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28.万里生はファビアンの言葉を聞く
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出ないと泣いてもファビアンは許してくれなかった。
これまで我慢していただけでファビアンにはこれだけの欲があったのだろうか。
泣きながら万里生が萎えた中心をファビアンの中で刺激されていると、下半身から急に出てきそうになる感覚があった。
これは射精ではない。
「まだ僕は満足してないよ? マリオ、がんばれ、がんばれ!」
「ふぇぇぇっ! むりぃ!」
いけないものが出て来てしまいそうになっている。
泣き喚いて逃げようとしても万里生は腰が立たなくて動けなかった。
出ようとするそれはもう逃れられないくらいに膨れ上がっている。
直後、白濁ではない透明な液体が大量に迸って、ファビアンの中から逆流してくるのを万里生は見た。
漏らしてしまったのだと万里生は確信した。
「で、でちゃったぁ! ファビアンのなかで、おもらし、しちゃったぁ!」
泣きながらどうすれば許してもらえるのかを考える。
愛するファビアンの中でお漏らしをするなんて、絶対に許されることではない。優しいファビアンもこれは怒っただろう。
混乱して泣き喚く万里生の頬に手を当ててファビアンがキスをしてくれる。
「違うんだよ。これはそういうのじゃないんだ」
「ち、ちがうのぉ? ファビアン、おこってない?」
キスをしてくれたということは嫌がっていない、怒っていないということだろう。少し安心したが、万里生がしでかしてしまったことはどうしようもない。
「これは潮吹きって言って、おもらしじゃないんだよ」
「ほんとうに?」
「そうだよ」
頬を撫でられながら教えてもらったが、万里生はそれが何なのかよく分かっていなかった。
びしょびしょになったシーツをファビアンが替えてくれてバスルームに行くと、万里生の体を支えてシャワーを浴びさせてくれて、温かなお湯の入ったバスタブに浸からせてくれる。
バスタブの中でも万里生は涙が止まらなかった。
「ファビアンが興奮して乱れるかと思ったのにぃ」
「僕はいつもすごく気持ちよくて興奮してるよ?」
「ファビアン、いつも余裕じゃないか。俺ばかり気持ちよくて、ファビアンが気持ちよくないんじゃないかと不安だったんだ」
薬を使ってまでファビアンを乱れさせたかったのに、乱れて泣いてしまったのは万里生の方だった。いつも万里生の方が力尽きて、ファビアンにシャワーを浴びさせてもらって、ベッドのシーツも替えてもらって、眠る。
余力の残っているファビアンは満足していないのではないかと万里生はずっと不安だった。
ファビアンを満足させられていないならば、結婚生活が長く続けられないかもしれない。ファビアンを感じさせられていないのならば、ファビアンは万里生に飽きてしまうかもしれない。
不安を口にすると、ファビアンが万里生の浸かるバスタブに入って来る。
湯気を上げながらお湯がざぁっと流れた。
「僕はずっと気持ちよかったよ。何より、マリオが僕の体で感じてくれるのが嬉しかった。僕とマリオは運命だと確認できるような気がしてたんだ。マリオ、不安にさせてごめんね」
「ずっと、気持ちよかった? 俺が感じるのが嬉しかった?」
「マリオは早いのを気にしてたかもしれないけど、それは、それだけ僕の体が気持ちよくて感じてくれてるってことでしょう? 僕は最高に嬉しかったよ」
万里生の方が早く達してしまってファビアンを満足させられていないのではないかという不安を、ファビアンは取り除いてくれた。
万里生が感じるだけファビアンが嬉しいのならば、万里生はこれからもファビアンに感じさせてもらって、どれだけでも達して力尽きていいのだと自信がついてくる。
ファビアンの胸に抱きしめてもらって、万里生は気になっていたことをもう一つ口にした。
「ねぇ、ファビアン、潮吹きって何?」
