魔女(男)さんとこねこ(虎)たんの日々。

秋月真鳥

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魔女(男)とこねこ(虎)たん

38.レオシュとルカーシュの友達

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 王宮の離れの棟に御呼ばれしたヘドヴィカとイロナは緊張していたようだが、フベルトはレオシュと手を繋いで仲良く部屋の中に駆けて行った。

「ここに、れーのおもちゃ、ある」
「わー! すっげー! こんなきれいなソファ、みたことねー!」
「れーの、おもちゃ! みて!」
「すわりごこちも、ふかふかだ!」

 リビングのソファに夢中になっているフベルトに、子ども部屋からレオシュが一生懸命呼んでいる。くすくすと笑いながらアデーラはキッチンに立った。
 ボウルに卵を割り入れて、砂糖を加えて、湯煎にかけながら泡立てる。蜂蜜とみりんを温めておいて、泡立てた卵には小麦粉と蜂蜜とみりんを入れて、混ぜてから型に入れて焼く。
 ふんわりと焼き上がったところで型から外して切り分けると、熱々ほかほかのカステラが出来上がった。子どもたちには牛乳をグラスに入れて渡すと、グラスを見てイロナとフベルトが目を輝かせている。

「きれいなグラス!」
「おうちじゃ、つかえないぜ。わっちゃうから」
「割れないように魔法がかかってるから、気にせずに使っちゃって」
「すげー! まほうだ!」

 大喜びでカステラを頬張り、牛乳を飲むイロナとフベルト。ルカーシュとレオシュも二人のテンションに気圧されながらもカステラを食べている。

「お茶を淹れましょうね」

 花やハーブを調合して淹れたお茶に、ダーシャが蜂蜜を垂らして溶かす。甘く香りのいいお茶を飲んでヘドヴィカが驚いていた。

「この味、すごく好きです」
「ひとに合わせて調合しているんだよ」
「私に合わせてくれたんですか?」
「ヘドヴィカちゃんはこういうのが好きじゃないかなって考えながら調合したんだよ」

 ダーシャの言葉にヘドヴィカが目を丸くしている。ダーシャはエリシュカの元で調合を習っているが、薬効のある美味しいお茶を作ることが得意だった。そのお茶をお客に出したいのではないだろうか。

「お店にイートインスペースを作って、ダーシャのお茶を出す?」
「レオシュとルカーシュと遊ぶ時間が減っちゃうよ?」
「ダーシャの夢じゃなかったの?」

 いつかは店を持ってお茶をお客に振舞うことがダーシャの夢だとアデーラは知っていた。アデーラの提案にダーシャが少しだけ悩んで、答える。

「やってみようかな」

 ダーシャにもこれからやりたいことが見付かった。
 おやつを食べ終わるとお店に戻る。入口に掛けてある札を「閉店」から「開店」に帰るとお客が入ってくる。お客が来ている間はレオシュとルカーシュは王宮の離れの棟に戻って子ども部屋で遊んでいた。
 その日の閉店後にダーシャとアデーラで店舗の大幅改造をした。ダーシャのお茶を出すスペースを準備する。カウンター席が三つ。それだけでダーシャはお客をもてなすつもりだった。
 魔法を使えば店舗の中の準備もすぐにできてしまうし、店舗を用意することすら簡単だった。
 実のところ、アデーラもダーシャも王宮に離れの棟を作ることくらい、魔法で簡単にできた。内装も自分たちの好みに整えることができたし、時間もかからなかった。
 それを国王陛下にさせたのは、自覚を持ってほしかったからに違いなかった。
 自分の息子を育てるのが誰なのか国王陛下にはきっちり知って欲しかったし、どんな場所で息子が育成されるのかを自分で考えて準備を整えてほしかった。それをさせてやるというのはアデーラとダーシャの情けでもあった。
 離れの棟に戻ると、晩ご飯を食べ終えて遊んでいたレオシュが寝そうになっている。ルカーシュも頭がぐらぐらし始めていた。

「レオシュ、ルカーシュ、今日は急いでお風呂に入るから、私と一緒だよ」
「あい……まっま」
「はい、アデーラおかあさん」

 文句を言わずお風呂に入ったレオシュとルカーシュ。眠りかけていたが、お風呂が大好きなレオシュは湯船につけると覚醒した。

「ふーくん、いってたの」
「何を言ってたのかな?」
「れーのまっまのこと」

 レオシュの言葉にアデーラの胸がどきりと鳴る。フベルトにとってはアデーラが男性でレオシュのママだということはとても不思議に映ったのかもしれない。どんなことを言われても子どもの無邪気な感想だと受け止めようと心に決めたところで、レオシュが話し出す。

