土地神様に守られて 〜転生したらまた魔女の男子だった件〜

秋月真鳥

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転生したらまた魔女の男子だった件

166.スリーズちゃんとフレーズちゃんのお誕生日とピアス

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 僕とセイラン様の羽織袴、リラとレイリ様の大陸風の真っ赤な結婚衣装、マオさんの白い結婚式の着物。それらを作っているうちに春が来ていた。
 春はスリーズちゃんとフレーズちゃんのお誕生日がある。
 フレーズちゃんは今年で二歳になる。お喋りも上手になって来たフレーズちゃんはお誕生日のケーキを楽しみにしている。

「けーち、たべう。まっま、まんま!」
「スリーズはスポンジ生地が好きじゃなかったけど、フレーズはスポンジ生地が好きなのよね。パンもクッキーも大好きだし」

 乾いたものがあまり好きではなかったスリーズちゃんは、食べないで残してお父さんに別のものを出してもらっていた記憶がある。パンも好きではなくて、母はスリーズちゃんのためにお米を食べるようになったのだ。
 逆にフレーズちゃんはパンが好きで、スポンジ生地も大好きのようである。

「私、もう好き嫌いなく食べられるから、フレーズちゃんの好きなものを作ってあげて」
「スリーズも立派に成長して」
「フレーズちゃんは小さくて少ししか食べられないから、フレーズちゃんが好きなものを作るのが一番いいわ」

 八歳になるスリーズちゃんもしっかりとフレーズちゃんのことを考えていた。
 フレーズちゃんは燕の姿で胃袋も小さいので一度に少ししか食べられない。一度に少ししか食べられないので、一日に何度も食事をして栄養を取る必要がある。
 小さなフレーズちゃんのために母は常に料理を用意していた。

「おやつにはケーキだけにしましょうね。他のものを食べたらケーキが食べられなくなるわ」
「あい!」

 燕の嘴から可愛い女の子の声が聞こえてくるのも不思議だが神族とはそのようなものなのだ。お父さんも燕の姿でも普通に話しかけて来る。
 ケーキが運ばれて来ると切り分けたフレーズちゃんの一切れにフレーズちゃんが突進していく。嘴で食べる分を突いて取り、飲み込んでいる様子はケーキに穴を掘っているようだった。

 スリーズちゃんもケーキを食べているが少し寂しそうである。

「スリーズちゃん、どうしたの?」
「レオくん、弟が生まれてから、お家に来なくなったの。会いたいわ」

 お誕生日くらいはレオくんもお招きしておいた方がよかったのかもしれない。眉を下げているスリーズちゃんにお父さんが燕の姿で飛び上がる。

「すぐにレオくんに事情を話して連れて来るよ」
「いいの、お父さん?」
「スリーズが楽しくないお誕生日なんて悲しいだけだ」

 すぐにお父さんがレオくんの家に行ってレオくんを連れて来てくれた。レオくんもスリーズちゃんのことが気になっていたようで、駆け寄ってぎゅっと手を握る。

「お誕生日、行っていいか俺が聞けばよかったな。さみしい思いをさせてごめん」
「ううん、レオくん忙しかったんでしょう?」
「弟のトールがやんちゃなんだよ。でも、スリーズちゃんのお誕生日には行きたいって言えばよかった」

 反省してスリーズちゃんの手を握って謝るレオくんに、スリーズちゃんの表情が明るくなる。レオくんと隣りの席に座ってスリーズちゃんは大きなお口でケーキを食べ始めた。
 スリーズちゃんが楽しいお誕生日を迎えられて僕は安堵していた。

「お母さん、私、耳に穴を開けたいの」
「リラ、ピアスを付けたいの?」
「そうなのよ。お母さん、開けてくれる?」
「それはアンナマリに頼んだ方がいいかもしれないね。普通のピアスは定着するまでに三か月くらいかかるけど、アンナマリなら魔法ですぐに定着させてくれるよ」

 母の話を聞いてリラはアンナマリ姉さんのところに行く気になっている。

「結婚式に綺麗なピアスを付けたいのね。一緒に買いに行きましょう」
「お願い、お母さん」

 リラは結婚式を見据えてピアスを開けるつもりだったようだ。

 テーブルの上ではお腹をぽんぽこりんにしたフレーズちゃんが転がっている。お父さんが人間の姿でフレーズちゃんの羽根や嘴についたクリームや果汁を拭きとっていた。

「お父さん、お母さん、私、先に帰るわ。スリーズちゃん、フレーズちゃん、本当にお誕生日おめでとう」
「ねぇね、あいがちょ」
「お姉ちゃん、アンナマリお姉ちゃんのところに行くの? アンナマリお姉ちゃんに私が八歳に、フレーズちゃんが二歳になったって教えてあげて」
「分かったわ。伝えるわね」
「ねぇね?」
「そうよ。アンナマリお姉ちゃんのところに行ってくるのよ。行ってきます、フレーズちゃん」
「ばっばい」

