エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない

秋月真鳥

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六章 ハインリヒ殿下たちとの交流

12.ハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下の夏休み

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 ハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下がディッペル家にやってくる。
 メイドや使用人総出でディッペル家はぴかぴかに磨き上げられていた。
 子ども部屋の絨毯は洗濯されて干されてふかふかになったし、廊下や手すりは磨き上げられている。
 特に銀食器や銀のカトラリーは念入りに磨かれていた。
 銀食器や銀のカトラリーはすぐに錆がつくのだ。銀製品がどれだけ綺麗に整っているかで、その家の品格が決まると言っても過言ではない。

 わたくしとクリスタちゃんも自分の部屋をマルレーンとデボラと一緒に片付けていた。
 大事なものはクローゼットの中に入れて、机の上は拭いて、花を飾って、絨毯も汚れを取っておく。

 厨房ではハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下にお出しする料理を考えて材料を揃えているし、食堂もテーブルや椅子を全部出してブラシで擦って綺麗に磨かれていた。

「お姉様、詩集を机の上に置いておきたいのですが、立てておけないでしょうか?」
「ブックエンドが必要ですね」
「ブックエンド?」

 机の上に詩集を立てておきたいというクリスタちゃんのために、わたくしは両親にブックエンドを買ってもらった。
 詩集やお気に入りの本は机の上に立てておくことができる。
 大理石でできた兎の形と猫の形のブックエンドをもらったときには、流石公爵家は違うものだと感心してしまった。
 クリスタちゃんが兎の形のブックエンドを選んだので、わたくしは猫の形のブックエンドを置いて机の上に詩集や刺繍の本を立てておいた。

「ノエル殿下にわたくしの部屋を見ていただけるでしょうか?」
「子ども部屋もぜひ見て欲しいですよね」

 ノエル殿下のことを気にするクリスタちゃんに、わたくしも子ども部屋を見て欲しいと思っていた。

 ハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下が来られるときには、暑い時期なので飲み物も厨房では悩んでいたようだ。

「レモネードはどうでしょう? ハインリヒ殿下は紅茶が苦手だったときに蜂蜜レモン水を飲んでいました」
「マリアお嬢様がまだお小さいので、蜂蜜を出すのは危険だと言われているのですよ」
「それならばフルーツティーがいいですわ。辺境伯領で飲んだけれど、とても美味しかったのです」

 クリスタちゃんが提案して、飲み物は冷たいフルーツティーが出されることになった。

 氷を使えるのも公爵家だからだ。
 氷を作る技術がまだ発達していないので、氷は遠くの山から切り出して溶けないうちに運んでくるのだ。冷蔵庫もその氷で維持されているので、生ものはあまり保存ができないのが現実だった。

 地下から汲み上げた水は冷たいので、食材を冷やしておくときなどには地下水が使われていた。

 前世でわたくしの生きていた時代と全く違うのだと思うのだが、それに違和感を覚えていないあたり、わたくしは前世の記憶が朧気にあるだけで、エリザベート・ディッペルの要素が強いのだろう。

「お父様、お母様、国王陛下の別荘では氷柱を立てて、涼をとっていましたね」
「ハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下が来られるのに合わせて氷柱を注文しよう」
「涼しく快適に過ごして欲しいですからね」

 わたくしが言えば両親は氷柱を注文してくれた。

「ノエル殿下の泊まるお部屋にお花を飾りませんか?」
「いいですね。白いトルコキキョウはどうでしょう?」
「いいと思います」

 クリスタちゃんの発案に、わたくしがトルコキキョウを提案すれば、クリスタちゃんも賛成してくれる。

「ハインリヒ殿下とノルベルト殿下のお部屋には蘭の花を飾りたいですわ」
「お父様とお母様、白いトルコキキョウと蘭の花を仕入れてくださいませんか?」

 わたくしもクリスタちゃんも子どもだけでは花屋に行けないので両親にお願いすると、両親は頷いて請け負ってくれた。

「警備もこれまで以上にしっかりとしなければいけない」
「警備の兵が庭に在中するので、ハシビロコウのコレットとオウムのシリルはサンルームに入っていてもらいましょう」

