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王子様との出会い
23.内緒の範囲
王子様がわたくしに婚約を申し込んだ次の日には、お茶の時間に国王陛下と王妃殿下とベルトラン公爵家のお義父様とお義母様が同席していた。
美味しそうなお茶菓子がテーブルに並べられて、カップにお茶が注がれても、わたくしはなかなか手を付けられずにいた。
わたくしが国王陛下と王妃殿下を見ていると、お二人はベルトラン公爵家のお義父様とお義母様に話しかけた。
「レオンハルトがフィーネに婚約を申し込んだ。正式に発表するのはレオンハルトが学園に入学する十二歳のときになるだろうが、内内に話を進めておきたい」
「フィーネ嬢も返事をしてくれたようなのです」
それに対してベルトラン家のお義父様とお義母様は深く頷く。
「王弟殿下からうるさいほどアルノルト様との婚約の申し込みが来ていました」
「そろそろフィーネもレオンハルト殿下とのお話を進めなければいけないと思っていました」
ベルトラン公爵家のお義父様とお義母様の元には、王弟殿下からのアルノルト様との婚約の話が来ていたようだった。その話はわたくしは聞いていないということは、お義父様とお義母様が断ってくださっていたということだろう。
エルネスト子爵家を下に見て、傲慢な物言いをするアルノルト様との婚約など、わたくしは絶対にしたくなかった。
お義父様とお義母様が断ってくれていたことに安心する。
お義父様とお義母様は王子様がわたくしに婚約を申し込むころだと思ったいたようだった。
「それでは、レオンハルトとフィーネの婚約、受けてくれるか、ベルトラン公爵?」
「フィーネが返事をしたのだったら、問題は何もありません。お受けいたします」
国王陛下の言葉にはっきりと答えたお義母様に、わたくしは王子様の方を見た。王子様は緑色の目を細めて微笑んでいる。
赤毛の国王陛下と、ストロベリーブロンドの王妃殿下に似たのか、王子様は赤い髪をしているが、日に透けるとそれがきらきらと輝いてとても美しかった。
「王子様、わたくし、王子様と婚約できるのね」
「正式に発表するのはまだ先になりますが、わたしと婚約していただきますよ」
「嬉しい」
わたくしが微笑むと、お義父様とお義母様から指導が入る。
「これからはフィーネは敬語でお話をしなければいけませんよ」
「レオンハルト殿下がお許しになって、二人きりのときは今まで通りでいいかと思いますが」
そうだった。
わたくしは公の場ではできるだけ敬語で話すようにしていたが、敬語自体によく慣れていない。
わたくしが口元を押さえていると、王子様が微笑んで言ってくれる。
「この場ではいいではありませんか。フィーネ嬢の身内しかいないのですから」
「そうですね。レオンハルト殿下も婚約すれば婚約者となりますし、今の時点でも従妹でしたね」
「わたしたちも、フィーネの叔父と叔母になるだろう」
「ベルトラン公爵はわたくしの姉ですからね」
王子様の従妹ということばかり気にしていたが、よく考えてみれば国王陛下は叔父様だったし、王妃殿下は叔母様だった。さすがにそう呼ぶのは躊躇っていると、王子様がわたくしに微笑みかけてくれる。
「父上と母上も、『叔父様』『叔母様』と呼ばれた方が嬉しいのではないですか?」
「そのうちに『お義父様』になるのだろうがね」
「わたくしは『お義母様』ですね。フィーネ嬢にそう呼ばれる日が楽しみです」
国王陛下にも王妃殿下にも受け入れられている。
そのことがわたくしは嬉しくて仕方がなかった。
落ち着いてくるとお茶とお菓子が気になってくる。
わたくしがお茶菓子に手を伸ばすと、国王陛下も王妃殿下もお義父様もお義母様もそれを見守ってくれていた。
苺のケーキをお皿に取り分けてもらったわたくしは、フォークでそれを食べながらお茶を飲む。お茶は冷めていたが、熱々のものは苦手だったので、変えてもらわずにそのまま飲んだ。
王子様も苺のケーキとお茶を楽しんでいる。国王陛下と王妃殿下とお義父様とお義母様は、お茶だけ楽しんでいた。
その日、ベルトラン公爵家に帰ってから、わたくしはお姉様のところに駆けて行った。
夕食前でお風呂に入って着替えていたお姉様は、わたくしを部屋に入れてくれた。
お姉様の部屋は広くて日当たりがよくて、テラスのついたとても豪華な部屋だ。わたくしの部屋も広くて日当たりがいい部屋を選んでくれているので、わたくしもベルトラン公爵家で快適に過ごせていた。
ソファに座って侍女に髪を乾かしてもらい、香油を馴染ませてもらうお姉様の隣に座って、わたくしは昨日と今日の報告をした。
「王子様がわたくしに婚約を申し込んでくれたの。それで、国王陛下と王妃殿下とお義父様とお義母様がお茶の時間に来てくださって、わたくし、王子様と婚約することになったの」
「それはよかったですね。婚約の話はいつ発表されるのですか」
「あ! えっと、これは内緒なんだった。王子様が学園に入学する十二歳になってから発表するって言っていた」
「それでは、この話はわたくしの胸の中に仕舞っておきましょう。フィーネ、他のひとに話してはいけませんよ」
お姉様に言われて、わたくしは難しい顔になる。
他のひとに話してはいけないというのは、どのくらいまでの範囲になるのだろう。
「王子様とコンラッドお義兄様と、お姉様と、お義父様とお義母様、国王陛下と王妃殿下には話していいのよね?」
「それは大丈夫ですね。でも、わたしたちはいつも侍女や従者、給仕や執事に囲まれています。普段から、気を付けていなければいけません」
「侍女や従者や給仕にまで?」
「そういうものたちが、お金をもらって情報を漏らすのは、悲しいことですがよくあることなのです」
わたくしはわたくしの身の回りの世話をしてくれる侍女や従者を信頼していたが、それではいけないのだとお姉様は言ってくる。お姉様が言うのが正しいのだろうが、わたくしは悲しい気分になってしまう。
「わたくしを裏切るものがいるということなの?」
「世の中にはお金次第では何でもするというものはいます。ですから、殿下の侍女には貴族であるわたくしが選ばれました。ベルトラン公爵家にそういうものがいないと信じたいですが、何があるか分かりませんからね」
お姉様に言われてわたくしは小さく頷く。
誰かを疑うのは心苦しいことだったけれど、お姉様がそこまで言うのだったら気を付けようと思う。
「お姉様、このことを誰に知られてはいけないの?」
「基本的に、先程フィーネが言った、殿下とコンラッド様とわたくしとお義父様とお義母様と国王陛下と王妃殿下以外には知られないようにしなければいけません。エルネスト子爵家にはしかるべきときに、使者が行くと思います。そのときまでは、お父様とお母様とお兄様にも話してはいけません」
「お父様とお母様とお兄様も!?」
「そうです。どこから情報は漏れるか分かりませんからね」
「は、はい」
そこまで厳重に管理しなければいけない情報だったとは思っていなかった。
わたくしはお姉様が教えてくれて本当によかったと思った。八歳のわたくしの口は軽く、誰に話してはいけないのかも理解できていなかった。
「フィーネ、本当におめでとうございます」
「お姉様、わたくし、とても嬉しいの」
「フィーネが王太子妃殿下になると思うと、不安もないわけではありませんが、殿下がきっとなんとかしてくださいます」
「わたくし、王子様を信じてる」
「フィーネは殿下のことが大好きなのですね」
お姉様の呟きに、わたくしは力強く答える。
「うん、大好き!」
王子様のことが好きなのは間違いない。
