24 / 221
ずっと見てる者。ずっと見てた者。
しおりを挟む
「最終連絡からどれくらいたっている」
「既に1時間が過ぎています」
「奇襲部隊からの連絡は?」
「同じくありません」
「この状況をどう見る?敵の罠か。まさか、こちらの情報が漏れていた?」
「支援部隊がそろそろ到着の予定時刻です。異常があれば転移魔法で書簡が届きます」
「万が一に備えこちらからも伝令を走らせろ!」
襲撃の指揮を執ったナジョト国の司令部では、連絡が途絶えた連合部隊と奇襲部隊の捜索で侵略どころではなくなってしまった。
「なにやら慌ただしくなってきましたね?」
「そ、それよりカスケード軍の様子はどうなんじゃ? ノーザン殿」
「こちらは何事もなく。長時間睨みあいしてるみたいですよ。ただ部隊の一部が町の方に向かったとの報告も受けています」
「大した数じゃなかろう」
「そうですね、大した数ではありません。ましてやこの作戦に支障が出るような数ではないはずです」
「ああ、そうじゃろうな……」
指令部の者達が走り回り、怒号が飛び交う。
それは綿密に練られた作戦が崩れていくさまを表しているようだった。
「……今回の襲撃は失敗ですかな?」
「ん、んーまだ待っとくれ、何かのトラブルかもしれん。作戦が失敗したと決めるのは次の報告が来てからでも遅くはない」
「そうですね、まぁどちらでも構わないのですが、こちらは予定通り時間になったらこちらの兵を全て引き揚げさせていただきなす。よろしいですね」
「わかっとる」
「それとそれと中将さん。約束の物もお忘れなくお願い致しますね」
「念を押さんでもちゃんと用意しとるから、帰りにもってけ」
「はい、ありがうございます」
(くっそ、この狐男め。何もしとらんのに報酬だけは一丁前に高額だ。金で動くが金が掛かり過ぎるのも問題じゃ)
暫くして指令室に書簡が送られてくる。内容は予想通り作戦の失敗、そして。全部隊の行方不明ということだった。
町に被害を起こすことはできたが想定より遥かに小規模でこちらの代償が大きくなってしまった。
静まり返った指令室に1人の将官の呟きが響く。
「やはり辺境といえど、女神のおひざ元であったか……」
『アヤフローラ教国と戦争でもしようものなら天罰がくだる』
おとぎ話の一文でもあるが、アヤフローラ国民はこれに疑いを持ったとこはない。
他国の者がそんな世迷言に耳を傾けるわけもないのたが過去にも幾度となく侵略を阻止しされ、今回もよくわからないまま失敗に終わったことを考えるとそんな言葉が出てしまっても誰も何も言えないのだろう。
この一件で得をしたのはノーザンと言う男だけ。アヤフローラ教国カスケード軍の戦力を把握。ナジョト国に手を貸したことで報酬を受け取り、そしてカスケード軍とは別に部隊を消失させるほどの何かがあることを確認できた。
自らは代償も危険もなく大きな報酬と情報を得る事ができたのだ。
「それでは私はこれで帰りますね中将さん」
「ああ、気を付けて帰るがいい。ここで見送りとさせていただく」
「また、何かありましたらお呼びくださいね」
「……」
ノーザンが外に待たせてある竜車に乗り込むと、そこには既にもう一人乗っている。
「速かったですね、ドラン。いやはやこちらの人達はダメダメでしたね」
「知ってた」
「私も最初から当てにしていなかったのですよ。で、そちらの様子はどうでしたか?」
「化け物が1人いた」
「ん? 化け物と言いますとモンスターでしょうか?」
「違う、良く見えなかったが人族だと思う。尋常じゃない力を使っていた」
「噂の勇者様でもいたと」
「アレは勇者ではない。あの国の最強と呼ばれている勇者は一度見たことがあるから分かる」
「そもそもあなたの龍眼でも良く見えないなんてことがあるのですか?」
「今回の場合は例外。環境的なこと、距離的なこと、能力的なこと、いくつか原因が重なった」
「運が悪かったのでしょうか……、ドランはその化け物に勝てそうですか?」
「単独では無理。力の上限が見えない。それだけで脅威」
「あなたがそこまで弱気な事を言うのを初めてみました」
「別に相手を過大評価しているわけじゃない。正直に話している」
「わかっていますよ。ただ、珍しいと思っただけです。ですが問題ありません。負けると分かっているならば戦わなければいいだけす。力だけが強さとは限りませんからね」
「そうなのか?」
「そうですよ。知恵もまた力になります」
ノーザンとドランを乗せた竜車は国境を越えオオイ・マキニド共和国へと帰って行く。
その様子を部屋からずっと千里眼で監視していたコピーエーナ。
事件が起きてから町の上空を飛ぶ龍人族のドランの事をマークしていた。
ケーナの探索範囲には入らないギリギリのところで滞空し何もしてこないので逆に不信に思い千里眼で追跡していたのだ。
先手を打つこともできたのだが、オオイ・マキニド共和国の関与は予想外だったので泳がせることにしたのだった。
「どこの誰だか知らないけど、カスケード家に喧嘩を売ったこと後悔させてあげるからね」
「既に1時間が過ぎています」
「奇襲部隊からの連絡は?」
「同じくありません」
「この状況をどう見る?敵の罠か。まさか、こちらの情報が漏れていた?」
「支援部隊がそろそろ到着の予定時刻です。異常があれば転移魔法で書簡が届きます」
「万が一に備えこちらからも伝令を走らせろ!」
襲撃の指揮を執ったナジョト国の司令部では、連絡が途絶えた連合部隊と奇襲部隊の捜索で侵略どころではなくなってしまった。
「なにやら慌ただしくなってきましたね?」