潮吹きというものを万里生は聞いたことがなかったし、経験したこともなかった。施設育ちの万里生はアダルトな動画に触れる機会もなくて、そういうことに興味を持つよりも、大学にどうやって進学するかという死活問題があったので、アダルトな知識が万里生には全くないのだ。
「えーっと、気持ちよすぎて精液じゃない液体が大量に出ちゃうことかな。女性に多いみたいなんだけど、男性も潮吹きをするらしいよ?」
説明されて、理解できるような、できないような、不思議な感じだったが、お漏らしではなく他のひとたちもしていることなら安心はできる。
問題はファビアンがどうしてそんなことを知っているかだ。
運命の相手としかそういう行為はしないと決めていたというファビアンも、万里生と同じく経験がないはずだった。
「なんでそんなこと知ってるのか?」
「高校や大学でそういう話題で盛り上がってる連中に吹き込まれたんだよ。言っとくけど、僕は運命の相手以外とそういうことはしたくないから、未経験だよ?」
「分かってるけど……」
問い詰めると答えてくれるが、妬けてしまうのは仕方がない。
ファビアンにはアダルトな話題で盛り上がる友人がいた。万里生にはそんな友人はいない。
「俺にはそういうことを話す友達はいないな」
「欲しいの?」
「ちょっと」
「これからでも、作ればいいんじゃない?」
羨ましがっている万里生にファビアンは前向きな提案をしてくれる。ファビアンに言われれば万里生もそうすればいいのかもしれないと思えてくる。
「ファビアンにそういう話をする友達がいたとか、なんかちょっと妬けるんだけど」
「そんなこと言うと、もう一戦始めちゃうよ?」
「もう無理! 出ない! 出ないからな!」
唇を尖らせて拗ねてみせるとファビアンから恐ろしい一言が出る。さすがにこれ以上は無理だったので、万里生はそれをお断りした。
バスルームから出てパジャマを着せてもらってベッドに寝ると、万里生は眠くて頭がふわふわしてくる。
「マリオがああいう薬に興味があるなら、会社の試薬をもらってくるけど」
「興味はないよ。もう十分」
「そう?」
「ファビアンがいつも余裕でいるのが不安だっただけ。それもちゃんと話したら分かったから、もういらない」
ファビアンの呟きに断ると、ファビアンは笑ったようだった。
もうファビアンとの行為に万里生は不安はない。
「マリオ、僕は本当に気持ちよくて最高のセックスをしていると思うよ」
「ファビアンもイってるのか?」
「前でイってないから目立たないけど、中でちゃんとイってるよ」
ファビアンは前では達しないので分かりにくいが、中でちゃんと達しているようだ。それも確かめなければ分からないのだから、セックスとは難しい。
「運命の相手だからかなぁ」
「え?」
「運命の相手じゃなかったら、僕は何度もしたいと思わなかったし、感じもしなかったんだろうなぁと思ったんだ」
しみじみと言って万里生を胸に抱き寄せるファビアンに、万里生も言う。
「俺も運命の相手じゃなかったら、抱きたいと思わなかったよ」
「マリオ、愛してる」
「俺も、ファビアン」
運命の相手でなければ万里生はファビアンを抱きたいと思うこともなかっただろう。運命が二人を結び付けた。
それは間違いのないことだと思いながら万里生は目を閉じた。
ファビアンが薬を飲んで交わった二週間後に、ファビアンから万里生に話があった。ソファで万里生を脚の間に抱き締めてファビアンは万里生に囁きかける。
「病院に一緒に行ってくれないかな?」
「ファビアン、どこか悪いのか?」
「もしかすると、なんだけど、妊娠してるんじゃないかと思って」
ファビアンと万里生との行為では、一度も避妊具を使ったことがない。結婚してからの行為だったので、必要がなかったのだ。
万里生はファビアンとの間に子どもを望んでいたし、ファビアンも万里生との間の子どもを生む気でいた。
「ほ、本当に?」
「あまり期待させたくないんだけど、もしかすると、だから」
「う、うん。一緒に行くよ! 俺、お父さんだからな!」
気合を入れて拳を握れば、ファビアンに後ろから抱き締められる。
「マリオが来てくれると心強いよ」
「任せろ! 日本語で分からないことがあったら、説明するからな!」