わたくしは王子様と出会って、ずっと一緒にいたいと思うようになったのだ。
これからわたくしは王太子妃教育を受けることになる。
きっと難しいことがたくさんあるのだろうが、それも王子様とずっと一緒にいるためならば頑張れるだろうと思っていた。
美味しそうなお茶菓子がテーブルに並べられて、カップにお茶が注がれても、わたくしはなかなか手を付けられずにいた。
わたくしが国王陛下と王妃殿下を見ていると、お二人はベルトラン公爵家のお義父様とお義母様に話しかけた。
「レオンハルトがフィーネに婚約を申し込んだ。正式に発表するのはレオンハルトが学園に入学する十二歳のときになるだろうが、内内に話を進めておきたい」
「フィーネ嬢も返事をしてくれたようなのです」
それに対してベルトラン家のお義父様とお義母様は深く頷く。
「王弟殿下からうるさいほどアルノルト様との婚約の申し込みが来ていました」
「そろそろフィーネもレオンハルト殿下とのお話を進めなければいけないと思っていました」
ベルトラン公爵家のお義父様とお義母様の元には、王弟殿下からのアルノルト様との婚約の話が来ていたようだった。その話はわたくしは聞いていないということは、お義父様とお義母様が断ってくださっていたということだろう。
エルネスト子爵家を下に見て、傲慢な物言いをするアルノルト様との婚約など、わたくしは絶対にしたくなかった。
お義父様とお義母様が断ってくれていたことに安心する。
お義父様とお義母様は王子様がわたくしに婚約を申し込むころだと思ったいたようだった。
「それでは、レオンハルトとフィーネの婚約、受けてくれるか、ベルトラン公爵?」
「フィーネが返事をしたのだったら、問題は何もありません。お受けいたします」
国王陛下の言葉にはっきりと答えたお義母様に、わたくしは王子様の方を見た。王子様は緑色の目を細めて微笑んでいる。
赤毛の国王陛下と、ストロベリーブロンドの王妃殿下に似たのか、王子様は赤い髪をしているが、日に透けるとそれがきらきらと輝いてとても美しかった。
「王子様、わたくし、王子様と婚約できるのね」
「正式に発表するのはまだ先になりますが、わたしと婚約していただきますよ」
「嬉しい」
わたくしが微笑むと、お義父様とお義母様から指導が入る。
「これからはフィーネは敬語でお話をしなければいけませんよ」
「レオンハルト殿下がお許しになって、二人きりのときは今まで通りでいいかと思いますが」
そうだった。
わたくしは公の場ではできるだけ敬語で話すようにしていたが、敬語自体によく慣れていない。
わたくしが口元を押さえていると、王子様が微笑んで言ってくれる。
「この場ではいいではありませんか。フィーネ嬢の身内しかいないのですから」
「そうですね。レオンハルト殿下も婚約すれば婚約者となりますし、今の時点でも従妹でしたね」
「わたしたちも、フィーネの叔父と叔母になるだろう」
「ベルトラン公爵はわたくしの姉ですからね」
王子様の従妹ということばかり気にしていたが、よく考えてみれば国王陛下は叔父様だったし、王妃殿下は叔母様だった。さすがにそう呼ぶのは躊躇っていると、王子様がわたくしに微笑みかけてくれる。
「父上と母上も、『叔父様』『叔母様』と呼ばれた方が嬉しいのではないですか?」
「そのうちに『お義父様』になるのだろうがね」
「わたくしは『お義母様』ですね。フィーネ嬢にそう呼ばれる日が楽しみです」
国王陛下にも王妃殿下にも受け入れられている。
そのことがわたくしは嬉しくて仕方がなかった。
落ち着いてくるとお茶とお菓子が気になってくる。
わたくしがお茶菓子に手を伸ばすと、国王陛下も王妃殿下もお義父様もお義母様もそれを見守ってくれていた。
苺のケーキをお皿に取り分けてもらったわたくしは、フォークでそれを食べながらお茶を飲む。お茶は冷めていたが、熱々のものは苦手だったので、変えてもらわずにそのまま飲んだ。