「そ、それよりカスケード軍の様子はどうなんじゃ? ノーザン殿」
「こちらは何事もなく。長時間睨みあいしてるみたいですよ。ただ部隊の一部が町の方に向かったとの報告も受けています」
「大した数じゃなかろう」
「そうですね、大した数ではありません。ましてやこの作戦に支障が出るような数ではないはずです」
「ああ、そうじゃろうな……」
指令部の者達が走り回り、怒号が飛び交う。
それは綿密に練られた作戦が崩れていくさまを表しているようだった。
「……今回の襲撃は失敗ですかな?」
「ん、んーまだ待っとくれ、何かのトラブルかもしれん。作戦が失敗したと決めるのは次の報告が来てからでも遅くはない」
「そうですね、まぁどちらでも構わないのですが、こちらは予定通り時間になったらこちらの兵を全て引き揚げさせていただきなす。よろしいですね」
「わかっとる」
「それとそれと中将さん。約束の物もお忘れなくお願い致しますね」
「念を押さんでもちゃんと用意しとるから、帰りにもってけ」
「はい、ありがうございます」
(くっそ、この狐男め。何もしとらんのに報酬だけは一丁前に高額だ。金で動くが金が掛かり過ぎるのも問題じゃ)
暫くして指令室に書簡が送られてくる。内容は予想通り作戦の失敗、そして。全部隊の行方不明ということだった。
町に被害を起こすことはできたが想定より遥かに小規模でこちらの代償が大きくなってしまった。
静まり返った指令室に1人の将官の呟きが響く。
「やはり辺境といえど、女神のおひざ元であったか……」
『アヤフローラ教国と戦争でもしようものなら天罰がくだる』
おとぎ話の一文でもあるが、アヤフローラ国民はこれに疑いを持ったとこはない。
他国の者がそんな世迷言に耳を傾けるわけもないのたが過去にも幾度となく侵略を阻止しされ、今回もよくわからないまま失敗に終わったことを考えるとそんな言葉が出てしまっても誰も何も言えないのだろう。
この一件で得をしたのはノーザンと言う男だけ。アヤフローラ教国カスケード軍の戦力を把握。ナジョト国に手を貸したことで報酬を受け取り、そしてカスケード軍とは別に部隊を消失させるほどの何かがあることを確認できた。
自らは代償も危険もなく大きな報酬と情報を得る事ができたのだ。
「それでは私はこれで帰りますね中将さん」
「ああ、気を付けて帰るがいい。ここで見送りとさせていただく」
「また、何かありましたらお呼びくださいね」
「……」
ノーザンが外に待たせてある竜車に乗り込むと、そこには既にもう一人乗っている。
「速かったですね、ドラン。いやはやこちらの人達はダメダメでしたね」
「知ってた」
「私も最初から当てにしていなかったのですよ。で、そちらの様子はどうでしたか?」
「化け物が1人いた」
「ん? 化け物と言いますとモンスターでしょうか?」
「違う、良く見えなかったが人族だと思う。尋常じゃない力を使っていた」
「噂の勇者様でもいたと」
「アレは勇者ではない。あの国の最強と呼ばれている勇者は一度見たことがあるから分かる」
「そもそもあなたの龍眼でも良く見えないなんてことがあるのですか?」
「今回の場合は例外。環境的なこと、距離的なこと、能力的なこと、いくつか原因が重なった」
「運が悪かったのでしょうか……、ドランはその化け物に勝てそうですか?」
「単独では無理。力の上限が見えない。それだけで脅威」
「あなたがそこまで弱気な事を言うのを初めてみました」
「別に相手を過大評価しているわけじゃない。正直に話している」
「わかっていますよ。ただ、珍しいと思っただけです。ですが問題ありません。負けると分かっているならば戦わなければいいだけす。力だけが強さとは限りませんからね」
「そうなのか?」
「そうですよ。知恵もまた力になります」
ノーザンとドランを乗せた竜車は国境を越えオオイ・マキニド共和国へと帰って行く。
その様子を部屋からずっと千里眼で監視していたコピーエーナ。
事件が起きてから町の上空を飛ぶ龍人族のドランの事をマークしていた。
ケーナの探索範囲には入らないギリギリのところで滞空し何もしてこないので逆に不信に思い千里眼で追跡していたのだ。
先手を打つこともできたのだが、オオイ・マキニド共和国の関与は予想外だったので泳がせることにしたのだった。
「どこの誰だか知らないけど、カスケード家に喧嘩を売ったこと後悔させてあげるからね」
3
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
戦国鍛冶屋のスローライフ!?
山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。
神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。
生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。
直道、6歳。
近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。
その後、小田原へ。
北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、
たくさんのものを作った。
仕事? したくない。
でも、趣味と食欲のためなら、
人生、悪くない。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる