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おや?これって…
驚きと発見 1
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キル兄が入学の為、家を出てから2ヶ月が過ぎようとしていた
忘れもしない、兄との涙のお別れ(大げさ)でプレゼントを贈ったあの日…
自分と妖精達一同からだと言って渡したあのネックレスは
通常契約した妖精以外とは造れないような代物だったらしく
渡した瞬間、家中の人間が目玉が落ちそうなくらい驚きの顔を見せ
慌てだしたのである…
・
・
・
・
・
・
「キル兄様…私からプレゼントがあります!」
ニコニコしながら笑う私をテンプレ兄は破顔しデレデレ状態で腕に抱き上げた
「何だろう…嬉しいな?」
嬉しそうな顔をする兄に渡すべく、エルが私に例の小袋を渡してくれた
「これです!開けてみてください!」
キル兄は私を一旦下ろして、袋を開ける
そこには昨日造ったカミリア入りのネックレスが入っていた
「カミリアのネックレスだね?ありがとう…大切にするよ」
とても嬉しそうに笑い早速、首に付ける兄を見て私も嬉しくなる
すると母様が嬉しそうに問うてきた
「まぁ…民のだれかが、カミちゃんにくれたのね?」 と
微笑ましそうに笑うので私はフルフルと首を振った
「ううん、私とエルとセラとお家に居た妖精さん達みーんなで造ったの!」
「「「「「「え?」」」」」」
全員が一瞬固まるのを私は不思議そうに首を傾げる
沈黙を破ったのは父様だった
「カミール…確認だが、そのネックレスを造ったのはお前と妖精達なのかい?」
「はい!私と妖精さん達で造りました!」
自信満々に答えるとエルとセラも同意する
≪あぁ、カミが困っていたからな…水のがアイデアを出して、皆で協力して造った…≫
≪カミ様がキル様へのプレゼントを贈って驚かせたいと仰せでしたので…≫
こともなげに言って見せる2人と共にウンウンと周りの妖精さんも同意している
「「「「「「えぇーーーーーーーー!?」」」」」」
周りの人間の驚く様にこちらが驚いてしまい、思わず傍にいたエルにしがみ付く
エルは落ち着けと言わんばかりに私を抱き上げて背中を撫でる
≪気にするな…皆、驚いているだけだ…≫
≪そうですわ…普通契約を結んだ妖精が契約者以外の頼みを聞くのは稀な事で、
まして、契約もしていない妖精が力を貸す事は前例が無いくらいですから…≫
「えっ!?」
2人の言葉に私が逆に驚いた
そうなら言ってよ~無駄に目立っちゃったじゃない!という意味を込めて
エルを睨むも、エルは知らん顔して私の背中をポンポンと軽くたたいてから
下ろしてくれた
「キ、キル、ちょっと見せてくれるか?」
父様が少し慌てた様子で兄様に手を差し出すと
キル兄様が首からネックレスを外して渡す
受け取った父様はじーっとネックレスを見たかと思えば
突然、笑い出した
「………これはっ、……ぶっ、…ふははははっ、こりゃスゴイぞ!」
父様の言葉に母様もネックレスを覗きこむとコロコロと笑い褒めてくれた
「あらあら、まぁ!本当ね?ふふふっ、とても強い魔力が込められているわ!
流石、私達の子ね♪」
どうやら、私達が造ったネックレスには契約上級妖精さんの強力魔力と
他の妖精さんの気(魔力)で満ち満ちていたらしい
父様がボソリと呟いていたが、これだけの魔力が籠った装飾品は
国宝レベルらしい
そんな国宝レベルを5歳児が兄の入学祝いの為に造り上げてしまったのだ…
ザワつく空気の中、キル兄だけは反応が違った
父様から返して貰ったネックレスを再び付けると、嬉しそうに(花のように)微笑み
私を抱き上げれば熱烈ハグ
「ありがとう!俺の為に素晴らしい贈り物をくれてとっても嬉しいよ、カミー!!
