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二章 龍王と王配の二年目
28.マンドラゴラ学者のロト
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龍王に許可をもらってヨシュアがラバン王国からマンドラゴラの学者が呼ばれたのは、秋に入ってからだった。
それだけ時間がかかったのは、その学者の身元が確かか、王配であるヨシュアに合わせて大丈夫かなど、細かく調べられていたからだった。
やってきたのは薄茶色の髪を長く伸ばした長身で細身の人物だった。ヨシュアほどではないが身長は高く、龍王よりも高いだろう。薄茶色の髪の一部を編んでいるのは、古代の妖精を意識したものかもしれない。
イザークとシオンは龍王に付けていたので、ヨシュアにはサイモンとジョエルという魔術騎士が護衛についていてくれた。本来ならば護衛はいらないのだが、相手も魔術師ということで龍王がどうしても警戒するようにと護衛を付けることを条件に会うことを許してくれたのだ。
「ロトと申します。お目にかかれて光栄です、王配陛下」
「おれの望みのために来てもらって感謝する。あなたはマンドラゴラを研究していると聞いている。おれの元に三匹のマンドラゴラがいるのだ。見てくれるか?」
「喜んで」
膝を突いて挨拶をするロトに椅子を勧めて座らせてから、ヨシュアはネイサンに水を張った巨大な皿の上で寛ぐ三匹のマンドラゴラを持って来させた。夏ごろからマンドラゴラは大皿に水を張るとそこに集まって寛ぐようになっていた。
大根と人参と蕪を見て、ロトが緑の目を見開く。
「これは、生きているマンドラゴラではありませんか。マンドラゴラが生きたままで土から出るのは非常に希少です。わたしも数例しか見たことがありません。触れてみてもよろしいでしょうか?」
興奮した様子で身を乗り出してくるロトに、ヨシュアはマンドラゴラに触れることを許す。マンドラゴラに触れて、魔力を見て、ロトが更に驚きの声を上げる。
「このマンドラゴラは、王配陛下の使い魔となっております」
「おれの使い魔なのか?」
「はい。王配陛下の魔力を受けて生まれたのでしょう。その後も魔力をもらって、すっかりと王配陛下の使い魔になっております」
「使い魔になると、どうなるのだ?」
「王配陛下以外の言うことは聞きませんし、王配陛下が魔力を注がれる限り王配陛下に従って生きていきます」
ヨシュアがマンドラゴラに魔力を注いでいればマンドラゴラは枯れることも死ぬこともない。その言葉はヨシュアの心を明るくさせた。
「そうなのか。普通のマンドラゴラなら、萎びそうになるとどうするのだ?」
「生きたマンドラゴラが土から抜け出したのを数例しか見たことはありませんが、そのマンドラゴラたちは萎びそうになると自分で水を飲みに行って、自分で土に埋まっていました」
「土に埋まるのか」
「王配陛下の魔力でも足りないようなら、マンドラゴラは土に一度埋めてやると元気になりますよ」
マンドラゴラが不調になったときには土に埋めればいい。それも教えてもらってヨシュアはしっかりとそれを覚える。
さすがマンドラゴラを研究しているだけはある。ロトの言葉はヨシュアには興味深いことだらけだった。
「このマンドラゴラはおれの魔力を受けて生まれたと言っていたが、王宮の片隅の菜園で生まれたのを、龍王陛下の従兄弟殿が届けてくれたのだ。どうしておれの魔力で生まれたと分かる?」
「マンドラゴラは魔力を与えようとしても、成長するまでに受け取っていた魔力しか受け入れられません。王配陛下の魔力が溢れ出して、王宮の片隅の菜園まで届いたのだと思います」
「それならば、この国でマンドラゴラが勝手に生えることはないのだな」
「はい。そのように考えられます」