 両親の言葉で、カミーユがオウムのシリルの檻をサンルームに戻して、ハシビロコウのコレットをクロードが魚でおびき寄せてサンルームに入れていた。

 準備が整うと、後はハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下を待つだけになる。

 一泊する準備をしてハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下はディッペル家にやってきた。
 馬車を降りたハインリヒ殿下が一番に言ったのは、ハシビロコウのコレットのことだった。

「違法に買われていた珍しい鳥を保護したと聞いています。その鳥を見たいのですが」
「ハシビロコウですね。サンルームに入れてあります」
「見せてもらえますか?」

 興味津々のハインリヒ殿下に、わたくしとクリスタちゃんはハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下をサンルームにお招きした。
 サンルームの中では噴水の近くにハシビロコウのコレットがいて悠々と歩いている。

「大きい!?」
「僕たちよりも背が高いのではないですか!?」
「あんなに大きくて飛べるのですか?」

 驚いているハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下に、クロードが近付いてきた。
 わたくしはハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下にクロードを紹介する。

「この子はクロードです。ハシビロコウの飼育係です。隣国の言葉で質問すれば、ハシビロコウのことを教えてくれると思いますよ」
「わたくしの国の言葉を喋るのですね」
「そうなのです、ノエル殿下」

 褐色の肌に黒髪黒い目のクロードはプラチナブロンドに青い目に白い肌のノエル殿下とは全く違うが、住んでいた地域が隣国の言葉を使う地域だったので、隣国の言葉を喋る。

『この鳥の名前はなんというのですか?』
『鳥の種類はハシビロコウです。名前はコレットで、雌です』
『この鳥は飛べますか?』
『野生の状態ならば飛べるのですが、コレットは悪いやつに逃げないように羽根を切られてしまっていて飛ぶことができません。それで野生に返せないので、ディッペル公爵が保護してくださったのです』
『コレットは何を食べるのですか?』
『ハイギョやティラピアなどを食べるのですが、ここでは普通に手に入る生魚を食べさせています』

 ノエル殿下も、ハインリヒ殿下も、ノルベルト殿下も、口々に聞きたいことを聞いているが、クロードは落ち着いて答えられていた。

『ありがとう、クロード。もういいですよ』
『失礼いたしました』

 クロードに感謝を述べてハシビロコウのコレットの世話に戻るように言えば、クロードは頭を下げて戻って行った。

「実は、オウムも飼っているのです。可愛いのですよ」
「そうなのですか、クリスタ嬢」
「見てくださいますか?」
「もちろん見せてください」

 クリスタちゃんがオウムのシリルのことを口にすると、ハインリヒ殿下が興味を持った。ハインリヒ殿下とノルベルト殿下とノエル殿下でオウムのシリルの檻に近付く。
 シリルはカミーユに如雨露で水浴びをさせてもらっていた。

「真っ白なオウムなのですね」
「とても可愛いです」
「意外と大きいですね」

 口々に感想を言うノエル殿下とハインリヒ殿下とノルベルト殿下。カミーユが如雨露の水を止めて頭を下げているのに、クリスタちゃんが言う。

「オウムの世話係のカミーユです。隣国の言葉でオウムのことを聞いたら教えてくれますよ」

 視線がカミーユに集まってカミーユは緊張している。

『このオウムは雄ですか、雌ですか?』
『雄です。名前はシリルです』
『オウムは何を食べるのですか?』
『ドライフルーツやナッツやヒマワリの種や種類や野菜などです』
『このオウムは飛べますか?』
『オウムはストレスを受けると毛引きといって、自分で毛を抜いてしまいます。シリルはコレットのことが好きなのですが、それが叶わなくて毛引きをしているので、羽が揃っていなくて、少ししか飛べません』

 オウムはストレスを受けると羽根を抜いてしまうのか。
 わたくしは知らないことをカミーユから教えてもらった。
 ノエル殿下も、ハインリヒ殿下も、ノルベルト殿下も、カミーユからオウムのシリルのことを教えてもらって満足した様子だった。
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