシリが辰巳の鎧を指先で叩いた。
「どうした?」
振り返ると、シシリは口を開く。
「マスター、正しい。どうやら、私達は敵の術中にハマっているみたい」
「珍しいな」
「珍しい?」
「ああ」
頷いて、辰巳は話す。
「今まで、いち早く気がついていたお前が、気が付かないなんてよ」
「──デスペル」
シシリは、自分の胸と辰巳の胸に手を添えてデバフを払う呪文を唱えた。
青白い光が全身を包むと、妙な脱力感が体を巡る。しかし同時に、体が軽くなる感覚を辰巳は覚えた。
「嘘……だろ?」
目を疑った。寧ろ、視界に広がる惨状は幻覚で、あってほしいと願う程に無残。
後ろに感じた気配に振り返ると、四時間程前に置き去りにした筈の大樹がすぐ側にあった。だが、明らかに前回見たモノとは訳が違う。
葉は枯れ果て、逞しかった幹は窶れていた。これを見て辰巳が感じたものは、病気にかかり枯れてゆく木。
そして、真っ白い雲は黒く淀み、さながら、汚染された川の様に汚い。
「マスター。感想は後ででもできる。それよりも、前を見て」
目の前には、幽霊屋敷の如くヒッソリと佇む古びた宮廷があった。
───────────────────────
二人は、宮廷へ足を運び、敵に出くわすことも無く内部へと侵入をした。
「あまりにもスムーズに事が運びすぎて、逆に不気味だな。殺風景な宮廷内も相まって」
物凄い広い大広間には、シャングリラが吊るされている他、何も無い。物がなければ、者の気配もない。
「取り敢えず、進んでみるか」
柄を握り、背負っていた槍を振り抜いて辰巳は言った。物音一つしない空間で、辰巳の声は怪しく木霊する。
「はい、マスター」
二人は、目の前にある階段を上る。足音だけが、この場を埋め尽くし、不気味さを醸し出す。
「後もうちょいで、扉に辿り着くようだ」
かれこれ、段数にすれば百五十は登ったか。いよいよ、突き当たりに直面する辰巳は、掴んだ柄を力いっぱい握る。
「さあ、入るぞ」
シシリが反応したのを確認し、眼前で構える、重厚な鉄扉を肩と腕を使い押し開く。
「うるぁあっっ」
微動だとしない鉄扉を、顔を真っ赤にして踏ん張り力一杯に押し続け、ようやく人一人が隙間が完成した。
二人が中に入ると、玉座のような席に座る男性が、静かに見ている。敵意をむき出しにする事も、嘲笑うこともなく。
敵らしからぬ態度が逆に、嫌な予感を辰巳に縫い付け、ここに来て初めて額から汗を浮かばせた。
「堕天使か」
近寄る事はせずに切っ先を堕天使に向ける。
「安心してくれたまえ。手は出さない。ボクは、今、ただ君達と話がしたいんだ」
脳に直接語り掛けてくる。情報拡散魔法に似た能力をもった類。辰巳は、脳で思った事を強く念じる。相手に届け、と。
「お前は、誰だ?」
「ボクかい? ボクは、帝都・アルヴァアロンの皇帝ルシファーさ。まあ、離れていないでコチラに来るといいよ」
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