「ありがとう」
出かける準備をして、ファビアンの運転する車に乗って万里生は病院に行った。病院でファビアンが検査を受けて待合室に戻ってくる。
「ど、どうかな?」
「まだ分からないよ」
「ファビアン、大丈夫だからな! 俺がついてる!」
「ありがとう、万里生」
震えながらもファビアンの手を握っていると、ファビアンが微笑みながら頷いてくれる。
名前を呼ばれて診察室に二人で入ると、医者から告げられた。
「ウーレンフートさん、おめでとうございます。妊娠していますよ」
「本当ですか?」
「悪阻が来たらどうすればいいんですか? 車は運転しても大丈夫ですか? 赤ちゃんは?」
焦って問いかける万里生に、医者がゆっくりと視線を向ける。
「旦那さんですね。初めての奥さんの妊娠に戸惑っているかもしれませんが、心構えは十分ですね。運転はお腹が大きくなるまでは大丈夫ですよ。悪阻は様子を見て対処していきましょうね。まだ、ウーレンフートさんには悪阻は出ていません。赤ちゃんはまだ豆粒ほどですが、心音が確認されていますよ」
丁寧な医者の説明に万里生も落ち着いてくる。
「ファビアン、車の運転、俺がするからな」
「今は平気だよ」
「いや、無理はして欲しくないんだ。悪阻で食べられるものも探そう」
「まだ悪阻は来てないんだけどなぁ」
「料理も家事も俺が全部する。ファビアンは体を休めてくれ」
「動いた方が赤ちゃんの発育にいいんだけど」
ファビアンは色々言っているが、万里生はファビアンと赤ちゃんを守る気でいた。自分は父親なのだ。責任をもってファビアンと赤ちゃんを育てていかなければいけない。
「とりあえず、菜摘に連絡して、産休と育休の間の仕事の振り分けとか考えないといけないな」
「帝王切開だから、産休も育休も長めに取ってくれよな」
「分かってるよ」
万里生と話した後でファビアンが医者に向き直る。
「先生、今後ともよろしくお願いします。定期健診に伺います」
「それ以外でも、何か不安なことがあればいつでも相談してください」
医者も穏やかにファビアンの言葉を受け止めていた。
夏を前に万里生は、ファビアンの妊娠を知った。
これまで我慢していただけでファビアンにはこれだけの欲があったのだろうか。
泣きながら万里生が萎えた中心をファビアンの中で刺激されていると、下半身から急に出てきそうになる感覚があった。
これは射精ではない。
「まだ僕は満足してないよ? マリオ、がんばれ、がんばれ!」
「ふぇぇぇっ! むりぃ!」
いけないものが出て来てしまいそうになっている。
泣き喚いて逃げようとしても万里生は腰が立たなくて動けなかった。
出ようとするそれはもう逃れられないくらいに膨れ上がっている。
直後、白濁ではない透明な液体が大量に迸って、ファビアンの中から逆流してくるのを万里生は見た。
漏らしてしまったのだと万里生は確信した。
「で、でちゃったぁ! ファビアンのなかで、おもらし、しちゃったぁ!」
泣きながらどうすれば許してもらえるのかを考える。
愛するファビアンの中でお漏らしをするなんて、絶対に許されることではない。優しいファビアンもこれは怒っただろう。
混乱して泣き喚く万里生の頬に手を当ててファビアンがキスをしてくれる。
「違うんだよ。これはそういうのじゃないんだ」
「ち、ちがうのぉ? ファビアン、おこってない?」
キスをしてくれたということは嫌がっていない、怒っていないということだろう。少し安心したが、万里生がしでかしてしまったことはどうしようもない。
「これは潮吹きって言って、おもらしじゃないんだよ」
「ほんとうに?」
「そうだよ」
頬を撫でられながら教えてもらったが、万里生はそれが何なのかよく分かっていなかった。
びしょびしょになったシーツをファビアンが替えてくれてバスルームに行くと、万里生の体を支えてシャワーを浴びさせてくれて、温かなお湯の入ったバスタブに浸からせてくれる。
バスタブの中でも万里生は涙が止まらなかった。
「ファビアンが興奮して乱れるかと思ったのにぃ」
「僕はいつもすごく気持ちよくて興奮してるよ?」