 羽根をぱたぱたさせて挨拶をするフレーズちゃんにリラも手を振って出かけて行った。

「耳に穴か……男がピアスを付けるってどうなんだろう」
「ラーイもつけたいなら、遠慮せずに行って来たらいいわよ」
「ピアスって痛いんじゃない?」
「冷やして感覚を鈍くさせているし、麻酔の魔法も使うから、そんなに痛くはないと思うわよ」
「男らしくないとか言われないかな」

 うじうじとして一歩踏み出せない僕に、母が手の平で僕の背中を軽く叩く。

「大陸では男女問わずピアスを付けている土地もあるし、男らしくないとかそんなことは誰かに言われたら言い返していいのよ。そういうのは差別だってね」

 男性の僕がピアスを付けていてもおかしくはない。母はそう言ってくれている。
 僕も素早く身支度をしてリラの後を追うことにした。

 アンナマリ姉さんの診療所でリラは待合室で順番を待っていた。僕が来るとリラが大きく手を振る。

「お兄ちゃんも来たの?」
「僕もピアスを開けてみたくて」
「いいと思うわ。きっと似合うわよ」

 待合室で待っている間、リラは結婚式で付けるピアスの話をしていた。

「水引とタッセルのピアスが欲しいの。お兄ちゃんもお揃いにしない?」
「僕とリラでピアスがお揃い?」
「お兄ちゃんは羽織袴にするんでしょう? 羽織袴にも似合うと思うわ」

 水引とタッセルのピアスを付けて羽織袴で結婚式に出る。それはなかなか格好いいのではないだろうか。

「いいかもしれない」
「お母さんに水引とタッセルのピアスを買ってもらいましょう」
「リラは赤、僕は黒かな」
「お兄ちゃん、黒は髪の色に紛れちゃう」
「あ、そうか。それじゃ、白かな」
「白ならいいわ」

 話している間に順番が来て、僕とリラはアンナマリ姉さんの診察室に入った。
 アンナマリ姉さんに二人で説明をする。

「初夏の誕生日に結婚式をするんだけど、そのときにつけたいピアスがあるの」
「それまでに定着していないといけないから、アンナマリ姉さんのところに来たんだ」
「二人はピアスを開けたいのね?」
「そうよ」
「両耳にお願いします」

 リラと僕で説明するとアンナマリ姉さんは僕とリラの耳たぶを氷で冷やして、魔法をかけて、鏡を持って来て髪を耳にかけて耳が見えるようにする。

「開ける場所はここでいい?」
「いいわ」
「それじゃ開けるわよ。少し痛いかも」

 まずはリラがピアスを開けてもらう。
 続いて僕がピアスを開けてもらう。
 氷で冷やされていたのと魔法で麻酔がかかっていたので痛みは感じなかったが、耳の中を何かが通過する違和感は覚えた。

 しばらく押さえていると、血も止まって、僕とリラの耳には小さな石の付いたピアスがつけられていた。

「結婚式は初夏なのね。それまではそのピアスを外さないようにして。魔法で定着を早くしているけれど、しばらくはかかるからね」
「分かったわ」
「ピアス、外さないようにするよ」
「結婚式には私も招いて。いい結婚式になることを祈っている」

 アンナマリ姉さんの優しい声に僕もリラも顔を見合わせて頷いた。

「ありがとう、アンナマリお姉ちゃん」
「いい結婚式にするよ、アンナマリ姉さん」
「料理はアナが作りに行くと思うから、アナともよく打ち合わせをしてね」
「アナお姉ちゃんとも話し合うわ」
「アンナマリ姉さん、何から何までありがとう」

 アンナマリ姉さんの気遣いに感謝しつつ、僕とリラは診療所から社に帰った。
 社に帰るとセイラン様はすぐに僕のピアスに気付いていた。

「可愛いものをつけておるな」
「アンナマリ姉さんに開けてもらいました」
「ラーイによく似合っておるぞ。とても可愛い」
「格好いいじゃないんですね」
「ラーイは私にとってはずっと可愛い存在だからな」

 格好いいにはなれないけれど、僕のことを抱き締めてピアスを褒めてくれるセイラン様に、僕もしっかりと抱き付いた。
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