潔癖王子の唯一無二

秋月真鳥

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不憫大臣編

6.初夜

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 結婚式の日からヴァルネリのフェロモンの香りが濃くなって、数日後、目が覚めたら物凄い甘い香りが部屋中に充満していた。
 オメガのフェロモンは苦手で胃が弱かったこともあって吐いてしまうのだが、ヴァリネリのフェロモンは甘く頭の芯が痺れるようになってしまう。発情期のヴァリネリは、くたくたのドロドロになって、マティアスを受け入れるのを待っているのかと寝顔を覗いてみたら、ぱっちりと青い目が開いた。

「朝ご飯を食べましょう」
「ふぇ!? もう、マティアスくんのマティアスくん、臨戦態勢なのに?」
「だからこそ、だよ。これから、たっぷり搾り取られるんだから、食べておかないとダメ」

 優しく宥められて、甘い香りの中朝食をとる。何を食べたかも覚えていないままに食事を終えると、ヴァルネリがマティアスを抱き上げてベッドに連れて行った。
 アルファのマティアスがリードすべきなのだろうが、年上であるし、ヴァルネリのこういう包容力のある所にも惚れていたので、されるがままにシーツの上に下ろされる。軽く口付けを交わして、ヴァルネリはマティアスに布団をかけた。

「シャワーを浴びて準備してくるね」
「え? 俺も、一緒に入りたいです」
「綺麗にしてくるから、ちょっと時間がかかるの。寒くないようにして待ってて」

 愛するひとが、自分に抱かれるためにシャワーを浴びて身体を綺麗にしてくる。考えただけでフェロモンの香りもあって股間がそそり立って、たまらない。もじもじと脚を擦り合わせて待っていると、しばらくして暖かな湯気を上げたヴァルネリがバスローブで戻って来た。
 バスローブの合わせから覗く白い胸が、今にも食べてくださいと言わんばかりに白く美しい。布団を剥がしてマティアスにキスをするヴァルネリの胸に手を這わせると、咎められることなく、バスローブを大きく乱して胸を晒してくれた。
 ずっと触りたくてたまらなかった白い肌、淡く色付く胸の尖り。夢中になって揉んで、吸っていると、ヴァルネリがマティアスの顔中にキスを落とす。

「可愛いね。ずっと君のこと、可愛いと思ってた」
「ヴァルネリさんは、めちゃくちゃ美しいです」
「僕を美しいなんて言うのは、君だけだよ?」

 悪戯に笑まれて、胸をマティアスに好きにさせたままで、ヴァルネリはバスローブを脱ぎ捨ててしまう。均整の取れた分厚い筋肉に覆われた体に、王子と似ているが雰囲気は全く違う整った顔立ち。見惚れている間に、ヴァルネリはマティアスのパジャマも脱がせてしまった。
 下着が脚から引き抜かれて、勃ち上がって雫を零している中心が露わになる。

「もう、いれたくてぇ」

 じんじんと痛むほど下着の中で圧迫されていたそこを、ヴァルネリがまじまじと見つめた。

「凄いね……大きい」
「な、なにか、ダメでした?」
「いや、ごめんね、僕も初めてだから、この大きさだと、簡単には入らないかも」

 手伝ってと言われて、マティアスはヴァルネリのよく鍛え上げられた双丘に手を回した。揉みしだきながら、後孔を指が掠めると、びくりとヴァルネリの身体が震えるのが分かる。
 指を差し込んで、ぐちぐちと拓いて慣らしていくのだが、中心の方が我慢できずに達しそうになっていた。

「ふぇ、出てしまう……ヴァリネリさんの中に入る前にぃ」
「泣かないで、もう、入る、かも……」

 腰に跨って、息をつめてヴァリネリが先端を後孔に宛がう。くちゅっと吸い付くように先端が少しだけ入りそうになったところで、マティアスは限界を迎えてしまった。
 達した瞬間に外れてしまって、びゅくびゅくと迸る白濁が、ヴァリネリの白い双丘と背中までを濡らす。中で達せなかったと泣き出してしまったマティアスに、ヴァリネリが顔中にキスの雨を降らせる。

