たぶんコレが一番強いと思います!

しのだ

文字の大きさ
51 / 221

才色兼備で一枚上手①

しおりを挟む
 カスケードの町復興は少しづつではあったが徐々に戻っては来ていた。

 色々調査はされていたが、黒幕を絞るまでは至っていなかった。
 建物などの被害に比べて住民の怪我や亡くなった割合は過去に例を見ないほど低く、アヤフローラ様の御加護のおかけであると噂されていた。

 それでも被害が0ではないので、今後も平和を維持するために町民達からなる地域ごとの自警団が発足され自分達の町を自分で守る考えも広まっていった。

 自分達で作る平和な町。
 そのおかげなのか、カスケードギルドも非常に平和な日常となっていた。
 依頼も常設のものぐらいで、こんな時は冒険者たちもわざわざ常設依頼を受けにきたりはしない。ギルドのロビーもガラガラだった。
 そんな中、ギルド本部の封蝋がされている1通の手紙がギルマスのヘッケンの元に速達で届いた。

「コン、コン、ギルマスー。本部から速達の手紙ですよー!」

「んあぁあ。そこ置いといて」

「あー、今寝てましたね?」

「今はお昼寝時間なのぉ」

「マナさんがいないといつもこーなんだから。いつ帰ってくるかわかりませんよー」

「二日酔いで頭が痛いんだ、もちょっと寝かせてくれー」

「もーーー」

 秘書兼ヘッケンの奥さんでもあるマナは出張中だ。
 鬼の居ぬ間に洗濯とでも言うのであろうか、受付嬢は諦めてギルマスの机に手紙を置き部屋を出ていく。

 静かになった部屋は外のぽかぽか陽気も相まって昼寝にはもってこいの環境となり、睡魔はヘッケンの意識を睡眠の沼へ引きずり込んでいった。

 受付嬢がカウンター戻ると

「あのーお届け物でーす。サインくださーい」

「はーい」

「全部で木箱が16箱。全部カジノ、ブルースカイさんからギルド宛てでーす」

「16!そんなにたくさん。一体なんでしょうか?」

「それが中身は貴重品と聞いてますが、かなり重いですよ」

「えっと、そうですか、置く場所どうしようかな?取りあえず入口付近に積んでおいてください」

「わっかりましたー」

 1箱の大きさはそんなに大きくないのにも関わらず1箱の重さが相当なのだろう。積み上げられるたびに床が軋んで悲鳴を上げている。

「これで全部になります。あざまーす」

「ご苦労様でーす」

 重いものはあまり持ちたくない受付嬢はギルド宛てだし、誰かが処理してくれるだろうと、とりあえず荷物はそのままにして自分の仕事へと戻っていった。


 ギルドのロビーは非常時でなければ誰でも出入り自由だ。
 より高額な依頼を求めて他の町や他の国からでも、日銭稼ぎに訪れる者も多い。

 他の町から来た2人組の冒険者ヤナトとウリトも、ここの依頼の少なさに悩まされていた。

「ウリト、この町もダメだ。目ぼしい依頼が一個もねーな」

「兄貴どーしますぅ? 薬草行きますぅ?」

「ばかやろう、そーゆーのはぺーパーの仕事だ。白銀目前の俺らが新人の仕事奪ってどうする?」

「兄貴やさお」

「だろぉ!」

「でも、どーしますぅ?」

「んーしゃーない。森にいって狩るぞ」

「そうっすね。その前に飯屋行きましょ」

「そうだな」

 依頼受注を諦め、振り返りざまに積みあがっている木箱にヤナトがつまづいてしまう。

「いってーな。誰だよ荷物おっきぱなしな奴。ギルドのロビーは共有だぞ、こんなに置きやがって」

「兄貴の足が怪我したらどーすんだよ、もう!!」

 ガゴン!
 そういってウリトが木箱を蹴ったのだが重さでほとんどズレることはなかった。

「痛っ! 何入ってんだこれ。これめっちゃ重いっすよ」

「おい、もう一回蹴ってみろ」

「え、嫌っすよ。痛いっすもん」

「いいから蹴れ。じゃないとてめぇを蹴るぞ」

「わかったっすよ。乱暴なんだからー」

 ガゴン!

「んーー。いったん出る。来い」

「もー何だったんすか。足痛いっす」

 外に出ると足早に裏路地へと入っていく。

「兄貴速いっす。どこ行くんすか」

「ここらでいいか、おい、さっきの木箱蹴った時どうだった?」

「足痛かったっす」

「そうじゃない音はどうだった?」

「音っすか。ガゴンって」

「それだけか?」

「それだけっす。兄貴はどう聞こえたんすか?」

「微かだが金貨の音が混じってやかった」

「え!!あの箱!!!金貨!!!入ってたんすか!!!」

「てめぇ、声がでけええ」

「すまねぇっす」

「……いいか、あの場所は共有の場所だ。とするならばあそこに置いてある物も共有していいってことだよな」

「そーっすね!!」

「おい、例の袋あとどれくらい空いてる」

 取り出した大袋は、一見普通の皮製の袋見えるが、そこに腕を肩まで思いっきり突っ込むんでもまだまだ入りそうなぐらい底が深い。
 レア級の魔道具、空間拡張革袋だ。

「あの箱なら3、4箱は余裕でいけそうっすね」

「良し。もう一度ギルドに行くぞ」

 ギルドに戻ってきた2人は、あたかも依頼をどうするか出入口付近の掲示板で相談しているかのように振る舞う。

「受付嬢は1人しかいないな。暇で好都合だ。袋準備しとけ」

「おうっす」

 カウンターから受付嬢が離れたのを確認して

「今だ。入れろ」

「重ッ」

「ほら早くしろ」

「やってますって」

 静かに、速く、確実に。
 こそこそと作業が進んでいく。

「3箱は無理かもしれないっす重すぎっす」

「なら2箱でいい、出るぞ」

 袋を担いでそそくさとギルドを後にしたのだった。
しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

戦国鍛冶屋のスローライフ!?

山田村
ファンタジー
延徳元年――織田信長が生まれる45年前。 神様の手違いで、俺は鹿島の佐田村、鍛冶屋の矢五郎の次男として転生した。 生まれた時から、鍛冶の神・天目一箇神の手を授かっていたらしい。 直道、6歳。 近くの道場で、剣友となる朝孝(後の塚原卜伝)と出会う。 その後、小田原へ。 北条家をはじめ、いろんな人と知り合い、 たくさんのものを作った。 仕事? したくない。 でも、趣味と食欲のためなら、 人生、悪くない。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

乙女ゲームの隠れチートモブ〜誰も知らないキャラを転生者は知っていた。〜

浅木永利 アサキエイリ
ファンタジー
異世界に転生した主人公が楽しく生きる物語 その裏は、、、自分の目で見な。

処理中です...