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広がる波紋 南の大国 バグラ王国
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「魔王様、緊急の伝達がございます」
「待て、それどころではない。インテルシアがアヤフローラに攻め入ったと一報があってこちとら手一杯なんじゃ」
「その続報でございます」
「何? またか!」
「アヤフローラのカスケード領にて殲滅級魔法の魔力反応を捉えました。規模は不明ですが精霊反応も同時に捉えたことから発動したのは間違いないかと」
「な……。インテルシアの魔導士どもは女神と勇者に喧嘩を売るつもりなのか……? 直ちに偵察部隊を送り状況の把握し報告せよ」
「承知しました!」
南のバグラ王国では、アヤフローラ内で起きた禁忌の古代魔法、そして殲滅級の精霊魔法の両方の魔力を捉えていた。
そのためこの国の王であり魔王でもあるトット・ベルクスは、軍の幹部や家臣などを集め緊急の会議を開き今後の対応について話し合いをしていたのだ。
インテルシア魔導国は、魔王が治めるバグラ王国を是とはしておらず、国交断絶を貫いている唯一の国である。
それなのでインテルシア魔導国から年に数回ちょっかいをだされ小競り合いが起きているのだ。
本格的にいつ攻め入られてもいいようにと、対魔法・魔術対策にはどこよりも力を入れてきたのがバグラ王国なのである。
「それとアヤフローラ、インテルシア、両国境線付近に警戒戦備体制を敷くように通達せよ」
降り掛かる火の粉は払わなければならない。もしもの備えとは言えそれでも、戦争一歩手前まで来たことで魔王軍の幹部達には緊張が走ったのだった。
バーーン!
と勢いよく扉が開き、また何かあったのかとその場に居た者の視線が集まった。
「お父様! いつまで待てばよろしくて? お約束のお時間は過ぎてますのよ!!」
啖呵を切って入ってきたのは魔王の唯一の娘テッテ・ベルクス。魔王が齢3000を越えて初めての子供。人間との間に生まれた子でまだ11歳になったばかり。
テッテだと分かると魔王以外は皆目をそらす。
「おおテッテ。待たせてしまってすまないね。でももうちょっと我慢できるかな?」
「無理ですの! お父様と一緒じゃなくても1人で参りますわ! わたし何かより会議の方が大切なんですわ!」
「ああ! 怒った顔も可愛いよ。でも、そんなこと言わないでおくれテッテ。待っててくれたら前欲しがってた大きな魔石買ってあげるから!」
「……仕方ありませんわね。あとちょっとだけですのよ!」
頬を膨らませてズンズンと部屋を出て行く娘のテッテ。
傍から見たら、父親の威厳が無くただただ親バカのように映っている事だろう。しかし、娘のテッテを本当の意味で御せる者が魔王意外にはいないと言うことが真実であった。
魔王よりも厄介な存在。
テッテにはこれまで何十人もの教育係が宛がわれてきたが3日と持つ者がおらず、早々に辞退する者、いつの間にか逃げ出す者、精神を病んでしまう者、悲惨な結果ばかりだった。
原因はテッテの持つスキル魅了、そして魅了の効果を強化させる”色欲スキル”が原因であることは分かっていた。
この色欲スキルは7大スキルの1つとされ、この世界で色欲スキルを持つ者は1人しかいないとされている。
テッテの魅了を受けた相手は完全に玩具となってしまい辱められたり、無茶をさせたれたりと散々な目にあっている。
「11歳の少女に魅了されるなんてバカバカしい」
という者から魅了され、警戒し高い精神力や魅了耐性を持つものでも色欲スキルによって突破されてしまう。
ただし父親である魔王は溺愛によってそのスキルに対抗できていると言ってもいい。
「魔王様、魔王様」
幹部の1人が耳打ちをしてくる。
「なんだ」
「テッテ姫がいつ暴走するか分かりませぬ。会議はわたくし達にお任せ頂けないでしょうか?」
