たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

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影の者②

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 ドランとの食事の約束を守るべく、町を歩き出すが通りの混み具合は先程よりも増えていて中々前に進めない。
 食の町なのでどこの店に入ってもハズレは無い。しかしノーザンにはドランに食べてほいものがあり、なんとかかき分けやっとこのとでたどり着いた。

 暖簾には知らない国の文字。

「ドラン、こちらのお店になりますよ」

 暖簾をくぐると

「らっしゃい!!」

 勢いのいい声に「ひゃっ」と驚くドラン。

「ドランは『ラーメン』を食べたことはあるりますか?」

「ない。でもわかるこの場所だけ一段と美味しい匂いに包まれてる。だから、らあめんは美味しい」

 嗅覚も人族より優れているのでドランには分かるようだ。

「ドランは何でもお見通しですね」

 近寄ってくる店主が早速ドランに気づく。

「お、今日は可愛い子を連れてきて旦那も隅に置けないね~」

「こちらは私の護衛ですよ。注文はいつものラーメンを2つ大盛りでおねがいします」

「あいよ!スペシャルボア脂マックスラーメン大盛り2丁!!」

 ドランは他の客が食べているラーメンをじっと観察していた。

「このラーメンという料理は異世界から伝わったものだと言われています。きっとドランもこのラーメンを気に入ってくれると思いますよ」

「うん」

 観察はもう済んだようで、先程の集会についてドランが質問をしてきた。

「なぜドランがあいつに勝てないことちゃんと言わなかった?」

「人族の中で龍人族に勝てる者を挙げるとするなら、歴代の勇者の中でも最強と言われるエクリプスぐらいしかいないでしょう。そうなると英雄や軍などが立ち向かったところで無駄死になるのが見えています。それでも希望を残しておくことは重要なのですよ」

 勇者エクリプスの偉業は魔王討伐だけでなく、地を割った、海を割ったなどの逸話はいくつもあり、中には不治の病を完治させたり死者を蘇生させたりなど神の様な行いをした話まであるのだ。

「エクリプスはドランの母親と1戦交えてる」

 ドランのその一言に目を見開き驚くノーザン。

「それは知りませんでした!エクリプスが実際に龍人族と戦った話は興味深いですね。勝敗はどうなったのですか?」

「教えてくれなかった。ただ良い男だって」

「そうですか、まぁプライドもありますでしょうから。それにしても『良い男』と言われたのですね」

 一瞬ノーザンが笑ったように見えた。
 ドランは見逃さなったが、すぐにいつもの作り笑顔に戻ってしまった。

「母親はエクリプスと戦ったけど生きてる。でもドランがあいつと戦ったら死ぬかもしれない」

「それは実際に戦ってみないことには……」

「力の差は分かってる。1対1で即死。仲間がいても時間稼ぎが出来れば及第点。それでも、もしもの時は戦う」

 覚悟を秘めたドランの拳にはぎゅっと力が入っていた。

「いいえ戦わなくて大丈夫ですよ。そうならないよう私がいますので。相手が知性ある者である以上感情があり、考えがあり、想いがあります。であるならばコレは私の仕事です。ドランはいつも通り私の後ろにいてください」

「うん」

 力の抜けた手を見てホッとするノーザン。
 ドランがただの護衛ではない、それはノーザンが一番良く理解していた。
 命でさえ差し出す。その重さも理解していた。

「スペシャルボア脂マックスラーメン大盛り!お待ち!」

 どん!とテーブルに置かれたラーメンからは脂と旨味の匂いが嗅覚を貫くように刺激してくる。

「さぁ、熱いうちに食べましょう。ドランは箸を使えますか?」

「知らない」

「ちょうどいい機会です。ここで教えておきますので、よく見ててくださいね」

 ノーザンの箸使いを見て早速真似てみるものの流石に難しい。しかし、悪戦苦闘しながらも、美味しそうなラーメンを食べるためなら持ちゆるスキルを総動員させ箸の使い方を習得する。

