たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

文字の大きさ
25 / 221

相席で会敵

しおりを挟む
「ケーナが帰ってきたニャ!!」

 猫目亭の扉をまだ開けていないのに、中からミーニャの喜ぶ声が聞こえてくる。
 そっとドアノブに手を掛けると、反対側からグッと引っ張られる。

「おっ帰りニャー!!! やっとやっと帰ってきたニャー」

「ただいま、ミーニャ」

 ニッコニコのミーニャが出迎えてくれる。
 ジーンとアテシアも一緒だ。アテシアは大規模な火事に気づいて森から帰ってきたそうだ。

「無事だったか、ケーナ。先に謝るがあの話アテシアには話をさせてもらった。なぜ一緒に避難しなかったのか問いただされてな……」

「アテシアさんでしたらかまいませんよ」

「聞いたよ。妙に気品があったのにも納得だ。あたしの若い頃に似ているんだからそれぐらいじゃないとな、ハハハ」

 3人とも無事なようで良かった。

「皆の無事を見るのと私の無事を伝えに寄っただけで、すぐまた出ないといけないので」

「そんニャー。まだ来たばっかりニャー」

「コラッ、ミーニャ! ケーナを困らせるんじゃないよまったく」

「だってだってニャ……」

「大丈夫だよミーニャ。用が済んだらまた戻って来るから」

「約束やニャ」

「うん約束」



 次に向かった先はカスケード家。
 
 庭には数台の馬車が止まっていて父親が事後処理にでも追われているのかもしれない。

 隠密スキルを使い自室まで戻る。もちろんそこにはもう一人の私が待っていた。

「そろそろ来ると思っていました」

「まぁ、今回の騒ぎは大きかったからね」

「また記憶を統合するのでしょうか」

「そうだね、今後のためにも知っておいた方がいいかも。ただ知り過ぎてることになるから上手く隠すんだよ」

 使うスキルは前回と同じ。ナナスキルのフュージョンとコピーを手早くすすめる。

「こいつら、誰?」

 コピーエーナの記憶にあった、龍人族と謎の男。
 千里眼でずっと監視してくれていたみたいだ。

「今回の襲撃に裏で深く関わっていそうな2人です。おそらくオオイ・マキニドの者でしょうね」

「全然気づかなったよ。私の方が近くにいたのに……」

 それだけ手練れということ。
 そして龍人族と合流して話をする謎の男の方もしてやったりの笑顔になっている。何かしら得をしているのだろう。

「これだけカスケードにちょっかい出しておいて、ねぇ?」

 怒りの感情が心の奥でうごめいてしまう。

「何をする気ですか?」

 殺気でも感じ取ったのだろうかコピーエーナが心配そうにこっちを見てくる。

「ちょっと、挨拶してくるだけだよ」

 空間転移魔法を展開する。行き先はオオイ・マキニドとの国境線になるべく近いところ。
 転移後はオオイ・マキニドまで飛行魔法で飛んでいく。
 記憶統合の副作用によって音の壁すら簡単に超えるスピードが出せる。
 3重、4重の魔法使用も息をするのと同じぐらい簡単だ。

 フュージョンを使うたびにステータス値が倍になってしまので思っていたより早く最大値に達するだろうなと…… たぶん。

 飛んでいく先はカスケードから比較的近く大きな都でイイコタキヤという。 

(偉そうな奴も、悪い奴も、人の集まるところにいると思う)

 そんな適当な予想でも当たるときは当たるのだ。
 
 上空で探索を使用し表示させる情報を絞り込む。
 
 条件は龍人族。

 早速一件見つかった。


---------------------------------------------------

ドラン 女 225歳 龍人族 Lv404 

---------------------------------------------------

(ステータスの改ざんはしてなさそう)

 これだけレベルが高ければその必要もないのかもしれない。このレベルを知った人族が挑もうなんて思わないし、誰だって無駄死にはしたくない。

 探索スキルのおかげで居場所がわかったので隠密スキルを発動させ一気に近づいて行った。

 どうやら相手は食事中、とても分厚いステーキ肉を出してくれるお店らしい。店の外にまで肉の焼けるいい匂いが漏れ出している。

 店内に入ってもまだ隠密スキルは発動したままなので店員に声をかけられることはない。

 二人掛けの席で黙々と肉を頬張るドランの向かいの席の前に立ち隠密スキル解除した。

「相席いいかしら?」

 肉に刺したフォークがピタリと止まり、咀嚼している口の動きも同時に止まる。
 
 ゆっくりと顔を上げて私を見つめてくる。

「ふもっふ!」

 口に肉を詰めすぎてるせいで上手く話せない。

「おっと、急に動かないでね。そのまま静かに」

 相席の了解は得てないが椅子に座る。
 
 店内は美味い肉のおかげで大盛況、私からすれば騒がしい。でもそのおかげで誰もこの席の違和感に気付けない。
  
「私はケーナ。私のこと分かるよね? ドランさん」

 ぱちぱちと瞬きをしている。
 
「どうして私がここにいるのか不思議って感じかな? それとも名前を知ってることかな?」

 カタカタとフォークが震え始めた。本能による恐怖は意思で止められないのだろう。
 震える手に私の手をそっと添えてあげる。私は優しい。

「ねぇ、試しにこの手を振り払ってみてよ」

 相手の左手の上に添えられた私の右手。
 言われるがまま私の手を振り払おうとするが、力で抑え込む。 
 
「遠慮してるの? それともここじゃ本気が出せない?」
 
 一瞬本気を出したのだろうか、すぐ諦めたかのように脱力してしまう。すると今度は唇が震え始めた。顔色も良くない。

「さすが龍人族。たったこれだけのことで差が分かってくれたみたいで手間が省けるよ。あの男にも伝えておくんだよ。誰に喧嘩を売ったかって。わかった? わかったなら一度だけ頷いて」

 小さく、でも確実にコクリと頷く。

 私のレベルは3620になる。レベルだけならドランとの差は約9倍。
 種族が違うので細かいステータスの差は違ってくるが、不意を突かれても負ける気はしない。

「私はもう帰るから、次会う時は敵じゃないことを祈っておくよ」

 また隠密スキルを発動させて店を出ていく。
 相手からしたら消えたかのように感じるのだろう、周囲をきょろきょろして私のことを探しているようだった。

 時間がある時にでもここのステーキを食べようと思ったので、店の近くに空間転移魔法ための魔力によるマークをしておく。

「これでよし! あれだけビビってくれるならとりあえずは大丈夫かもね」

 レベル404ともなると普段ならビビるなんてことはないだろう。
 恐怖なんて久々だったろうけど感じ取ってくれたらそれで十分。
 
 ただあれだけ強いのにもかかわらず人族に仕えているのが違和感に感じたけど、200年も生きていると色々な考えがあるのだろうか。
 
 案外美味い飯にありつけるからってことかもしれない……。


 一通りの用事が済んだのでミーニャのもとへ帰りいっぱい癒してもらおうと思った。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...