「れーのまっま、やさしくて、おりょうりじょうずで、きれーで、うらやましいって」
「へ? 私が男なことは何も言ってなかった?」
「まじょってすごいねーっていってたよ」

 魔女だから男でも子どもが産めたのかもしれないとフベルトは思ったのか。それとも単純にまだ幼くて性別の区別がついていないのか。

「イロナちゃん、ダーシャおかあさん、きれいねっていってた。ぼく、うれしかったなぁ」

 イロナもダーシャを綺麗だと言っていたようだ。
 うっとりしているルカーシュの体が段々と傾いできて、倒れそうになるのを支えると、はっと顔を上げる。

「いけない、ねそうになってた」
「もう出ようか」
「まっまー! もっとあそぶー!」
「レオシュ、ルカーシュが眠そうだから、今日はもう出よう」
「にぃに、ねむい?」
「うん……」

 大好きな兄のルカーシュが眠いのならば仕方がないとレオシュも思ったようだ。お風呂から出る決意をしていた。
 お風呂から出てダーシャに拭いてもらって、パジャマを着せてもらって、半分寝たような格好でルカーシュが脱衣所から運び出されて行った後、アデーラもレオシュを脱衣所に抱っこして降ろしたが、がくりとレオシュが倒れた。

「レオシュ!?」

 驚いて抱き起すと、レオシュはびしょ濡れのまま眠っていた。
 お風呂でテンションが上がっていたが、レオシュも体力の限界のようだった。拭いて服を着せて抱っこして寝室に連れて行く。
 ベッドに入るとレオシュがもそもそとアデーラの胸をまさぐってくる。いけないと抵抗すると、レオシュが泣き出してしまう。

「ふえええええ! まっまー!」
「私はここだよ」
「まっまー! おっぱいー!」
「いやいやいや、おっぱいは出ないからね!?」

 寝ぼけているのか目はしっかりと閉じているが、胸をまさぐる手は確実にアデーラのパジャマを乱し、胸に吸い付いてくる。胸を吸っていると安心するのかレオシュは健やかな寝息を立て始めた。
 ちゅうちゅうと胸を吸われて、アデーラの表情が虚無になる。
 どうして男性なのに自分は胸を吸われているのだろう。女性であったとしても、子どもを産んでいないからアデーラの胸から母乳が出るわけがない。出るわけがない場所を一生懸命吸って、もう片方の手で残った乳首を摘まんでいるレオシュは何を考えているかさっぱり分からない。
 レオシュがどの時期までミルクを飲まされていたのか、アデーラは知らない。少しでも動けるようになったら子ども部屋を荒らしまくり、乳母の手には負えなくなって、離乳食を部屋に置いていたのを勝手に食べるような生活をさせられていたのは知っている。
 おっぱいを吸った記憶がないからこそ、レオシュはアデーラの胸にこんなにも執着するのだろうか。
 分からないまま、アデーラは眠りに落ちていた。
 翌朝起きるとダーシャが朝ご飯を食べて店の方に行く。アデーラは注文を受けていた衣装を縫うために離れの棟に残った。基本的にアデーラは作業をしているときは店にいなくて、離れの棟にいればいい。注文が入って採寸するときや、お客が来て仮縫いをするときには出て行かなければいけないが、それ以外のときは店番はダーシャとヘドヴィカに任せていれば安心だった。

「まっまー! ふーくんとおそとであそびたい!」
「イロナちゃんもいい?」

 レオシュとルカーシュのお願いに応えて、アデーラは店舗に続くドアを開けてフベルトとイロナを招き入れる。ウッドデッキに出てアデーラが縫物をしている間に、レオシュはフベルトに三輪車を見せていた。

「これ、えーばぁばといっしょ」
「えーばぁば?」
「れーのばぁば!」
「ふーも、ばぁば、いるよ。そんなすごいのにはのってないけど」
「すごい?」
「うん、すごい!」

 三輪車をフベルトに褒められてレオシュは誇らし気な顔をしている。

「イロナちゃん、このずかんにかいてあるように、ゆきのけっしょうは、おなじかたちのものはないんだって」
「そうなんだ、すごいわ」
「かんさつしてみる?」
「どうやるの?」

 ルカーシュはイロナを雪の結晶の観察に誘っている。イロナも興味を持ってルカーシュに聞いていた。
 新しい友達ができて、レオシュもルカーシュも嬉しそうだった。
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