「男同士では結婚できない」と言われたが納得できないので、魔王な従姉から初恋のひとを取り返します

秋月真鳥

文字の大きさ
80 / 80
第三章 結婚に向けて

30.双子の結婚式

しおりを挟む
 5月の初めのイサギとツムギの18歳の誕生日に、国を挙げての式典は開かれた。
 女王ダリアとセイリュウ領の前領主の娘ツムギ、テンロウ領の長男のエドヴァルドとセイリュウ領の前領主の息子イサギの合同結婚式。
 純白のパンツスーツに刺繍の施された美しいボレロの肩からヴェールを垂らすツムギと、純白の細身のマーメイドラインのドレスに金のティアラからヴェールを垂らしたダリアが結婚の誓いを挙げる。

「わたくし、ダリアは、ツムギ様を愛し、生涯の伴侶とすることを誓います」
「私、ツムギは、ダリア様を愛し、どんなときも共に生きることを誓います」

 各領主から祝いの拍手が鳴り響き、治まると、続いてシャンパンピンクのタキシードのイサギと、ミッドナイトブルーのタキシードのエドヴァルドが結婚の誓いを挙げる。

「私、エドヴァルドは、イサギさんを伴侶とし、共に歩んでいくことを誓います」
「俺、イサギは、エドヴァルドさんを愛し、死が二人を別つまで……ふぇ……エドさん……」
「イサギさん、かっこいいですよ」
「と、ともに、ぶぇ……生きることを、誓います」

 感動の余り泣き出してしまったイサギの肩を抱いて、エドヴァルドが背中を撫でてくれる。駆け寄ってきたナホに撫もでられて、イサギは続いて声を張り上げた。

「エドさんと一緒に、ナホちゃんを愛して育てていくことも、誓います!」
「同じく、ナホさんを実の娘として、大事に育てることを誓います」

 誓いに混じったナホは、ブルーグレーのハーフパンツのスーツを着て、嬉しそうに頬を染めていた。
 よちよちと歩くユーリの手を引くリュリュと、健康そうに艶々とした丸いほっぺのラウリを抱いたローズが二組のカップルの結婚を祝福するが、イサギはそのお腹を思わず凝視してしまった。
 長身なので目立たないが、僅かに膨らみがあるような気がする。

「ローズ女王はん、3人目?」
「みたいやなぁ。よほど相性がええんやろな」

 第二子の女の子、レイナを抱っこしたサナがレンを見上げるが、レンはカナエとレオと手を繋いで、にこにことしている。

「うちも二人目が授かって本当に良かったね」
「一人目より安産で安心したわ。痛かったのと大変やったのは同じやけど、一回目よりもはよお腹から出て来てくれた」
「レイナちゃんはサナさん似で、可愛いし、嬉しいっちゃん」

 褐色の肌に顔立ちもレンそっくりのレオと対照的に、二人目のレイナは白い肌に黒い髪でサナに似ていた。目の色だけはよく見ると紫で、レンに似ている。

「このこが、ラウリくん?」
「王子様て言わなあかんで」
「気にすることはない。そなたはナホであろう。父のイサギが、この子の命を助けてくれたのだ。『くん付け』で構わぬぞ」
「かわいいねー」

 まだ5歳になる直前のナホに身分のことなどよく分からない。元気になって、ローズに抱っこされてきゃっきゃと笑っている、リュリュによく似たラウリを「あかちゃんかわいい」とうっとりと見つめている。

「大きくなったら、そなた、ラウリと結婚するか?」
「ローズ女王はん、そんな!?」
「うん、する!」
「ナホさん!? ローズ女王もそんなこと軽々しく言わないでください」

 諫めるイサギとエドヴァルドに、ローズは大らかに笑う。

「この子の命はイサギが掬い上げてくれたようなもの。イサギの娘の元に行くのならば幸せであろう」

 魔術師としての才能はエドヴァルド程度にはあると診断されているナホは、カナエほどではないがかなり優秀な部類に入る。魔術師は血統でしか才能が引き継がれないので、優秀な魔術師を王族が早めに婚約させるというのはあり得ない話ではなかった。