王子様も苺のケーキとお茶を楽しんでいる。国王陛下と王妃殿下とお義父様とお義母様は、お茶だけ楽しんでいた。
その日、ベルトラン公爵家に帰ってから、わたくしはお姉様のところに駆けて行った。
夕食前でお風呂に入って着替えていたお姉様は、わたくしを部屋に入れてくれた。
お姉様の部屋は広くて日当たりがよくて、テラスのついたとても豪華な部屋だ。わたくしの部屋も広くて日当たりがいい部屋を選んでくれているので、わたくしもベルトラン公爵家で快適に過ごせていた。
ソファに座って侍女に髪を乾かしてもらい、香油を馴染ませてもらうお姉様の隣に座って、わたくしは昨日と今日の報告をした。
「王子様がわたくしに婚約を申し込んでくれたの。それで、国王陛下と王妃殿下とお義父様とお義母様がお茶の時間に来てくださって、わたくし、王子様と婚約することになったの」
「それはよかったですね。婚約の話はいつ発表されるのですか」
「あ! えっと、これは内緒なんだった。王子様が学園に入学する十二歳になってから発表するって言っていた」
「それでは、この話はわたくしの胸の中に仕舞っておきましょう。フィーネ、他のひとに話してはいけませんよ」
お姉様に言われて、わたくしは難しい顔になる。
他のひとに話してはいけないというのは、どのくらいまでの範囲になるのだろう。
「王子様とコンラッドお義兄様と、お姉様と、お義父様とお義母様、国王陛下と王妃殿下には話していいのよね?」
「それは大丈夫ですね。でも、わたしたちはいつも侍女や従者、給仕や執事に囲まれています。普段から、気を付けていなければいけません」
「侍女や従者や給仕にまで?」
「そういうものたちが、お金をもらって情報を漏らすのは、悲しいことですがよくあることなのです」
わたくしはわたくしの身の回りの世話をしてくれる侍女や従者を信頼していたが、それではいけないのだとお姉様は言ってくる。お姉様が言うのが正しいのだろうが、わたくしは悲しい気分になってしまう。
「わたくしを裏切るものがいるということなの?」
「世の中にはお金次第では何でもするというものはいます。ですから、殿下の侍女には貴族であるわたくしが選ばれました。ベルトラン公爵家にそういうものがいないと信じたいですが、何があるか分かりませんからね」
お姉様に言われてわたくしは小さく頷く。
誰かを疑うのは心苦しいことだったけれど、お姉様がそこまで言うのだったら気を付けようと思う。
「お姉様、このことを誰に知られてはいけないの?」
「基本的に、先程フィーネが言った、殿下とコンラッド様とわたくしとお義父様とお義母様と国王陛下と王妃殿下以外には知られないようにしなければいけません。エルネスト子爵家にはしかるべきときに、使者が行くと思います。そのときまでは、お父様とお母様とお兄様にも話してはいけません」
「お父様とお母様とお兄様も!?」
「そうです。どこから情報は漏れるか分かりませんからね」
「は、はい」
そこまで厳重に管理しなければいけない情報だったとは思っていなかった。
わたくしはお姉様が教えてくれて本当によかったと思った。八歳のわたくしの口は軽く、誰に話してはいけないのかも理解できていなかった。
「フィーネ、本当におめでとうございます」
「お姉様、わたくし、とても嬉しいの」
「フィーネが王太子妃殿下になると思うと、不安もないわけではありませんが、殿下がきっとなんとかしてくださいます」
「わたくし、王子様を信じてる」
「フィーネは殿下のことが大好きなのですね」
お姉様の呟きに、わたくしは力強く答える。
「うん、大好き!」
王子様のことが好きなのは間違いない。
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