 こんなことでも物覚えが早いのは龍人族ならではだ。

 数分も経たずにズルズルと麺をすすり始めるドラン。それを見て、たずねるノーザン。

「気に入っていただけましたか?」

 口にいっぱいに麺を頬張っているドランは、うんうんと首を縦に振り答える。

「それは良かったです。気に入っていただいたお礼に私のチャーシューを1枚差し上げます」

 またうんうんと答えるドラン。

 お気に入りのラーメンを美味しそうに食べてくれる。それだけでもここに来た甲斐があったと感じられたのだった。
「お客様方、どうぞゆっくりくつろぎくださいませ」

 ラルンテにはいったん外してもらう。

「どう? クッキー美味しいでしょ。私も手伝ったんだよ」

「ああ中々、って違うっす」

「こんな立派な貴族様だとはおもわなかったぞ」

「あー色々あるんだよ。お嬢様にも……。先に言っておくけど、猫君の中身が私だってことは絶対秘密だからね」

「言ったところで誰も信じねーよ」

「そんなことないと思うけど、改めてありがと。これでパーティー登録できる!ダンジョン行こうね!」

「なんだこの町の平和を守るんじゃ無かったのか?」

「もちろん、それもあるよ。でも1番の目的はダンジョン攻略かな。あそこはは複数人じゃないと入れないじゃない」

「ダンジョン行くっすか? 俺苦手なんっすよねああゆうところ」

「なんでー? 強そうな奴いて、しかも金も貯まるじゃない」

「そのな、ダンジョンって拳や刀が通用しないモンスターも結構いるからな。それと遭遇すると逃げるしかなくて、なかなか奥に進めねーんだよ」

「じゃあ、私が魔法担当ね。水属性得意だから重宝するわよー」

「魔法も使えたのか、そいつはありがたい」

「てか、俺らは後ろから付いてくだけでも十分っすね」

「エーナほどの実力があれば俺らは飾りだな」

「そんなことないよ。ただ分かると思うけど、私は命を張ることができないの。それでもヤナトとウリトが前に立つ時は絶対に守るから信じて欲しい」

「逆にエーナのことを気にしなくて済むから気が楽だ。お嬢様を怪我させたとか言われたくねーしな」

「変な誤解は勘弁っす」

 前々から興味のあったダンジョン。
 未知なる敵、最深に眠るお宝、ロマンしかない。

 そこに入るため利用させてもらうとはいえ、自分だけ安全なのはフェアじゃない。
 だけど、それで納得してくれる仲間じゃないと組むことができない。だからできる限りの事をするつもりだ。

「提案だけど、ダンジョンで手に入った物は全て2人で山分けして構わないわ」

「おいおいいいのかそんな約束しちまってよ」

「私がお金や装備に困っているように見えるの?」

「まぁそれはねーとおもうけどさ。パーティだぞ、利用してるみたいじゃねーか」

「利用しているのはお互い様よ。私はダンジョンでの経験が欲しいの」

「そうか、そうなら遠慮しねーからな」

「仲良く分けてちょうだいね。仲間割れなんてしてほしくないから」

「それは、無用の心配ってやつっすね。ずっと一緒にやってきたんすから。今日、盗んだ金貨だって仲良く分け――」

「おい!!」

「あ、ごめん兄貴……」

「盗んだ金貨……? 詳しく聞かせてくれない? 隠し事は無しでいきましょ」

 言い逃れはできないと思い。ヤナトはざっくりと話してくれた。
 謎に積まれた大量の金貨が詰まった箱。
 ヤナトの取得している職業にシーフがある事。
 金貨が使えたおかげでブラックベヒーモスに勝てた事。

「ギルド側の不手際ね。ただ直ぐにどうするかとは言えないわね。もし誰か個人のものって事が分かれば返しに行きたいけど。でもそんな大量のお金が個人ってことないから白銀たちへのお金かもしれないわね」

「拠点持ちの奴らの事か?」

「そう、白銀たちの必要経費ってやつよ。でも、この今回の事件で、カスケードを拠点とする白銀たちの問題がかなり見えてきたわ」

 エーナが千里眼で見ていた事はブラックベヒーモスだけじゃない。
 緊急の依頼が出ているのに動こうとしない白銀持ちの冒険者達だ。

 カスケードを拠点とする白銀持ちの冒険者には拠点の必要経費として多額のお金がギルドから貰える。
 それはこの町の守護を兼ねているからだ。

 だからこそ今回のような緊急依頼やモンスターの襲撃などはいの一番に駆け付けなければならない。

 それなのに断ったり、受けたけど全く行動をしなかったのは問題というしかない。

 そうなると第三者の介入が見え隠れするし、最悪の場合戦争に加担してはいけない冒険者の約束事も破ることになる。

 どちらにせよ。今カスケードを拠点としている白銀持ちはほとんどは腐っているのかもしれないこと。

 だけどヤナトとウリトはたった2人で即座に駆けつけ。ブラックベヒーモスの討伐までした。

 これこそ白銀のあるべき姿。まだ2人は白銀手前なんだけど。

「だからあなたが使ったお金が、もしかしたらとても有効活用された可能性も捨てきれないのよね」

「町の平和を守るって大変なんっすね」

「どこかの貴族がカスケード家を陥れようとしているのか、他国が攻めてきているのかわからねーな」

「そうね今回はあのでっかい浮島出されそれを消すのに必死だったから尻尾を掴めなかったの。巧妙すぎて賊の犯行とは言えないレベルよ」

「そうか、だから俺たちが前で戦う必要があるってわけか」

「俺は元々難しいことはできねっす。近づいて殴る。それだけっす。それでエーナが助かるならお安い御用っすね」

「あれ、ちょっと待て、エーナ。浮島消したのってエーナなのか?」

「ええ、そうよ」

「冗談って言ってくれっす。まじっすか!!」

 微笑むエーナ。

「「マジかよ……」」

 最後に2人の今日一番の驚愕の顔が見れて一笑いできたところで、初ミーティングはお開きとなった。


「ねぇ、夕食本当にいらないの?」

「いらねーよ。こんな堅苦しいところで食ったら味なんかしなそーだしな」

「テーブルマナーなんかできねっす」

「猫目亭にいるから用があったらそこに来い」

「わかった。じゃまた」

 玄関で見送り、振り返るとラルンテが2人について質問攻めをしてきたが、適当にはぐらかしておいた。

 ダンジョンのこと、白銀達のこと、カスケード家にちょっかいを出してきたやつのこと、やることはまだ多そうだ。
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