「お姉様、結婚はお互いの意思が大事ですからね?」
「ラウリはナホが好きなようだぞ?」
「ラウリ様はまだ1歳前ですよ?」
「にちゅ!」
「えぇ、ユーリ様は2歳ですね。『ふたつ』ですよ」
「ゆり、にちゅ!」
「間違ってませんけど」

 年の話題が出たので、すかさず自分の年を指を一本立てて、色々と間違って「ふたつ」と示すユーリに、ダリアはメロメロになっている。姉のローズには強く出られるが、可愛い甥っ子には弱いらしい。

「今日はそんなに怒るな。せっかくの結婚式だぞ」
「ダリア様もツムギ様も、とてもお綺麗です」
「誰が怒らせていると思っているんですか!」
「ダリア様、落ち着いて」

 ダリアの肩を抱くツムギに、疲れたように寄りかかるダリアは仲睦まじい。
 食事会が開かれて、それが終わると王宮のバルコニーから国民に手を振って、結婚式は夜まで続いた。
 テンロウ領の王都の別邸に泊まらせてもらって、客間のベランダで結婚のお祝いに上がる花火を見ていると、ナホが大きな欠伸をする。

「もう眠いんかな。お風呂入って寝よか」
「あい……」

 うとうとと眠りかけているナホをお風呂に入れて、イサギとエドヴァルドもお風呂に入って、ナホを挟んで同じベッドに横になった。ぐっすり眠っているとはいえ、ナホがいるのだから、何かできるはずはないし、イサギは成人していたがそちら方面の知識はおぼろげにしかない。

「初夜……言うても、なにするんやろ……ナホちゃんがいてるから、できへんのは分かるけど、結婚初夜……初夜やで……」

 ぶつぶつと呟いていると、伸びてきたエドヴァルドの手でイサギの顎が優しく掴まれた。ナホ越しに唇が重なって、舌が入って来る。
 口付けと舌との関係性。
 いつかヨータが言っていた大人のキスを、その日、初めてイサギは経験した。
 唇が離れると、「お休みなさい」と優しく頬と額にもキスをされる。頭がゆだるような感覚に、イサギは一晩中眠ることができなかった。
 眠れないままに迎えた翌日の朝食で、改めてテンロウ領のエドヴァルドの両親とクリスティアン、その婚約者のジェーンからお祝いの言葉をもらった。

「本当におめでとう。ナホちゃんも、いつでもお祖母ちゃんのところに遊びに来ていいからね」
「おばあちゃん、かぶさん、だっこしてもいい?」
「どうぞ、ナホちゃん」

 エドヴァルドの母親に蕪マンドラゴラを抱っこさせてもらって、その重さによろめくナホを、父親が微笑ましそうに見守っている。シュイと養父もテンロウ領の王都の別邸に泊めてもらっていた。

「昨日はお楽しみだったの?」
「まだです」
「じゃあ、これからだね」
「もう、ミハルさんったら、新婚さんを揶揄ったらいけないのよ」

 養父はこんな人間だっただろうかと思うのだが、息子には見せない一面があってもおかしくはない。
 養父とシュイの息子、3歳のアキはナホに懐いてぽてぽてと後を付いて回っていた。蕪マンドラゴラを抱っこさせてもらって、潰されてもがいているのを、シュイが助ける。

「うちももう一人くらい欲しいわね、ミハルさん」
「シュイちゃんが望むなら」

 年の差のあるモウコ領の次期領主夫妻もラブラブなようだった。
 結婚資金として貯めていたお金は、合同結婚式でダリアが国から資金を出したので丸々余っている。
 家もあるし、イサギも学校を出れば薬草学者として給料が上がるし、エドヴァルドの給料もある。ナホとイサギとエドヴァルドの3人で暮らすには、十分すぎる収入が今ですらあるのに、マンドラゴラ品評会で得た収入は分不相応のような気がしていたイサギは、ナホと遊ぶアキの姿を見て、思い付いたことがあった。

