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第3作 ドラゴン・タトゥーの少年 桜の朽木に虫の這うこと(三)
第12話 バニーハート VS 鷹守幽
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ディオティマの「合図」を起こりとして、二人の「怪人」の戦いは幕を開けた。
「ぎひぃっ!」
「――っ!」
一瞬で間合いが詰められ、両者は制空権に触れる。
鷹守幽はグラブのはまった拳を、バニーハートへ向け振り下ろした。
「ぎひっ!」
だぶだぶの長袖がそれを受け止める。
硬い、何かが仕込まれている……
「バーカ」
バニーハートはもう片方の袖を開いた。
「っ!?」
アイアン・クロウ――
長く鋭い鋼鉄製の爪が、袖口からにょきっと姿を現す。
彼は爪の先を閉じ、ドリルのようにして鷹守幽の首筋を狙った。
「っ!」
体を反らせて攻撃を回避する。
そしてうしろへ跳躍し、ある程度の間合いを取った。
「ぎひ」
もういっぽうの袖も開かれ、アイアン・クロウは二つあったことが明かされる。
「この、バニー・クロウで、八つ裂きに、してやる」
「……」
鷹守幽も答えるように、対のジャックナイフを抜く。
「行く、ぞ……!」
両者同時にとびかかる。
「ぎひゃあっ!」
上段から空を切り、鉄の爪がおそいかかる。
鷹守幽はそれを大きなナイフでいなした。
「ぎひっ!」
読んでいたかのように、今度は下段から鉄の爪が繰り出される。
当然というか、それはもう一本のナイフで受け止められる。
ここまでは二人とも想定の範囲内だった。
「エロトマニアぁっ!」
「――っ!?」
ウサギのぬいぐるみが大きく膨れ上がり、鷹守幽をうしろから羽交い絞めにした。
「っ……」
プロレス技のひとつ、パロスペシャルを極められる。
びくともしないほど強力な力、そしてどんどん重くなってくる。
「子泣きじじい?」
様子を見守っている相方・羽柴雛多はのんきに笑っている。
「ふふっ、早くも勝負あったようですね」
ディオティマの顔に亀裂が入った。
「とった、死ねぇっ!」
「――っ!」
「ぎひっ……」
鷹守幽の「影」が動き、触手のようにバニーハートを絡めとる。
「ぎひ、ぎひ……」
包み込むように丸め、団子のようにされてしまった。
「ふふっ、これが幽くんのアルトラ、アンダー・ザ・ムーン」
羽柴雛多がくすっと笑う。
「なるほど、影を自在に操れるということですか」
ディオティマは興味深そうに見つめている。
「ぎひぃ……」
ものすごい力で締上げられる。
ぬいぐるみのパワーが落ちてくる感覚を、鷹守幽は得た。
「ふふ、どうやら勝負はこちらのようですね?」
「う~ん、ふふふ……?」
余裕の羽柴雛多に、ディオティマはと言えば不気味にほくそえんでいる。
「ぎひっ、エロトマニア……!」
「――!」
ぬいぐるみが一気に膨れあがり、そして――
「幽くん!」
激しい閃光とともに、大爆発を起こした。
「ぎひっ」
バニーハートを縛っていた影が消える。
あたりは粉みじんに消し飛んでいた、が――
「ほう?」
ボロボロの姿になった鷹守幽が立っている。
仮面は吹き飛んで砕け、素顔があらわになっていた。
笑っている。
「ふむ、影を操るアルトラで、防御壁を作ったというところですか」
ディオティマは敵ながらと感心している。
「幽くん、どうする? 交代しようか?」
鷹守幽は首を横に振った。
そして体をこきこきさせる。
「ぎひ、あきらめろ……おまえ、もう、おわ――」
何かが飛んでくる。
バニーハートは間一髪でそれをかわした。
大ナタ――
鷹守幽が腰にくくりつけていたものだ。
いつの間に放ったのか、まったく見えなかった。
あれほどに大きな武器であるのに。
ナタは飛行機のように旋回し、主人の手へと戻った。
「ふふ、彼のアルトラ、まだまだ秘密があるようですねえ」
ディオティマは大破した自動車に腕を乗せ、キセルのタバコをふかしている。
「……」
鷹守幽は手を返して「かかってこい」のしぐさをした。
「ぎひ、生意気、な……」