「もう一回、今度はちゃんと、全部飲み込んであげるから」
「ヴァルネリさぁん、んっ! あぁっ!」

 泣き付いて胸に吸い付くマティアスの髪を撫でて、ヴァルネリは今度は慎重に腰を落としていった。先端の一番太い部分を飲み込んでしまうと、後はスムーズに中に納まる。
 全部納まった感激に、また涙が出て止まらないマティアスは、ヴァルネリのフェロモンに溺れていたのかもしれない。腰を動かすヴァルネリに合わせて、マティアスも突き上げる。
 柔らかく熱い内壁に引き絞られるように締め付けられて、マティアスは二度目の絶頂を迎えていた。

「俺がアルファのはずなのにぃ! ひぁぁ!?」
「王家のオメガは、発情期が特殊みたいなんだよね」

 王子は自分の望んだ相手の前でしか発情しないように制御できるし、ヴァルネリは理性を失うようなことがない。もちろん、欲望はあるのだが、それも他のオメガのように苦しかったり、狂ったようにアルファを求めて身体が疼くほどではない。

「それなのに、フェロモンは出るから、会ったら、マティアスくんを苦しめちゃうと思ってたんだ」
「俺のためにぃ?」
「ごめんね、でも、これからは発情期もそうじゃないときも、ずっと一緒にいようね」

 体を繋げられないのにフェロモンに当てられて反応してしまうマティアスを気遣って、発情期の間身体はさほどつらくなかったが会わない選択をしてくれていたというヴァルネリ。その優しさに、涙しつつも、マティアスはまだ中に入ったままの中心が、また力を取り戻していることに気付いていた。
 ヴァルネリのフェロモンは、確かにマティアスに効いている。

「もっと、孕むまでちょうだい?」
「んぁあっ! ぜんぶ、ヴァルネリさんにぃ、あげるぅ!」

 骨まで食い尽くされても構わない。
 愛した相手と身体を交わす悦びに、達してはまた中心が力を持つ。最終的に、ほとんど出なくなっても、マティアスはヴァルネリを突き上げ続けた。
 濃厚に身体を交わした後は、疲れ切って眠りかけているマティアスを抱き上げて、ヴァルネリがお風呂に入れてくれる。お湯を張ったバスタブに座らされて、後ろからヴァルネリに抱き締められて、マティアスは幸せで恍惚としていた。

「ひと眠りしたら、遅いお昼ご飯にしようね」
「ふぁい……」
「発情期、一週間続くから、倒れちゃだめだよ?」
「はぁい」

 眠りかけてお湯の中に沈みそうになったマティアスを、ヴァルネリは抱き上げて救い出してくれた。
 交換された清潔なシーツに倒れ込んで、バスローブのままで二人で抱き合って仮眠を取る。体力のあるヴァルネリはともかく、マティアスの方は眠くてたまらなかった。
 甘い香りがマティアスを包んでいる。それにももう反応しないくらい、中心は白濁を吐き出し続けた。

「赤ちゃんができたら、君に似てるといいな」
「ヴァルネリさんに似てるといいれす」

 眠くてろれつが回らないが、喋れるならば、ヴァルネリがどれだけ優しくて、包容力があって、強く、気高く、マティアスを支えて守り続けてくれたかを語りたいくらいだった。
 初めて出会ってから9年、プロポーズを受けてもらってから6年、長く待たせてしまったし、マティアス自身も我慢の連続だったが、その結果が今の穏やかな暮らしならば、めでたしめでたしなのだろう。

「王子様も、同じ頃に出産だったりしてね」
「ぎゃっ!?」

 もう思い出したくもない王子の伴侶を探し続けた生活を掘り返されて、マティアスはヴァルネリの胸に顔を埋めて泣き出しそうになってしまった。

「ヴァルネリさんといると、俺は泣き虫になる気がします……」
「それだけ、僕には感情を隠していないってことでしょう?」

 王子の前での取り繕った生活も、王宮での大臣として足をとられないための処世術も、ヴァルネリの前では何もいらない。初対面で吐いて倒れるという醜態を見せたのに、ヴァルネリはマティアスを愛してくれた。
 愛するひとと二人きり、王都を遠く離れた出世から外れた地で、それでも、マティアスにとってはこれが大団円に違いなかった。
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