玉を賜った時点で、龍王もヨシュアと同等の魔力を持つようになっていたし、ヨシュアも龍王と共に水の加護の祈りを毎日捧げるようになったので、自分たちの魔力が水の加護に交じって国中に降り注いでいるのではないかと心配していたが、そういうこともなさそうだった。
マンドラゴラが王宮の敷地内で生まれたのは、ヨシュアの魔力が関係してのことだった。
話を聞いて安心していると、ロトが椅子から降りて床に額をこすりつけるようにして頭を下げる。
「そのマンドラゴラ、時々でいいのでわたしに見せていただけませんでしょうか? 生きているマンドラゴラ自体がとても希少で、マンドラゴラの研究には必要なのです」
「勝手に皮を剥いたり、葉っぱを千切ったりしないなら、見に来るのは自由にしてもらっていいが、一応、龍王陛下の許可を取ってから正式な返事をしていいか?」
「もちろんでございます。ご検討くださるだけでもありがたい限りです」
ヨシュアの住んでいる青陵殿には基本的に決められた侍従と護衛と龍王と王配以外は入れないことになっているので、ロトがまたマンドラゴラを見たいとなると、ヨシュアの方が黄宮に出向くことになるだろう。
そうなれば龍王の許可なしにはロトと会うことはできない。
魔術騎士として自由に外に出られるのだから、ヨシュアは誰とでも会える立場ではあるのだが、自分を心配する龍王のことは尊重しておきたかった。
「何かございましたら、いつでも聞いてくださいませ」
「今日は志龍王国まで出向いてくれてありがとう」
「生きているマンドラゴラの研究をしたいので、しばらく志龍王国に滞在させていただくかもしれません」
「その件に関しても龍王陛下に伝えておこう」
お茶を飲む間もなく、話は進んでロトは黄宮の用意された間を辞していった。
ヨシュアは喉も乾いていたし、そろそろ昼餉の時刻だったので急いで青陵殿に戻る。青陵殿に戻ると先に龍王がヨシュアの部屋に来ていた。
「マンドラゴラを研究している学者殿とは話ができましたか?」
「たくさん話せた。このマンドラゴラはおれの魔力で生まれたもので、おれの魔力しか受け付けなくて、魔力を与えていたらずっと一緒に生きてくれるようだ。おれの使い魔なのだと分かった」
「使い魔ですか。置いて行かれることがないのはよかったですね」
「星宇とおれの水の加護の祈りに魔力が漏れ出していたわけではなかった」
「それもよかったですね。喉が渇いたのではないですか? 何か飲みますか?」
「昼餉にしよう。星宇、話したいことがたくさんある」
昼餉を食べながら、ヨシュアは龍王にロトから聞いたことを詳しく話した。
マンドラゴラが萎びそうになったら土に埋めたらいいこと、この国でマンドラゴラが思わぬ場所に生えるようなことはないこと。
ふかひれの入った汁物、卵と蟹肉を混ぜて炒めたご飯、青菜の炒め物、揚げた魚の野菜あんかけを食べながらヨシュアは龍王に話す。龍王はヨシュアが興奮して話しているのを静かに聞いていた。
「これからもマンドラゴラの研究のために志龍王国に残って、おれの大根と人参と蕪を見せてほしいと言っているんだが、構わないか?」
「少し妬けますね」
「大根と人参と蕪の話しかしていないのに?」
「ヨシュアと同じ空間で同じ空気を吸って話をしていたのでしょう。妬けます」
「妬くようなことは何もないよ。おれもマンドラゴラのことはもっと知りたい。こいつらを大事に育てたいんだ」
「分かりました。そのロトという学者に黄宮への出入りを許しましょう。ですが、黄宮までですよ? 青陵殿には通さないように」
「分かっているよ」
青陵殿は龍王にとってもヨシュアにとっても特別な場所だ。誰にも邪魔されず二人きりで寛げる場所である。部屋の外には護衛の兵士がいるし、ネイサンとデボラも控えているし、夜に共寝するときにはイザークとシオンが守ってくれるが、それ以外に邪魔されることのない空間をヨシュアも龍王も大事に思っていた。