俺の一番好きなカミリアの花を選んでくれるなんて…流石、俺の大切な妹だね!」
兄の言葉に、家中の人間(妖精はただ微笑むだけ)が
((((((おい、ソコかよ!))))))と
内心でツッコミを入れた事だろう
そして家族以外の者達は
(((((((俺達・私達はとんでもない魔力を持った家族に仕えているんだ…)))))))と
改めて実感したそうだ
そんな騒ぎがあったものの、無事に兄はバラロード領を離れ学院へ入学した
兄が居なくなっただけで、家の雰囲気が少し暗くなった気がしたが、
それは皆も同じだったらしい
初めの1ヶ月は少し落ち込んだ雰囲気が多かったものの、
日が経つにつれて気持ちが落ち着いてきたのか、最近ではやっと通常の生活を送っている
そんなある日、事件が起きた
バラロード領内で、カミリアの変種でもある瑚花(ゴカ)を精製する為に使う湖に
魔物が棲み付き、瑚花の栽培が追いつかなくなってきたというのだ
その為、
討伐隊が編成される事となった
通常、普通は女性や領主が討伐隊等の危ない区域には派遣しないのだが、
我が領で一番強い魔力を持っているのが父様で、二番目が母様
三番目以降が領立騎士団員なので、必然的に2人が討伐に加わる事になる
ところが、キル兄へのプレゼントで
私がとんでもない魔力を発揮した(自覚は無いが)時に
居合わせた騎士団長の推薦で私も討伐隊へ加わる事となった
騎士団長と父様は同い年で親友の為、
小さい頃から家族ぐるみのお付き合いをしていたので、
子供で領主の子供(女性)でもある、私の討伐隊への参加申請があっさりと通ったのだ
いやいや、たかだか5歳児ですよ?
しかも契約妖精もまだ居ないのよ?と
騎士団長や家例の皆の前で行きたくないアピールをしようと思い
「危ないの怖いー…」って皆に言ったら、鼻で笑われ、
大丈夫だという太鼓判を人間だけじゃなく妖精にまで押されてしまったので、
私は大いに拗ねながら、討伐隊用の馬車に揺られていた
「…まだ5歳なのに」
拗ねたまま馬車に揺られているとエルが護衛も兼ねて私の隣に座りながら頭を撫でる
≪もう諦めろ…それに湖が見たいと前に言っていたではないか?≫
「でもさー…才能があるにしろ一応、女の子よ?もうちょっと配慮というかなんというか…」
ブーブー文句を言いながらも馬車に揺られる事2時間…
目的の湖付近に到着した
先に父様と母様がベースキャンプの周りに結界を張った
「領主様方の結界でベースは整った!他の民が入り込まないように他の奴らは
結界で入れないように予防線を引いとけ!」
「結界はこれでよし…さぁ、準備は整った。騎士の奴らは迎撃態勢を取れ!
魔物が現れるという夕方の時間まで気を抜くんじゃないぞ!」
騎士団長と父様の声にテキパキと動く騎士団員達
一瞬にして周りの空気がピシリと緊張状態になった中、
「さあ、カミちゃんはお部屋に入ってましょうね?」 と
母様が私の手を引いて設営されたテントへと向かう
キャンプ用のテントの中に入るとそこは普通の家だった
「あれ?普通のお部屋―?」
入口にどこでもドアが付いているのか、テント用の筈なのに中は普通の部屋になっていた
「そういえば、カミちゃんはこういうテントに入るのは初めてだったわね?
このテントは魔法で造られているから、外見は一般のテントと同じだけど
入ると中は普通の家のような造りになっているのよ」
母様の説明に思わず感心してしまう
「うわー…凄~い!まるで木で出来たお家みたい!」
魔物を討伐する目的で来ているにも関わらず、
私はキャンプ自体が初めてという事と魔法テントの中がロッジ風の木で造られている事に
浮かれて、はしゃいぎながらソファに座る
≪うふふ…思えばこれが、カミ様は初めての外泊ですものね?≫
母様の契約妖精さんのセラがニコニコと笑いかけてくれる
≪それに…魔物と会うのも初めてですわね?≫
「そういえばそうだったわね?でもこの領に来る魔物はワケ有なコが