プッツンしたウサギ戦闘員がたまらずとびかかる。
人気のない街はずれが、世界で一番危険な場所と化していた――
「ぎひぃっ!」
「――っ!」
一瞬で間合いが詰められ、両者は制空権に触れる。
鷹守幽はグラブのはまった拳を、バニーハートへ向け振り下ろした。
「ぎひっ!」
だぶだぶの長袖がそれを受け止める。
硬い、何かが仕込まれている……
「バーカ」
バニーハートはもう片方の袖を開いた。
「っ!?」
アイアン・クロウ――
長く鋭い鋼鉄製の爪が、袖口からにょきっと姿を現す。
彼は爪の先を閉じ、ドリルのようにして鷹守幽の首筋を狙った。
「っ!」
体を反らせて攻撃を回避する。
そしてうしろへ跳躍し、ある程度の間合いを取った。
「ぎひ」
もういっぽうの袖も開かれ、アイアン・クロウは二つあったことが明かされる。
「この、バニー・クロウで、八つ裂きに、してやる」
「……」
鷹守幽も答えるように、対のジャックナイフを抜く。
「行く、ぞ……!」
両者同時にとびかかる。
「ぎひゃあっ!」
上段から空を切り、鉄の爪がおそいかかる。
鷹守幽はそれを大きなナイフでいなした。
「ぎひっ!」
読んでいたかのように、今度は下段から鉄の爪が繰り出される。
当然というか、それはもう一本のナイフで受け止められる。
ここまでは二人とも想定の範囲内だった。
「エロトマニアぁっ!」
「――っ!?」
ウサギのぬいぐるみが大きく膨れ上がり、鷹守幽をうしろから羽交い絞めにした。
「っ……」
プロレス技のひとつ、パロスペシャルを極められる。
びくともしないほど強力な力、そしてどんどん重くなってくる。
「子泣きじじい?」
様子を見守っている相方・羽柴雛多はのんきに笑っている。
「ふふっ、早くも勝負あったようですね」
ディオティマの顔に亀裂が入った。
「とった、死ねぇっ!」
「――っ!」
「ぎひっ……」
鷹守幽の「影」が動き、触手のようにバニーハートを絡めとる。
「ぎひ、ぎひ……」
包み込むように丸め、団子のようにされてしまった。
「ふふっ、これが幽くんのアルトラ、アンダー・ザ・ムーン」
羽柴雛多がくすっと笑う。
「なるほど、影を自在に操れるということですか」
ディオティマは興味深そうに見つめている。
「ぎひぃ……」
ものすごい力で締上げられる。
ぬいぐるみのパワーが落ちてくる感覚を、鷹守幽は得た。
「ふふ、どうやら勝負はこちらのようですね?」
「う~ん、ふふふ……?」
余裕の羽柴雛多に、ディオティマはと言えば不気味にほくそえんでいる。
「ぎひっ、エロトマニア……!」
「――!」
ぬいぐるみが一気に膨れあがり、そして――
「幽くん!」
激しい閃光とともに、大爆発を起こした。
「ぎひっ」
バニーハートを縛っていた影が消える。
あたりは粉みじんに消し飛んでいた、が――
「ほう?」
ボロボロの姿になった鷹守幽が立っている。
仮面は吹き飛んで砕け、素顔があらわになっていた。
笑っている。
「ふむ、影を操るアルトラで、防御壁を作ったというところですか」
ディオティマは敵ながらと感心している。
「幽くん、どうする? 交代しようか?」
鷹守幽は首を横に振った。
そして体をこきこきさせる。
「ぎひ、あきらめろ……おまえ、もう、おわ――」
何かが飛んでくる。
バニーハートは間一髪でそれをかわした。
大ナタ――
鷹守幽が腰にくくりつけていたものだ。
いつの間に放ったのか、まったく見えなかった。
あれほどに大きな武器であるのに。
ナタは飛行機のように旋回し、主人の手へと戻った。
「ふふ、彼のアルトラ、まだまだ秘密があるようですねえ」
ディオティマは大破した自動車に腕を乗せ、キセルのタバコをふかしている。
「……」
鷹守幽は手を返して「かかってこい」のしぐさをした。
「ぎひ、生意気、な……」
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人気のない街はずれが、世界で一番危険な場所と化していた――
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