青陵殿には入れないことを約束して、ヨシュアはまたロトと会えるようになったことを、手紙に書いて魔術でロトの元に送ったのだった。
それだけ時間がかかったのは、その学者の身元が確かか、王配であるヨシュアに合わせて大丈夫かなど、細かく調べられていたからだった。
やってきたのは薄茶色の髪を長く伸ばした長身で細身の人物だった。ヨシュアほどではないが身長は高く、龍王よりも高いだろう。薄茶色の髪の一部を編んでいるのは、古代の妖精を意識したものかもしれない。
イザークとシオンは龍王に付けていたので、ヨシュアにはサイモンとジョエルという魔術騎士が護衛についていてくれた。本来ならば護衛はいらないのだが、相手も魔術師ということで龍王がどうしても警戒するようにと護衛を付けることを条件に会うことを許してくれたのだ。
「ロトと申します。お目にかかれて光栄です、王配陛下」
「おれの望みのために来てもらって感謝する。あなたはマンドラゴラを研究していると聞いている。おれの元に三匹のマンドラゴラがいるのだ。見てくれるか?」
「喜んで」
膝を突いて挨拶をするロトに椅子を勧めて座らせてから、ヨシュアはネイサンに水を張った巨大な皿の上で寛ぐ三匹のマンドラゴラを持って来させた。夏ごろからマンドラゴラは大皿に水を張るとそこに集まって寛ぐようになっていた。
大根と人参と蕪を見て、ロトが緑の目を見開く。
「これは、生きているマンドラゴラではありませんか。マンドラゴラが生きたままで土から出るのは非常に希少です。わたしも数例しか見たことがありません。触れてみてもよろしいでしょうか?」
興奮した様子で身を乗り出してくるロトに、ヨシュアはマンドラゴラに触れることを許す。マンドラゴラに触れて、魔力を見て、ロトが更に驚きの声を上げる。
「このマンドラゴラは、王配陛下の使い魔となっております」
「おれの使い魔なのか?」
「はい。王配陛下の魔力を受けて生まれたのでしょう。その後も魔力をもらって、すっかりと王配陛下の使い魔になっております」
「使い魔になると、どうなるのだ?」
「王配陛下以外の言うことは聞きませんし、王配陛下が魔力を注がれる限り王配陛下に従って生きていきます」
ヨシュアがマンドラゴラに魔力を注いでいればマンドラゴラは枯れることも死ぬこともない。その言葉はヨシュアの心を明るくさせた。
「そうなのか。普通のマンドラゴラなら、萎びそうになるとどうするのだ?」
「生きたマンドラゴラが土から抜け出したのを数例しか見たことはありませんが、そのマンドラゴラたちは萎びそうになると自分で水を飲みに行って、自分で土に埋まっていました」
「土に埋まるのか」
「王配陛下の魔力でも足りないようなら、マンドラゴラは土に一度埋めてやると元気になりますよ」
マンドラゴラが不調になったときには土に埋めればいい。それも教えてもらってヨシュアはしっかりとそれを覚える。
さすがマンドラゴラを研究しているだけはある。ロトの言葉はヨシュアには興味深いことだらけだった。
「このマンドラゴラはおれの魔力を受けて生まれたと言っていたが、王宮の片隅の菜園で生まれたのを、龍王陛下の従兄弟殿が届けてくれたのだ。どうしておれの魔力で生まれたと分かる?」
「マンドラゴラは魔力を与えようとしても、成長するまでに受け取っていた魔力しか受け入れられません。王配陛下の魔力が溢れ出して、王宮の片隅の菜園まで届いたのだと思います」
「それならば、この国でマンドラゴラが勝手に生えることはないのだな」
「はい。そのように考えられます」
玉を賜った時点で、龍王もヨシュアと同等の魔力を持つようになっていたし、ヨシュアも龍王と共に水の加護の祈りを毎日捧げるようになったので、自分たちの魔力が水の加護に交じって国中に降り注いでいるのではないかと心配していたが、そういうこともなさそうだった。