多いから…そんなに害は無いと思うわよ?」
大抵は話し合いで何とかなるし、湖を占領しちゃうのはダメだけどね~と
母様がお茶を淹れてくれながら、のほほんと話す…
「なんか魔物を討伐する筈なのに、全然怖くない…」
だって私達の周りには相変わらず
妖精さんに溢れて(上手い言い方が思い付かなかった)いるし…と
私がボソリと呟けば、セラはソファに座る私の隣に座りながら笑う
≪無理もありませんわ…皆、カミ様と契約を結びたいと望む者ばかりですもの≫
「え?そうだったの?」
私は初耳だよーと周りの妖精さんに話しかけると
妖精さんたちはハーイと手を挙げたり、ウンウンと頷いている
≪ですが、妖精も相手の魔力に釣り合わないモノは
契約を結ぶ事が出来ない様になっております…なので皆、カミ様の傍からは
離れたがらないでしょう?それはカミ様の傍で魔力を感じて
契約が可能になる可能性を少しでも上げようとしているのですよ…≫
なるほどねー
だから兄の周りの例の5人の妖精さん達も
きっとそれが目的でお傍にいるんだな…
「そうなんだ?でも契約って1人としか結べないんじゃないの?」
≪そうですわね、基本は1対1ですが…
稀に魔力が強い場合や互いの同意があれば特に制限は無く、
何人とでも契約を結べますわよ?≫
妖精側のレベルや好みにもよると説明を受け、成程…と頷く
セラやエルは上級妖精だから1人でも契約者を守れるし
父様や母様は契約するのは1人で十分と思っているという訳か…
基本的にはこの世界の妖精と人間の関係性っていうのは
契約した人間が生を終えるまでの間は何があっても切れない
ビジネスパートナーだ
契約を結んだ事で互いの心情が分かる為、
万が一危機に陥った時などはすぐに相手を助けあえるようなものらしい
契約に至るまでには色々とあるらしいのだが、
一度でも契約をしてしまえば、
死ぬまでの間、心強いSPが付いてくるというわけだ…
詳しく聞くと自分も契約をしたくなるのが
子供のサガだよね?
私の周りには、兄と同じく何人かの妖精さんが常に一緒に居てくれる
出来る事なら、私は自分をいつも見守ってくれているような妖精さん達と
契約したいと思っている
1人?いやいやここは目指せ友達(契約)100人出来るかな作戦だ!
1人でニヤリと企み顔をしていれば、セラが私の頭を撫でながら微笑む
≪ふふっ、きっとカミ様なら大丈夫ですわ
今でも沢山の妖精に愛されておりますし、なによりバラロードの血筋は
初代の時より、妖精を惹きつけて止まないのですもの…≫
予想外のご先祖様のお話にセラを見つめる
「ご先祖様、凄い人?」
私の言葉に母様がお茶を飲みながら頷く
「えぇ、我が家のご先祖様は結構有名なのよ?
何せ、妖精の王様と契約を結んで、沢山の妖精さんの力を借りて
この国を戦争が無い国にしちゃったんだもの…」
母様の言葉に私は驚きを隠せない
「えぇ!?それってかなり凄い…」
あまりの規模の大きさにポカンと口を開けていると、
母様がクスクスと笑う
「ふふっ…私やヴィルは1人でも満足だけど、特に妖精さんに好かれている
キルやカミちゃんなら沢山の妖精さんと契約できちゃうかもね?」
賑やかになって楽しいわよーなんてのんびりと話す母様に私は力強く頷く
「はい!母様。私は沢山の妖精さんと仲良くなりたいです!」
楽しそうに笑うと、周りの妖精さんもキャッキャと楽しそうに笑っている
魔物討伐なのに全然緊張感無いな…と思っていると
父様とエルがテント内に入ってきた
「ただいま。おや、なんだか楽しそうだね?」
「おかえりなさい…今ね、カミちゃんと我が家の歴史のお勉強と
妖精さんとの契約について話していた所なの」
母様が父様の傍により、羽織っていたマントを脱ぐのを手伝いながら話す
「我が家の歴史か…そうか、カミも契約について興味が出てきたのか」
私の前の椅子に座り、母様が淹れたお茶を飲みながら
嬉しそうに私に頷き始めた
「キルといい、流石ルーと私の子供達だな!