「使わんかった結婚資金は、ナホちゃんと同じ境遇の子が引き取られた施設に寄付せえへん?」

 ナホを攫った窃盗団は、同じように親のいない子どもを攫って自分たちの思いのままになるように育てていた。魔術の才能があるからこそ、結界の張られた貴族の屋敷に盗みに入ることを教え込まれた彼らが、正しい道に進んで、その能力を活かせるようにしてやりたい。
 育てるのはナホ一人しかできないが、他の子もイサギの胸にはずっと引っかかっていた。

「俺も、母親にサナちゃんを暗殺するように教育されたけど、俺の意思やなかった。幸運にも俺は薬草学の才能を見出されて、エドさんとも結婚出来て幸せになれとる。あの子たちにもチャンスを与えてやりたいんや」
「立派な志だと思います。私も賛成です」

 結婚資金として貯めていたお金を、セイリュウ領に戻ってからサナに預けて、ナホのいた窃盗団に攫われた子どもたちの施設に寄付してくれるように頼むと、それにサナは更にお金を足した。

「お前が『勇者』とか『四天王』とか言うて、追い剥ぎした分や。これでええやろ、エドヴァルドはん」
「あなたは素晴らしい領主です。尊敬します」

 憮然として金を受け取り寄付することを約束したサナを、レンがレイナを抱いて、カナエがレオの手を引いて見守っている。
 仕事を終えて家に戻ったイサギに、エドヴァルドは夕食を食べてから、ナホを先に風呂に入れて、寝かしつけてから、イサギの手を取った。

「もう、良いですよね?」
「え、エドさん?」
「あなたを私のものに、私をあなたのものに、していいですよね?」

 エドヴァルドにバスルームに招かれて、熱っぽい瞳で囁かれ、イサギは鼻血が出そうになりながら、「ひゃい」と返事をした。
 二人の新婚生活は始まったばかり。
 翌日、イサギは鼻血の出し過ぎで寝込んでいたが、幸せににやける様子を、エドヴァルドがそっと見守っていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

マリオネットが、糸を断つ時。

せんぷう
BL
 異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。  オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。  第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。  そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。 『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』  金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。 『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!  許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』  そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。  王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。 『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』 『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』 『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』  しかし、オレは彼に拾われた。  どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。  気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!  しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?  スラム出身、第十一王子の守護魔導師。  これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。 ※BL作品 恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。 .

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

【8話完結】勇者の「便利な恋人」を辞めます。~世界を救うより、自分の幸せを守ることにしました~

キノア9g
BL
「君は便利だ」と笑った勇者を捨てたら、彼は全てを失い、私は伝説の魔導師へ。 あらすじ 勇者パーティーの万能魔術師・エリアスには、秘密があった。 それは、勇者ガウルの恋人でありながら、家事・雑用・魔力供給係として「便利な道具」のように扱われていること。 「お前は後ろで魔法撃ってるだけで楽だよな」 「俺のコンディション管理がお前の役目だろ?」 無神経な言葉と、徹夜で装備を直し自らの生命力を削って結界を維持する日々に疲れ果てたエリアスは、ある日ついに愛想を尽かして書き置きを残す。 『辞めます』 エリアスが去った翌日から、勇者パーティーは地獄に落ちた。 不味い飯、腐るアイテム、機能しない防御。 一方、エリアスは隣国の公爵に見初められ、国宝級の魔導師として華麗に転身し、正当な評価と敬意を与えられていた。 これは、自分の価値に気づいた受けが幸せになり、全てを失った攻めがプライドも聖剣も捨てて「狂犬」のような執着を見せるまでの、再構築の物語。 【勇者×魔導師/クズ勇者の転落劇】 ※攻めへのざまぁ要素(曇らせ)がメインの作品です。 ※糖度低め/精神的充足度高め ※最後の最後に、攻めは受けの忠実な「番犬」になります。 全8話。

処理中です...