「ファビアン、いつも余裕じゃないか。俺ばかり気持ちよくて、ファビアンが気持ちよくないんじゃないかと不安だったんだ」
薬を使ってまでファビアンを乱れさせたかったのに、乱れて泣いてしまったのは万里生の方だった。いつも万里生の方が力尽きて、ファビアンにシャワーを浴びさせてもらって、ベッドのシーツも替えてもらって、眠る。
余力の残っているファビアンは満足していないのではないかと万里生はずっと不安だった。
ファビアンを満足させられていないならば、結婚生活が長く続けられないかもしれない。ファビアンを感じさせられていないのならば、ファビアンは万里生に飽きてしまうかもしれない。
不安を口にすると、ファビアンが万里生の浸かるバスタブに入って来る。
湯気を上げながらお湯がざぁっと流れた。
「僕はずっと気持ちよかったよ。何より、マリオが僕の体で感じてくれるのが嬉しかった。僕とマリオは運命だと確認できるような気がしてたんだ。マリオ、不安にさせてごめんね」
「ずっと、気持ちよかった? 俺が感じるのが嬉しかった?」
「マリオは早いのを気にしてたかもしれないけど、それは、それだけ僕の体が気持ちよくて感じてくれてるってことでしょう? 僕は最高に嬉しかったよ」
万里生の方が早く達してしまってファビアンを満足させられていないのではないかという不安を、ファビアンは取り除いてくれた。
万里生が感じるだけファビアンが嬉しいのならば、万里生はこれからもファビアンに感じさせてもらって、どれだけでも達して力尽きていいのだと自信がついてくる。
ファビアンの胸に抱きしめてもらって、万里生は気になっていたことをもう一つ口にした。
「ねぇ、ファビアン、潮吹きって何?」
潮吹きというものを万里生は聞いたことがなかったし、経験したこともなかった。施設育ちの万里生はアダルトな動画に触れる機会もなくて、そういうことに興味を持つよりも、大学にどうやって進学するかという死活問題があったので、アダルトな知識が万里生には全くないのだ。
「えーっと、気持ちよすぎて精液じゃない液体が大量に出ちゃうことかな。女性に多いみたいなんだけど、男性も潮吹きをするらしいよ?」
説明されて、理解できるような、できないような、不思議な感じだったが、お漏らしではなく他のひとたちもしていることなら安心はできる。
問題はファビアンがどうしてそんなことを知っているかだ。
運命の相手としかそういう行為はしないと決めていたというファビアンも、万里生と同じく経験がないはずだった。
「なんでそんなこと知ってるのか?」
「高校や大学でそういう話題で盛り上がってる連中に吹き込まれたんだよ。言っとくけど、僕は運命の相手以外とそういうことはしたくないから、未経験だよ?」
「分かってるけど……」
問い詰めると答えてくれるが、妬けてしまうのは仕方がない。
ファビアンにはアダルトな話題で盛り上がる友人がいた。万里生にはそんな友人はいない。
「俺にはそういうことを話す友達はいないな」
「欲しいの?」
「ちょっと」
「これからでも、作ればいいんじゃない?」
羨ましがっている万里生にファビアンは前向きな提案をしてくれる。ファビアンに言われれば万里生もそうすればいいのかもしれないと思えてくる。
「ファビアンにそういう話をする友達がいたとか、なんかちょっと妬けるんだけど」
「そんなこと言うと、もう一戦始めちゃうよ?」
「もう無理! 出ない! 出ないからな!」
唇を尖らせて拗ねてみせるとファビアンから恐ろしい一言が出る。さすがにこれ以上は無理だったので、万里生はそれをお断りした。
バスルームから出てパジャマを着せてもらってベッドに寝ると、万里生は眠くて頭がふわふわしてくる。
「マリオがああいう薬に興味があるなら、会社の試薬をもらってくるけど」
「興味はないよ。もう十分」
「そう?」
「ファビアンがいつも余裕でいるのが不安だっただけ。それもちゃんと話したら分かったから、もういらない」
ファビアンの呟きに断ると、ファビアンは笑ったようだった。
もうファビアンとの行為に万里生は不安はない。
