龍王陛下は最強魔術師の王配を溺愛する

秋月真鳥

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四章 結婚十年目

16.両親との誕生日

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 ヨシュアの両親が志龍王国にやってきた。
 残されていた立体映像でしか両親を知らないヨシュアだったが、二人の纏う魔力にすぐに自分の両親だということには気付いていた。
 玉を賜って魂を結んだのでヨシュアの魔力が龍王にも渡って、龍王とヨシュアは魔力が全く同じになっているのだが、両親は微妙に違っているがヨシュアと非常に近い魔力を持っていた。
 魔力の強さではヨシュアの方が上だが、長く生きてきた時間の差があって、各国に情報網を張り巡らすなどヨシュアにはできていないことを示されて、ヨシュアは両親から情報網を受け継いで各国の状況が分かるようになっていた。

 入国禁止令が十年間出されたが、食糧支援を許されたバザロフ王国とラーピン王国はなんとか国民は冬を越せそうである。
 獣人の国には水の加護が行き渡り、砂漠が多かった国土にも幾つもオアシスができて豊かになってきている。
 ラバン王国は水の加護を得て国土が豊かになり、魔術師の出生率も上がっていた。
 バリエンダール共和国は内政が安定してきているが、まだ完全ではなくて、国王を投票で選んで王政復古の動きも出てきているようだ。
 ハタッカ王国はなんとか自国だけで自給自足できているが、今後何かあったときのための備えまではできていない。

 流れ込んでくる情報を精査しつつ、ヨシュアは両親に緑葉殿に泊まってもらって、自分と龍王は青陵殿に戻った。

「ヨシュアのご両親はとても美しかったです」
「浮気か、星宇?」
「そんなわけないじゃないですか。わたしはヨシュアがこの世で一番美しいと思っていますし、愛しているのはヨシュアだけです」

 からかうように耳元で言うと、龍王が顔を赤くする。
 ヨシュアの誕生日は新年の祝賀の三日後なので、両親も三日間は滞在するつもりらしい。
 その間に情報網の使い方をもう少し詳しく聞いておかなければいけないだろう。

「耳まで真っ赤だ」
「ヨシュアが変なことをいうからです。ヨシュアのご両親にわたしが何か思うはずないじゃないですか」

 赤い耳を擽ると龍王が仕返しとばかりにヨシュアの耳に噛み付いた。甘噛みされてヨシュアの背筋にぞくりと快感が走る。

「んっ……星宇、それ、だめ」
「ヨシュア、気持ちよかったんですか?」

 ヨシュアの方が身長が高いのであまり耳に触れられる機会がなかった。いざ触れられてみるとぞくぞくするような感覚があってヨシュアは戸惑う。舌でべろりと舐められて、ヨシュアは龍王の胸を押して体から離していた。

「星宇……」
「知らなかった。ヨシュア、耳が弱いんですね」
「知らなくていい……あっ!」

 逃れようと龍王の胸を押すが、手を伸ばした龍王がヨシュアの耳朶を擽って、妙な声が漏れてしまう。

「俄然やる気になりました。ヨシュア、湯殿に行きましょう」
「待て待て。夕餉が先だろう」

 食事だけは絶対に龍王に取らせるつもりのヨシュアは、椅子に座って夕餉の仕度をしてもらう。出てくる料理を龍王の分も取り分けると、龍王が箸を手に取る。

「食べたら、いいですね?」
「食べてすぐ湯に浸かるのはよくない。少し休んでからだ」
「休んだらいいですね?」
「おれが星宇を拒んだことなんてないだろう? とりあえず落ち着いて食べよう」

 性欲が強い龍族の龍王と、性欲が限りなく薄い妖精のヨシュアでは温度差がないわけではないが、体力があるのでヨシュアは龍王についていけているし、龍王の発情期も一緒に過ごした。
 龍王がほぼ毎日ヨシュアを抱いても、ヨシュアは文句など全くなかった。

 男性としての性欲が薄いだけで、ヨシュアは中で快感を拾えるようになっている。中で達したときについでに前の方も達することがあるくらいだから、完全に龍王にヨシュアの体は開発され切っている。

 夕餉の後で一休みして湯殿に行って、体と髪を洗って、寝間着を着て部屋に戻ってきて、龍王とヨシュアは結界を張った寝台の上で存分に愛し合った。
 普段は胸に異様な執着を向ける龍王が、今日は耳に執着していたが、なぶられて甘い声は出したものの、結局龍王の方が力尽きてヨシュアの胸に倒れ込んだ。

