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六章
愛ゆえに
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「君達は何故ここにいるのかな?」
白い装飾を身にまとった堕天使ルシファーは、神妙な赴きで口にした。
目鼻立ちは良く、アルビノの様な真っ白い肌に、白銀の瞳。目元までかかった銀髪。人離れした風貌は見慣れてはいたが、玉座に腰を据えるルシファーには、ベルフェゴールとは違う威厳さを感じた。声は、透き通っており紳士的。凡そ、悪巧みを行なっている、主犯とは思えないだろう。
現に辰巳は、自分が植え付けていたイメージと、かけ離れ過ぎていた為に、少し反応が遅れてから口を開く。
「何故ッて、分かりきっているだろ」
「分かりきっている?いいや。ボクは分からないね。なら、質問を変えよう。君達は、何を真実だと知っている?」
「お前達が悪だと言う事だ」
ロンの槍の切っ先をルシファーに向けて豪語する。自信を持って、はっきりと力強く、しっかり鼓膜の奥まで行き届くように、と。
「ふふふ」と、話を聞いたルシファーは、微かに口を歪まして笑みを浮かべた。
「君達は、何故、争いが起きると思う?」
「そんな話、今、関係ないだろ」
「君の対応も、一つの理由。少しは、話を、対話をしたらどーだい?」
尚もルシファーは、焦った様子一つ見せずに、足を組み変えて辰巳の反応を伺っている。
隙だらけのルシファーを、射抜けないのは臆していると自覚してソレでも辰巳は威嚇を止めない。気丈に振る舞うのが、最善だと感じていたからだ。
「わからねぇな」
「ふむ。なら、隣の君はなぜだと思う?」
「人には欲望がある」
「いいね。いいよ、面白い。いいかい?争いが起きる理由。それは、自分が知っているモノを真実だと思うからなんだ。
思想を説く説法は、真実であり、疑う余地もない現実。だからこそ、価値観の歪が生まれ、油と水の様に交わる事も無く争いは止まない。その一つに欲望がある。自己超越欲だとかね?」
「それが、今と、なんの関係があるっつーんだ?」
「やれやれ。聞く耳を持たないね。君は傲慢かな? 本来、傲慢はボクの性分なのだけれど。そうだね、簡単に言えば、君が知る真実の中身で僕等の立場が悪役だからこそ、この場で刃を向けているのだろ?」
「真実だろ。まさか、自分達が悪ではないと言いたいのか?地上に暗澹を撒き散らした張本人が」
頭を抱えて、首を左右に振るうルシファーを睨む。
「何故? ──なぜ、ボク達が暗澹を撒き散らしていると、言い切れる?」
辰巳は、今までの事を思い返し、しらを切るルシファーに怒りを滾らせてゆく。
「お前たちが……お前等が、全ての元凶! 死霊を産むのも、人を使いホムンクルスを創るのも全部全部!!」
歯茎をむきだし、辰巳は吠える。逆に、ルシファーは落ち着いた様子。
「確かに、ボクは人を……罪悪人を使い、魂を抜き取りホムンクルスを創るように命じた」
「はん。やっぱりな? 何が真実だよ! 正真正銘の悪だろ」
「マスター、落ち着いて。ルシファーの言葉は何か、引っかかる。──罪悪人?」
「ふむ。やはり、君は察しがいいようだね。君達は常に選択を強いられている。この世界は、魂と物質の限界を超えている。ボクはね……いいや、ボク達はクロノスが愛した、この世界が大好きなんだ」
「矛盾してるだろ。なら、何故、人を殺す? 虫を使い襲わせる?」
「そうだね。一から話をしよう。この世界のありかたを」
ルシファーが、指を鳴らすとベルフェゴールと同様の風景が辺り一帯を包み込んだ。
「ここはね。円環を待つ魂が集う場所さ。言い方を変えれば、この煌めく光一つ一つが魂であり記憶。そして、順番が巡った魂は十字架の大樹にて円環されてゆく。ボク達は、この場を護る使命を持っている──いや、持っていた。と言うべきかな」
ルシファーの表情は、何処か寂しそうにも見れた。
「君達は、何か気が付かないかい?? ──ボクが護る此処はね? 生まれ変わりのできない、穢れきった魂。悪事を行い続けた者の末路さ。はるか昔は、それでも平等に十字架の大樹に、還していた。世界にとって、害悪でしかないと知りながらもね」
ルシファーの口は休まることなく動く。
「穢れた魂は、十字架の大樹にとっては毒素でしかない。だから、ボク達は悪が悪を産む前に処理をしていた。ここで初めて、隠身神界の神々と、クロノスとの意見は食い違い始めた。進化を望まず、流れるがままにする隠身の神々。世界を延命させるために、試行錯誤を行ったクロノス」
「まっ──まってくれ! それじゃあ、まるで隠身の神々が、この世界を滅ぼそうとしているみたいじゃねえか」
「いいや違う。彼等には彼らの決まりがあり秩序がある。その法則に例外を赦してはいけないのだろう。終わりには終わりを、始まりには始まりを、全てに平等でなくてはならないと。故に、進化を望まない。ボク達と違ってね」
「なら、クロノスに会わせてくれよ。話をすれば、信じるのもやぶさかじゃあない」