「マリオ、僕は本当に気持ちよくて最高のセックスをしていると思うよ」
「ファビアンもイってるのか?」
「前でイってないから目立たないけど、中でちゃんとイってるよ」
ファビアンは前では達しないので分かりにくいが、中でちゃんと達しているようだ。それも確かめなければ分からないのだから、セックスとは難しい。
「運命の相手だからかなぁ」
「え?」
「運命の相手じゃなかったら、僕は何度もしたいと思わなかったし、感じもしなかったんだろうなぁと思ったんだ」
しみじみと言って万里生を胸に抱き寄せるファビアンに、万里生も言う。
「俺も運命の相手じゃなかったら、抱きたいと思わなかったよ」
「マリオ、愛してる」
「俺も、ファビアン」
運命の相手でなければ万里生はファビアンを抱きたいと思うこともなかっただろう。運命が二人を結び付けた。
それは間違いのないことだと思いながら万里生は目を閉じた。
ファビアンが薬を飲んで交わった二週間後に、ファビアンから万里生に話があった。ソファで万里生を脚の間に抱き締めてファビアンは万里生に囁きかける。
「病院に一緒に行ってくれないかな?」
「ファビアン、どこか悪いのか?」
「もしかすると、なんだけど、妊娠してるんじゃないかと思って」
ファビアンと万里生との行為では、一度も避妊具を使ったことがない。結婚してからの行為だったので、必要がなかったのだ。
万里生はファビアンとの間に子どもを望んでいたし、ファビアンも万里生との間の子どもを生む気でいた。
「ほ、本当に?」
「あまり期待させたくないんだけど、もしかすると、だから」
「う、うん。一緒に行くよ! 俺、お父さんだからな!」
気合を入れて拳を握れば、ファビアンに後ろから抱き締められる。
「マリオが来てくれると心強いよ」
「任せろ! 日本語で分からないことがあったら、説明するからな!」
「ありがとう」
出かける準備をして、ファビアンの運転する車に乗って万里生は病院に行った。病院でファビアンが検査を受けて待合室に戻ってくる。
「ど、どうかな?」
「まだ分からないよ」
「ファビアン、大丈夫だからな! 俺がついてる!」
「ありがとう、万里生」
震えながらもファビアンの手を握っていると、ファビアンが微笑みながら頷いてくれる。
名前を呼ばれて診察室に二人で入ると、医者から告げられた。
「ウーレンフートさん、おめでとうございます。妊娠していますよ」
「本当ですか?」
「悪阻が来たらどうすればいいんですか? 車は運転しても大丈夫ですか? 赤ちゃんは?」
焦って問いかける万里生に、医者がゆっくりと視線を向ける。
「旦那さんですね。初めての奥さんの妊娠に戸惑っているかもしれませんが、心構えは十分ですね。運転はお腹が大きくなるまでは大丈夫ですよ。悪阻は様子を見て対処していきましょうね。まだ、ウーレンフートさんには悪阻は出ていません。赤ちゃんはまだ豆粒ほどですが、心音が確認されていますよ」
丁寧な医者の説明に万里生も落ち着いてくる。
「ファビアン、車の運転、俺がするからな」
「今は平気だよ」
「いや、無理はして欲しくないんだ。悪阻で食べられるものも探そう」
「まだ悪阻は来てないんだけどなぁ」
「料理も家事も俺が全部する。ファビアンは体を休めてくれ」
「動いた方が赤ちゃんの発育にいいんだけど」
ファビアンは色々言っているが、万里生はファビアンと赤ちゃんを守る気でいた。自分は父親なのだ。責任をもってファビアンと赤ちゃんを育てていかなければいけない。
「とりあえず、菜摘に連絡して、産休と育休の間の仕事の振り分けとか考えないといけないな」
「帝王切開だから、産休も育休も長めに取ってくれよな」
「分かってるよ」
万里生と話した後でファビアンが医者に向き直る。
「先生、今後ともよろしくお願いします。定期健診に伺います」
「それ以外でも、何か不安なことがあればいつでも相談してください」
医者も穏やかにファビアンの言葉を受け止めていた。
夏を前に万里生は、ファビアンの妊娠を知った。
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