 翌朝は夜明け前に起きて水の加護を行き渡らせるべく祈りを捧げる。
 毎日のことなので龍王もヨシュアも慣れている。

 二日後のヨシュアの誕生日は緑葉殿で祝われた。
 ヨシュアの両親が志龍王国に来ているということはラバン王国国王一家にも知らされていて、国王のマシューと妃のハンナ、末っ子のジェレミーが祝いに駆け付けてくれた。

「父上、義母上、お久しぶりです」
「マシュー、立派に国を治めているようだね」
「お久しぶりです、マシュー陛下。お子様もお元気そうですね」
「おれ、ジェレミー! 初めまして、お祖父様、お祖母様」
「ジェレミー殿下ですか。ヨシュアによく似ていますね」

 元気よく自己紹介をするジェレミーは、ヨシュアとマシューが母親が違うのを知らないのかもしれない。そういえばそういうことを話したことはなかった気がする。

「ジェレミー、いらっしゃい!」
「俊宇! 元気だった?」

 赤栄殿から来た梓晴、浩然に、俊宇が駆け出してジェレミーに飛び付いている。抱き着かれてジェレミーは嬉しそうに青い目を細めている。

「もうすぐ赤ちゃんが生まれるんだ。わたしは兄になるよ」
「梓晴殿下、お腹が大きくなられましたね。触ってもいいですか?」
「どうぞ。とても元気な子なのですよ」

 ジェレミーが大きくなった梓晴のお腹に手を触れると、お腹の中の赤ん坊が動いたのか、顔を輝かせる。

「今、蹴られました」
「元気な子でしょう? もういつ生まれてもおかしくないと言われているのですが、甘えん坊でまだお腹の中にいたいようなのです」
「兄上が可愛がってあげるから、早く出ておいで」
「俊宇はこんなに待っているのに」

 くすくすと笑いながら昼食の席に着く梓晴を浩然は手を貸して甲斐甲斐しく面倒を見ていた。

「ヨシュア、いくつになった?」
「五十七ですね。いいオジサンですよ」
「五十七など若いぞ? これから先の年月を考えたら」

 龍王とヨシュアは二十一歳の年の差があるが、百年、二百年、三百年も経てばそのくらいの差は全く気にならなくなるのかもしれない。
 魔術師として長い時間を生きると思われているヨシュアだが、実際には妖精としてもっと長い年月を生きなければいけない。その人生に寄り添ってくれるのが龍王の存在だ。
 残り二百八十五年で龍王は退位する。
 その後にはヨシュアと二人で旅に出ると龍王は宣言していた。

「わたしたちも星宇の退位後は旅に出ようと思っているのですが、父上と母上はどこを旅したのですか?」
「大陸の主な国は全部行ったよ」
「海を越えたこともありました。長命な種族が生きている場所を探して」

 両親が長命な種族が生きている場所を探したのも、全てヨシュアのためだと分かっている。妖精としてヨシュアが長すぎる生を持て余さないようにしてやりたかったのだろう。

「海を越えた先には何がありましたか?」
「角や羽の生えた一族の住む島があった」
「そのものたちは魔族と呼ばれていましたが、わたくしたちに害をなすことはありませんでした」

 魔族。
 まだ聞いたことのない種族にヨシュアは興味を持つ。

「魔族の寿命はどれくらいだったのですか?」
「そこまでは詳しく教えてくれなかった。もっと親しくなれば教えてもらえるのかもしれないが、言葉もよく通じない中では難しかった」
「寿命には個人差があるようでした。血の濃いものほど長いとは言われていました」

 まだヨシュアは大陸を出たことがない。
 いつか龍王と共に旅立つ日が来たら、大陸を出ることもあるのかもしれない。そうすればまた新しい種族に出会うこともあるだろう。

 そのころにはヨシュアは自分の種族を偽らずに生きていけるのだろうか。
 ラバン王国で作られた特殊なインクで翅を再現したり、アクセサリーで尖った耳を再現したりするのが流行っているらしい。
 もう少しすれば、ヨシュアも魔術をかけて偽った姿ではなくそのままの姿で生きていける日も来るのかもしれない。
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