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2019年6月 薬理学基本コース
91 気分は無償の愛
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「来月は微生物学教室、再来月は病理学教室の基本コース研修で9月からは予定通り発展コース研修が始まるんだって。順番もシラバス通りにやるらしいけど覚えてる?」
「ええ、確か微生物学・解剖学・生化学・生理学・薬理学・病理学ですよね。微生物学だけ基本コースと時期が近いですね」
「ボクも詳しくは知らないけどマレー君は夏休み中はフィリピンの感染症研究所に留学することになってて、冬休み中も別の所に留学するんだって。9月は研究医の合宿もあって使える時間が短いから微生物学教室では7月と9月を合わせて一通りの研修を済ませるみたい」
「へえー、そういう事情なんですね。ところで合宿っていうのは……?」
研究医の合宿というのは初耳なので僕はそのキーワードに反応した。
「えっ、2年次転入生のシラバスには書かれてないのかな? 近畿圏には研究医養成コースを設置してる医大が5つあって、私立だと畿内医大と京阪医科大学と西宮医科大学、国公立だと神山大学医学部と紀州医科大学なんだけど、この5つが研究医養成医学部連盟っていうのを結成してるの。5大学共同で毎年9月に合宿を開催してて、2回生以上の研究医生は原則として参加必須なんだよ。ボクとマレー君、ヤミ子ちゃんとさっちゃんは去年デビューして、白神君とカナちゃんと恵理ちゃんも今年から参加することになるはず」
「なるほど。僕にも招待が来たらぜひ参加したいです」
畿内医大の研究医生が集まる機会自体がそれほど多くないのに、近畿圏の5大学の研究医養成コース生が一堂に会するイベントというのは本当に珍しい。
剣道部を辞めた今、何らかの合宿に行くチャンスも皆無なので大学生として純粋に楽しみでもあった。
「去年だと7月下旬ぐらいに案内が来たから白神君も楽しみにしてるといいよ。ボクは去年マレー君と同室で、深夜まで延々遊べて楽しかったし」
「それはいいですね。僕も先輩方と同室だと楽しいと思います」
合宿の話題で盛り上がっていると、時刻は既に18時を回っていた。
「あっ、ごめん。実はこれからヒデ君がお見舞いに来てくれることになってて。2人で話したいことがあるから、そろそろ帰って貰ってもいい?」
「もちろんです。……あの、先輩」
「どうしたの?」
すぐに立ち去れるよう準備して、僕は先輩にある言葉を伝えた。
「無償の愛、という言葉があります。天草君とこれから付き合っていく中で悩むことがあったら、その言葉を思い出してみてください」
先輩はこれから天草君に思いを伝えるのかも知れないし、黙ったままにしておくのかも知れない。
そのどちらにせよ先輩が天草君を愛しているのは純粋な気持ちであり、愛する人のために生命を投げ出した先輩の姿勢は何よりも尊い。
だからこそ、もし天草君が全く振り向いてくれなくても先輩には無償の愛の素晴らしさを心に刻んでおいて欲しいと思った。
「……ありがとう。実はこれからヒデ君に全部打ち明けようと思ってたの」
「天草君がどんな反応をしたって先輩の愛情は尊くて素晴らしいものです。だからもし彼に拒絶されても、絶対に後悔したりしないでください」
「もちろん!」
そのまま僕は病室を後にして、ヤッ君先輩は僕の背中に向けてずっと手を振ってくれた。
帰り際に病棟の廊下で天草君とすれ違ってお互いに会釈をした。
それから彼らがどんな会話をしたのかは分からないが、先輩の気持ちが救われてくれさえすれば先輩にも天草君にも後悔はないだろう。
「ええ、確か微生物学・解剖学・生化学・生理学・薬理学・病理学ですよね。微生物学だけ基本コースと時期が近いですね」
「ボクも詳しくは知らないけどマレー君は夏休み中はフィリピンの感染症研究所に留学することになってて、冬休み中も別の所に留学するんだって。9月は研究医の合宿もあって使える時間が短いから微生物学教室では7月と9月を合わせて一通りの研修を済ませるみたい」
「へえー、そういう事情なんですね。ところで合宿っていうのは……?」
研究医の合宿というのは初耳なので僕はそのキーワードに反応した。
「えっ、2年次転入生のシラバスには書かれてないのかな? 近畿圏には研究医養成コースを設置してる医大が5つあって、私立だと畿内医大と京阪医科大学と西宮医科大学、国公立だと神山大学医学部と紀州医科大学なんだけど、この5つが研究医養成医学部連盟っていうのを結成してるの。5大学共同で毎年9月に合宿を開催してて、2回生以上の研究医生は原則として参加必須なんだよ。ボクとマレー君、ヤミ子ちゃんとさっちゃんは去年デビューして、白神君とカナちゃんと恵理ちゃんも今年から参加することになるはず」
「なるほど。僕にも招待が来たらぜひ参加したいです」
畿内医大の研究医生が集まる機会自体がそれほど多くないのに、近畿圏の5大学の研究医養成コース生が一堂に会するイベントというのは本当に珍しい。
剣道部を辞めた今、何らかの合宿に行くチャンスも皆無なので大学生として純粋に楽しみでもあった。
「去年だと7月下旬ぐらいに案内が来たから白神君も楽しみにしてるといいよ。ボクは去年マレー君と同室で、深夜まで延々遊べて楽しかったし」
「それはいいですね。僕も先輩方と同室だと楽しいと思います」
合宿の話題で盛り上がっていると、時刻は既に18時を回っていた。
「あっ、ごめん。実はこれからヒデ君がお見舞いに来てくれることになってて。2人で話したいことがあるから、そろそろ帰って貰ってもいい?」
「もちろんです。……あの、先輩」
「どうしたの?」
すぐに立ち去れるよう準備して、僕は先輩にある言葉を伝えた。
「無償の愛、という言葉があります。天草君とこれから付き合っていく中で悩むことがあったら、その言葉を思い出してみてください」
先輩はこれから天草君に思いを伝えるのかも知れないし、黙ったままにしておくのかも知れない。
そのどちらにせよ先輩が天草君を愛しているのは純粋な気持ちであり、愛する人のために生命を投げ出した先輩の姿勢は何よりも尊い。
だからこそ、もし天草君が全く振り向いてくれなくても先輩には無償の愛の素晴らしさを心に刻んでおいて欲しいと思った。
「……ありがとう。実はこれからヒデ君に全部打ち明けようと思ってたの」
「天草君がどんな反応をしたって先輩の愛情は尊くて素晴らしいものです。だからもし彼に拒絶されても、絶対に後悔したりしないでください」
「もちろん!」
そのまま僕は病室を後にして、ヤッ君先輩は僕の背中に向けてずっと手を振ってくれた。
帰り際に病棟の廊下で天草君とすれ違ってお互いに会釈をした。
それから彼らがどんな会話をしたのかは分からないが、先輩の気持ちが救われてくれさえすれば先輩にも天草君にも後悔はないだろう。
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