辰巳が、間髪入れずに話すと、ルシファーは短く頷く。
「いいよ。会わせるのは出来る。でも会話はできないよ」
「なぜだ?」
「彼女は、この世界を延命させるための、一番最初の贄だったからさ」
白い装飾を身にまとった堕天使ルシファーは、神妙な赴きで口にした。
目鼻立ちは良く、アルビノの様な真っ白い肌に、白銀の瞳。目元までかかった銀髪。人離れした風貌は見慣れてはいたが、玉座に腰を据えるルシファーには、ベルフェゴールとは違う威厳さを感じた。声は、透き通っており紳士的。凡そ、悪巧みを行なっている、主犯とは思えないだろう。
現に辰巳は、自分が植え付けていたイメージと、かけ離れ過ぎていた為に、少し反応が遅れてから口を開く。
「何故ッて、分かりきっているだろ」
「分かりきっている?いいや。ボクは分からないね。なら、質問を変えよう。君達は、何を真実だと知っている?」
「お前達が悪だと言う事だ」
ロンの槍の切っ先をルシファーに向けて豪語する。自信を持って、はっきりと力強く、しっかり鼓膜の奥まで行き届くように、と。
「ふふふ」と、話を聞いたルシファーは、微かに口を歪まして笑みを浮かべた。
「君達は、何故、争いが起きると思う?」
「そんな話、今、関係ないだろ」
「君の対応も、一つの理由。少しは、話を、対話をしたらどーだい?」
尚もルシファーは、焦った様子一つ見せずに、足を組み変えて辰巳の反応を伺っている。
隙だらけのルシファーを、射抜けないのは臆していると自覚してソレでも辰巳は威嚇を止めない。気丈に振る舞うのが、最善だと感じていたからだ。
「わからねぇな」
「ふむ。なら、隣の君はなぜだと思う?」
「人には欲望がある」
「いいね。いいよ、面白い。いいかい?争いが起きる理由。それは、自分が知っているモノを真実だと思うからなんだ。
思想を説く説法は、真実であり、疑う余地もない現実。だからこそ、価値観の歪が生まれ、油と水の様に交わる事も無く争いは止まない。その一つに欲望がある。自己超越欲だとかね?」
「それが、今と、なんの関係があるっつーんだ?」
「やれやれ。聞く耳を持たないね。君は傲慢かな? 本来、傲慢はボクの性分なのだけれど。そうだね、簡単に言えば、君が知る真実の中身で僕等の立場が悪役だからこそ、この場で刃を向けているのだろ?」
「真実だろ。まさか、自分達が悪ではないと言いたいのか?地上に暗澹を撒き散らした張本人が」
頭を抱えて、首を左右に振るうルシファーを睨む。
「何故? ──なぜ、ボク達が暗澹を撒き散らしていると、言い切れる?」
辰巳は、今までの事を思い返し、しらを切るルシファーに怒りを滾らせてゆく。
「お前たちが……お前等が、全ての元凶! 死霊を産むのも、人を使いホムンクルスを創るのも全部全部!!」
歯茎をむきだし、辰巳は吠える。逆に、ルシファーは落ち着いた様子。
「確かに、ボクは人を……罪悪人を使い、魂を抜き取りホムンクルスを創るように命じた」
「はん。やっぱりな? 何が真実だよ! 正真正銘の悪だろ」
「マスター、落ち着いて。ルシファーの言葉は何か、引っかかる。──罪悪人?」
「ふむ。やはり、君は察しがいいようだね。君達は常に選択を強いられている。この世界は、魂と物質の限界を超えている。ボクはね……いいや、ボク達はクロノスが愛した、この世界が大好きなんだ」
「矛盾してるだろ。なら、何故、人を殺す? 虫を使い襲わせる?」
「そうだね。一から話をしよう。この世界のありかたを」
ルシファーが、指を鳴らすとベルフェゴールと同様の風景が辺り一帯を包み込んだ。
「ここはね。円環を待つ魂が集う場所さ。言い方を変えれば、この煌めく光一つ一つが魂であり記憶。そして、順番が巡った魂は十字架の大樹にて円環されてゆく。ボク達は、この場を護る使命を持っている──いや、持っていた。と言うべきかな」
ルシファーの表情は、何処か寂しそうにも見れた。
「君達は、何か気が付かないかい?? ──ボクが護る此処はね? 生まれ変わりのできない、穢れきった魂。悪事を行い続けた者の末路さ。はるか昔は、それでも平等に十字架の大樹に、還していた。世界にとって、害悪でしかないと知りながらもね」
ルシファーの口は休まることなく動く。
「穢れた魂は、十字架の大樹にとっては毒素でしかない。だから、ボク達は悪が悪を産む前に処理をしていた。ここで初めて、隠身神界の神々と、クロノスとの意見は食い違い始めた。進化を望まず、流れるがままにする隠身の神々。世界を延命させるために、試行錯誤を行ったクロノス」
「まっ──まってくれ! それじゃあ、まるで隠身の神々が、この世界を滅ぼそうとしているみたいじゃねえか」
「いいや違う。彼等には彼らの決まりがあり秩序がある。その法則に例外を赦してはいけないのだろう。終わりには終わりを、始まりには始まりを、全てに平等でなくてはならないと。故に、進化を望まない。ボク達と違ってね」
「なら、クロノスに会わせてくれよ。話をすれば、信じるのもやぶさかじゃあない」
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