龍王陛下は最強魔術師の王配を溺愛する

秋月真鳥

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五章 在位百周年

9.元に戻った龍王

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 ラバン王国から追放されているので、若返りの外法を編み出した魔術師はラバン王国には戻っていないだろう。ハタッカ王国が一番可能性が高いのではあるが、他の国にいるとも限らない。最悪、もう魔術師は亡くなっていて、外法の解き方を教えられるものはいないかもしれない。
 それでも龍王は捜索の手を止めさせなかった。

 魔術師は今や大陸全土から集められて、毎日のように魔術師が会いに来る。魔術騎士団に先に下見をさせて危険がないことを確かめてから、その後ヨシュアと龍王に会っていた。
 膨大な数の魔術師が来るので、先に魔術騎士団で明らかに違うものは弾いてもらっているのだ。

 一か月半になったころに、一人の魔術師が龍王とヨシュアの元に招かれた。目を引いたのはその魔術師が魔力が非常に高いのに対して、とても若かったことだった。まだ十代前半くらいに見える。
 魔力から透けて見える年齢はそんなに若くないとはっきりと伝えて来る。

 何より、その魔術師からは龍王にかけられた魔術と同じ痕跡があった。

「そなた、若返りの魔術を使ったのか?」

 ひと払いのされた部屋で、単刀直入に聞くヨシュアに魔術師が逃げようとするが、それより先にヨシュアが動いた。魔術で逃げられないように縛り付けるのが分かる。床に膝を突いた魔術師にヨシュアと隠れて様子を見ていた龍王が出て来る。
 龍王は小さな体で跳ねるようにして魔術師に詰め寄っていた。

「おまえがわかがえりのまじゅつをかいはつしたのか?」
「残念ながらわたしではありません」
「おまえからはわかがえりのまじゅつのけはいがする!」
「わたしは若返りの魔術をかけてもらったのです。あの魔術師は最後に故郷に帰りたがっていた。ラバン王国から追放されたときに封じられた魔術を解いてほしいと願われたので、その代わりに若返りの魔術をもらいました」

 その魔術師に残っている痕跡は、若返りの魔術を使ってもらったものだった。若返りの魔術を開発した魔術師本人ではなかったが確実に近付いている。

「こきょうにかえりたいというのは、ラバンおうこくにかえったということか?」
「そうなりますね。あなたも若返りの秘法を使っていただいたのですか?」
「それをおまえにはなすことはない」

 手掛かりになるとしてその見かけだけ若い魔術師は若返りの外法を編み出した魔術師が見付かるまで捕らえておくことになった。
 魔術騎士団はその魔術師から若返りの外法を編み出した魔術師の外見などを聞いて、探す手掛かりにするようだった。
 若返りの外法を編み出した魔術師は現在三十代くらいの外見で、茶色の髪に緑の目、中肉中背ということだった。

 ラバン王国に戻っているということで、ラバン王国が大捜索されて、特徴に合う魔術師が次々と連れて来られた。

 国民の心配も最高潮に高まっている。
 水の加護は志龍王国を守り続けていたが、それでも龍王がずっと政務の場に立たないとなると龍王は重病なのではないかと思われても仕方なかった。
 ずっと発疹が治らないだけで、表に出られないと誤魔化しておくのも難しくなってきていた。

 龍王の体が若返ってしまってから二か月目に若返りの外法を編み出した魔術師は見つかった。
 三十代くらいの外見で、茶色の髪に緑の目、中肉中背の魔術師で、年齢よりもずっと老成している雰囲気だった。

「お前が若返りの魔術を編み出した魔術師か?」

 ヨシュアの問いかけに、魔術師が答える。

「王配陛下も若返りをお望みですか? そんなに美しいのに」
「おれはそんなものはいらん。お前が百年以上前にハタッカ王国から輸出しようとした壺が発見された。それに魔術が封じられていた」
「もう使われた後でしたか。効果のほどはいかがでしたか? お気に召しましたら、また志龍王国にも納めさせていただきますよ?」