「んん……そうだな。テッテはまだやんちゃだからな」
魔王は作戦指揮を預けテッテの元へと行くのであった。
「魔王様より任せられたからには、この事態皆の知恵で乗り切ろうぞ」
皆を鼓舞するこの国の№2である宰相のハイレイ・ドルミオン。
「まったく姫には振り回されてしまいますな宰相殿」
と声をかけてきたのは軍の最高司令官キャンパス・ドルミオン。この二人は魔王を陰で支える鬼人族の兄弟だ。
「いかにも、教育係がおらぬ事が原因なのはわかりきっておるのだがな……」
「仕方ないでしょう、私は命令されても嫌ですぞ。前線にいた方が落ち着く」
「ははは。姫の近くは戦場の前線より厳しいってことですかな。失礼すぎるぞ、ははは」
つられて数名の幹部も笑ってしまっていた。
前線よりホットな戦地に赴くは魔王ただ一人。
「テッテ入るぞ」
中ではテッテが出発の準備を終え今からすぐにでも出かけますよ状態だった。
「あら、お父様のまだ準備がお済みのようには見えませんね」
「テッテ、先程待つと言ったではないか」
「もちろん待ちましたわよ。ちょーーっとだけですけど。でもお父様の準備が終わるまで待っていましたら明日になってしまいますわ」
「本当に1人で行く気なのか?」
「あら、冗談だとでもお思いですの? お出かけぐらいできましてよ。それでは行って参りますわ」
小さなバックを手に取ると部屋を出ようとする。
「待て待て待て、分かった、パパが悪かった。でも今は本当に大変な時なんだ。せめて護衛を付けさせてくれ」
「お忍びのお出かけですのよ。荷物持ちのメイドでも目立つのに護衛なんかつけたら……」
「分かっておる、だから今回だけは手乗り狐のヤツメを付ける。ヤツメはお前に懐いておるからの」
「まぁ、ヤっちゃんでしたら構いませんわ」
魔王の召喚魔法で呼び出されたのは手乗り狐と呼ばれる小さな狐の霊獣だ。
大量の魔力を餌にしないと手懐けることが難しいとされる霊獣である。
対象を守る為なら小さいながらも一生懸命頑張ってくれる、守りの専門家でもある。
「ヤっちゃーーん! 久しぶり!」
クゥ~ゥンと甘えた様子でテッテの肩に乗り頬擦りをするヤツメ。
テッテが赤ん坊の頃は常に一緒にいたので、気を許せる希少な存在だ。
「それでは行って参りますね。行きますわよヨシエ」
引き止めに失敗し肩を落とす魔王。
テッテはメイドのヨシエを引き連れ商売と娯楽と美食の国、オオイ・マキニド共和国に旅立った。
「待て、それどころではない。インテルシアがアヤフローラに攻め入ったと一報があってこちとら手一杯なんじゃ」
「その続報でございます」
「何? またか!」
「アヤフローラのカスケード領にて殲滅級魔法の魔力反応を捉えました。規模は不明ですが精霊反応も同時に捉えたことから発動したのは間違いないかと」
「な……。インテルシアの魔導士どもは女神と勇者に喧嘩を売るつもりなのか……? 直ちに偵察部隊を送り状況の把握し報告せよ」
「承知しました!」
南のバグラ王国では、アヤフローラ内で起きた禁忌の古代魔法、そして殲滅級の精霊魔法の両方の魔力を捉えていた。
そのためこの国の王であり魔王でもあるトット・ベルクスは、軍の幹部や家臣などを集め緊急の会議を開き今後の対応について話し合いをしていたのだ。
インテルシア魔導国は、魔王が治めるバグラ王国を是とはしておらず、国交断絶を貫いている唯一の国である。
それなのでインテルシア魔導国から年に数回ちょっかいをだされ小競り合いが起きているのだ。
本格的にいつ攻め入られてもいいようにと、対魔法・魔術対策にはどこよりも力を入れてきたのがバグラ王国なのである。
「それとアヤフローラ、インテルシア、両国境線付近に警戒戦備体制を敷くように通達せよ」
降り掛かる火の粉は払わなければならない。もしもの備えとは言えそれでも、戦争一歩手前まで来たことで魔王軍の幹部達には緊張が走ったのだった。
バーーン!