妖精にこんなにも愛されているのは他には居ないしな?」
隣に座った母様を見つめながら父様が微笑めば
母様がポッと頬を染める
「いやですわ、ヴィルったら…」
はいはい、相変わらずラブラブですねー
甘ったるい雰囲気に砂を吐きだしそうになりながら、
私は席を立つ
「父様、お外見てきて良いー?」
≪私もカミ様の護衛として参りますわ…≫
子供らしくキラキラとした瞳で両親を見つめると
2人とも満面の笑みで頷いてくれた
「あら、セラが付いてくれるなら心配は要らないわね?」
「そうだな…だが、くれぐれも結界内に居る事。
それとセラの言う事を守って行動するんだぞ?」
ラブラブな両親に見送られ、私はテントを出るのであった
続く
忘れもしない、兄との涙のお別れ(大げさ)でプレゼントを贈ったあの日…
自分と妖精達一同からだと言って渡したあのネックレスは
通常契約した妖精以外とは造れないような代物だったらしく
渡した瞬間、家中の人間が目玉が落ちそうなくらい驚きの顔を見せ
慌てだしたのである…
・
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「キル兄様…私からプレゼントがあります!」
ニコニコしながら笑う私をテンプレ兄は破顔しデレデレ状態で腕に抱き上げた
「何だろう…嬉しいな?」
嬉しそうな顔をする兄に渡すべく、エルが私に例の小袋を渡してくれた
「これです!開けてみてください!」
キル兄は私を一旦下ろして、袋を開ける
そこには昨日造ったカミリア入りのネックレスが入っていた
「カミリアのネックレスだね?ありがとう…大切にするよ」
とても嬉しそうに笑い早速、首に付ける兄を見て私も嬉しくなる
すると母様が嬉しそうに問うてきた
「まぁ…民のだれかが、カミちゃんにくれたのね?」 と
微笑ましそうに笑うので私はフルフルと首を振った
「ううん、私とエルとセラとお家に居た妖精さん達みーんなで造ったの!」
「「「「「「え?」」」」」」
全員が一瞬固まるのを私は不思議そうに首を傾げる
沈黙を破ったのは父様だった
「カミール…確認だが、そのネックレスを造ったのはお前と妖精達なのかい?」
「はい!私と妖精さん達で造りました!」
自信満々に答えるとエルとセラも同意する
≪あぁ、カミが困っていたからな…水のがアイデアを出して、皆で協力して造った…≫
≪カミ様がキル様へのプレゼントを贈って驚かせたいと仰せでしたので…≫
こともなげに言って見せる2人と共にウンウンと周りの妖精さんも同意している
「「「「「「えぇーーーーーーーー!?」」」」」」
周りの人間の驚く様にこちらが驚いてしまい、思わず傍にいたエルにしがみ付く
エルは落ち着けと言わんばかりに私を抱き上げて背中を撫でる
≪気にするな…皆、驚いているだけだ…≫
≪そうですわ…普通契約を結んだ妖精が契約者以外の頼みを聞くのは稀な事で、
まして、契約もしていない妖精が力を貸す事は前例が無いくらいですから…≫
「えっ!?」
2人の言葉に私が逆に驚いた
そうなら言ってよ~無駄に目立っちゃったじゃない!という意味を込めて
エルを睨むも、エルは知らん顔して私の背中をポンポンと軽くたたいてから
下ろしてくれた
「キ、キル、ちょっと見せてくれるか?」
父様が少し慌てた様子で兄様に手を差し出すと
キル兄様が首からネックレスを外して渡す
受け取った父様はじーっとネックレスを見たかと思えば
突然、笑い出した
「………これはっ、……ぶっ、…ふははははっ、こりゃスゴイぞ!」
父様の言葉に母様もネックレスを覗きこむとコロコロと笑い褒めてくれた
「あらあら、まぁ!本当ね?ふふふっ、とても強い魔力が込められているわ!
流石、私達の子ね♪」
どうやら、私達が造ったネックレスには契約上級妖精さんの強力魔力と
他の妖精さんの気(魔力)で満ち満ちていたらしい
父様がボソリと呟いていたが、これだけの魔力が籠った装飾品は
国宝レベルらしい
そんな国宝レベルを5歳児が兄の入学祝いの為に造り上げてしまったのだ…
ザワつく空気の中、キル兄だけは反応が違った
父様から返して貰ったネックレスを再び付けると、嬉しそうに(花のように)微笑み
私を抱き上げれば熱烈ハグ
「ありがとう!俺の為に素晴らしい贈り物をくれてとっても嬉しいよ、カミー!!