マンドラゴラが王宮の敷地内で生まれたのは、ヨシュアの魔力が関係してのことだった。
話を聞いて安心していると、ロトが椅子から降りて床に額をこすりつけるようにして頭を下げる。
「そのマンドラゴラ、時々でいいのでわたしに見せていただけませんでしょうか? 生きているマンドラゴラ自体がとても希少で、マンドラゴラの研究には必要なのです」
「勝手に皮を剥いたり、葉っぱを千切ったりしないなら、見に来るのは自由にしてもらっていいが、一応、龍王陛下の許可を取ってから正式な返事をしていいか?」
「もちろんでございます。ご検討くださるだけでもありがたい限りです」
ヨシュアの住んでいる青陵殿には基本的に決められた侍従と護衛と龍王と王配以外は入れないことになっているので、ロトがまたマンドラゴラを見たいとなると、ヨシュアの方が黄宮に出向くことになるだろう。
そうなれば龍王の許可なしにはロトと会うことはできない。
魔術騎士として自由に外に出られるのだから、ヨシュアは誰とでも会える立場ではあるのだが、自分を心配する龍王のことは尊重しておきたかった。
「何かございましたら、いつでも聞いてくださいませ」
「今日は志龍王国まで出向いてくれてありがとう」
「生きているマンドラゴラの研究をしたいので、しばらく志龍王国に滞在させていただくかもしれません」
「その件に関しても龍王陛下に伝えておこう」
お茶を飲む間もなく、話は進んでロトは黄宮の用意された間を辞していった。
ヨシュアは喉も乾いていたし、そろそろ昼餉の時刻だったので急いで青陵殿に戻る。青陵殿に戻ると先に龍王がヨシュアの部屋に来ていた。
「マンドラゴラを研究している学者殿とは話ができましたか?」
「たくさん話せた。このマンドラゴラはおれの魔力で生まれたもので、おれの魔力しか受け付けなくて、魔力を与えていたらずっと一緒に生きてくれるようだ。おれの使い魔なのだと分かった」
「使い魔ですか。置いて行かれることがないのはよかったですね」
「星宇とおれの水の加護の祈りに魔力が漏れ出していたわけではなかった」
「それもよかったですね。喉が渇いたのではないですか? 何か飲みますか?」
「昼餉にしよう。星宇、話したいことがたくさんある」
昼餉を食べながら、ヨシュアは龍王にロトから聞いたことを詳しく話した。
マンドラゴラが萎びそうになったら土に埋めたらいいこと、この国でマンドラゴラが思わぬ場所に生えるようなことはないこと。
ふかひれの入った汁物、卵と蟹肉を混ぜて炒めたご飯、青菜の炒め物、揚げた魚の野菜あんかけを食べながらヨシュアは龍王に話す。龍王はヨシュアが興奮して話しているのを静かに聞いていた。
「これからもマンドラゴラの研究のために志龍王国に残って、おれの大根と人参と蕪を見せてほしいと言っているんだが、構わないか?」
「少し妬けますね」
「大根と人参と蕪の話しかしていないのに?」
「ヨシュアと同じ空間で同じ空気を吸って話をしていたのでしょう。妬けます」
「妬くようなことは何もないよ。おれもマンドラゴラのことはもっと知りたい。こいつらを大事に育てたいんだ」
「分かりました。そのロトという学者に黄宮への出入りを許しましょう。ですが、黄宮までですよ? 青陵殿には通さないように」
「分かっているよ」
青陵殿は龍王にとってもヨシュアにとっても特別な場所だ。誰にも邪魔されず二人きりで寛げる場所である。部屋の外には護衛の兵士がいるし、ネイサンとデボラも控えているし、夜に共寝するときにはイザークとシオンが守ってくれるが、それ以外に邪魔されることのない空間をヨシュアも龍王も大事に思っていた。
青陵殿には入れないことを約束して、ヨシュアはまたロトと会えるようになったことを、手紙に書いて魔術でロトの元に送ったのだった。
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