と勢いよく扉が開き、また何かあったのかとその場に居た者の視線が集まった。
「お父様! いつまで待てばよろしくて? お約束のお時間は過ぎてますのよ!!」
啖呵を切って入ってきたのは魔王の唯一の娘テッテ・ベルクス。魔王が齢3000を越えて初めての子供。人間との間に生まれた子でまだ11歳になったばかり。
テッテだと分かると魔王以外は皆目をそらす。
「おおテッテ。待たせてしまってすまないね。でももうちょっと我慢できるかな?」
「無理ですの! お父様と一緒じゃなくても1人で参りますわ! わたし何かより会議の方が大切なんですわ!」
「ああ! 怒った顔も可愛いよ。でも、そんなこと言わないでおくれテッテ。待っててくれたら前欲しがってた大きな魔石買ってあげるから!」
「……仕方ありませんわね。あとちょっとだけですのよ!」
頬を膨らませてズンズンと部屋を出て行く娘のテッテ。
傍から見たら、父親の威厳が無くただただ親バカのように映っている事だろう。しかし、娘のテッテを本当の意味で御せる者が魔王意外にはいないと言うことが真実であった。
魔王よりも厄介な存在。
テッテにはこれまで何十人もの教育係が宛がわれてきたが3日と持つ者がおらず、早々に辞退する者、いつの間にか逃げ出す者、精神を病んでしまう者、悲惨な結果ばかりだった。
原因はテッテの持つスキル魅了、そして魅了の効果を強化させる”色欲スキル”が原因であることは分かっていた。
この色欲スキルは7大スキルの1つとされ、この世界で色欲スキルを持つ者は1人しかいないとされている。
テッテの魅了を受けた相手は完全に玩具となってしまい辱められたり、無茶をさせたれたりと散々な目にあっている。
「11歳の少女に魅了されるなんてバカバカしい」
という者から魅了され、警戒し高い精神力や魅了耐性を持つものでも色欲スキルによって突破されてしまう。
ただし父親である魔王は溺愛によってそのスキルに対抗できていると言ってもいい。
「魔王様、魔王様」
幹部の1人が耳打ちをしてくる。
「なんだ」
「テッテ姫がいつ暴走するか分かりませぬ。会議はわたくし達にお任せ頂けないでしょうか?」
「んん……そうだな。テッテはまだやんちゃだからな」
魔王は作戦指揮を預けテッテの元へと行くのであった。
「魔王様より任せられたからには、この事態皆の知恵で乗り切ろうぞ」
皆を鼓舞するこの国の№2である宰相のハイレイ・ドルミオン。
「まったく姫には振り回されてしまいますな宰相殿」
と声をかけてきたのは軍の最高司令官キャンパス・ドルミオン。この二人は魔王を陰で支える鬼人族の兄弟だ。
「いかにも、教育係がおらぬ事が原因なのはわかりきっておるのだがな……」
「仕方ないでしょう、私は命令されても嫌ですぞ。前線にいた方が落ち着く」
「ははは。姫の近くは戦場の前線より厳しいってことですかな。失礼すぎるぞ、ははは」
つられて数名の幹部も笑ってしまっていた。
前線よりホットな戦地に赴くは魔王ただ一人。
「テッテ入るぞ」
中ではテッテが出発の準備を終え今からすぐにでも出かけますよ状態だった。
「あら、お父様のまだ準備がお済みのようには見えませんね」
「テッテ、先程待つと言ったではないか」
「もちろん待ちましたわよ。ちょーーっとだけですけど。でもお父様の準備が終わるまで待っていましたら明日になってしまいますわ」
「本当に1人で行く気なのか?」
「あら、冗談だとでもお思いですの? お出かけぐらいできましてよ。それでは行って参りますわ」
小さなバックを手に取ると部屋を出ようとする。
「待て待て待て、分かった、パパが悪かった。でも今は本当に大変な時なんだ。せめて護衛を付けさせてくれ」
「お忍びのお出かけですのよ。荷物持ちのメイドでも目立つのに護衛なんかつけたら……」
「分かっておる、だから今回だけは手乗り狐のヤツメを付ける。ヤツメはお前に懐いておるからの」
「まぁ、ヤっちゃんでしたら構いませんわ」
魔王の召喚魔法で呼び出されたのは手乗り狐と呼ばれる小さな狐の霊獣だ。
大量の魔力を餌にしないと手懐けることが難しいとされる霊獣である。
対象を守る為なら小さいながらも一生懸命頑張ってくれる、守りの専門家でもある。
「ヤっちゃーーん! 久しぶり!」
クゥ~ゥンと甘えた様子でテッテの肩に乗り頬擦りをするヤツメ。
テッテが赤ん坊の頃は常に一緒にいたので、気を許せる希少な存在だ。
「それでは行って参りますね。行きますわよヨシエ」
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