俺の一番好きなカミリアの花を選んでくれるなんて…流石、俺の大切な妹だね!」
兄の言葉に、家中の人間(妖精はただ微笑むだけ)が
((((((おい、ソコかよ!))))))と
内心でツッコミを入れた事だろう
そして家族以外の者達は
(((((((俺達・私達はとんでもない魔力を持った家族に仕えているんだ…)))))))と
改めて実感したそうだ
そんな騒ぎがあったものの、無事に兄はバラロード領を離れ学院へ入学した
兄が居なくなっただけで、家の雰囲気が少し暗くなった気がしたが、
それは皆も同じだったらしい
初めの1ヶ月は少し落ち込んだ雰囲気が多かったものの、
日が経つにつれて気持ちが落ち着いてきたのか、最近ではやっと通常の生活を送っている
そんなある日、事件が起きた
バラロード領内で、カミリアの変種でもある瑚花(ゴカ)を精製する為に使う湖に
魔物が棲み付き、瑚花の栽培が追いつかなくなってきたというのだ
その為、
討伐隊が編成される事となった
通常、普通は女性や領主が討伐隊等の危ない区域には派遣しないのだが、
我が領で一番強い魔力を持っているのが父様で、二番目が母様
三番目以降が領立騎士団員なので、必然的に2人が討伐に加わる事になる
ところが、キル兄へのプレゼントで
私がとんでもない魔力を発揮した(自覚は無いが)時に
居合わせた騎士団長の推薦で私も討伐隊へ加わる事となった
騎士団長と父様は同い年で親友の為、
小さい頃から家族ぐるみのお付き合いをしていたので、
子供で領主の子供(女性)でもある、私の討伐隊への参加申請があっさりと通ったのだ
いやいや、たかだか5歳児ですよ?
しかも契約妖精もまだ居ないのよ?と
騎士団長や家例の皆の前で行きたくないアピールをしようと思い
「危ないの怖いー…」って皆に言ったら、鼻で笑われ、
大丈夫だという太鼓判を人間だけじゃなく妖精にまで押されてしまったので、
私は大いに拗ねながら、討伐隊用の馬車に揺られていた
「…まだ5歳なのに」
拗ねたまま馬車に揺られているとエルが護衛も兼ねて私の隣に座りながら頭を撫でる
≪もう諦めろ…それに湖が見たいと前に言っていたではないか?≫
「でもさー…才能があるにしろ一応、女の子よ?もうちょっと配慮というかなんというか…」
ブーブー文句を言いながらも馬車に揺られる事2時間…
目的の湖付近に到着した
先に父様と母様がベースキャンプの周りに結界を張った
「領主様方の結界でベースは整った!他の民が入り込まないように他の奴らは
結界で入れないように予防線を引いとけ!」
「結界はこれでよし…さぁ、準備は整った。騎士の奴らは迎撃態勢を取れ!
魔物が現れるという夕方の時間まで気を抜くんじゃないぞ!」
騎士団長と父様の声にテキパキと動く騎士団員達
一瞬にして周りの空気がピシリと緊張状態になった中、
「さあ、カミちゃんはお部屋に入ってましょうね?」 と
母様が私の手を引いて設営されたテントへと向かう
キャンプ用のテントの中に入るとそこは普通の家だった
「あれ?普通のお部屋―?」
入口にどこでもドアが付いているのか、テント用の筈なのに中は普通の部屋になっていた
「そういえば、カミちゃんはこういうテントに入るのは初めてだったわね?
このテントは魔法で造られているから、外見は一般のテントと同じだけど
入ると中は普通の家のような造りになっているのよ」
母様の説明に思わず感心してしまう
「うわー…凄~い!まるで木で出来たお家みたい!」
魔物を討伐する目的で来ているにも関わらず、
私はキャンプ自体が初めてという事と魔法テントの中がロッジ風の木で造られている事に
浮かれて、はしゃいぎながらソファに座る
≪うふふ…思えばこれが、カミ様は初めての外泊ですものね?≫
母様の契約妖精さんのセラがニコニコと笑いかけてくれる
≪それに…魔物と会うのも初めてですわね?≫
「そういえばそうだったわね?でもこの領に来る魔物はワケ有なコが
多いから…そんなに害は無いと思うわよ?」
大抵は話し合いで何とかなるし、湖を占領しちゃうのはダメだけどね~と
母様がお茶を淹れてくれながら、のほほんと話す…
「なんか魔物を討伐する筈なのに、全然怖くない…」
だって私達の周りには相変わらず
妖精さんに溢れて(上手い言い方が思い付かなかった)いるし…と
私がボソリと呟けば、セラはソファに座る私の隣に座りながら笑う