 全く悪びれる様子などなく、むしろ誇らしげな魔術師に龍王は怒りがわいてくる。うっかり蓋を開けてしまったのは龍王なのだが、そのせいで二か月も国民に心配をかけているのだ。
 思わず駆け寄って飛び膝蹴りを魔術師に見舞った龍王に、魔術師が鼻血を吹いて倒れながら声を上げる。

「もしや、あなたが使われたのですかー!?」
「いますぐこのまじゅつをとけ!」

 馬乗りになっても五歳児なので迫力がなく、すぐに押し返されてしまうが、龍王は魔術師に命じていた。

「その魔術を解くのですか? その魔術には非常に労力がかかっているのに」
「わたしはもとのすがたにもどりたいのだ。すぐにとけ!」
「龍王陛下でございましょう? 龍王陛下の寿命が延びたとあれば喜ばれることではないのですか?」
「わたしはげほうをつかってまでじゅみょうをのばしたいとはおもわない!」

 早く解けと迫る龍王に、ため息をついて諦めたように魔術師が龍王に手を翳した。
 魔術が解かれていくのを感じる。
 魔術が完全に解けたときには、龍王はようやく二十歳前後の元の姿に戻っていた。

 元の姿に戻れた龍王はほっと胸を撫で下ろして、今すぐにでもヨシュアに飛び付きたくてたまらないのを我慢していた。ヨシュアは魔術師に言い渡す。

「寿命など生命を操る魔術は外法としてラバン王国から禁止されている。ラバン王国に戻りたいのであれば、二度とこの魔術を使えないように封じなければいけない」
「わたしはもう長く生きました。そろそろ終わりにしたい。最期は生まれ育ったラバン王国に戻りたいのです」
「それではおれが二度と解けないようにお前の魔術を封じてやろう。その上でラバン王国に戻ることを許されるようにしてやろう」

 龍王を治せる魔術師には賞金を、その魔術師を見つけてきたものには報奨を与えると宣言していた。真実とは少し違うが、若返りの外法を編み出した魔術師にも報奨を与えねばならなかった。

 ヨシュアの申し出に魔術師は納得したようだった。

「わたしをラバン王国に戻らせてください。魔術は封じてくださって構いません。残りの人生を生き、この寿命で死んでいきます」

 魔術師の言葉にヨシュアは魔術師の魔術を封じて、ラバン王国に送り返していた。
 龍王は元の姿に戻れて、さっそく政務に復帰した。

 龍王完治の知らせは国中に広がった。
 二か月も病で休んでいた龍王が公の場に出て来ることができて、国民は大喜びだった。

 周辺諸国からも完治の祝いが送られてきた。
 送られてきた祝いに礼をしたためて、龍王は一気に忙しくなった。
 それまでもできる書類仕事はしていたが、それ以外の溜まった政務も全てこなしていかなければいけない。それでも龍王にしかできないことは、水の加護を国土全体に行き渡らせることと、周辺諸国への対応くらいで、それ以外は宰相や四大臣家にも任せることができるような体制にできていたのが幸いした。

 それでも後処理の時間はかなりかかって、龍王が落ち着いてヨシュアと向き合えたのは、元の姿に戻ってから一週間は経ってからだった。
 ヨシュアを抱かないまま五歳児の姿で二か月お預けを食らって、その後も忙しさでそれどころではなくて一週間待った。
 二か月と一週間分、龍王はヨシュアへの想いを募らせていた。

「ヨシュア、今夜はいいでしょう?」
「星宇が望むならいつでも」
「ずっとあなたに触れられなくてつらかった」

 ヨシュアのがっしりとした体に抱き着いて囁くと、ヨシュアが抱き締め返してくれる。
 口付けをすると、ヨシュアがしっかりと答えてくれる。舌を絡める口付けに、龍王はヨシュアを押し倒しかけて、止められた。

「先に夕餉と湯あみだ」
「我慢できません」

 ヨシュアを抱く。龍王はそのことしか考えられなかった。
 ヨシュアは決して夕餉を取って湯あみをすることを譲らなかったが。
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