オメガの大公閣下の溺愛

秋月真鳥

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カリス(受け)視点

10.ヒートではない交わり

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 王都で騎士団に呼ばれた後に、王宮にも呼ばれていたので顔を出すとティールームで国王であり兄であるアデルバルトが待っていた。
 侍女がお茶の準備をしている中、アデルバルトは椅子から立ち上がってカリスを抱き締めてきた。

「カリス、リオネル、よく来てくれた。二人が番になったと聞いて、わたしは本当に嬉しく思っている」
「兄上、聞いていたのですか」
「カリスの執事がすぐに知らせてくれた。番を持たないオメガが短命だということはわたしも気にかけていた。リオネルがカリスの番になってくれたのならば安心だ」

 アデルバルトにはカリスとリオネルが番になった件は筒抜けのようだった。
 カリスもアデルバルトを抱き締め返し、アデルバルトが椅子に座った後でカリスとリオネルも椅子に座る。
 カリスがオメガであることについても、番を持っていなかったことについても、アデルバルトには心配をかけてしまったようだ。優しい兄を安心させることができて胸を撫で下ろしたが、その後の話が大変だった。

「わたしと王妃との間には、恐らく子どもはできないだろう」
「兄上、気弱なことを仰らないでください」
「いや、子どもはもう諦めている。わたしは王妃以外を番にするつもりはないし、王妃以外を愛するつもりもない。この気持ちは、番を持ったカリスならば分かってくれるだろう?」
「兄上……」

 特にこだわりのない様子であっさりと言うアデルバルトに、カリスは何と言っていいか分からなくなる。アデルバルトは続けた。

「本当ならばカリスに次期国王となってほしかったのだが、オメガであるので、周囲が認めないだろう。それで、カリスに子どもが生まれて、その子がベータかアルファだったら、その子を王太子にしようと思っている」

 その申し出は、カリスにとっても初耳で驚くべきことだった。
 アデルバルトはカリスの子どもを望んでくれているが、カリスは自分がヒートもほとんど来ない体質であることを知っている。
 子どもは望めないのではないかと養子を考えるくらいだった。

「兄上、申し訳ないのですが、おれはヒートが不順で、十年間もまともに起きていませんでした。今後もヒートが起きるかどうか分からない体です。子どもは諦めています」
「そのときには、王族から相応しいものを次期国王として据えるつもりだから、そんなに気負わないでほしい。もし、カリスに子どもができたら、くらいの気持ちでいてくれるとありがたい」

 自分の体質のことを素直に言えば、アデルバルトはカリスのプレッシャーにならないように言ってくれる。
 子どもの話題はそれで終わったかと思ったが、アデルバルトはリオネルに向き直った。

「リオネルはカリスのことを番にしてくれたようだが、カリスのことをどう思っているのだ?」

 リオネルの気持ちを確かめるようなアデルバルトに、リオネルは姿勢を正し、はっきりと答える。

「わたしは、初めて出会ったときから閣下以外の方を求めていませんでした。閣下がわたしの運命の番だったのだと思います。閣下からはずっといい香りがしていました」
「おれも、リオネルを初めて見たときから、ずっとかわいくて、愛しくて、自分のものにしてしまいたかった」
「カリスもそうだったのならば、二人は運命の番なのだろうな。カリスのヒートの不順も、リオネルがそばにいれば治るかもしれない」
「兄上、そんなに期待しないでください」
「カリスに取ってリオネルは特別なのだろう? 運命の番ならば、奇跡が起きるかもしれない」

 運命の番。
 リオネルとカリスがそうであればどれだけいいだろう。
 番になっているので今の時点でお互いにしか反応しなくなっていたが、最初からカリスはリオネルのフェロモンしか感じなかったし、リオネルは他の相手が感じないカリスのフェロモンを感じていた。
 リオネルのためにも、定期的なヒートが来てほしい気持ちは募っていた。

 領地の屋敷に帰ってから、カリスはリオネルに詰め寄ってしまった。
 その理由は、リオネルとの交わりについてだ。
 ヒートのときは溶けあうほど交わったというのに、リオネルはヒート以外ではカリスを抱かなかった。手や口で互いに慰め合うことはあっても、挿入までは至らなかった。
 カリスの体が魅力がないのならば諦めるが、リオネルは口付けも口淫も手淫も受け入れてくれるし、カリスにも積極的にしたがる。
 それなのになぜという気持ちが消えなくて、カリスはベッドの上でリオネルに詰め寄った。

「なぜ、最後までしない?」
「閣下の負担になるようなことはしたくありません」
「ヒート以外でもおれを抱けるのではなかったのか?」
「閣下の体はわたしを受け入れられるようには作られていません」

 オメガ性の弱いカリスはオメガなのにヒート以外では受け入れる場所が濡れない。固く閉ざしているそこにリオネルが触れることはあるが、最後までカリスを抱くことがない。

「おれもオメガの端くれだぞ?」
「端くれなどと仰らないでください。閣下はオメガです。ですが、ヒート以外でわたしを受け入れるのは難しいかと思います。わたしも、アルファの端くれなので!」

 カリスが言えば、リオネルは対抗するように言ってくる。
 うっかりと「端くれ」などという言葉を使ったのが、リオネルの気に障ったようだ。
 リオネルは「端くれ」などではなく、立派なアルファだし、リオネルの中心もアルファらしく逞しく長大だった。
 それをカリスに受け入れさせることに躊躇いを感じているのだろう。

「リオネルは、面倒になったのか?」
「どういう意味ですか?」
「ヒートが起きないおれの体を抱くために努力したくないのではないか?」
「そんなわけがありますか!」

 ヒートを起こしていない通常のカリスの体でもリオネルを受け入れられる。受け入れたいと主張するのに、リオネルは躊躇っている。

「それならばいい。一人で寝る」
「閣下!」
「ヒートのときは名前で呼んでくれたのに、それも『閣下』に戻ってしまった」

 拗ねたカリスがリオネルを追い払おうとしたら、リオネルがカリスに取り縋ってくる。

「カリス様」
「なんだ?」
「後悔なさいませんね?」
「後悔させられるものなら、させてみろ」

 リオネルも意地っ張りならば、カリスも意地っ張りだった。

 ゆっくりと解されても指一本でも苦しくなってしまう体が悔しくて、カリスは苦しみを見せないように枕を抱き締める。普通のオメガならば番のアルファのフェロモンを嗅げば、体が緩んでヒートのとき以外でも自然と受け入れる体勢になるというのに、カリスにはそれがない。

「ここにわたしを受け入れられると、本当に思っているのですか?」
「ヒートのときにできたことが、今できないわけはない」
「少し緩めてください。体の緊張を解して」

 苦しい息の中、カリスが答えると、リオネルはカリスの中を探りながら口付けをしてきた。舌を絡める深い口付けは気持ちよくて、体が僅かに緩む気がする。
 リオネルの指がカリスの中の一点をかすめた瞬間、カリスは声を上げて腰を跳ねさせていた。
 カリスの高ぶりから白濁が溢れて、軽く達したのだと分かる。
 男性ならば必ずあるという弱みなのだと分かっているが、そこを指で重点的に責められると、カリスも声を抑えられない。

「あっ!? ひぁっ!? りおね、る……ひんっ!」

 甘い声を上げているうちにリオネルの指が増えている。
 何本入っているのか分からないがかなりの圧迫感を覚えているのでそろそろ挿入が可能になったのではないか。
 身構えていると、指が抜かれて、リオネルの中心の切っ先がカリスの後孔に押し当てられる。その熱にカリスはこくりと唾を飲み込んだ。

「カリス様、愛しています」
「リオネル……あぁっ!」

 わざと弱みをかすめるように中に入ってくるリオネルに、カリスは確かに快感を覚えていた。それでも長大なリオネル自身は、かなりの圧迫感があって、苦しみがなかったわけではない。

「くっ……」
「苦しいですか?」
「へい、きだ」

 リオネルに止まってほしくなくてカリスはリオネルを促す。

「リオネル、平気だ。キてくれ」
「カリス様……」
「いいから、奥まで……うっ!」

 リオネルの腰に足を巻き付けて、引き寄せるようにすると、圧迫感が増す。
 みちみちと隘路を広げていくリオネルの感触に快感もあったが、圧迫感の方が強い。
 どこまでもカリスの体はオメガらしくないのだと諦めつつも、リオネルがほしい一心でカリスはリオネルを奥に導く。

「今日はここまでにしましょう」
「いやだ。リオネル、最後まで……」
「カリス様!」
「リオネル!」

 どうしても最後までしてほしいと主張するカリスにリオネルが根負けした。
 丁寧にゆっくりとカリスの奥まで自身を進め、身長に腰を動かす。
 リオネルも苦しくないはずはないのに、カリスを思いやってくれることが何よりも嬉しかった。

 リオネルがカリスの最奥で達したとき、カリスは何とも言えない幸福感に包まれた。
 力尽きたようにカリスの胸に倒れ込んでくるリオネルの髪に指を差し込んで、愛しさに顔中に口付けを降らせる。リオネルがカリスの胸の間に顔を埋めて、ぐりぐりと鼻先をこすり付けてくる。

「カリス様、もうわたしを止められませんよ。これからは、嫌だと言っても抱かせていただきますからね」
「望むところだ」
「どうしてカリス様はそんなに男らしいんですか! ますます好きになってしまう」

 ふわふわの金髪を押さえてつむじにキスをすると、カリスはリオネルへの愛しさを吐露した。

「リオネルがかわいすぎるのが悪い」
「わたしはかわいくないですよ」
「いや、かわいい。かわいいリオネルが、おれで気持ちよくなっているのを見ると、おれはそれだけで胸が満たされる」

 もっとカリスで気持ちよくなってほしい。
 カリスと体を交わすことに歓びを感じてほしい。
 カリスが思うことはそれだけだった。
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