≪無理もありませんわ…皆、カミ様と契約を結びたいと望む者ばかりですもの≫
「え?そうだったの?」
私は初耳だよーと周りの妖精さんに話しかけると
妖精さんたちはハーイと手を挙げたり、ウンウンと頷いている
≪ですが、妖精も相手の魔力に釣り合わないモノは
契約を結ぶ事が出来ない様になっております…なので皆、カミ様の傍からは
離れたがらないでしょう?それはカミ様の傍で魔力を感じて
契約が可能になる可能性を少しでも上げようとしているのですよ…≫
なるほどねー
だから兄の周りの例の5人の妖精さん達も
きっとそれが目的でお傍にいるんだな…
「そうなんだ?でも契約って1人としか結べないんじゃないの?」
≪そうですわね、基本は1対1ですが…
稀に魔力が強い場合や互いの同意があれば特に制限は無く、
何人とでも契約を結べますわよ?≫
妖精側のレベルや好みにもよると説明を受け、成程…と頷く
セラやエルは上級妖精だから1人でも契約者を守れるし
父様や母様は契約するのは1人で十分と思っているという訳か…
基本的にはこの世界の妖精と人間の関係性っていうのは
契約した人間が生を終えるまでの間は何があっても切れない
ビジネスパートナーだ
契約を結んだ事で互いの心情が分かる為、
万が一危機に陥った時などはすぐに相手を助けあえるようなものらしい
契約に至るまでには色々とあるらしいのだが、
一度でも契約をしてしまえば、
死ぬまでの間、心強いSPが付いてくるというわけだ…
詳しく聞くと自分も契約をしたくなるのが
子供のサガだよね?
私の周りには、兄と同じく何人かの妖精さんが常に一緒に居てくれる
出来る事なら、私は自分をいつも見守ってくれているような妖精さん達と
契約したいと思っている
1人?いやいやここは目指せ友達(契約)100人出来るかな作戦だ!
1人でニヤリと企み顔をしていれば、セラが私の頭を撫でながら微笑む
≪ふふっ、きっとカミ様なら大丈夫ですわ
今でも沢山の妖精に愛されておりますし、なによりバラロードの血筋は
初代の時より、妖精を惹きつけて止まないのですもの…≫
予想外のご先祖様のお話にセラを見つめる
「ご先祖様、凄い人?」
私の言葉に母様がお茶を飲みながら頷く
「えぇ、我が家のご先祖様は結構有名なのよ?
何せ、妖精の王様と契約を結んで、沢山の妖精さんの力を借りて
この国を戦争が無い国にしちゃったんだもの…」
母様の言葉に私は驚きを隠せない
「えぇ!?それってかなり凄い…」
あまりの規模の大きさにポカンと口を開けていると、
母様がクスクスと笑う
「ふふっ…私やヴィルは1人でも満足だけど、特に妖精さんに好かれている
キルやカミちゃんなら沢山の妖精さんと契約できちゃうかもね?」
賑やかになって楽しいわよーなんてのんびりと話す母様に私は力強く頷く
「はい!母様。私は沢山の妖精さんと仲良くなりたいです!」
楽しそうに笑うと、周りの妖精さんもキャッキャと楽しそうに笑っている
魔物討伐なのに全然緊張感無いな…と思っていると
父様とエルがテント内に入ってきた
「ただいま。おや、なんだか楽しそうだね?」
「おかえりなさい…今ね、カミちゃんと我が家の歴史のお勉強と
妖精さんとの契約について話していた所なの」
母様が父様の傍により、羽織っていたマントを脱ぐのを手伝いながら話す
「我が家の歴史か…そうか、カミも契約について興味が出てきたのか」
私の前の椅子に座り、母様が淹れたお茶を飲みながら
嬉しそうに私に頷き始めた
「キルといい、流石ルーと私の子供達だな!
妖精にこんなにも愛されているのは他には居ないしな?」
隣に座った母様を見つめながら父様が微笑めば
母様がポッと頬を染める
「いやですわ、ヴィルったら…」
はいはい、相変わらずラブラブですねー
甘ったるい雰囲気に砂を吐きだしそうになりながら、
私は席を立つ
「父様、お外見てきて良いー?」
≪私もカミ様の護衛として参りますわ…≫
子供らしくキラキラとした瞳で両親を見つめると
2人とも満面の笑みで頷いてくれた
「あら、セラが付いてくれるなら心配は要らないわね?」
「そうだな…だが、くれぐれも結界内に居る事。
それとセラの言う事を守って行動するんだぞ?」
ラブラブな両親に見送られ、私はテントを出るのであった
続く
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